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高等学校数学B ベクトル

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

高等学校数学B > ベクトル


本項は高等学校数学Bのベクトルの解説です。

目次

[編集] ベクトル

[編集] 平面上のベクトル

平面上で矢印を考えて、始点を(a,b)、終点を(c,d)とおく。このとき矢印をw:ベクトルとよぶ。ベクトルは、大きさと方向を持った量として特徴づけられる。一方通常の数は、ただ大きさだけを持っている。このような数をベクトルに対して、w:スカラーと呼ぶことがある。

点A(1,2)から、点B(5.7)へ向けて矢印を描く。このとき、AからBに向けたベクトルを


\vec{AB}

(ベクトルABと読む。) 、BからAに向けたベクトルを
\vec{BA}
と呼んで区別する。特にこのようなベクトルを簡単に
\vec a 
と書くことがある。

先ほどのように、始点をA(a,b)、終点をB(c,d)とおいたベクトルをとる。このとき、ベクトル
\vec{AB}
の要素を


\vec{AB}=
(c - a , d - b)

で定める。

一般的なベクトル.png

また、ある2つのベクトル
\vec a

\vec b
を取ったとき、
\vec a

\vec b
の各要素が等しい場合、そのベクトルはお互いに等しいという。

ベクトル(1,0)と、ベクトル(1,0)は互いに等しい。

一方、(2,8)と、(2,9)はベクトルのy成分が異なるので互いに等しくない。

[編集] ベクトルの長さ

あるベクトル
\vec a = (a _1,a _2)
に対してこのベクトルの長さは、


|\vec a| = \sqrt {a _1^2 +a _2^2}

で与えられる。

  • 導出

上のベクトル
\vec a
は、x方向の長さa1と、y方向の長さa2を持っている。このとき、x方向とy方向は互いに直交しているので、ベクトルの長さはw:三平方の定理によって求めることが出来る。a1a2を直角を挟んで隣り合う2辺とすると、その直角三角形の斜辺の長さは


\sqrt {a _1^2 +a _2^2}

と等しい。しかしこの長さはちょうど元のベクトルの長さに対応している。

[編集] ベクトルの加法


\vec  a
, 
 \vec b
の2つのベクトルを定めたとき、この2つのベクトルの間の足し算を定める。

要素に展開したとき、それぞれのベクトルを
\vec
a = (a _1, a _2) 

\vec
b = (b _1, b _2)
とするなら、2つのベクトル 
\vec  a
, 
 \vec b
の間の足し算は


\vec a +\vec b = (a _1 + b _1 , a _2 + b _2)

で定められる。つまり、ベクトルの要素ごとの足し算をベクトルの足し算と置くのである。同様にして、引き算は


\vec a -\vec b = (a _1 - b _1 , a _2 - b _2)
で定められる。
  • 問題例

3つの点 A(x1,y1)B(x2,y2)C(x3,y3) があったとする。このとき、ベクトルの定義から 
\vec {AB} =( x _2 - x _1 , 
 y _2 - y _1  )
,
\vec {BC} =( x _3 - x _2 , 
 y _3 - y _2  )
,
\vec {AC} =( x _3 - x _1 , 
 y _3 - y _1  )
が成り立つ。このとき、ベクトルの足し算の性質を考えると、


\vec {AB} + \vec{BC}
= 
( x _3 - x _1 , 
 y _3 - y _1  )
=\vec {AC}

が得られる。このことは図形的には、ある点Aからある点Bを経由して ある点Cに到ったベクトルと、AからCに直接到ったベクトルが等しいことに対応する。

ベクトルの加法.png
  • 問題例2
    • 問題

(1,9) + (3,7) , (2,5) − (4,6) を計算し、それらをxy平面上で図示せよ。

    • 解答

値はそれぞれ(4,16),( − 2, − 1)に対応する。図形的には、足し算によって得られたベクトルは、足されたベクトルのそれぞれを、隣り合う辺とした平行四辺形の対角線に対応する。

ベクトルの加法と平行四辺形.png

また、引き算によって得られたベクトルは、引くベクトルが示す点から、引かれるベクトルに引いた矢印に対応している。

ベクトルの減法.png
[編集] 位置ベクトル

ある点を原点としてとり、そこからある点Aへひいた矢印のベクトルを、点Aの位置ベクトルと呼ぶ。例えば、A(1,2)には、 位置ベクトル 
\vec a  = (1,2)
が対応する。

位置ベクトルは、差によって作られるベクトルと違って、唯一つの点に対して作られる。これは、ある点を原点ととっており、位置ベクトルは元の点と原点との差によって作られているものと解釈することが出来る。原点をOと置くとこのことは、点Aに対する位置ベクトルは、


\vec {OA}

であると解釈することが出来る。

しかし、通常原点は座標としては(0,0)と取るので、A(x1,y1)とすると、


\vec{OA}
= (x _1,y _1)-(0,0)
= (x _1,y _1)

となり、結局元の点を原点に取ったとき、ある点に対応する位置ベクトルはその点の座標とちょうど等しくなる。

元の点として原点O以外の点を選ぶことも出来る。その点をO0 = (x0,y0) とすると、ある点A(x1,y1)の位置ベクトルは、


\vec{O _0A} =
(x _1- x _0,y _1-y _0)

で与えられる。このとき、原点Oに対する位置ベクトルは、 O0 = Oまたは、x0 = y0 = 0に定めた特別な場合と考えることが出来る。

  • 問題例
    • 問題

M(8,5)に対する点 、A(1,2)B(5,1) の位置ベクトルと、点

O(0,0)

に対する位置ベクトルを計算せよ。また、ベクトル


\vec{AB}

がどちらのベクトルを用いても変わらないことを確かめよ。

    • 解答

Oに対する位置ベクトルは、

A

について、

A(1,2)

B

について、

B(5,1)

となる。 このとき、


\vec{AB}

は、

= (4, − 1)

となる。

一方、

M(8,5)

に対する点Aの位置ベクトルは、

(1 − 8,2 − 5)
= ( − 7, − 3)

となる。 また、点Bの位置ベクトルは、

(5 − 8,1 − 5)
= ( − 3, − 4)

となる。

これらを用いて ベクトル


\vec{AB}

を計算すると、

= ( − 3, − 4) − ( − 7, − 3)
= (4, − 1)

となり、確かに上で得た結果と一致する。


[編集] ベクトル方程式
  • 問題例
    • 問題

三角形OABに対して ベクトル


\vec {OA}


\vec a

, ベクトル


\vec {OB}


\vec b

とする。 このとき、線分OAを1:3に分ける点と、 線分OBを5:2に分ける点をそれぞれ、A', B'とする。 このとき、 ベクトル


\vec {OA'}

\vec {OB'}

を ベクトル


\vec a

と、 ベクトル


\vec b

を用いて表示せよ。 また、 線分AB'と、BA'の交点(点Mとする。) の点Oに対する位置ベクトルを、 ベクトル


\vec a

と、 ベクトル


\vec b

を用いて表示せよ。

    • 解答

ベクトル


\vec a

と、 ベクトル


\vec b

は互いに1次独立な2本のベクトルなので、 これらを用いてあらゆる図形上の点が表されるはずである。

図形上のそれぞれの点は、点Oからの位置ベクトルで表される。 例えば、ベクトル


\vec {OA'}

は、点Oから見て


\vec a

と平行な方向のベクトルであり、その長さが、


\frac 1 4

であるので、


\vec {OA'}= \frac 1 4 \vec a

で表される。 同様に、ベクトル


\vec {OB'}

は、点Oから見て


\vec b

と平行な方向のベクトルであり、その長さが、


\frac 2 7

であるので、


\vec {OB'}= \frac 2 7 \vec b

で表される。

次に、点A'を通過し、線分A'Bに平行な直線を ベクトル


\vec a


\vec b

を用いて記述する方法を考える。

ここでは、 この直線上の点は、 ある定数sを用いて、


\vec{OA'}
+ s(\vec {A'B})

で表せることに注目する。 例えば、

s = 0

のとき、この式が表す点は


\vec{OA'}

に等しく、

s = 1

のとき、


\vec {OB}

に等しく、いずれも直線 A'B上の点である。

これらに先ほど求めた


\vec {OA'}

と、


\vec{OB}

の値を用いると、


\vec{OA'}
+ s(\vec {A'B})

= \frac 1 4 \vec a + s(\vec b - \frac 1 4 \vec a)

= \frac 1 4 (1 -s ) \vec a + s \vec b

が得られる。

同様に、線分AB'上の点はある定数 tを用いて、


\vec {OB'} + t\vec{B' A}

で表される。 ここに先ほど得た値を代入すると、


\vec {OB'} + t\vec{B' A}

= \frac 2 7 \vec b + t(\vec a - \frac 2  7 \vec b)

=(1-t) \frac 2 7 \vec b + t \vec a

となる。

このようにそれぞれの直線上の点がs,tを 用いて表された。 次に、これらの式が同じ点を示すように s,tを定める。 そのためには、


\vec{OM}= \frac 1 4 (1 -s ) \vec a + s \vec b

,


\vec{OM}=(1-t) \frac 2 7 \vec b + t \vec a

を等しいとおいて、 s,tに関する連立方程式を作り、それを解けばよい。 上の式で


\vec a

の係数を等しいとおくと、


\frac 1 4 (1-s) = t

が得られ、


\vec b

の係数を等しいとおくと、


\frac 2 7 (1-t) = s

が得られる。 この式を連立して解くと、


s = \frac 3 {13}

,


t = \frac  5 {26}

が得られる。 この式を


\vec{OM}= \frac 1 4 (1 -s ) \vec a + s \vec b

,


\vec{OM} =(1-t) \frac 2 7 \vec b + t \vec a

のどちらかに代入すると、求める位置ベクトルが得られるのである。 実際代入すると、求めるベクトルは、


\vec{OM}= \frac 1 4 (1 -\frac 3 {13} ) \vec a + \frac 3 {13} \vec b

= \frac 5 {26}  \vec a + \frac 3 {13} \vec b

となる。

答え

\vec{OA'} = \frac 1 4 \vec a

\vec {OB'}= \frac 2 7 \vec b

\vec {OM} = \frac 5 {26}  \vec a + \frac 3 {13} \vec b
[編集] 媒介変数を使った直線のベクトル方程式

点Aと、\vec {0}でないベクトル、\vec {d}がある。点Aを通って、\vec {d}に平行な直線をgとする。g上の点をPとすると、\vec {AP} = \vec {0}または\vec {AP}//\vec {d}だから

\vec {AP} = t \vec {d}…(1)

となる実数tがある。

点A,Pの位置ベクトルをそれぞれ、\vec{a}\ ,\ \vec{p}とすると、(1)から

\vec {p} - \vec {a} = t \vec {d}

つまり、

\vec {p} = \vec {a} + t \vec {d}

これを、直線gのベクトル方程式といい、\vec{d}をgの方向ベクトルという。また、tを媒介変数という。


点Aの座標を(x_1\ ,\ y_1)\vec{d} = (a\ ,\ b)、点Pの座標を(x\ , \ y)とおくと、ベクトル方程式\vec {p} = \vec {a} + t \vec {d}

(x\ , \ y) = (x_1\ , \ y_1)  + t (a\ , \ b)

となる。したがって

x = x_1 +at\ ,\ y = y_1 +bt ……(2)

(2)を直線g媒介変数表示という。


  • 問題例
    • 問題

点A(1\ ,\ 2)を通り、\vec{d} = (3\ ,\ 5)に平行な直線の方程式を、媒介変数tを用いて表せ。

また、tを消去した式で表せ。

    • 解答

この直線のベクトル方程式は

(x\ , \ y) = (1\ , \ 2)  + t (3\ , \ 5) = (1+3t\ , \ 2+5t)

したがって

x = 1+3t\ ,\ y = 2+5t

tを消去すると、次のようになる。

5x − 3y + 1 = 0


2点A,Bを通る直線のベクトル方程式を考える。

2点A,Bの位置ベクトルを、それぞれ\vec{a}\ , \ \vec{b}とする。

直線ABは、点Aを通り、\vec{AB} = \vec{b} - \vec{a}を方向ベクトルとする直線と考えられるから、そのベクトル方程式は

\vec {p} = \vec {a} + t \left(\vec{b} - \vec{a} \right)

となる。これは次のように書ける。

\vec {p} = (1-t) \vec {a} + t \vec{b}


  • 問題例
    • 問題

2点A(2\ ,\ 5),B(-1\ ,\ 3)を通る直線の方程式を、媒介変数tを用いて表せ。


    • 解答

この直線のベクトル方程式は

(x\ , \ y) = (1-t)(2\ , \ 5)  + t (-1\ , \ 3) = (2-3t\ , \ 5-2t)

したがって

x = 2-3t\ ,\ y = 5-2t
[編集] ベクトルの内積

ベクトルに対しては加法の演算を既に定義した。 一方、ベクトルに対する積をなんらかの仕方で定義したい。 ここでは、特に図形的な意味が明白な積を1つ取る。 これ以外にもベクトルの外積と呼ばれる演算も用いられることがあるが、 ここでは指導要領の範囲外なので述べることが出来ない。

まず最初にその積(内積と呼ばれる)の定義を与え、 続けてその性質を見ていく。 ベクトル


\vec a,\vec b

の内積を


\vec a \cdot \vec b = |\vec a||\vec b| \cos \theta

で定義する。 ここで、

θ

は、ベクトルaとbの成す角である。

  • 成す角の図
  • 問題例
    • 問題

ベクトル


\vec a=(1,0)

\vec b =(1,1)

を取ったとき、 これらの間の内積を求めよ。

    • 解答

2つのベクトルは 互いに


45 {}^\circ

の角度を成す。 このことと


|\vec a| = \sqrt{1^2 +0^2}
= 1


|\vec b| = \sqrt{1^2 +1^2}

= \sqrt 2

を考えたとき、 ベクトル


\vec a, \vec b

の内積は、


\vec a \cdot \vec b

= |\vec a | |\vec b| \cos 45 {}^\circ

= 1 \times \sqrt 2 \times  \frac {\sqrt 2} 2
= 1

となる。

(注意:後に要素を用いたもう少し簡単な計算法も学ぶ。)


[編集] 内積の性質

内積の重要な性質として、内積が分配法則を満たすことが挙げられる。 つまり、


\vec a \cdot (\vec b + \vec c)
 = \vec a \cdot \vec b +  \vec a \cdot \vec c

が示される。

  • 導出

まず最初に、内積の図形的意味を導入する。 あるベクトル


\vec a


\vec b

を取り、そのベクトルの後端をそろえ、その点を O、ベクトル


\vec a

の先端を点A、 ベクトル


\vec b

の先端を点Bとおく。

2つのベクトルの成す角を

θ

とすると、 2つのベクトルの内積は、


\vec a \cdot \vec b
= |\vec a||\vec b| \cos \theta

で表わされる。ここで、


 |\vec b| \cos \theta

に注目すると、これは

cos

の性質から、 点Bから辺OAに垂直に下ろした 直線と辺OAの交点をHとしたとき、


|\vec b| \cos \theta = OH

が成り立つ。 同様に、 点Aから辺OBに垂直に下ろした 直線と辺OBの交点をMとしたとき、


 |\vec a| \cos \theta = OM

が成り立つ。

次に、このことを用いて分配法則の導出を行なう。 ベクトル


\vec a, \vec b, \vec c

の後端をそろえてその点を点Oと呼ぶ。 また、それぞれのベクトルの先端をそれぞれ、 点A,B,Cと呼ぶ。 また、Oを後端としてベクトル


\vec b+ \vec c

を書き込み、それの先端を点Dとおく。

ここで、点B,C,Dから直線OAに垂直に下ろした点を それぞれB',C',D'と呼ぶ。 このとき、ベクトルの分配法則は、


\vec a \cdot (\vec b + \vec c)
= \vec a \cdot \vec b +
 \vec a \cdot \vec c

と書けるが、 これは、


|\vec a| OD' = 
|\vec a| OB'
+|\vec a| OC'

つまり、

OD' = OB' + OC'

に対応している。

ここで、 実際に、 OBを斜辺として、OAに平行な辺を持つ直角三角形と、 CDを斜辺として、OAに平行な辺を持つ直角三角形は、 OBとCDが平行で、長さが等しいことから 合同であり、そのOAに平行な辺の長さは等しい。

しかし、これらの辺の長さはそれぞれ、

OB'

C'D'

に対応しており、

OB' = C'D'

つまり、

OB' = OD' − OC'

もしくは

OB' + OC' = OD'

となり求めたかった式が得られた。

よって、ベクトルの内積は分配法則を満たす。


[編集] 要素によるベクトルの内積

まず、ある事実を示す。

あるベクトル


\vec a

は、適当な定数c,dを用いたとき、 互いに他の定数倍でない(実は同じ意味だが互いに平行でない)2つのベクトル


\vec e, \vec f

の和の形で、


\vec a = c \vec e +d \vec f

と書ける。また、このとき、c,dの選び方は1通りに決まる。

  • 導出

それぞれのベクトルの要素を それぞれ、


\vec a = (a _1,a _2)

の様に書くことにする。

このとき、


\vec a = c \vec e +d \vec f

の右辺は

c(e1,e2) + d(f1,f2)

で与えられる。このベクトルが左辺のベクトルと一致するには、

a1 = ce1 + df1
a2 = ce2 + df2

であることが必要になる。この式をc,dに ついて直接の計算でとくと、


c = \frac 1{e _1 f _2 -e _2 f _1} (a _1 f _2 -a _2 f _1)

d = \frac 1{e _1 f _2 -e _2 f _1} (e _1 a _2 -e _2 a _1)

が得られる。 ただし、

e1f2e2f1

が成立するようなときには この式には解が無いが、これは、ある定数aを取ったとき、

(e1,e2) = a(f1,f2)

となるような時であり、これは


\vec e


\vec f

が平行なときにしか起こらない。

結局、


\vec a = c \vec e +d \vec f

は、


\vec e

と、


\vec f

が互いに平行でない限り必ず適当なc,dを選ぶことで成立させることが出来、 そのようなc,dはただ1つしかないことが示された。


上のように、互いに平行でない2本のベクトルをお互いに対して "1次独立"であるという。 また、


 c \vec e +d \vec f

のような形の和を、ベクトル


\vec e,\vec f

の線形結合と呼ぶ。

1次独立なベクトルを持って来ることでそれらの線形結合によって 全てのベクトルを作ることが出来る。 そのため、もっとも簡単な1次独立なベクトルの組をあらかじめ作成しておくと 、便利なことがある。

通常このようなベクトルの組として、


\vec e _1 = (1,0)

\vec e _2 = (0,1)

が用いられる。 これらは互いに平行でないので1次独立であり、あらゆるベクトルを 作ることが出来る。

例えば、ベクトル

(a,b)

は、


(a,b) = a\vec e _1 + b\vec e _2

で得ることが出来る。このときにはそれぞれのベクトルの前の係数が 元のベクトルの要素と一致することがわかる。 また、このようなベクトルに対しては、これらの成す角が


90 {}^\circ

であることから、


\cos 
90 {}^\circ = 0

より、これらの内積は0となる。

上のようにベクトルをある2つのベクトルで書き換える仕方と、 ベクトルの内積の分配法則を合わせて用いると、ベクトルの内積の計算は 非常に簡単になる。

例えば、


\vec a  = (a,b)


\vec e _1 = (1,0), \vec e _2 = (0,1)

という2つのベクトルを用いて



\vec a = a \vec e _1 + b \vec e _2

と書けることを考えると、


\vec a  = (a,b),  \vec c  = (c,d)

について、


\vec a \cdot \vec c

= (a \vec e _1 + b \vec e _2)\cdot (c \vec e _1 + d \vec e _2)

= ac \vec e _1 \cdot \vec e _1
+ ad \vec e _1 \cdot \vec e _2
+ bc \vec e _2 \cdot \vec e _1
+ bd \vec e _2 \cdot \vec e _2
= ac + bd

が得られる。結局要素で表わされたベクトルの内積を求めるには、 お互いの要素を掛け合わせて、それらを足し合わせればよいことが分かる。

  • 問題例
  • 問題

ベクトル

(1,9)

(8,2)

の内積を求めよ。

  • 解答

内積はそれぞれの要素の積を足し合わせればよい。 実際に計算すると、


1 \times 8 + 9 \times 2
= 26

が得られる。

[編集] 内積を使った直線のベクトル方程式

点Aを通って、\vec {0}でないベクトル、\vec {n}に垂直な直線をgとする。g上の点をPとすると、\vec {AP} = \vec {0}または\vec {AP} \perp \vec {n}だから

\vec {AP} \cdot \vec {n} =0…(1)

である。

点A,Pの位置ベクトルをそれぞれ、\vec{a}\ ,\ \vec{p}とすると、\vec {AP} = \vec {p} - \vec {a}だから、(1)は

\vec {n} \cdot (\vec {p} - \vec {a}) = 0…(2)

となる。(2)が点Aを通って、\vec {n}に垂直な直線gのベクトル方程式であり、\vec{n}をこの直線の法線ベクトルという。


点Aの座標を(x_1\ ,\ y_1)\vec{n} = (a\ ,\ b)、点Pの座標を(x\ , \ y)とおくと、\vec {p} - \vec {a} = (x-x_1\ , \ y-y_1)だから、(2)は次のようになる。

a(xx1) + b(yy1) = 0

この方程式は、 ax1by1 = cとおくと、ax + by + c = 0となるから、次のことがいえる。

直線ax + by + c = 0の法線ベクトルは、\vec{n} = (a\ ,\ b)である。


  • 問題例
    • 問題

点A(2\ ,\ 5)を通り、\vec{n} = (4\ ,\ 3)に垂直な直線の方程式を求めよ。

    • 解答
4(x − 2) + 3(y − 5) = 0

つまり

4x + 3y − 23 = 0

[編集] 空間座標とベクトル

ここまでは、ベクトルを定義するものとして2次元の平面を用いて来た。 しかし、ベクトルの考え方自体は必ずしも2次元上でのみ用いられるものではなく、 より一般的な情况によっても用いることが出来るものである。 ここでは、特に一般的な情况の例として 3次元空間における図形の記述法を学び、 また、それらのベクトルを用いた記述法を学ぶ。

より一般的な次元を持った空間の座標系の記述法はこの項の範囲を越えるが、 おそらく数学#一般教科書で扱われる。


[編集] 空間座標

今までは、平面上の図形をベクトルや数式を用いて表現する方法を学んで来た。 ここでいう2次元とは、平面のことであり、一般的には 縦と横という2つの長さを持ち得る図形を2次元図形と呼んでいる。

もちろん容易に分かる通り、2つ以外の長さによって特徴づけられうる 図形も存在する。 例えば、3次元立体の1つである直方体は縦、横、高さの 3つの長さを持っているので、 3次元図形と呼ばれる。

実際には更に一般的に4つ以上の長さを用いて特徴づけられるような 図形を考えることも出来る。これらの図形はそれらがn個の長さに よる場合にn次元図形と呼ばれる。(nは整数。) しかし、一般にこのような図形は

n > 3

の時には図形として書き記すことは出来ない。これは我々が住んでいる 空間が3次元であり、4次元の物体を書くことが出来ないことに よっている。


空間に1つの平面をとり、その上に直交する座標軸O_x\ , \ O_yをとる。次にOを通りこの平面に垂直な直線Ozをひき、その直線上で、Oを原点とする座標を考える。

この3直線O_x\ , \ O_y\ , \ O_zは、どの2つも互いに垂直である。これらを座標軸といい、それぞれx軸、y軸、z軸という。

また、x軸とy軸とで定まる平面をxy平面、y軸とz軸とで定まる平面をyz平面、z軸とx軸とで定まる平面をzx平面といい、これらを座標平面という。


空間内の点Aに対して、Aを通って各座標平面に平行な3つの平面をつくり、それらがx軸、y軸、z軸と交わる点をA_1\ , \ A_2\ , \ A_3とし、A_1\ , \ A_2\ , \ A_3のそれぞれの軸上での座標をa_1\ , \ a_2\ , \ a_3とする。

このとき、3つの数の組

(a_1\ , \ a_2\ , \ a_3)

を点Aの座標といい、a1x座標a2y座標a3z座標という。

このように座標の定められた空間を座標空間と呼び、点Oを座標空間の原点という。

[編集] 球面の方程式

ここでは、特に3次元空間の図形に注目する。 まずはベクトルを用いる前に3次元空間の空間図形を、 数式によって記述する方法を考察する。


2次元空間において、もっとも簡単な図形は 直線であり、その式は一般的に

ax + by = c

で表わされた。 (a,b,cは任意の定数。) ここでx,yは、2次元空間を代表する2つのパラメーターであり、 3次元空間を用いたときには、これらは3つの文字で表わされることが 期待される。

実際このような式で表わされる図形は、3次元空間でも基本的な 図形である。 つまり、

ax + by + cz = d

が、上の式の類似物として得られる。 (a,b,c,dは任意の定数。)

このような図形はどんな図形に対応するだろうか? 実際にはこの図形を特徴づけるのは、後に学ぶ3次元ベクトルを 用いるのがもっとも簡単であるので、これは後にまわすことに する。

しかし、ただ1つこの式から分かることは、 3次元空間の座標を表わすパラメーター

x,y,z

のうちに1つの関係

f(x,y,z) = 0

を与えることで、3次元空間上の図形を指定できるという ことである。 この場合は、

f(x,y,z) = ax + by + czd

を用いていた。

ベクトルを使わなくても図形的解釈が得られる式として、

(xa)2 + (yb)2 + (zc)2 = r2

が挙げられる。 (a,b,c,rは任意の定数。) この式は、2次元でいうところの

(xa)2 + (yb)2 + = r2

の式の類似物である。2次元の場合はこの式は 中心

(a,b)

半径

r

の円に対応していた。 3次元のこの式は、結論をいうと 中心

(a,b,c)

半径

r

の円に対応しているのである。

  • 説明

上の式

(xa)2 + (yb)2 + (zc)2 = r2

を満たすある点

(x,y,z)

を取り、その点と点

(a,b,c)

との距離を考える。

空間座標に置けるx軸、 y軸、 z軸はそれぞれ直交しているので、 2点の距離は3平方の定理を用いて


\sqrt{ (x -a)^2 + (y -b)^2 + (z -c)^2 }

で与えられる。

しかし、上の式からここで選んだ点

(x,y,z)

は、条件

(xa)2 + (yb)2 + (zc)2 = r2

を満たしているので、2点の距離は


\sqrt{ (x -a)^2 + (y -b)^2 + (z -c)^2 }

= \sqrt{r^2}
= r

である。 (r > 0を用いた。)

よって、上の式を満たす点は全て 点

(a,b,c)

からの距離が

r

である点であり、これは 中心

(a,b,c)

半径

r

の円に他ならない。


  • 問題例
    • 問題

中心

(3,7, − 2)

半径

1

の球の式を求めよ。

    • 解答
(xa)2 + (yb)2 + (zc)2 = r2

に代入することで、

(x − 3)2 + (y − 7)2 + (z + 2)2 = 1

が求められる。


    • 問題
x2 + 2x + y2 − 8y + z2 + 6z − 9 = 0

がどのような 球に対応するか計算せよ。


    • 解答

このような数式が球に対応するとき、

x2,y2,z2

の係数は必ず等しくなくてはならない。そうでない場合は この図形は楕円体に対応するのだが、これは 指導要領の範囲外である。 ここでは上の式はその条件を満たしている。

ここでは、この式を

(xa)2 + (yb)2 + (zc)2 = r2

の形に持って行くことが重要である。

x,y,z

のそれぞれについてこの式を平方完成すると、

x2 + 2x + y2 − 8y + z2 + 6z − 9 = 0
(x + 1)2 − 1 + (y − 4)2 − 16 + (z + 3)2 − 9 − 9 = 0
(x + 1)2 + (y − 4)2 + (z + 3)2 = 35

が得られる。よって、上の式

x2 + 2x + y2 − 8y + z2 + 6z − 9 = 0

は、 中心

( − 1,4, − 3)

、半径


\sqrt{35}

の球に対応する。

[編集] 空間におけるベクトル

次に3次元空間上におけるベクトルを考察する。 2次元空間上では ベクトルは2つの量の組み合わせで表わされた。 これは1つのベクトルはx軸方向に対応する 量とy軸方向に対応する量の2つを持っている必要が あったからである。 このことから、3次元空間のベクトルは 3つの量の組み合わせで書けることが予想される。 特にx軸方向の長さa, y軸方向の長さb, z軸方向の長さc (a,b,cは任意の定数。) で表わされるベクトルを、

(a,b,c)

と書いて表わすことにする。

2次元平面では あるベクトル


\vec a =(a,b)

は、 (a,bは任意の定数。)


\vec e  _1 = (1,0)

\vec e  _2 = (0,1)

の2本のベクトルを用いて、


\vec a = a\vec e _1 + b\vec e _2

で表わされた。 3次元空間でもこのような記述法があり、上で用いたベクトル


\vec a = (a,b,c)

は、


\vec e  _1 = (1,0,0)

\vec e  _2 = (0,1,0)

\vec e  _3 = (0,0,1)

を用いて


\vec a = a \vec e _1 + b \vec e _2 + c\vec e _3

と書かれたベクトルに対応している。

3次元ベクトルに対しても2次元ベクトルで定めた定義や 性質がほぼそのまま成立する。

3次元ベクトルの加法は、 それぞれのベクトル要素を独立に足し合わせることによって定義する。

(x1,y1,z1) + (x2,y2,z2)
= (x1 + x2,y1 + y2,z1 + z2)

また、それぞれのベクトルの要素が全て等しいベクトルを "ベクトルとして等しい"と表現する。

  • 問題例
    • 問題

ベクトルの和

(1,2,3) + (4,5,6)

を計算せよ。

    • 解答
(1,2,3) + (4,5,6)
= (1 + 4,2 + 5,3 + 6)
= (5,7,9)

が得られる。


[編集] 空間ベクトルの内積

ベクトル\vec a,\vec b間のベクトルの内積も平面の場合と同様に


\vec a \cdot\vec b
= |\vec a||\vec b| \cos \theta

(θは、ベクトル\vec a,\vec bのなす角。)

分配法則や1次独立の性質もそのまま成り立つ。 ただし、 3次元空間の全てのベクトルを張るには、 3つの線形独立なベクトルを持って来る必要がある。


  • 注意

このことの証明はおそらく線型代数学 などに詳しい。

  • 問題例
    • 問題

2つのベクトルの内積


(1,2,3) \cdot 
(4,5,6)

を計算せよ。

    • 解答

2次元の場合と同じように ここでもそれぞれの要素は互いに直交する単位ベクトル


\vec e _1\ ,\ \vec e _2\ ,\ \vec e _3

によって張られている。そのため以前と同じく要素ごとの計算が 可能であり、


(1,2,3) \cdot 
(4,5,6)

=1\times 4 + 2 \times 5 + 3 \times 6
= 32

となる。

もうすこし細かく計算を行なうと、


(1,2,3) \cdot 
(4,5,6)

=( \vec e _1 
+2\vec e _2
+3\vec e _3)
\cdot
(4\vec e _1
+5\vec e _2
+6\vec e _3)

が得られる。それぞれの ベクトルを

(a + b + c)(x + y + z) = (ax + ay + az + bx + by + bz + cx + cy + cz)

に従って展開し、


\vec e _ i \cdot \vec e _j

(i,jは1,2,3のどれか。) を代入することで上の式が計算できるはずである。

しかし、 ijが等しくないときには


\vec e _ i \cdot \vec e _j
= 0

が成り立つことから、 上の展開した後の9個の項のうちで、 6つは

0

に等しい。

また、 ijが等しいときには


\vec e _ i \cdot \vec e _j
= 1

が成り立つことから、 上の式


=( \vec e _1 
+2\vec e _2
+3\vec e _3)
\cdot
(4\vec e _1
+5\vec e _2
+6\vec e _3)

の展開は


= 4 + 2 \times 5 + 3 \times 6
= 32

となって確かに要素ごとの計算と一致する。


    • 問題

2次元空間のベクトルは2本の1次独立なベクトルがあれば 必ずそれらの線形結合によって 計算できるはずである。

ここで、


\vec a _1= (1,2)


\vec a _2= (-5,3)

を用いて、


\vec b = (10,7)

を、


\vec b = c \vec a _1
+d \vec a _2

の形に書いてみよ。 (c,dは、何らかの定数。)


    • 解答

2次元のベクトルの係数を求める問題である。 c,dの文字をそのまま用いると、 c,dの満たす条件は

c(1,2) + d( − 5,3) = (10,7)

つまり

(c − 5d,2c + 3d) = (10,7)

となる。これは c,dに関する連立1次方程式で書き換えられる。

\begin{cases}
     c -5d = 10\\
     2c + 3d = 7
\end{cases}

これを解くと、

c = 5
d = − 1

が得られる。

よって、 上の式は

5(1,2) − ( − 5,3) = (10,7)

と書け、確かに2本の線形独立なベクトルによって他のベクトルが 書き表されることが分かった。


  • 注意

このような計算は3次元ベクトルに対しても可能であるが、 計算手法として3元1次連立方程式を扱う必要があり、 指導要領の範囲外である。 実際の計算手法は、 線型代数学,物理数学I 線形代数を参照。


この表式を用いて、以前見た

ax + by + cz = d

の図形的解釈を述べる。

この図形上の任意の点を

(x,y,z)

で表わす。 この点は原点Oに対する位置ベクトルを用いると

(x,y,z)

で与えられる。 便宜のために このベクトルを


\vec x

と書くことにする。

一方、ベクトル


\vec a = (a,b,c)

を用いると、上の式はベクトルの内積を用いて


\vec a \cdot \vec x = d

で与えられる。 つまり、この式で表わされる図形はあるベクトル 
\vec a
との内積を一定に保つ図形である。 この図形は、実際には 
\vec a
に直交する平面で与えられる。 なぜならこのような平面上の点は、 必ず平面上のある一点の位置ベクトルに加えて、 ベクトル 
\vec a
に直交するベクトルを加えたもので書くことが出来る。 しかし、 ベクトル 
\vec a
に直交するベクトルと ベクトル 
\vec a
の内積は必ず0であるので、 このような点の集合は ベクトル 
\vec a
と一定の内積を持つのである。

よって元の式

ax + by + cz = d

は、 ベクトル


\vec a =(a,b,c)

に直交する平面に対応することが分かった。 次にdが、図形が表わす平面と、原点との距離に関係があることを示す。

特に、ベクトル


\vec a

に比例する位置ベクトルを持つ点


\vec x

を考える。このときこの点と原点との距離は、 平面

ax + by + cz = d

と原点との距離に対応する。 なぜなら、位置ベクトル


\vec x

は、原点から平面

ax + by + cz = d

に垂直に下ろした線に対応するからである。

このことから仮に


\vec a

方向の単位ベクトルを

 
\vec n

と書き、平面と原点との距離を

m

と書くと、


\vec x = m \vec n

が得られる。 この式を


\vec a \cdot \vec x = d

に代入すると、


\vec a \cdot m\vec n = d

 m|\vec a| = d

が得られる。よって、

d

は、 平面と原点の距離

m

とベクトル


\vec a

の長さをかけたものである。


  • 問題例


    • 問題

特にベクトル


\vec a = (0,0,1)

を取ると、どのような式が得られて、その式は どのような図形に対応するか。

    • 解答

このとき


\vec a \cdot \vec x = d

は、


(0,0,1)\cdot (x,y,z) = d
z = d

に対応する。

この式はz座標がdに対応し、それ以外のx,y座標を任意に動かした 平面に対応しているが、これは xy平面に平行であり、 xy平面からの距離がdである平面である。 また、xy平面とベクトル


\vec a = (0,0,1)

は直交しているので、そのことからもこの式は正しい。

xy平面に平行であり、xy平面からの距離がdである平面。
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