統計学基礎/序文

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

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統計学は、実験によって得られるデータを処理し、実験結果と考えられる要因との相関を明らかにしたり、理論分野や次の実験計画への橋渡しをするための学問です。古典的な物理学のように僅かなパラメータによって結果が得られる場合よりも、経済学や生物学のように非常に多くの要因に左右され、厳密な数式で表現することが不可能であり、一意的な結果を予測できない現象を扱う分野で特に強力な道具になります。

統計学は数学の一分野である確率論と混同されることがありますが、現代の確率論は公理系を土台とした純粋数学の一分野として構築され、「確率」という言葉の実際的な意味は特に考える必要はありません。一般の方々が思い描く「確率」のイメージは、統計学のことを指すことが多いです。例えば、ある賭事の結果の確率を知りたい場合、現代の確率論のテキストを読もうとすると、数学の素養がない人にとっては非常に難解なものになり、危険を伴うことがあります。

確率論と統計学は相補的な部分も少なくありませんが、統計学の問題意識は実際の問題解決方法の近くにあり、実際的な手法を提供します。確率論は偶然の積み重ねが引き起こす結果を理論的に説明します。乱暴な言い方かもしれませんが、確率論は原因からの出発であるのに対し、統計学は結果からの出発とも言えます。そのため、統計学ではよく現れる典型的な実験結果である確率分布の形を、初期の頃にいくつか示すことがあります。真面目な学生は、その意味のわからない確率分布の羅列に戸惑い、統計学嫌いになることもあります。しかしながら、それらの重要性を述べることが統計学の教科書の役割の一つでもあるため、理解を急がず、そういう関数や積分がよく使われるんだな程度に留め、勉強を進めていただきたいと思います。

統計学は、集められたデータから有用な情報を抽出し、それに基づいて未知の事象を予測するための手法を提供します。統計学は、科学的な研究においても社会的な問題においても、有用な分析手法として広く利用されています。統計学はまた、確率論を基礎としているため、理論的な側面も持っています。統計学は、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。