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高等学校理科 物理I 運動とエネルギー

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高等学校理科 物理I > 運動とエネルギー


本項は高等学校理科 物理Iの運動とエネルギーの解説である。


目次

[編集] 物体の運動

例えば、ボールを上に向かって投げ上げると、ボールは下に向かって落ちて来る。このように、物体は動かすことが出来る。このとき、ボールを投げあげたときには人間が手で物体に力をかけて物体の運動のようすを変えたものと解釈することが出来る。この章では、特に物体がどのような力を受けたときにどのような運動の変化を受けるかを考察する。


[編集] 日常に起こる物体の運動

現実の物体の運動においては、ただ1つの力だけで表わされるような運動は数少なく、いくつかの物体から受ける力がからみ合って物体の運動のようすが決まっていることが多い。

例えば、空気中に存在する物体に力をかけて運動させることを考えてみる。ここでは、物体はそれに力をかけている人間や道具から力を受ける。しかし、一方で物体は空気と衝突することで空気の分子から力を受けることになる。このため、一般に空気中で物体が行なう運動は、力をかけている人間が意図したものとずれる傾向がある。実際にこのような対応する力によって物体の運動の様子が大きく影響を受けるかどうかは、扱う現象の様子によって大きく変わってくる。分銅程度の大きさの物体を用いた短時間の測定なら、空気抵抗の影響は無視しても差し支えないと思われる。しかし、例えばロケットが大気圏に突入するときのロケットの運動は、空気抵抗によって大きく影響され空気抵抗の影響を無視して運動の様子を解析することは適切ではない。

このように、対象とする物体の運動の様子に伴って、どの力が重要になるかを正しく見抜くことが必要となる。

物体が受ける力として、空気抵抗以外に物体が接している面から受けるw:摩擦力がある。これは、物体の運動の方向の反対の向きに物体が接している面が物体に与える力である。通常物体をある面の上ですべらせるようにしたとき、ほとんどの物体ではすべらせた物体はすぐに静止してしまう。これは、物体に対してすべらせた面からの摩擦力が働くからである。摩擦力は物質によって大きく異なっており、例えばゴムでは非常に大きい。また、スケートリンクの氷の上で物体を滑らせると、滑らせた物体が静止すること無くいつまでも滑り続けている様子が観察される。これは、氷が極めて摩擦力を与える力が弱い物質であるからである。

更に、日常見られる物体の運動として、水などの液体の中に沈めた物体に働くw:水圧w:浮力を扱う。物体を海の深くまで沈めると、物体は水によって全体に強い圧力を受ける。例えば、深海探査を行う船は、外壁に使う金属間の継ぎ目に大きな圧力がかかるため、その圧力に堪えられるだけの強度を持った細工をしないと、継ぎ目が砕けて船全体が水に浸かってしまう。このように水の中にある物体にかかる圧力を、水圧と呼ぶ。水圧は水の深さだけによって決まる性質があり、その圧力は水の深さに比例する。

(

  • 注意

実際には、水圧を与える液体の密度 ρ と、液体が存在する地点での重力加速度 g にも比例する。数式では、水圧pは、

p = ρgh

で与えられる。流体力学参照。 ) また、実際には我々の住む地表は大気の海の海底にあると解釈することが出来、我々自身も大気自身から強い圧力を受けている。この圧力をw:大気圧という。このような圧力に耐えるため、我々の体は内側から大気圧とちょうど同じ程度の圧力になるように、大気圧を押し返している。このことによって大気圧に耐えることが出来ているのである。

このことはしかし、急激に回りの大気の圧力が下がったときに身体に変調をきたすことに通じてもいる。例としては、人間は生身で宇宙空間に出ることが出来ないことがあげられる。宇宙空間には酸素が無いことからヘルメットのようなものをつけて酸素を供給することが必要な事は確かである。しかし、宇宙空間のように極端に圧力が低いところでは、人間は、体に異常を感じると考えられる。そのため、全身を宇宙服でくまなく覆い身体の回りの圧力を地上での圧力と同じ程度に保つことが求められるのである。

また、水圧と同様に空気圧も空気の深さだけによっている。そのため、高い山に登ることによって空気圧が低くなった情况を見ることが出来る。空気圧が低くなったことの代表的な現象として、袋詰めになっている食糧などがふくらんでしまうことがあげられる。これは、回りの空気圧が下がったのに対して、袋詰めになっているものの中の圧力は変化することが出来ないので、相対的に袋の中の圧力が外の圧力より高くなったことによる。また、高山では湯を沸かしたとき沸騰の温度が100{}^\circ Cよりも低くなる現象も空気圧が低くなっていることによる現象である。これは、物質の沸点がまわりの物質の圧力に依存していることによる。

さて、水圧の話題に戻ると水に関してもう1つ重要な現象が存在する。水に軽い物体を沈めると、その物体はどこからか力を受けて水から浮き上がって来る。この力を浮力と呼ぶ。浮力は実際には、物体が液体から受ける水圧の差によって生じている。例えば、物体が立方体の形をしていて、ある1つの面が水面に平行な向きでその立方体を水の中に沈めたとする。このとき、立方体に水圧によってかかる力は、物体の上の面より下の面の方がより深い位置にあることから、物体には上向きの力が働くことが予想される。このため、物体には上向きの力が働きこの力がちょうど浮力に対応するものになるのである。また、今のことから浮力は、物体の高さに比例する。また、圧力に圧力を受ける面の面積をかけたものが力によって生じる力になるので、浮力自身は物体が圧力を受ける面の面積にも比例する。このため、物体にかかる浮力は、物体の体積に比例することが分かるのである。更に、より正確には物体にかかる浮力は物体が沈められている液体の密度にも比例することが知られている。そのため、これらを合わせると、物体が受ける浮力は物体が押しのけた液体の質量に比例することが分かるのである。

[編集] 運動の表し方

ここからは物体の運動が人間がかける力によって制御することが出来ると 仮定する。このようなときに物体がどのような運動をするかを解析する。 このとき物体の運動は物体の位置の変化で書き表すことが出来る。 物体の位置はある時刻を取ると、その時刻に対して一意に決まる。 これは、数学的には物体の位置が時刻に対する関数と なっていることに対応する。

実際の記述は以下のようになる。 物体の位置をxで表わし、時間をtとおく。 物体の位置は時間によって変化するので、

x = x(t)

と表わせる。

x = x(t)

は、xがtの関数であるということを意味する。 それぞれの運動の様子は、関数

x(t)

を1つ与えることによって1つ与えられるが、この関数は通常どのようなものでも かまわない。この章では特に、慣習的によく用いられる運動について その運動がどのような式で与えられるかを考察する。


[編集] 等速直線運動

一直線上を一定の速さで同じ向きに進む運動を等速直線運動という。 等速直線運動における物体の位置xを時刻tの関数で表すと、x = vt(vは定数)となる。 このvが速さである。

[編集] 速さ

先ほどのx = vtの式を変形するとv= \frac{x}{t}となる。 この式は等速直線運動に限らず、あらゆる運動について考えることができる。

速さについて

ある時刻t1x1の位置にあった物体が、それより後のある時刻t2x2の位置に移動した。 この場合、t1からt2までの時間はt2t1x1からx2までの位置の変化(これを変位という)はx2x1である。 ここで速さvを考えるとv= \frac{x_2-x_1}{t_2-t_1}という式が考えられる。 これを平均の速さという。

平均の速さの式において、t2t1に限りなく近づけていく。 詳しくは数学II数学IIIで習うが、これをv= \lim_{t_2 \to t_1} \frac{x_2-x_1}{t_2-t_1}と書く。 このとき、vは一定の値をとる。これを瞬間の速さという。 単に「速さ」と書かれているときは、瞬間の速さを指すことが多い。

[編集] 速度

速さが同じだからといって、全く同じ運動をしているわけではない。 たとえば、新幹線同士がすれちがうとき、普通速さは同じであるが、向きは全く逆である。 速さと向きを合わせたものを速度という。 一般に速度のように大きさと向きを持つ量をベクトル、速さのように大きさだけを持つ量をスカラーという。 ベクトルは量を表す記号、または始めの位置と終わりの位置を表す記号の上に矢印をつけて\overrightarrow{v},\overrightarrow{AB}のように表す。 \overrightarrow{AB}はAからBの向き、\overrightarrow{BA}はBからAの向きを表すので、大きさは同じだが、向きは全く逆である。 ベクトルの矢印は量を表す数字の上に直接付けてはいけない(\overrightarrow{0}を除く)。 ベクトルについては数学Bで詳しく学ぶ。

等速直線運動は等速度運動とも呼べる。

  • 問題例
    • 問題

時刻t0に速さvで位置x0から x方向に移動し始めた物体は、 時刻t( > t0)にどの位置に 移動することになるか。

    • 解答

速度v一定の等速直線運動の式は、

x = v(tt0) + x0

で与えられる。この式に直接代入すると、 時刻tで、この物体は

x = v(tt0) + x0

に現れることがわかる。


[編集] 加速度

速度\overrightarrow{v}も時刻tによって変化する。 よって、速さのときと同じように速度の変化を表すベクトルが考えられる。 これを加速度という。加速度は\overrightarrow{a}で表す。 加速度の大きさだけをaで表すこともある。

[編集] 等加速度直線運動

一直線上を進む加速度が一定の物体の運動を等加速度直線運動という。

  • 問題例
    • 問題

時刻t0に速さ0で位置x0にあった物体にx方向にaだけの 一定の加速度を与えた。このとき、 x方向に移動し始めた物体は、時刻t( > t0)にどの位置に 移動することになるか。

    • 解答

等加速度運動の式


x = \frac 1 2 a (t - t _0)^2 + v _0 (t-t _0) + x _0

に代入すれば良い。 このときには、v0 = 0が与えられているので、 上の式にv0 = 0を代入すれば良い。答えは、


x = \frac 1 2 a (t - t _0)^2  + x _0

となる。

[編集] 運動の法則

[編集] 力の合成、力のつりあい

力とは、物体を支えたり動かしたりするものである。 力はベクトルで表わされる量であり、単位には [N]を用いる。[N]はw:ニュートンと呼ばれる。 この量は、既に知られている[s],[kg],[m]を用いてかくことが出来る 単位である。実際には

[N] = [kg] \cdot [m/s2]

が得られる。この関係は下で扱うw:ニュートン方程式から従う。

ここで、ある物体に対して、2つの力


\vec {f _1}

\vec {f _2}

が働くときに、その力は互いに足し合わされ、物体には合計で

 
\vec {f _1} + \vec{f _2}

だけの力が働く。 このように力はベクトルとしての加法則を満たすのである。

特に大きさが等しく向きが反対向きであるとき2力の合計はベクトルとして 0になり、物体に力が働いていない状態と等しくなる。このような状態を 力がつりあっているという。


  • 問題

ある物体に、(I)x方向にf[N]、y方向にf[N]の力が それぞれ独立に働いているとする。 このとき、この物体には合計でどれだけの力がどの方向に働いているか計算せよ。 また、(II)それぞれの力の向きがどちらもx軸方向、 (III)片方がx軸方向でもう片方が(-x)軸 方向、 (IV)もしくは片方がx軸方向で、もう片方がx軸から測って反時計回りに 60{}^\circの方向のときにどのような力を受けているかを計算せよ。

    • 解答

(I) ベクトルの加法を用いると得られる力は

(f,0) + (0,f)

= (f,f) = \sqrt 2 f (1,1)

となる。これは、方向がx軸から測って反時計回りに45{}^\circだけ回転した方向に 等しい力で大きさは


\sqrt 2 f

に等しい力である。

(II) 同様にベクトルの加法を用いると、

(f,0) + (f,0)
= (2f,0)

となる。これは向きはx軸方向で大きさは2fの力である。

(III) ベクトルの加法を用いると、

(f,0) + ( − f,0)
= (0,0)

となる。これは力が働いていない状態である。

(IV) ベクトルの加法を用いると、


(f,0)+f(\frac 1 2,\frac {\sqrt 3} 2)

= f ( \frac 3 2, \frac {\sqrt 3} 2)

= f \sqrt 3 ( \frac {\sqrt 3} 2, \frac 1 2)

となる。これはx軸から見て30{}^\circ方向の力で、力の大きさは


\sqrt 3 f

に等しい。

[編集] 摩擦力

上で述べたw:摩擦力も、力の一種でありベクトルで表わされる。一般に、摩擦力には 2通りがあることが知られている。1つめは静止摩擦力という。物体がある物質で 出来た面と接して静止しているとする。このとき物体に力をかけて物体が 面に接したままで、物体を動かすことを考える。このとき、例えばゴムのような 物質を考えると分かり易いが、ある程度の力をかけるまで物体が物質面からの 力を受けて動きださないことがある。このように静止している物体に対して 働く力を静止摩擦力という。静止摩擦力の最大値は、物体が物質面にかける力の 面に垂直な成分に比例することが知られている。このような力の垂直成分と 実際に生じる静止摩擦力の最大値との比例係数をμとかき、静止摩擦係数とよぶ。 静止摩擦係数は物質ごとに決まる定数である。 特にこの関係を式で表わすと、


|\vec F| < \mu |\vec N|

のようになる。ここで、左辺の


\vec F

は摩擦力であり、右辺の


\vec N

は、物質の面にかかる力の垂直成分である。

2つめの摩擦力を動摩擦力と呼ぶ。 これは、物体が接している面から、物体が運動している方向と 反対の方向に働く力であり、通常物体を物質の面上に滑らせたとき、物体が 静止するのはこの力によるものである。 動摩擦力も静止摩擦力と同様、物質の面にかかる力の垂直成分に比例した 力が生じる。しかし、同じ力の垂直成分に対しても動摩擦力の大きさは、一般に 同じ物質面を使っても静摩擦力よりも小さい。動摩擦力の物体がかける力の 垂直成分に対する比例係数を動摩擦係数と呼び、通常μ'で表わす。 このことを式でかくと、


|\vec F| = \mu' |\vec N|

となる。


\vec F

は摩擦力であり、右辺の


\vec N

は、物質の面にかかる力の垂直成分である。

    • 問題

重力がある中に、静摩擦係数μの物質で出来た平面を角度

θ

だけかたむけて置き、その上に質量mの物体を置く。 このとき、

θ

がどの大きさのとき、この物体は滑り出すか計算せよ。

    • 解答

物体は重力を受けて、鉛直下方向にmgの力を受ける。このうちで この力は斜面方向に

mgsinθ

、面に対して垂直な方向に

mgcosθ

の大きさを持っている。このとき静止摩擦力の最大値は


|\vec F| = \mu |\vec N|
= μmgcosθ

となるので、斜面方向に働く重力

mgsinθ

= μmgcosθ

よりも大きいとき、この物体は動きだすことになる。 よって、このような

θ

の条件は、


\sin \theta \ge \mu  \cos \theta

\tan \theta \ge \mu

となる。


[編集] 弾性力

一般に物体は形を変えるような力が働いたとき、 それを押し返そうとする力を働かせる。これをw:弾性力と呼ぶ。 金属などでは一般に弾性力が強く、形を変えることが難しい。 一方、w:粘土のように容易に形を変えることが出来る物質も存在する。 このように、弾性力は物質によって大きく変わる物質の性質である。

一方、割合一般的に弾性力に関していえる現象として、形の変化が物体全体の 大きさと比べて小さいような時、物体が変形を押し返すために働かせる力は、 物体が変形した長さに比例する。これをw:フックの法則と呼ぶ。 例えば、w:ゴムを例に取るとゴムを大きく引きのばしたときに感じる力は、 ゴムを小さく引きのばしたときに感じる力よりも大きい。これはゴムが引きのばされた 時に発する力が、ゴム自身の変形の大きさに応じて大きくなるからである。

一般に物体が細長いときには、物体の弾性力は1本のばねで近似的に表わせる。 ここでは、特にばねについてのフックの法則を扱う。 ここでいうばねは、いくらかの長さl0を持っており、力を受けていないときには 常にl0の長さを持っている。また、多くの場合ばねの質量は他の物体の質量と 比べて小さいとして無視される。これはどちらかというと計算を簡単化するためで あり、実際にはどのような物質の弾性力について考えているかにもよる。 このバネは厳密にフックの法則を満たしており、この物体の弾性力は常に 物体の長さの変化の割合ll0に比例するとする。ただし、 lを引きのばされたバネの長さとした、このときの力と物体の長さの変化の割合 の比例係数を、バネ定数と呼びkとかくことにする。 このことを式でかくと、

f = − kx

となる。ただしここで

x = ll0

であり、この量は座標の原点をバネの端に取ったときのバネの引きのばされた大きさ となっている。xは負の量も取ることがあり、このときはバネは引きのばされるのでは なく押し潰される方向に力を受けている。

f = − kx

のうちの 符合は、バネが引きのばされるときにそれを引き返そうとする弾性力を 発し、通常より短くなるように押されるときにはそれを押し返す方向に 弾性力を働かせることに対応している。

  • 問題例
    • 問題

片側を壁に固定してあるバネ定数kで自然の長さlのバネがある。このとき、 (I)バネの長さがl + l1になるように引きのばしたとき、 バネの発する弾性力を符合も含めて答えよ。 また、(II)バネの長さがll2となるように押し縮めたとき、 バネの発する弾性力を符合も含めて答えよ。 ただし、l1 > 0,l2 > 0とする。


    • 解答

バネが発する力は、フックの法則

f = − kx

を用いて計算できる。ただし、バネの発する力の方向には注意する必要がある。

答えは、 (I)

kl1

(II)

kl2

となる。


[編集] 運動の法則

[編集] ニュートン方程式

一般に物体は力を受けたとき動きだすことが知られている。 しかし、どのような力を受けたときどのような仕方で動きだすかは 必ずしも明らかではない。実験の結果によると、全ての物体は ある一定の力f[N]を受けたとき、物体の持っている質量m[kg]を用いて、

f = ma

と表わされるだけの加速度a[m/s2] を受ける。 この方程式をニュートン方程式と呼ぶ。

例えば、ある一定の力fを一様に受けている 質量mの物体は、ニュートン方程式に従うと、 加速度


a = \frac f m

の等加速度直線運動をする。


  • 問題例
    • 問題

質量m[kg]の物体にf[N]の力をかけたとき、 物体が受ける加速度は、何[m/s2]か。

    • 解答

ニュートン方程式

ma = f

に代入すれば良い。 ここで、mは質量、aは加速度、fは力である。 ここで、両辺をmで割ると、


a = \frac f m

が得られ、物体が受ける加速度は、


\frac f m [\textrm { m/s}{}^2]

であることがわかる。

    • 問題

重力が存在する中で、質量mの物体を初速度v0で 投げ上げた。このとき、時刻tでの物体の位置を求めよ。 また、物体が最も高い位置に存在する時刻とその高さ、さらに 物体がちょうど地面に落ちてくる時刻を計算せよ。 ただし、物体の初期位置をx = 0とし、投げ上げた時の 時刻をちょうど0とする。 また、重力加速度をgとする。


    • 解答

重力が物体に与える加速度は一定であるので、 この物体の運動は等加速度運動である。 このとき、物体に働く加速度は、 大きさは重力加速度gに等しく、向きはx方向の負の向きである。 ただし、x方向を物体を投げ上げた方向に取った。 よって、この物体の運動は等加速度直線運動の式を 用いて、


x = -\frac 1 2 g t^2  + v _0 t

で表される。

ここで物体の位置xは、時刻tに関して上に凸の2次関数であるので、 必ず最大値を持つはずである。物理的には、この位置はちょうど 物体の速度が0になる位置に等しい。 上の表式を平方完成すると、


x = -\frac 1 2 g ( t - \frac { v _0} g) + 
\frac {v _0^2 } {2g}

となる。

よって、物体が最も高い位置ににいたる時刻は


\frac {v _0} g

最高点は、


\frac {v _0^2 } {2g}

となる。

さらに、物体が地面に落ちてくる時刻は、

x = 0

となる時刻である。


x = -\frac 1 2 g t^2  + v _0 t

を因数分解すると、


x = t (-\frac 1 2 g t  + v _0)

が得られる。 この式を見ると、この物体のxはtの2次関数なのでx=0となる点は2つある。 片方は

t = 0

であるが、これは物体を投げ上げたときの時刻なので、物体が 地面にあるのは当然である。 一方


t=\frac {2v _0} g

の方は、物体が一度投げ上げられて落ちてきたものと解釈できる。 よって、物体が落ちてくる時刻は、


\frac {2v _0} g

となる。


    • 問題

重力が存在する中、質量mの物体を 時刻0に、位置

(x,y) = (0,0)

から、初速度vで地面から測って

θ

方向に物体を放り投げた。 物体が最高点に到る時刻とそのときの物体の位置、 物体が落ちて来るときの時刻とそのときの物体の位置をそれぞれ計算せよ。


    • 解答

物体を放った位置を

(0,0)

とする座標系を取り、物体が飛んでいく方向をx方向、重力が働く方向と 反対の方向をy方向とする。

このとき重力は(-y)方向にしか働かないので、物体は x方向には初速度

vcosθ

の等速直線運動をする。

また、y方向には重力が一定の大きさで働くので、 初速度

vsinθ

の等加速度運動をする。 これらを等速直線運動の公式と、等加速度直線運動の公式に代入すると、

x = vcosθt
vx = v

y = -\frac 1 2 g t ^2 + v \sin \theta t
vy = − gt + vsinθ

が得られる。ここで物体が最高点に達するときには

vy = 0

が成り立つので、

vy = − gt + vsinθ = 0

よって、


t = \frac {v\sin \theta} g

が対応する。一方、物体が地面に落ちたときには、

y = 0

が対応するので、


y = -\frac 1 2 g t ^2 + v \sin \theta t = 0

となる。これには


t = 0 , \frac {2 v \sin \theta} g

が対応するが、t=0は投げあげたときに対応するので、


t = \frac {2 v \sin \theta} g

が対応する量である。

一方、物体が最高点に達したときの物体の位置は

(x,y)

にそれぞれのtの値を代入すればよい。


t = \frac { v \sin \theta} g

に対しては、


x = v \cos \theta \cdot  \frac { v \sin \theta} g

= \frac {v^2 \cos \theta \sin \theta} g

y=  \frac {v^2 \sin ^2\theta } {2g}

が得られる。一方、


t = \frac {2 v \sin \theta} g

に対しては、


x = v \cos \theta \cdot  \frac {2 v \sin \theta} g

= \frac {2v^2 \cos \theta \sin \theta} g
y = 0

が得られる。

[編集] エネルギー

[編集] エネルギーの測り方

w:エネルギーとは物体を動かしたり温度を上げたりするものである。 このようなエネルギーという量がどのような物理量を用いて表わされるか を考える。 エネルギーは一般的には様々な使われ方をするが、物理的に扱えるものは 根本的には唯一である。

物体に力をかけたまま力の方向に移動させることを考える。 このとき、力が一定であったとする。力の大きさが時間的に変化する場合は 積分を使うことになるので指導要領の範囲外である。 ここでは、物体にかかる力は常に一定であるとして考える。 このとき、力の大きさと移動した距離の積を物体が受けた仕事と呼ぶ。 仕事は通常Wでかかれ、その単位は

[N \cdot m]

である。一方、この単位は通常

[J]

とかきw:ジュールと呼ばれる。 一般には、物体が動く方向はベクトルで表わされ、力もベクトルで表わされる。 このとき、物体が動いた量を


\vec x

物体が受けた力を


\vec f

とかくと、物体が受けた仕事は


\vec f \cdot \vec x

と取る。ここで、\cdotは、内積の記号である。例えば、物体が力を受けている方向と 垂直な方向に動いたとき、物体は仕事をされていないと考える。 例えば、重い荷物をもちあげずに運んだとき運んだ向きは物体が重力を受ける向きと 垂直であるので、物体は重力に対する仕事をされていないことになる。

実は運動方程式を用いると物体が受ける仕事は物体のもつ エネルギーの変化量であることが分かる。 このことを示すには、物体の持つエネルギーがどのようなものかを 述べなくてはならないが、それは次の章で成される。 ただし、いずれにしても物体が受ける仕事のもつ単位と、 物体の持つエネルギーの次元は同一であり、 ジュールはエネルギーの単位としても扱われる。

  • 問題例
    • 問題

ある物体が、x軸方向に一定の大きさの力fを受けたまま、

(I)

l(1,0)

(II)

l(0,1)

(III)


l \frac 1 {\sqrt 2} (1,1)

(IV)

l( − 1,0)

だけ動いたとする。それぞれの変位に対して物体が受けた仕事を求めよ。

    • 解答

物体が受けた力を

f(1,0)

として、それぞれの変位との内積を取ればよい。 (I)


W =f(1,0)\cdot l(1,0)
= fl

となる。 (II)


W =f(1,0)\cdot l(0,1)
= 0

これは、物体が受けている力と物体の変位が垂直なときに対応する。 (III)


W = f (1,0) \cdot l \frac 1 {\sqrt 2} (1,1)

= \frac 1 {\sqrt 2} fl

(IV)


W = f (1,0) \cdot l(-1,0)
= − fl

となる。このとき、物体は負の仕事をされているという。

[編集] 運動エネルギーと位置エネルギー

物体のエネルギーを定めるには、物体が他の物体を動かす力を測定するのが 順当である。 種々の実験の結果によると、ある物体ともう1つの物体が衝突したとき ぶつかった物体がぶつけられた物体を動かす力は、 ぶつけた物体の速さの2乗に比例し、ぶつけた物体の質量に比例する。 よってぶつけた物体の速さをv、質量をmとすると、ぶつけられた物体のエネルギーEは


E = \frac 1 2 m v^2

と書ける。 ここで、係数である


\frac 1 2

は慣用的な量と合わせるためにつけている。 ここからは、質量mの物体が速度vで運動しているときその物体は


\frac 1 2 m v ^2

のエネルギーを持っているとする。運動の方向がどちらであっても、物体が持っている エネルギーは変化しない。 ここで、この量の単位を考えてみる。 この量は質量と速度の2乗の積で出来ていることから、この量の単位は

[kg] \cdot [m2/s2]
=[ kg \cdot m/s2]\cdot [ m]
= [N] \cdot [m]

となり、確かに仕事の単位と等しいことが分かる。

ここで、エネルギー


\frac 1 2 m v^2

という量の変化が、物体が受けた仕事に対応することを示す。

ある短い時間Δtの間に物体が力fを受けながら力と同じ方向に Δxだけ移動したとする。 このときの物体の速度の変化をΔvとすると、エネルギーの変化量は


\frac 1 2 m( (v+\Delta v )^2 - v^2 )

= \frac 1 2 m ( 2 v \Delta v + (\Delta v)^2)

\sim mv \Delta v

となる。ただしここで、

v)2

の項は第1項と比べて小さいとして無視した。 この量をΔtで割った量は


= mv \frac {\Delta v} {\Delta t}

となるが、ここで


\frac {\Delta v} {\Delta t}

は、物体の加速度と等しいことが予想される。 ここで、運動方程式

ma = f

を用いると、上の量は

= vf

となる。 しかしここで、


v = \frac {\Delta x } {\Delta t}

であることを考えると、上の量は Δtの間になされた仕事

fΔx

Δtで割ったものと解釈することが出来る。 もともと始めの量は、Δtの間のエネルギーの変化量をΔtで割ったもので あったので、これは求めたかった結果と一致していることが分かる。

よって、物体が受ける仕事は物体の持つエネルギーの変化と等しいこと がわかった。式でかくと、


\frac 1 2 m (v _2 ^2 - v _1 ^2) = W

となる。ただし、ここでは物体が仕事を受ける前の速度をv1, 仕事を受けた後の速度をv2と取り、受けた仕事をWと取った。


  • 問題例
    • 問題

質量mを持つ物体が速度vで運動していた。このときその物体に ある仕事をし、その物体の速度をVまで引きあげた。 物体が受けた仕事を計算せよ。


    • 解答

エネルギーの変化量がなされた仕事に対応する。 よって、なされた仕事は、


\frac 1 2 m V^2 - \frac 1 2 m v ^2

となる。


次に物体をある高さから転がして、その物体の速さを測る実験を行なう。

(実験)

実験の結果によると、物体の速さは物体の元の高さに比例する。これは 物体が高い位置にあることによって持っていたエネルギーを物体の w:運動エネルギーに転換したものと見ることが出来る。高い位置に あったことによるエネルギーをw:位置エネルギーと呼ぶ。 位置エネルギーは物体の高さと物体の質量に比例する。

U = mgh

(ここで、gは比例定数であり、測定値は、g = 9.8 [m/sec2]である。)

  • 問題例
    • 問題

高さhから質量mの物体を落とした。ここでこの物体が地面すれすれで 持つことになる運動エネルギーと速度を求めよ。 更にこの物体から全てのエネルギーを受け取った質量Mの物体は 地面すれすれの高さではどれだけの速度で動くことになるかを 計算せよ。


    • 解答

物体のエネルギーをEとすると、運動エネルギーT,位置エネルギーUとしたとき、

E = T + U

が成り立つ。ここで、エネルギー保存則から、高さhで物体が持っていた エネルギーと、地面すれすれで物体が持っているエネルギーは等しいことに 注目すると、物体が地面すれすれで持っている運動エネルギーは 物体が高さhで持っていた位置エネルギーと等しい。 よって、物体の地面すれすれでの運動エネルギーは

mgh

となる。更に、このときの物体の速度は、


mgh = \frac 1 2 m v^2

より、


v = \sqrt {2gh}

となる。 また、このエネルギーを質量Mの物体が受け取ったとすると、 このときの物体の速度をVとすると、


\frac M 2 V^2 = mgh

よって、


V = \sqrt {2mgh /M}

となる。


[編集] 熱と温度

熱を物体に与えると、物体の温度が上がる。 また、水をかきませることで水の温度を上げることも出来る。 水をかきまぜるのは水に運動エネルギーを与えることに等しく その結果として、水の温度が上がったのであるので、 熱と運動エネルギーは互いに転換が可能であると予測できる。 (実際にはこの予想は正しくない)

[編集] 電気とエネルギー

発電所では、w:タービンを回転させることで、電気をおこしている。 これは、運動エネルギーを電気エネルギーに転換しているものと 考えることが出来る。 逆に、w:モーターは電気エネルギーを使って運動エネルギーを 産み出しているものと考えることが出来る。

[編集] エネルギーの変換と保存

今まで見て来た通り、エネルギーには様々な形態があり それぞれは条件付で互いに変換が可能となっている。 ただし、エネルギーの総量はそれぞれの変換で 変化しないと思われている。

[編集] 運動とエネルギーに関する探求活動

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[編集] 関連項目

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