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内科学/循環器

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

循環器領域には、主に心臓の病気、血管の病気、その他の脈管系の病気が含まれますが本書では心臓を中心に学習を進めていきます。循環器では基礎的な物理学数学の知識が病態の理解に必要となります。また、その治療法は内科学、外科学とも重要なものが多いので、外科学/循環器も併せて学習することが重要です。


循環器総論

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心臓の解剖

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ヒトの心臓の構造
血液の流れは白い矢印で示されている

心臓は全身に血液を拍出するポンプの働きをしている。ヒトの心臓は二対の心房・心室、つまり右心房左心房右心室左心室から成る。心臓のサイズは握りこぶしほどの大きさであり、位置は胸骨と第2~第6肋骨の背面である。

よく心臓は左胸にあるといわれるが、実際には上の図のように左右の肺の中間、つまり胸のほぼ中央にある。図にあるように心臓は形状が中央よりやや左に寄っている(、心尖は左前下方を向いている)。このため、左胸のほうが右胸よりも心臓の鼓動を感じやすいことからこのような誤解が生じたものと考えられる。

心臓の弁

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心房を取り除き、心臓内の4つの弁を上方から見た図

心臓は血液の逆流を防止するために4つの弁を持っている。弁は右心房と右心室、右心室と肺動脈、左心房と左心室、左心室と大動脈の間に存在し、それぞれ、三尖弁肺動脈弁僧帽弁大動脈弁と呼ばれる。このうち、僧帽弁のみが2つの弁尖よりなっており、それ以外は3つの弁尖からなっている。

刺激伝導系

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刺激伝導系。青い部分が洞房結節である
刺激伝導系の興奮伝導と心電図

心筋には、筋肉の収縮・拡張により血液を送る固有心筋と、固有心筋を動かすための電気刺激の発生と伝導を行っている特殊心筋がある。固有心筋は心房では長さ100μm、直径5μmの紡錐形をしており、心室では長さ100μm、直径10μmの枝分かれした円柱状をしているが、特殊心筋はこれら周辺の固有心筋とは明らかに異なった形態をしており、組織学的には区別できる。

電気刺激は右心房にある洞房結節(sinoatrial node: SA node、別名キース・フラック結節)から発生し、心房を介し右心房の下方にある房室結節(atrioventricular node: AV node、別名田原結節)へと伝わる。この刺激により心房の収縮が行われる。更に電気信号は房室結節からHis束、右脚、左脚プルキンエ (Purkinje) 線維|へと伝導し、心室へと電気刺激が伝わっていく。 ここで、心房と心室とでは、電気刺激を受ける時間差があるために、心房の収縮に遅れて心室の収縮が起こる。これにより心房から心室へと血液をうまく送ることが出来る。 洞房結節、房室結節、His束、右脚、左脚プルキンエ線維を合わせて刺激伝導系と呼ぶ。

動脈系と静脈系

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心臓を取り除いた状態での動静脈系
左心室を出て分岐する大動脈

動脈系

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動脈系とは、心臓から押し出される血液を全身に分配するための血管システムのことである。心臓が血液を駆出する際の高い圧力に耐えるため、動脈系の血管は、外膜・中膜・内膜の3層からなる丈夫な構造を持つ。また、柔軟性に富むことで、心臓の収縮時と拡張時の血圧の差を吸収できるようになっている。

動脈は各組織へ血液を配分するために分岐していくが、分岐した枝同士が合流していることもある。これを吻合と言い、一方の血流が不十分でも組織が虚血に陥ることを避けられる。逆に、吻合のない動脈の支配領域はそれだけ虚血のリスクが高いと言える。

一般的に、大動脈を通じて全身へ送り出される血液は酸素に富んだ動脈血である。ただし、唯一、肺動脈系を流れている血液のみは、心臓から肺に向かって送り出される脱酸素化された血液、つまり静脈血を運んでいることは注意を要する。

静脈系

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静脈系とは、毛細血管から発生した静脈血心臓に送るために使われる血管システムのことである。毛細血管の吻合により細静脈に至り、最終的に上下の大静脈となる。

全身の静脈は、肺静脈系と大静脈系に二分される。大静脈系は腸などからの血流を肝臓に運ぶ門脈系を含む。静脈は皮膚からの位置によっていくつかに分類されている。すなわち、筋膜よりも皮膚よりを走行する皮静脈、筋膜下を走る深静脈、両静脈をつなぐ貫通静脈である。深静脈は動脈と一対をなし、解剖学では後脛骨静脈と後脛骨動脈や、最上肋間静脈と最上肋間動脈のように同名が与えられている。一方、w:肺静脈系は、で酸素化を受けて心臓に戻ってくる血液を通すため、静脈系としては例外的に動脈血が流れる。

個々の静脈はパイプ状をなし、3層の膜、4種類の組織からなる。内部から血液が流れる内腔、内膜(内皮細胞(静脈弁を含む)、基底膜)、中膜(平滑筋)、外膜である。最も厚い膜は外膜である。動脈は同じく3層の膜組織からなるが、より複雑な構造をとる。すなわち、内腔、内膜(内皮細胞、基底膜、内弾性板)、中膜(平滑筋、外弾性版)、外膜である。静脈は動脈と比較すると、弾性繊維組織を欠くことが特徴だ。なお、毛細血管は内皮細胞と基底膜のみからなる。静脈にかかる血圧は動脈と比較すると低いため、動脈に比べると壁は薄い。特に中膜と内膜が薄い。弾性繊維組織を欠くだけでなく、平滑筋や外膜も薄い。

静脈の多くには逆流防止などのために静脈弁(venous valve)がついている。重力の影響を受ける四肢の静脈では静脈弁は発達するが、内臓の静脈などではこれを欠く。静脈弁閉鎖機能不全に至ると、血液の逆流により、壁の弾力性が失われしだいに断面積が拡大して行く。これを拡張性蛇行静脈と呼ぶ。

生理

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心筋の構造

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心筋細胞の枝分かれ・融合と、介在板(拡大部分)。

心筋は、骨格筋と同じ横紋筋であるが、骨格筋は随意筋多核細胞でできているのに対して、心筋は単核(稀に2核)の細胞でできており、不随意筋である。また、ミトコンドリアが非常に多く存在しており、心筋が要求するエネルギーの大部分をまかなっているほか、心筋においては、筋線維の枝分かれ・融合が見られる。心筋細胞は介在板により結ばれ、心筋線維を形成する。

心房には血圧と血流の制御に関連する心房性ナトリウム利尿ペプチドと呼ばれるペプチドホルモンを合成、分泌する心筋細胞が存在する。心筋線維は静止時には細胞外に対して-50~-90mVの膜電位を有する。骨格筋の絶対不応期は1~3msecなのに対して、心筋の絶対不応期は200msecと長い。

心筋の興奮・収縮機構

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心筋の収縮機構を特徴づけるのが、Ca電流が直接的に興奮収縮連関に関与する点である。[1]固有心筋においては、細胞膜上にL型Caチャネル(DHP受容体)が分布しており、心筋の活動電位に特徴的である緩徐な脱分極:プラトー相の形成に決定的な役割を果たしている。

心筋の活動電位の形成は下記のようなプロセスを経て進行する:

  1. 小さな脱分極を受けて電位依存性Naチャネルが開き、急速に大きな内向きNa電流を生じる。これによって膜は脱分極するが、Naチャネルの不活性化によって、Na電流は急速に消滅していく。
  2. Na電流の消滅によって膜電位が減少に転じた直後より、L型CaチャネルよりCa2+の流入が始まり、緩徐な内向き電流を形成する。L型CaチャネルはNaチャネルよりも不活性化が遅いことから、活動電位は緩やかな脱分極を示し、この部分をプラトー相と称する。
  3. 最終的に、Caチャネルの不活性化に伴ってCa電流は消滅し、これとほぼ同時にKチャネルからのKの流出による外向きK電流によって、急速な再分極が進行する。

また、心筋の興奮・収縮機構においてもうひとつ特徴的なのが、Ca誘発性Ca放出(CICR)である。これは、上記の機構によってL型Caチャネルより流入したCa2+が、筋小胞体のCa2+放出チャネルに結合し、筋小胞体からのCa2+放出を引き起こすものである。

心周期

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心臓は収縮と弛緩を周期的に繰り返しており、これを心周期と称する。心室が収縮している時期を(心室)収縮期、拡張して弛緩している時期を(心室)拡張期という。

収縮期
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1. 等容性収縮期

心室の収縮によって左室圧(LVP)は上昇を続けるものの、まだ大動脈圧(AP)を上回るに至っていないために大動脈弁が開いていない時期である。僧帽弁も大動脈弁も閉じており、したがって、左室の容積は一定であることからこの名がある。

2. 駆出期

左室圧が大動脈圧を上回り、大動脈弁が開くと同時に、血液は一気に大動脈に流入して、心拍出が開始される。駆出期の初期には、左室はなおも収縮し続けていることから、左室圧は上昇している。しかし駆出期の半ばで左室の収縮がピークを超えると共に左室圧は減少に転じ、これが大動脈圧を下回ると大動脈弁が閉鎖して心拍出が終結し、駆出期も終わる。
拡張期
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3. 等容性弛緩期

大動脈弁、肺動脈弁の閉鎖によって駆出期が終わりを迎えた後、左室圧はなおも低下を続けるが、まだ左房圧を下回るには至っていないことから、僧帽弁も閉じたままになっており、したがって、左室の容積は一定であることからこの名がある。

4. 充満期

左室圧が左房圧(LAP)をついに下回ると、僧帽弁が開いて、左室に血液が流入する。これによって、左室圧は左房圧に近いところで下げ止まる。充満期の後期には、心房が収縮して、心房内の血液を心室内に送り出し、次の収縮期へと移行していく。

心拍出量の調節

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  • 心拍出量(CO)
心臓のポンプ機能は心拍出量(CO)で評価される。これは、下記の式で算出される。
心拍出量(リットル/分) =心拍数(回/分) × 1回拍出量(リットル/回)
すなわち、心拍出量は、心拍数と1回拍出量によって左右される。このうち、1回拍出量は、心筋の基礎収縮力と前後の負荷によって左右される。心室拡張末期圧(前負荷)が増大すれば、1回拍出量も増大する。これをStarlingの心臓の法則という。Starlingの心臓の法則に基づいて、心臓への血液流入量と流出量のバランスをとるという自己調節能のメカニズムをFrank-Starling機構という。
  • 心係数(CI)
心機能を評価する際には、体格による心拍出量の大小を補正するために心係数(CI)を用いる。これは、下記の式で算出され、Forrester分類などで用いられるものである。
心拍出量(リットル/分) =心拍数(回/分) × 1回拍出量(リットル/回)

循環調節機構

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循環器系の調節機構は、大きく分けて外因性と内因性がある。外因性調節としては、自律神経による神経性調節と、ホルモンなどによる液性調節があり、内因性調節としては、局所組織の代謝需要、自己調節、傍分泌による局所性調節がある。

神経性調節と液性調節
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神経性調節と液性調節の機構において、センサーとして使用されるのは下記のものである。

  • 圧受容器
頸動脈洞、大動脈弓、右房入口にある圧受容器は、血圧の変化を検知する。
  • 化学受容器
頸動脈小体、大動脈小体が、血中のCO2+濃度、O2+濃度、pH変化を検知する。

主な症状

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主な診察

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主な検査

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心不全

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総論

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心不全(しんふぜん、heart failure)は、心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。そのような病態となるに至った原因は問わない。

心不全の症状は、主にうっ血によるものである(うっ血性心不全)。左心と右心のどちらに異常があるかによって、体循環系と肺循環系のどちらにうっ血が出現するかが変わり、これによって症状も変化する。このことから、右心不全と左心不全の区別は重要であるが、進行すると両心不全となることも多い。

また、治療内容の決定に当たっては、急性慢性の区別も重要である。前者に当てはまるのは例えば心筋梗塞に伴う心不全であり、後者に当てはまるのは例えば心筋症弁膜症に伴う心不全である(念のため付け加えると、急性心不全が終末期状態としての心不全を指しているわけではない…急性心不全は治療により完全に回復する可能性がある)。

病態

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左心不全と右心不全

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症状を来たす原因が、主に左心室の機能不全によるものなのか、右心室の機能不全によるものなのかによって、心不全を大きく2つに分類する方法である。厳密に区別することができない場合も多いが、病態把握や治療方針決定に有用であるため、頻繁に使用される概念であるので後述する。

収縮不全と拡張不全
心不全の30%から50%は左心室の十分な拡張を認めず、拡張不全が占めると考えられている。拡張不全は収縮不全に比べ女性、高齢者に多いが、まだ診断基準は定まってはいない。拡張不全には高血圧や虚血性心疾患の合併が多い。
左心不全 右心不全
うっ血による所見 左房圧上昇による肺うっ血 中心静脈圧上昇による静脈うっ血
? 急性肺水腫(労作時呼吸困難や起座呼吸、湿性ラ音など)
 ? 左房圧上昇
 ? 心係数低下
? 下腿浮腫
 ? 静脈怒張
 ? 肝腫大
心拍出量低下
による所見
? 血圧低下
 ? 全身倦怠感
 ? 尿量減少
 ? 尿中Na排泄量減少
? 肺血流量低下による心拍出量低下
その他の所見 ? 心濁音界の拡大
 ? III音、IV音(奔馬律)
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左心不全
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左心不全(さしんふぜん、left heart failure)は、左心系の機能不全にともなう一連の病態のことである。左心系は体循環を担当することから諸臓器の血流低下が発生するほか、心拍出量低下による血圧低下、左房圧上昇による肺うっ血が生じる。肺うっ血は、肺が左心系の上流に位置することから出現するものである。

  • 血圧低下の症状
頻脈、チアノーゼ、尿量低下、血圧低下、手足の冷感、意識レベルの低下
  • 肺うっ血の症状
肺高血圧胸水労作時呼吸困難、発作性夜間呼吸困難、咳嗽チェーンストークス呼吸、湿性ラ音

胸部X線画像においては、

  • 心陰影の拡大
  • 肺うっ血
  • Kerley's B line

が見られる。

左心不全は、さらに肺血流の停滞を経由し、右心系へも負荷を与えるため、左心不全を放置したとき、右心不全を合併するリスクが高くなる。特に心不全における呼吸困難は、横になっているよりも座っているときの方が楽である、という特徴を持つ(これを起座呼吸(きざこきゅう、orthopnea)という)。

右心不全
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右心不全(うしんふぜん、right heart failure)は、右心系の機能不全にともなう一連の病態のことであり、静脈系のうっ血が主体となる。この場合、液体が過剰に貯留するのは体全体、特に下肢であり、心不全徴候としての下腿浮腫は有名である。その他、腹水肝腫大静脈怒張など、循環の不良を反映した症状をきたす。

右心不全の多くは、左心不全に続発して生じるかたちとなる。左心不全で肺うっ血が進行し、肺高血圧をきたすまでに至ると、右室に圧負荷がかかり、右心不全を起こす。

右心不全のみを起こすのは、肺性心肺梗塞など、ごく限られた疾患のみである。

急性・慢性心不全

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急性・慢性心不全の区別は、主として、治療内容の決定に使用される。

急性心不全
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急性心不全においては、心機能の低下が代償可能な範囲を上回り、急激な低下を示すことから、血行動態の異常は高度となる。なお、左心不全が多い。

症状としては、呼吸困難ショック症状といった急性症状が出現する。

治療方針としては、血行動態の正常化を図る(心臓負荷を軽減し、心拍出量を増加させる)ことが優先され、迅速な処置が求められる。

慢性心不全
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長期にわたって進行性に悪化するため、代償された状態が長期間持続したのちに破綻する。これによって、収縮能および拡張能は低下し、また、代償機構の破綻によって、増大した体液が貯留することとなる。

この結果、倦怠感と呼吸困難の持続が出現し、運動耐容能が低下する。

治療は、QOLの向上と生命予後の改善を目的として、自覚症状の軽減を主眼とするものとなる。

診断

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前述のような臨床症状から疑われ、心エコー検査によって診断される。エコーによって、心不全の原因疾患の検索がなされ、心臓の動きは十分か、拍出量がどの程度かなどを定量的に把握することができる。胸部X線写真心電図脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)などの血液生化学検査が参考になることもあるが、通常はエコーが最も多くの情報をもたらす。観血的には肺動脈カテーテルを挿入し心拍出量や肺動脈楔入圧(PCWP)、中心静脈圧(CVP)の測定を行う。

NYHA分類

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NYHA分類(ニハ分類、またはナイハ分類と発音される)は、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association: NYHA)が定めた心不全の症状の程度の分類であり、以下のように心不全の重症度を4種類に分類するものであるが、簡便でありよく使用される。

NYHA I度
心疾患があるが症状はなく、通常の日常生活は制限されないもの。
NYHA II度
心疾患患者で日常生活が軽度から中等度に制限されるもの。安静時には無症状だが、普通の行動で疲労・動悸・呼吸困難・狭心痛を生じる。
NYHA III度
心疾患患者で日常生活が高度に制限されるもの。安静時は無症状だが、平地の歩行や日常生活以下の労作によっても症状が生じる。
NYHA IV度
心疾患患者で非常に軽度の活動でも何らかの症状を生ずる。安静時においても心不全・狭心症症状を生ずることもある。

治療

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治療においては、フォレスター分類(Forrester分類)が参考になる。これは、心臓の拍出量を表す心係数(2.2 L/min/m2を境界とする)と、静脈のうっ滞の程度を表す肺動脈楔入圧(18 mmHgを境界とする)とから、心不全の状態を4つに分類し、それぞれに適切な治療法を提案するものである。

原則として、静脈うっ滞を改善するには利尿薬が、心臓の拍出量改善のためには強心薬が使われる。その他血管拡張薬を併用することもある。遺伝子組み換えヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)も用いられる。ただし、心不全は様々な原因によって起こるので、原疾患によって治療法も大きく異なる。

心不全の予後を改善する目的として、交感神経β受容体遮断薬アンギオテンシン変換酵素、また利尿薬の一つであるスピロノラクトンによる治療が推奨されている。[2]

予後

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原疾患によって異なる。一般的には、心不全に対して適切な治療が為されていれば、長期生存も可能である。


不整脈

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虚血性心疾患

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  1. 狭心症
  2. 心筋梗塞

心臓弁膜病

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  1. リウマチ熱
  2. 僧帽弁狭窄症
  3. 大動脈弁狭窄症
  4. 僧帽弁閉鎖不全症

大動脈弁閉鎖不全症

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  1. 僧帽弁逸脱症候群
  2. 感染性心内膜炎
  3. 三尖弁狭窄症
  4. 三尖弁閉鎖不全症
  5. 連合弁膜症

先天性心疾患

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  1. 心房中隔欠損症
  2. 心室中隔欠損症
  3. 動脈管開存症
  4. 肺動脈弁狭窄症
  5. Fallot四兆候
  6. 大動脈縮窄症
  7. 心内膜床欠損症
  8. 三尖弁閉鎖症

その他の心疾患

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  1. 心膜の疾患
  2. 心筋疾患
  3. 粘液腫

動静脈の疾患

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  1. 高血圧
  2. 低血圧
  3. 大動脈疾患
  4. 静脈疾患

脚注

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  1. ^ 骨格筋においてもL型Ca電流は見られるが、時間経過が遅く、興奮収縮連関に直接的な関与はしない。
  2. ^ 慢性心不全治療ガイドライン

参考文献

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