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軍事学概論/軍事史

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

軍事力は歴史とともにその内容を時代とともに大きく変化させ、従って戦争もその様相を変えてきた。

先史

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先史における戦争の実体については詳細は分かっていない。しかし猿人、原人、旧人、新人と進化していく過程で打製石器が作られ、言語によって人同士が連携しながら狩猟生活を行っていただろうと考えられている。

古代

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氷河期が終わってからの古代においては生活の形態が狩猟から農耕や牧畜などに移り変わるようになり、人間社会の規模はその生産性の増大から飛躍した。特に世界史的にはエジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、中国文明の古代四大文明が生まれ、またアメリカ大陸にも文明が形成された。人間社会が複雑化・多様化・大規模化するにつれて人間社会間での争いも激しくなり、それぞれの地域において征服や戦争が行われた。その結果、部族、種族が都市国家で発展し、ペルシャ帝国やローマ帝国のように拡大しながらも次第に分裂していくという興亡が繰り返され、そのたびに軍事力が大きな役割を果たした。既にこの頃から古代ギリシアではより組織的に戦争を行うため、ファランクスという密集隊形を開発し、また武器も単純な刀剣類ばかりでなく、弓矢や投石器、戦車や軍用のガレー船などが実際に使用され、職業軍人や傭兵が生まれていた。

中世

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中世では欧州世界においては西ローマ帝国が崩壊した時代であり、封建的な時代であった。西ローマ帝国の滅亡後にフランク王国が構築され、軍事力で各部族の抗争を抑えた。また東欧では東ローマ帝国は拡大するイスラーム勢力と幾度も戦うことになり、また十字軍遠征でキリスト教世界とイスラム世界の衝突が繰り返され、軍事力が運用されることとなった。この頃では騎兵の重要性が認められるようになっており、モンゴルでは大規模な騎兵部隊を運用して世界的な帝国を築いた。また軍事技術においても、いわゆる東洋の四大発明である製紙技術、活版印刷技術、羅針盤、火薬によって大きく転換する。特に火薬類の研究が進み、簡単な火器や爆弾が登場することになり、元帝国は対日遠征でこれらを用いて日本の武士団に衝撃を与えた。また火縄銃が開発されると世界中の軍隊で採用が進み、それまでの弓矢が担ってきた火力攻撃の威力を大いに増大させるきっかけとなった。

近世

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近世は大航海時代を迎えて植民地貿易や内陸貿易を通じて欧州諸国に富が集積され、貨幣経済が大きく発展した時代であった。これに伴って軍事力の内容も大いに改良が進み、軍事費が増大し続けることとなり、戦争の規模も拡大しし、当時のカトリックとプロテスタントによる宗教戦争などの大規模な戦争が生起した。三十年戦争では当時のドイツ人口を半減させ、裕福な都市を没落させるなど戦争による殺戮・破壊でドイツ統一を妨げる結果となった。スウェーデンでは軍事力の改革で前進し、それまで補助的にしか用いられていなかった火縄銃や大砲などの火器を組織的に運用するように行い、またそのために軍隊の規律や忠誠を強化した。そのような運用の改良によってテルシオなどの戦闘教義が開発されることになった。技術面では産業革命の影響から小銃や野戦砲を大量に生産し、兵站組織を作ってより大規模な部隊を効果的に動員する体制が整備された。

近代

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近代では市民革命と帝国主義の戦争が起こることとなる。対外的には大航海時代で拡大しきった西欧列強の勢力は互いに武力衝突を繰り返すようになり、一方で対内的にはそれまで続いてきた絶対王政と市民との戦いが行われるになった。そしてフランス革命で台頭したナポレオンはその画期的な軍事力の運用手法で大陸において軍事的勝利を収め、参謀機能の強化や徴兵制などによる国家総力戦体制の推進などを進めた。また統一が遅れていたドイツが富国強兵政策と海外進出政策を後発的に推し進め、その結果として周辺の欧州諸国と緊張を生み出し、第一次世界大戦が勃発した。第一次世界大戦においてはこれまでにない大規模な長期持久戦が行われて膨大な犠牲者が出た。さらに技術面で機関銃、戦車、航空機、潜水艦などの兵器が開発されて近代戦の様相を呈してきた。これによって戦間期に国際連盟が発足して戦争防止に努めたが、その効果は十分ではなく、敗戦国として疲弊したドイツ、また東アジアにおいて勢力を拡大していた日本にに不信と反感を持たせる結果となり、第二次世界大戦が勃発することを防ぐことは出来なかった。第二次世界大戦は有史以来最大規模の戦争であり、ヨーロッパではもちろんのこと中国大陸や太平洋地域においても日独伊などの枢軸国と英米ソなどの連合国との戦争が行われ、枢軸国が敗れた。また新兵器として、航空母艦がそれまでの海上作戦を大きく変化させ、さらに核兵器が開発され日本に対して使用され、その絶大な威力が示されることになった。

現代

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現代では大戦の勝利者であった米ソの対立が浮き彫りになる。ドイツと朝鮮半島はソ連を中心とする共産主義圏と米国を中心とする自由主義圏に分断され、朝鮮半島では朝鮮戦争が勃発して米ソの政治的な対立が深刻なものとなる。米ソの衝突が直接的なものではなかったためにこの時代の米ソの政治的な対立を冷戦と呼称し、核兵器とミサイルが開発配備され、軍事的な脅威が高まっていた。国際連盟の反省に基づいて国際連合が設立されたが、制度的な理由から米ソ冷戦で機能不全に陥っていた。一方で中東地域ではイスラエルが建国されたことによるアラブ諸国とイスラエルの緊張が高まり、四度にわたる中東戦争が勃発することになる。また米ソ冷戦体制の中でベトナム戦争が勃発し、米軍が軍事介入するも大規模なゲリラ戦と長期戦などによって米軍の軍事力は劣勢な北ベトナムの軍事力に屈して、ベトナムから共産圏を排するという政治目的を放棄せざるを得なくなった。またソ連崩壊後には、イラクがクウェートに侵略したために国際社会が国連決議によって湾岸戦争を起こしてイラク軍を退かせ、このときの軍事力の運用が大規模であったにも拘らず極めて迅速かつ効果的であった。武器兵器においては核兵器やミサイルの精度の向上だけでなく、在来の航空機もジェット化が進み、また情報技術の応用による軍隊の情報システムの改良が進んだ。