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高等学校看護 人体と看護/人体とその構成

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

この科目では、医学用の解剖学および生理学を扱う。この節で扱う内容は、医学用の解剖学である。

人体における位置と方向

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解剖学的正位と正中面・前頭面・水平面。(図では、足が見えやすいようにツマ先立ちになってるが、実際はかかとを床につけるので注意。)
  • 解剖学的正位

医学における人体を扱う場合の基準の姿勢として、次の姿勢を定める。直立し、顔と額は前に向け、両腕をまっすぐ伸ばして下ろし、手のひらは前に向ける。つまさきは前方にむける。 このような姿勢を解剖学的正位という。

「左右」など、方向を示す用語は、患者側を基準としている。観察者側からの視点ではない。左右を表す場合は、患者から見た場合の右側・左側を示す。

上下、左右、前後は、患者から見た方向で定義する。
  • 正中面(median plane。図ではsagittal plane)

体を両半分に分ける面。具体的に言うと、眉間、鼻、口、臍(「ぜい」、「おへそ」の事)、股間を通る面のこと。

    • 正中線

正中面と体の表面とが交わる線。

    • 矢状面(しじょうめん、sagittal plane)

正中面に平行な面。水平面と前頭面に対して垂直な面。この矢状面の中の方向で、地面に平行な方向を矢状方向という。

  • 前頭面(図ではcoronal plane。和訳はfrontal planeが由来)

額に対して平行な面。正中面と地面に垂直な面。(地面は平らとする。) 身体を前後に分ける。

  • 水平面(transverse plane)

正中面と前頭面に垂直な面。地面を平らとした場合に、地面に平行な面。身体を上下に分ける。


矢状面、前頭面、水平面は互いに直交する。

  • 内側(ないそく)と外側(がいそく)

人体上の任意の2箇所において、正中面に近い箇所を内側(ないそく)という。遠い点を外側(がいそく)という。 これは、相対的な関係を示す用語であるので、ある箇所が必ず内側(あるいは外側)ということはない。

  • 腹側(ふくそく)と背側(はいそく)

矢状面で、相対的に胸や腹に近いがわを腹側(ふくそく)という。背のがわを背側(はいそく)という。


人体は外見上、頭,頸くび,体幹(胸,腹,背,腰),体肢「たいし」(上肢,下肢)の 4 部からなる。

  • 腔(くう)

体の内部には、体の中で広く器官などが領域を取ってる場所がある。その領域が外側と内側を区別できる場合に「腔」という。具体的には、頭蓋骨の中の頭蓋腔や、体幹の中の体腔などがある。体腔は横隔膜によって、胸腔と腹腔とに分けられる。その他、鼻腔や口腔がある。 腔の内側の場所は、ある部位は空洞で空気や液体が満ちていたり、またある部位は内臓などが入っている場合など、さまざまである。 「腔」の字を、「こう」でなく「くう」と読む読み方は、医学の分野では慣習的に使われている読み方である。

  • 体幹と体肢

関節

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一般的な関節。
ligament 靱帯(じんたい)
enthesis 腱付着部
synovial cavity 滑液腔
bursa 滑液嚢
articular cartilage 関節軟骨
joint capsule 関節包
tendon 腱
epiphyseel bone 骨端

関節を構成する2つの骨どうしがくみ合わさる部位のうち、骨の形が出っぱっている凸の側を関節頭(かんせつとう)といい、くぼんでいる側を関節窩(かんせつか)という。

関節は、関節頭と関節と関節窩のそれぞれの骨端を包み込む関節包(かんせつほう)を持つ。関節包の内側は滑膜(かつまく)と呼ばれる膜組織であり、滑膜から滑液と呼ばれる液が分泌され、関節腔(かんせつくう)を満たす。滑液には潤滑の他に、軟骨に栄養を与える作用がある。 関節包の周囲に靭帯(じんたい)があり、結合を補強している。


関節の分類

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関節面の形による関節の分類

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1:球関節 2:楕円関節 3:鞍関節 4:蝶番関節 5:車軸関節
  • 球関節

関節頭が半球形で、運動は多方向性な多軸性である。 (例)肩関節や股関節。

  • 楕円関節

関節頭は楕円球形で、運動は楕円の長軸と短軸とをそれぞれ中心とした2軸型 (例)橈骨手根関節(手首の位置にある。)

  • 鞍関節(あんかんせつ)

2軸性で、回転方向は互いに直角。 (例)母指の手根中手関節

  • 蝶番関節

関節頭は円柱状で一軸性。 (例)腕尺関節(肘と尺骨の間の位置にある関節)

  • 車軸関節

関節頭が円柱状である。円柱側面で関節窩と、はまり合う。 (例)上橈尺間接。(上橈尺間接とは、肘の近くにある橈骨と尺骨の間の位置にある関節のこと。)

  • 平面関節

関節面が平面。可動性は少ない。 (例)椎間関節

運動の種類

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  • 外転と内転

上肢や下肢などの場合は、身体の中心面である体軸や正中線から遠ざけることを外転という。 上肢や下肢を体軸に近づけることを内転という。手の指については第三指から他の指を遠ざけることを外転という。


  • 内旋と外旋

上肢および大腿を、内方向に回転する運動を内旋という。外方に回転する運動を外旋という。 手首については、回内および回外という語を用い、内旋・外旋は用いない。理由は回内・回外の節で述べる。

内旋と外旋をあわせて、位置を変えずにその場で回転させる運動を、回旋という。


  • 回内と回外

手首について用いる。前腕の軸の周りの回旋である。 基準の姿勢として、小学校の朝礼とかでの「前へならえ」の姿勢から、肘を腰に付けた姿勢を基準としたとき(このとき手のひらは内側を向いている。)、肩の回旋(内旋)を使わずに、手のひらを地面に向けるような回転方向の運動を回内という。下向きの手のひらを上向きにさせる前腕の回旋を回外という。

手首は単独で内旋・外旋できない。日常語で言う「手首を回す」動作は、実は手首の回旋では無く、前腕の回旋である。ためしに右手首を左手で抑えながら、右手の手首を回して見れば分かる。このとき、手首を回そうとすると、一緒に前腕も向きが変わる。 細かく言うと、「手首を回す」動作は尺骨のまわりで手首と橈骨が回転する現象である。


骨格筋の形状

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  • 起始

筋の両端のうち、体の中心に近い(近位にある)片端のがわを起始(きし)という。あるいはその筋が収縮したときに、より動きが小さいほうを起始という。

  • 停止

筋の骨への付着部分のうち、体幹側から遠い遠位のほうの端を停止という。起始の反対側。