中学数学2年 1次関数
関数の基礎※中1の範囲
[編集]まず、関数(かんすう)とはどういうものなのかというと、2つの変数 があって、の値を決めると、それに対応するの値が1つだけ決まるとき、この関係を はの関数である という。
関数とは
[編集]たとえば、一日の気温の変化を1時間ごとに観測した折れ線グラフを考えよう。このとき、xを時刻、yを気温とすれば、xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる。
このように、xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる場合、2数xとyの関係をyはxの関数であるあるいはxの関数yという。
関数とは何かについて、さきほど「xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる」と説明したが、実はこの決まりさえ守れば、yがxを計算して求めることができなくても、yはxの関数である。(たとえば、気温の値yは、時刻xから計算して求めることはできない。)
このように「xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる」とだけ関数の要件を決めておくことにより、xの文字式であらわせないものであっても、必要に応じて関数として利用できるので、活用しやすくなる。
また、この気温の折れ線グラフの例からも分かるように、関数は折れ線であってもいいし、yの値がxの文字式であらわせなくてもいい。ただし、中学校で学ぶ関数のほとんどは、yの値がxの文字式で表され、xの値を文字式に代入することで、対応するyの値を計算して求めることができるような関数を扱う。この文字式を、関数の関係式と呼ぶ。そして中学数学では、関係式の持つ形によって関数を分類し、それぞれの特徴について学習する。
関数のうち、正比例や反比例などの比例関係は、小学校ではxの値の変化に伴うyの値の挙動で捉えたが、中学数学ではそれぞれの持つ関係式の形によって理解する。
なお、中学二年で習う「一次関数」とは、yの値がxの一次式で表せる場合である。
関数の変域
[編集]気温の折れ線グラフでは、気温を測定してない時間帯には、当然、関数が存在しない。
たとえば、その日の朝6時から夕方5時まで気温を測定したら、そのあいだの時間だけが、関数の値が存在する時間帯である。
この、気温グラフで気温測定した時間帯のように、関数の値が存在する変数の領域のことを
なお、関係式を持つ関数にも、変域が考えられる場合がある。
たとえば、反比例の式の関数
では、x=0 は、変域から除いて考える(どんな数も0では割れない)。
一次式であらわせる式でも、文章題などの応用問題では変域が存在する。 たとえば
窓があります。窓の高さは90 cmとします。窓を x cmあけたときの、あけられた部分の面積 y (単位はcm2とする)は、いくらでしょうか?
という問題では、
と式で表せるが、 窓のあけられた長さを0よりも小さくはできないし、窓の可動範囲までしか窓を開けないので、xに上限も存在する。
さいごに
[編集]中学1年で習う『関数』の単元は入門的な内容であるが、それまで小学算数では変数の値の変化のようすとして捉えていた「比例」や「反比例」を関係式を使って捉え、対応表やグラフで表すことを学び、関係式に現れる比例定数の値と変化のようすの関連づけたり、負数の領域も含めた変化のようすやその意味付けを理解するなど、後の学年で学ぶ様々な関数の扱い方の基礎を学ぶ意味で、たいへん重要である。
最終的に、読者が中学高校の数学で習う関数の理論は、yがxの一次式、二次式、あるいはそれより高次の関係式で表されたり、xの値がどの領域にあるかによって複数の関係式を使い分けたり、yの値の変化をxの多項式によらず、新たな関数として定義したりする考え方をあつかう理論である。
※ 下記から中2の範囲
[編集]一次関数
[編集]一次関数とは?
[編集]xとyの関係を式で表したときに、 とか、などのようにyの値がxの一次式の値で表せるとき、yはxの
xの一次関数y は一般に、
- (、 は定数)
という式で表される。
そして一次関数の関係式 に現れる定数 をxの
xの係数は、xの値が増加することによって、yの値がxの増加量の何倍増えるのかを表しており、これを一次関数の
一次関数の関係式に現れる定数項 は、 に対応するyの値に他ならない。これを一次関数の
ここで特に、 のとき、この場合の一次関数の関係式は
となり、これは比例の式に他ならない。そこで比例は、一次関数 において、 となった場合である、一次関数の特殊な例だと考えられる。一次関数 のグラフの傾きは、比例 の傾きと等しく、両者のグラフは平行線を描く。一次関数 のグラフは、比例 のグラフを y軸正の向きに だけ平行移動したものとなる。
一方、反比例の場合、一般式は
であり、これはyがxの一次式で表されていないから、一次関数の一種とは考えられない。
一次関数のグラフ
[編集]一次関数のグラフがどんなものか考えてみよう。
問題
のグラフを書きなさい。
グラフを書くために、まずは の値に応じて の値がどう変化するのか調べる。対応表を書いて調べると、
…… | -3 | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | …… | |
…… | -3 | -1 | 1 | 3 | 5 | 7 | 9 | …… |
これをグラフ用紙の上にとっていくと、全ての点は直線に乗っていることがわかる。xの値をもっと細かく、連続的に変化させると、グラフはひとつながりの線となって、直線を描く。
まず、 軸とは(0,3)で交わっている。
なお、この例からも分かるように、
一次関数の定数項 b は、グラフで考えたさいの一次関数の直線とy軸との交点のy座標である。
また、グラフの傾きから分かるように、 の傾きと同じである。つまり、一次関数 と とは平行である。
つまり、
一次関数 のグラフは、原点を通る直線の傾きと平行で、切片の座標(0,b)を通る直線である。
と言える。 または、
一次関数 のグラフは、原点を通る直線のグラフ をy軸の正の向きに bだけ移動した直線である。
とも言える。
また、右図のように、傾きの数aだけ、xが1増えたときにyもa増える。
関数において、xの値(定義域)が変化したとき、yの値(値域)も変化しますが、このときyの変化量をxの変化量で割ったものを変化の割合といいます。一次関数において、変化の割合は(直線の傾き)となります。 たとえば、一次関数において、xの値が-2から5まで変化したとき、yの値はx=-2のとき-5で、x=5のとき、y=16なので、yの値は-5から16となる。よってxの変化量は7で、yの変化量は21なので、変化の割合はとなります。これは、この一次関数の傾きと等しいですね。
※ 範囲外: なぜ「関数」という概念が必要か?
[編集]なぜ、「比例」という概念をそのまま使わずに、わざわざ「一次関数」という概念を用いるのだろう?
まず、上述したように、気温のグラフなど比例であらわせないグラフも関数であるので、「関数」という考えかたは必要である。
それとは別に、読者は「一次関数」という名前から予想すると思うが、じつは数学には「二次関数」や「三次関数」という関数もある。(※ 「二次関数」以降の計算式を習う学年は高校なので(2017年現在では)、中学生はまだ覚えなくていい。)
なお、二次関数の一般式は
である。
二次関数の式やグラフからも分かるように、二次関数はもはや比例式ではない。
高校では、数学や理科などで、二次関数のように、比例的でない関数がたくさん登場する。
二次関数の計算は、高校生ですら、なかなか難しい。中学生は、まず一次関数の性質と計算法を勉強する必要がある。
右の二次関数のグラフを見れば分かるように、曲がっている図形をあらわす場合、二次関数を使うことになる場合もある。
方程式と関数
[編集]2元1次方程式の解が形作る図形
[編集]2つの文字x , yを含む2元1次方程式 を考える。
この方程式の表は次のようになる。
-3 | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | |||
2 | 1 | 0 |
を成り立たせるx , yの値の組は無数にある。この x , y の値の組を座標とする点を座標平面上にとると、その点が形作る図形は、直線になっており、ちょうど一次関数のグラフと同じ形になっている。
また、 をyについて解くと となり、一次関数の関係式と同じ形になっていることからも、方程式の解が形作る図形は、一次関数のグラフの形と同じ直線であることが分かる。
よって、方程式 の解が成す図形は、傾きが、切片が1の直線になる。
この直線は 方程式 の解 を図示したものである。
このように、2元1次方程式は、一次関数と同様の計算手法で扱うことができる。また、2元1次方程式のグラフは、方程式を変形して一次関数の関係式と見なすことで、解を表す直線の傾きと切片を容易に求めることができる。
方程式 の解が座標平面上に描く図形
[編集]方程式 の解は、右図のようになる。
なぜなら、この方程式 y=3 を満たすxとyの解の組み合わせは、
- ・・・(ー1,3), (0,3), (1,3), (2,3), (3,3), (4,3),・・・
と無数にあり、それらの点のある位置は、右図のように、x軸に平行で、y軸正の向きに原点から3だけx軸を移動させた直線の上にあるからである。
一般に、方程式 の解は、点 を通り、x軸に平行な直線で図示される。
この方程式 は、2元1次方程式 において、 となった場合の特殊な例と考えてよい。
一方、 には、xが含まれていないが、x の値を何に決めようとお構いなく、そのとき yの値が ただひとつ に決まるため、このyは、xの関数と考えてよい。
一次式 で x の係数 が 0 になることは、xの一次式では認められないため、これは一次関数の一種とは認められないが、中3数学で学ぶ「いろいろな関数」では「継ぎはぎ関数」とよばれる関数の構成要素として現れるため、この x軸と平行に伸びるグラフの形と、yの値が全く変化しない様子は「定数関数」の名とともに、記憶にとどめておこう。
方程式 の解が座標平面上に描く図形
[編集]方程式 の解は、右図の図形を描く。
なぜなら、この方程式をみたすxとyの組み合わせ (x,y) は、
- ・・・(2,ー1) ,(2,0) ,(2,1) ,(2,2) ,(2,3) ,・・・
のようになるからである。
一般に、方程式 の解は、座標平面上で点 を通り、y軸に平行な直線で図示される。
は、2元1次方程式 で となった場合の特殊な例と考えてよい。
一方、座標平面上の図形を見てもわかる通り、ひとつのx の値に対して、あらゆる yの値が対応しているため、このようなグラフを持つような関数は考えられない。
直線の式を求める
[編集]傾きと切片が分かっている場合
[編集]- 例題
- 傾きが-3、切片4の直線の式を求めなさい。
これは、一次関数の関係式 に、xの係数 , 定数項 を代入して、
- 直線の式
を得ます。
傾きと通過する1点が分かっている場合
[編集]- 例題
- 傾きが2で、(3,7)を通る一次関数の式を求めなさい。
- 一次関数の関係式を使う
これは、一次関数の関係式 に、xの係数 を用いて
この式に を代入したとき、 となるように
定数項の値を定めて、
これより、求める直線の式は,
- 比例の関係式を使う
(3,7)を代入したとき、(0,0)になるように を作っておく。
これが、比例定数2の比例になるように式を組んで。
- この式を変形整理して、求める式は,
通過する2点が分かっている場合
[編集]- 例題
- 2点 (-3,8),(1,-4) を通る直線の式を求めなさい。
- 連立方程式を使う
点の座標をに代入して連立方程式を作ると、
これを解いて、
よって、求める直線の式は、
- 傾きと通過する1点から求める
xが+4 増加する間の yの増加量は-12 であることから、変化の割合は-3
この式に を代入したとき、 となるように 定数項の値を定めて、
これより、求める直線の式は,
連立方程式と解の直線
[編集]二元一次方程式を連立して作る、二元一次連立方程式の解の意味を考えよう。
次の方程式を例に考えよう。
まず式(1)をyについて解くと に変形できる。
式(2)をyについて解くと に変形できる。
それぞれ、一次関数の関係式と考えて直線のグラフを描き、右のグラフを得る。
一次関数をどうしの線どうしの交点は、それに対応する連立方程式の解になる。