自然環境保全法第14条

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法学環境法自然環境保全法コンメンタール自然環境保全法

条文[編集]

(指定)

第14条

  1. 環境大臣は、その区域における自然環境が人の活動によつて影響を受けることなく原生の状態を維持しており、かつ、政令で定める面積以上の面積を有する土地の区域であつて、国又は地方公共団体が所有するもの(森林法 (昭和二十六年法律第二百四十九号)第二十五条第一項 又は第二十五条の二第一項 若しくは第二項 の規定により指定された保安林(同条第一項 後段又は第二項 後段において準用する同法第二十五条第二項 の規定により指定された保安林を除く。)の区域を除く。)のうち、当該自然環境を保全することが特に必要なものを原生自然環境保全地域として指定することができる。
  2. 環境大臣は、原生自然環境保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係都道府県知事及び中央環境審議会の意見をきかなければならない。
  3. 環境大臣は、原生自然環境保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該区域内の土地を、国が所有する場合にあつては当該土地を所管する行政機関の長の、地方公共団体が所有する場合にあつては当該地方公共団体の同意を得なければならない。
  4. 環境大臣は、原生自然環境保全地域を指定する場合には、その旨及びその区域を官報で公示しなければならない。
  5. 原生自然環境保全地域の指定は、前項の規定による公示によつてその効力を生ずる。
  6. 第二項、第四項及び前項の規定は原生自然環境保全地域の指定の解除及びその区域の変更について、第三項の規定は原生自然環境保全地域の区域の拡張について、それぞれ準用する。

解説[編集]

本条から第3章「原生自然環境保全地域」に入る。

第1項は、指定要件について定めている。自然環境についての「原生の状態」に関連して、本法制定直後に、環境庁(当時)側から「(原生の自然状態とは)気候、土壌等の環境条件下において人為的な影響を受けることなく平衡状態に達している動植物を含めた自然の総体のありさまということができる」とされている[1]。原生自然環境保全地域においては、第2節「保全」(第17条以下)の規定のとおり、行為が厳しく制限されるものである。その指定において、本条では制約が幾つか設けられている。

本項においては、国又は地方公共団体が所有する土地に限定し、森林法に基づく保安林を原則として対象から除外している。国又は地方公共団体が所有する土地に限定することについては、土地利用の制限における私権との調整[2]が困難であるからである。保安林においては、伐採、開墾等の行為が制約されるが、維持管理等のために人為的に手を加える必要があることもあり、原生の状態の「保全」とは一致しない面がある制度である[3]。本項でいう「政令」は次のもので、面積は原則として1000ヘクタール以上となる。

  • 自然環境保全法施行令

(原生自然環境保全地域の最低面積)

第1条

自然環境保全法 (以下「法」という。)第十四条第一項 の政令で定める面積は、千ヘクタールとする。ただし、その周囲が海面に接している区域については、三百ヘクタールとする。

第2項は、環境大臣が第1項の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係都道府県知事及び中央環境審議会の意見をきかなければならない、という規定である。第6項により、区域の拡張においても同様とされている。

第3項は、環境大臣が第1項の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該区域内の土地を、国が所有する場合にあつては当該土地を所管する行政機関の長の、地方公共団体が所有する場合にあつては当該地方公共団体の同意を得なければならない、という規定である。

第4項から第6項にかけては、指定、指定の解除、区域の変更における官報公示とその公示による指定効力発生などの規定である。


脚注[編集]

  1. ^ 環境庁自然保護局『自然環境保全法の解説』中央法規出版、1974年 55-57頁
  2. ^ 財産権との調整については第3条も関係する。
  3. ^ 大塚直『環境法』有斐閣、2010年、ISBN 9784641135611、581頁他多数あり

参照条文[編集]


前条:
自然環境保全法第12条
(自然環境保全基本方針)
自然環境保全法
第3章 原生自然環境保全地域
第1節 指定等
次条:
自然環境保全法第15条
(原生自然環境保全地域に関する保全計画の決定)