中学数学2年 式の計算

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文字式で使う用語[編集]

や、 などのように、数と文字をかけ合わせた数を単項式という。というような一つの文字や、512 などの一つの数も単項式として考える。

などのように単項式の和で表される式を多項式という。

の項「 5 」の部分のように、定数だけの項のことを定数項(ていすうこう)という。

多項式の項

(啓林館などの教科書が説明しているが、書いていない教科書も多い)多項式を構成するこの一つ一つの単項式のことを、その多項式の (こう)という。例えば、 という多項式は、 というように4つの単項式の和の形に式を変形できる。この多項式の項は の4つである。

一般に多項式の項は、その項の直前の符号を含めて書く。ただし、符号が+の場合は、普段通りに数を書くのと同様に、正の符号を省略をする。


は単項式か

のように、分母に文字がある分数の式は単項式でも多項式でもない。ただし、であるから、分子のみが文字である分数の式は単項式である。



さて、ここでまた一つ言葉を覚えてもらいたい。 単項式又は多項式のそれぞれの項が数と文字の積になっているとき、数の部分をその項の係数(けいすう)という。 例えば、 の係数は 4 である。また、 の係数は 2 である。

発展

ただし、高校で学習することではあるが、次のような「ある文字に注目する」ということがあるので注意して欲しい。

2xyx に注目して、x は変数(文字)だが、y を変数ではない(数である)とみなす。

このとき、x についての単項式 2xy の係数は 2y である。なお、このことについては高校で学習することなので、現在は深く考えなくてもよい。


中学校では、1つの単項式で、掛け合わされている文字の個数で、数字以外の文字の個数のことを「単項式の次数」(じすう、英: degree )と言う。例えば、 の次数は、数字以外の文字はが1個だけなので 1 である。ただし、 の次数は 3 である。なぜなら は 単項式の次数では、 として次数として文字を数える。 このように、指数の部分は、指数をつかわない掛け算に直したときの文字の個数として数えることになる。


の次数は 2 である(文字が合計で2つ)
の次数は 1 である( だけでなく を使っても問題ない)。
の次数は 2 である( なので文字が合計で2つ)。
の次数は 1 である(使用されている文字が1つのため)


一次関数 y = ax+b は、右辺がxについての一次式であるのでこう呼ばれている。この場合、a,bは変数ではなく定数であるためである。


多項式の次数

多項式については、その中の項として現れる単項式たちの次数のうち、もっとも次数の高い項のもつ次数を、その多項式の次数とする。 例えば

3x2 + 25y - 3 の次数は、最も次数の高い項 3x2 の次数が 2 なので、この式の次数は 2 である。このような次数が2次の多項式を二次式という。

一般に、多項式の次数が n のとき、その式を n-次式(n-じしき)という。

(※ 範囲外 ) 0 の項の次数については、定義しないか負数または -∞ とするなどいくつかの流派が存在する。


同類項[編集]

さて、ここで次の多項式を考えていこう。

このような式で、 のように、文字の部分が次数まで含めて 同じ項 を、同類項(どうるいこう)と言う。

また、 も同類項である。


いっぽう、

では、次数が違うので同類項ではない


さて、同類項どうしは、例えば多項式 を例にすると

のように、分配法則を使って まとめることができる。

このように、同類項どうしは、分配法則を使って まとめることができる。


一般に の形の式は、

と同類項をまとめることができる。(文字 a に注目すると、ma と na が同類項である。)


では、冒頭の式 の同類項を まとめてみよう。

これをまとめると

となる。 ところで、-2x と -2y は同類項ではないので、これ以上まとめることができないから、計算はここまでとなる。一般的に、文字式は必ず同類項をまとめなければならない。

問題
次の文字式を簡単にせよ。
  1. )  x + 2x
  2. )  3x + 2y + 6x + 4y
  3. )  5x - 2y + x -4
  4. )  a + 2b + 4a + 3 - 4
  5. )  2x 2 + 4x + 3x 2
  6. )  7x 2 + 8x + 4 + 5x 2 - 6x
  7. )  3x 2 - 7x - 1 + 9 + x 2 - 5x
  8. )  4ax + 5bx + 9ax + 6

式の加法・減法[編集]

複数の式を足したり、引いたりするには、それぞれの式にかっこをつけ、+、-の記号でつなぐことで式が完成する。例えば、2x + 3yx + 6y という 2つの式を足すには、

(2x + 3y) + (x + 6y)

とすればよい。また、左の式から右の式を引くには、

(2x + 3y) - (x + 6y)

とする。

このような式を計算する場合、次のようにかっこをはずし、同類項をまとめる。


  • かっこの直前の符号が + の場合(何も無い場合も + がついていると考える)
    → そのままかっこをはずす(ただし、そのかっこの中の最初の項に符号がついていない場合は + を加える)


  • かっこの直前の符号が - の場合
    → かっこの中の符号を変えて抜き出す(かっこの中の最初の項に符号がついていない場合は + が付いていたと考える)


もし読者が、(符号が - の場合について)理解しづらい場合、xやyに1や2などの簡単な数字を代入してみて、確かめてみよう。


このような式の計算は、筆算を応用してもできる。ただし、文字の種類をそろえることに注意。

    2x + 3y                 2x + 3y
+)    x + 6y             -)    x + 6y
    3x + 9y                  x - 3y

また、かっこの前に数字がついている場合は、分配法則によりその数字を括弧の中に入れてから はずすとよい。

計算になれてきたら、式を省略して暗算で出きるようになるとよい。

問題5
次の2つの多項式の和を求めよ。また、左の式から右の式を引いた差を求めよ。
  1.  4x + 2y , 5x - y
  2.  a + b + c , -2a - 3b + c
  3.  -8p 2 + 4q , 3p + 4q

式の乗法・除法[編集]

ここでは、単項式の乗除について学習する。まず、次の式を考えてみよう。

2a × 3b

このような式の場合、係数どうしの積に文字の積をかけると答えが求められる。上の式でやってみると、

となる。なぜなら、2a = 2×a、3b = 3×bなので、掛け算はかける順番を変えてもよいから、

を計算してみよう。

単項式の除法は、数の計算と同じように約分して計算できる。

例えば

    =
      =

のように約分してよい。


例題

を計算してみよう。

(解法と答え)

であるから、 の逆数は となる。


よって が答え。



(慣れてきた人の解法)

※ 慣れてきたら、先ほどの問題を次のように、数字どうし、文字の指数どうしを直接に計算していい。

(解法と答え)


※ なお検定教科書では、上述のような数字どうし、指数どうしを直接に割り算する解法の紹介は無い。


問題6
次の式を簡単にせよ。
  1.  2x × 4y
  2.  p × 8pq
  3.  3x2y × 4xy3
  4.  2a × 3b × 8c
  5.  x × 2y2 × 4x3z
  6.  
  7.  
  8.  
  9.  
  10.  


例題7
次の式を簡単にせよ。
  1.  
  2.  
  3.  
  4.  

式の利用[編集]

文字式による説明[編集]

この単元では、文字式を使うと、さまざまな場合の事柄が成り立つことを説明できる場合がよくあることを学習します。

ここで、次の問題を考えてみる。

例題
  • 2つの偶数の和が偶数になることを説明しなさい。
解説

まずは偶数を文字を使って表す。 偶数というのは 2 の倍数であるから、

2 ×(自然数)

と表すことができる。そこで、自然数を n と表すことにすると、偶数は

すなわち

と表すことになる。

また、奇数の場合は偶数より 1 小さい、あるいは、1 大きいと考えて、

または

と表すことになる。

(※ nを自然数(1,2,3,・・・。 中学校では0を自然数には含まない)とした場合、2n+1では 1 を表せないため2n-1が用いられる場合もある。)


では、問題になってる偶数どうしの和を考えてみる。 2つの式で表すには、それぞれ 2n, 2m とあらわすことができる。n, m と違う文字を用いたのは、もし同じ文字にしてしまうと、例えばn=3の場合、 2n+2n = 6+6 のように、同じ数どうしの和になってしまいます。

偶数どうしの和というのは、 6+10のように、もっと他のパターンもあるので、よってnとmのように、違う文字どうしを使う必要があります。


とにかく、nとmで記述した偶数どうしを足してみましょう。すると、

と、分配法則を使って、まとめることができます。

ここで、n + m というのは自然数同士の和であるわけだから、当然、自然数の一部になる。そして、偶数とは、自然数と2との積のことであったので、ならば自然数の一部と2との積であっても偶数である。

だから、偶数と偶数の和は偶数になる ということが説明できたわけである。 (説明 終わり)


このように、文字を使った計算をすることにより、どんな場合でも主張が成り立つことを説明したことになる場合が、よくあります。


整数による偶数・奇数の式

さきほどの説明では、自然数をつかって偶数および奇数を説明したが、自然数でなくても整数をつかっても偶数および奇数を表してもいい。検定教科書でも、啓林館などの教科書では、自然数ではなく整数で偶数および奇数を説明している。

整数を使う場合、0,-2,-4,-6,・・・・なども偶数になる。また、整数を使う場合、-1,-3,-5,・・・・なども奇数になる。

つまり、整数を使う場合の偶数は、 ・・・,-6,-4,-2,0,2,4,6,・・・ となる。

整数を使う場合の奇数は、 ・・・,-5,-3,-1,1,3,5,・・・ となる。


では、さきほどの問題で、整数を使った場合の解答の例をしめす。


(整数を使った場合の解答の例)

まずは偶数を文字を使って表す。 偶数というのは 2 の倍数であるから、

2 ×(整数)

と表すことができる。そこで、整数を n と表すことにすると、偶数は

すなわち

と表すことになる。

また、奇数の場合は偶数より 1 小さい、あるいは、1 大きいと考えて、

または

と表すことになる。

では、問題になってる偶数どうしの和を考えてみる。 2つの式で表すには、それぞれ 2n, 2m とあらわすことができる。n, m と違う文字を用いたのは、もし同じ文字にしてしまうと、例えばn=3の場合、 2n+2n = 6+6 のように、同じ数どうしの和になってしまいます。

偶数どうしの和というのは、 6+10のように、もっと他のパターンもあるので、よってnとmのように、違う文字どうしを使う必要があります。


とにかく、nとmで記述した偶数どうしを足してみましょう。すると、

と、分配法則を使って、まとめることができます。

ここで、n + m というのは整数同士の和であるわけだから、当然、整数の一部になる。そして、偶数とは、整数と2との積のことであったので、ならば整数の一部と2との積であっても偶数である。

だから、偶数と偶数の和は偶数になる ということが説明できたわけである。 (解答例 終わり)


このように、この問題の場合、単に「自然数」を「整数」に言いかえるだけでよい。


練習問題

偶数と奇数どうしの和が、どうなるか、考えてみましょう。

まず、偶数を 2n であらわした場合、奇数は 2m+1 のように、nではなくmを使って奇数を表します。

もし、奇数にも n を使ってしまうと、

和の 2n+(2n+1) は、例えば、6+7 とか、または 14+15 のように、連続する2つの数どうしの和の場合だけになってしまいます。これでは、どんな場合の説明には、なっていないです。

なので、 偶数に使う文字(例ではn)と奇数に使い文字(m)とは、別の文字にする必要があります。


では、実際に偶数と奇数の和を、文字式で計算してみましょう。

2n+(2m+1)= 2n+2m+1

= 2(n+m)+1

あらたに、別の文字Aを用意してみて、

A=n+m

とすれば、まずAは自然数の一部です。 そして

2n+(2m+1)= 2A+1

となるので、これは奇数の形だし、式中のAは自然数の一部なので、よって、偶数と奇数の和は奇数になります。(説明 終わり)


問題 1

2つの奇数どうしの和がどうなるか、上述の例にならって説明しなさい。


問題 2

5,6,7のように連続する3つの整数どうしの和は、3の倍数になる。3つのうちの1番目の数をnと置き、2番目を n+1 、3番目を n +2 と置いてみて、和が必ず3の倍数になることを説明しなさい。


(解法と答え) ※ 東京書籍などの教科書では、この問題の解法が書いてある。

n+(n+1)+(n+2) = n+n+n + 1+2 = 3n+3 =3(n+1)

n+1 は整数なので、よって、3(n+1)も整数である。

よって、連続する3つの整数の和は3の倍数になる。


問題 3

さきほどの連続する3つの数の和の問題で、まんなかの2番目のnと置き、1番目を n-1 、3番目を n+1 と置いてみて、和がどうなるかを説明しなさい。

※ 答えはwikibooksでは省略する。読者が自分で考えてみよう。検定教科書でも答えは省略されており、読者に考えさせている。


例題

2ケタの自然数があり、その1の位と10の位の数を入れ替えた自然数がある。

例えば、もし自然数が27なら、その1の位と10の位の数を入れ替えた自然数は72となる。

もしもし自然数が13なら、その1の位と10の位の数を入れ替えた自然数は31となる。


自然数と、その1の位と10の位の数を入れ替えた自然数の和は、必ず、あるの数の倍数になる。

つまり、

27+72 = 99 =(ある数の倍数)
13+31 = ? =(ある数の倍数)

必ず、どんな数の倍数になるかということの説明と、および、その理由も説明しなさい。(説明 終わり)


(解法と答え)

ある自然数をAと置き、その10の位をxと置き、1の位をyと置けば、

A=10x+y

と書ける。

Aの1の位と10の位の数を入れ替えた自然数をBと置けば、Bの式は、Aのxとyを入れ替えたものであるから、

B=10y+x

となる。

とすれば、A+Bについて上記の結果を代入して計算すると、

A+B = (10x+y)+(10y+x) = 10x+y+10y+x

同類項どうしをまとめるために項の順番をかえて、

A+B = 10x+x+y+10y = x(10+1) + y(1+10) = 11x + 11y =11(x+y)

上式の最後の計算では、11でまとめた。

x+y は整数だから、11(x+y)も整数である。そして、この式では A+B が 11×(整数) の形になっている。

よって、A+Bが11の倍数になることが説明できた。

ここで,Bとは、2ケタの自然数Aの1の位と10の位とを入れかえた自然数のことであったので、よって、

2ケタの自然数と、それの1の位と10の位とを入れかえた自然数の和は、必ず11の倍数になることが説明できた。(説明 終わり)


問題

先ほどの問題では、和を考えていたが、では今度は差を考えてみよう。

例えば

27-72 = ? =(ある数の倍数)
13-31 = ? =(ある数の倍数)

のようになるということである。

つまり、ある自然数と、その1の位と10の位を入れかえた自然数との差は、どんな整数の倍数になるか?

どんな整数の倍数になるかということと、理由も文字の式をつかって説明しなさい。


※ 答えはwikibooksでは省略する。読者が自分で考えてみよう。検定教科書でも答えは省略されており、読者に考えさせている。


等式の変形[編集]

目的に応じて、等式を、移項(いこう)などの操作をして変形することを学ぼう。

[編集]

タカシくんの通学する中学校の校庭に、右図のような体育の競走用のトラックがあります。

図のように、曲線部分の半径を r メートル、まっすぐな部分の長さをa メートルとしたとします。


周の長さをLとすると、


よって、

となります。


例題

さきほどのタカシくんの学校のトラックで、曲線部分の半径を20メートルとします。

トラックの周の長さを300メートルとします。

(タカシくんの学校のトラックは、学校の建築時の数十年前に、教育上の理由で、トラックの半径の部分と周の長さは、このぐらいになったそうです。)

このように、半径と周がすでに決まっている条件のときに、直線部分の長さはいくらになるかを知りたいので、直線部分の長さをもとめられる文字式をつくりなさい。(直線部分の長さの具体的な数は求めなくてもいい。)


(解法と答え)

まず、求めるのは 直線部分の長さ a なので、

を、下記のように、aの式に直す。

まず、移項しやすくするために、分配法則をつかって次のように右辺を分解する。

L=2(a+πr)=2a+2πr

今後の計算をしやすくするため、いったん結果を中間まとめする。

aについて求めたいので、見やすくするために上式の右辺と左辺を入れかえる。

つまり、

にする。

そして、aについて求めたいのであるから、aではない rのある項を移項して、反対側の項に移動する。つまり、

にする。

あとは、両辺を2で割ればいい。

よって、aについての式を求められた。


用語[編集]

さきほどの問題のように、Lの式を変形にしてaの式にしたような操作のことを aについて解く(とく) という。


理論[編集]

次の式で、a, b, c の値がわかっているとき、x をあらわす式を考えてみることにする。

この式を左辺が x、右辺がそれを表す式になるように、等式の性質を使って変形していくのである。 まず両辺を 2倍して、

そうしたら左辺に x 以外に 2a, 4bc がのこっているので、移項して、

これで完成である。

このように、はじめの等式から x を求める式を作ることを、はじめの等式を x について解くという。

またこのとき、値がわかっているとする文字(この問いではa, b, c )を定数(ていすう)という。

文字式による文章題[編集]

それでは、次の問題を考えてみることにする。

例題1
地球の赤道の下の、深さ 1 m のところにケーブルを通すことを考えます。
このとき、ケーブルは赤道の長さより何 m 短くなるでしょうか。
ただし、地球はただの球であり、凸凹などはないとします。
参考図 黒が赤道、青がケーブル
解説

まず、赤道の長さと電線の長さを求めてみる。 地球の半径をr m とすると、円周の長さは 2πr なので、

赤道の長さ = 2πr [m]
ケーブルの長さ = 2π(r - 1) [m]

となり、その差を求めればいいことになる。

このことから、およそ 6 m だけの違いだと言うことがわかる。

このように、文字の式を使って数量を求めることができる。

章末問題[編集]

問題1
次の式は多項式か単項式か答えなさい。
  1.  5x - 43y
  2.  73.8
  3.  98i
  4.  
  5.  a× 48π
  6.  
問題2
次の多項式の項と係数をそれぞれ求めなさい。
  1.  8a + b - 4c + 5d
  2.  
  3.  
問題3
次の式の次数を求めなさい。
  1.  2x 5
  2.  87p 2
  3.  a
  4.  125
  5.  -5a + 37b 2 - 7c 5 + 3x
  6.