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利用者:ProfessorPine/sandbox1

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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法学 > EU法 > 派生法 > ProfessorPine/sandbox1

電子商取引指令 (英略称: Directive on electronic commerce または E-commerce Directive、法令番号: Directive 2000/31/EC) は欧州連合 (EU) で2000年に発効した指令である。「電子商取引」と名がついているが、規制対象となる事業者はオンラインショッピング (物販) だけでなく、ソーシャルメディア (SNS)、オンラインのニュース記事やエンターテイメントコンテンツ配信サービス、インターネット接続やメールサービスを提供するインターネット・サービス・プロバイダー (ISP) といった通信事業者、検索エンジンなど、インターネット通信を通じて提供されるサービス全般をカバーしているテンプレート:R。「取引」とあるが、サービスの利用者が対価を支払っている場合に限定されず、ソーシャルメディアのように基本無料で事業者は広告収入モデルで運用されている場合も「取引」に含まれる。電子商取引指令は日本のプロバイダー責任法に近い。

本書では電子商取引指令の要点をまとめた上で、一部を逐条解説する。電子商取引指令は2000年に発効して以来 (当初の英語原文リンク)、部分修正が加えられているが、2024年12月現在の英語原文最新版に基づいて本書は記述している。

要点

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セーフハーバー条項
電子商取引指令といえば、ほぼ第12条から第14条のセーフハーバー条項に議論が集中する。たとえばFacebookやX (旧Twitter) といったソーシャルメディア (SNS) に、一般ユーザーが違法な誹謗中傷コンテンツを投稿したとする。誹謗中傷を「直接」行ったのは投稿ユーザー本人だが、通信手段を提供したFacebookやXは事業者として「間接」的 (二次的) に誹謗中傷に関与したとも捉えられる。そこで、所定の手続に従って問題となった誹謗中傷コンテンツを削除するなどしてアクセスを遮断すれば、こうした事業者の二次侵害責任を免除する、と規定しているのが第12条から第14条である。
「セーフハーバー」(safe harvor) は直訳すれば「安全な港」である。事業者が損害賠償を負うかもしれないという危険な状況下で、安全な場所に避難できる免責条件を「セーフハーバー条項」と呼んでいる。
監視義務の免除

上述の「所定の手続に従って」には、常にユーザーの違法行為を監視する義務まで含まれているのか。これは電子商取引指令の第15条「一般的監視義務の不存在」に基づき、免除されている。つまりユーザーが違法行為をしたら事後的にしっかり対応することは求められているものの、事業者は事前予防的に常時監視策まで講じる必要はない。

誰が対象か?
電子商取引指令でこのセーフハーバー条項が適用されるのは、
  • 情報社会サービスの提供者 (第12条)
  • キャッシング事業者 (第13条)
  • ホスティング事業者 (第14条)
である。「情報社会サービスの提供者」(information society service providers、略称: ISSPs) が何を指すのか、その定義は電子商取引指令内では規定されておらず、指令 98/34/EC の第1条第2項の定義を参照している。
キャッシング (caching) についても電子商取引指令内には用語の定義がないが、Google検索のような検索エンジンとテンプレート:RWayback machineウェブ魚拓のようなウェブページの保存サイトテンプレート:Rが一般的に知られているキャッシング事業者である (消費者金融の cashing とは英語のスペルも意味も異なるため注意)。
なお、テレビやラジオ放送事業者はISSPsからは除外されている。これはISSPsが「ユーザーや消費者といった受益者からのリクエストに応じて提供されるサービス」の提供者と定義されているからであるテンプレート:R
どこの国が対象か?
電子商取引指令はEUの法令だが、こうしたインターネットサービスの提供者が日本の法人や個人でも電子商取引指令が適用されるのだろうか (いわゆる域外適用)。電子商取引指令に関しては、EU加盟国を含む欧州経済領域 (EEA) 域内で「設立」された法人ないし国民個人が適用対象になるテンプレート:Rテンプレート:Efn2。ウェブサイトのサーバーが運用されている国がどこかは問われないテンプレート:R
電子商取引指令のセーフハーバー条項は著作権侵害には適用されず[1]、これは「どこの国か?」問題 (いわゆる準拠法の問題) とも関連するテンプレート:R。YouTubeに代表される動画コンテンツ共有サービスを例に挙げると、コンテンツを投稿するユーザーもそれを閲覧するユーザーも全世界に点在する。仮に投稿コンテンツが著作権侵害を起こしているならば、一般的には侵害が行われた行為地の国内著作権法によって裁かれる。極論すると、著作権者が提訴した裁判所のある国の著作権法が適用される (著作権の準拠法も参照のこと)。YouTubeの運営法人がどこで設立されたか、またEU域内で現地法人を子会社設立しているかは不問である。

条文の全体構成

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前文

(1) から (29) まで。

第I章 一般規定
  • 第1条 目的および適用範囲[2]
  • 第2条 定義[3]
  • 第3条 域内市場[4]
第II章 諸原則

第1節:事業所設立および情報に関する要件

  • 第4条 事前許認可不要の原則[5]
  • 第5条 提供される一般的情報[5]

第2節:商業通信

  • 第6条 提供される情報[6]
  • 第7条 一方的な商業通信[6]
  • 第8条 規制対象の専門職[7]

第3節:電子的手段により締結される契約

  • 第9条 契約の取扱い[8]
  • 第10条 提供されるべき情報[9]
  • 第11条 発注[10]

第4節:仲介サービスプロバイダの責任

  • 第12条 “単なる伝達"[11]
  • 第13条 “キャッシング"[12]
  • 第14条 ホスティング[13]
  • 第15条 一般的監視義務の不存在[14]
第III章 実施
  • 第16条 行為準則
  • 第17条 裁判外紛争解決
  • 第18条 裁判上の請求
  • 第19条 協力
  • 第20条 制裁
第IV章 最終規定
  • 第21条 再検討
  • 第22条 国内法化
  • 第23条 発効
  • 第24条 名宛人

逐条解説

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★★以下は単純なメモ書き★★

第2条

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第2条(a): 情報社会サービスとは、指令98/34/EC 第1条第2項の意味におけるサービスを指す。(指令98/48/ECによって部分改正されているらしいが、指令98/34/EC 第1条第2項もピンポイントに改正されたかは不明)

No longer in force, Date of end of validity: 06/10/2015; Repealed and replaced by

第4条

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情報社会サービスプロバイダは事業所の設立や業務運営に際して、事前許認可不要。加盟国は事前許認可制度を作ってはダメ。

第5条

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プロバイダーの名称、設立住所、メールアドレスを含む連絡先、商業登記簿の登録番号などなどといった情報を、加盟各国の当局が直接いつでもアクセスできるようにしておくこと。

第11条

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サービスの名宛人 (デジタルサービス利用者) がデジタル発注する際、サービス提供者側は受注の確認通知を迅速に送れ。発注前に入力内容の訂正ができるシステム仕様にせよ。

第12条

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セーフハーバー条項と読める。★★念のため他の文献でも確認したい★★ 免責の条件は①送信者がプロバイダではなく、②送信先を指定したのもプロバイダではなく、③送信内容を選択・変更したのもプロバイダではない、この3つの条件を満たした場合、送信された内容に対する責任をプロバイダーは負わない。加盟各国の法制度に基づき、コンテンツによる権利侵害を予防または終了させるための措置をとる目的で、プロバイダーに何らか影響を与えてよい(たぶん開示請求系は各国でやっていいよ、プロバイダーは従え、って話)。

第13条

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これもたぶんセーフハーバー条項。「キャッシング」の定義は第13条にも前文にも第2条にも用語定義として登場しない。セーフハーバーの条件は、①情報を変更してない、②情報に対するアクセスの条件に従っている(★★「アクセスの条件」は意味不明★★)、③業界の技術慣行・規範に従っている、④業界で広く認められて使用されている技術をプロバイダーが妨げないこと、⑤情報元が自らあるいは裁判所命令などで情報を削除したらプロバイダー側も削除したりアクセス遮断すること。

前文17によると、

「情報社会サービスの定義は、欧州共同体法に既に存在し、情報社会サービスに関する技術標準および技術規制ならびに規範の分野における情報提供手続きを定める1998年6月22日の欧州議会および欧州理事会指令98/34/EC(21)、および条件付きアクセスに基づく、または条件付きアクセスにより構成されるサービスの法的保護に関する1998年11月20日の欧州議会および欧州理事会指令98/84/EC(22)に、規定されている。」 とのことなので、セーフハーバー条件2つ目は★★98/84/EC★★の定義に沿っているのかも?

13条も12条と同様、開示請求系の加盟国独自ルールOK、キャッシング事業者は従えって条項あり。

第14条

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これもたぶんセーフハーバー条項。ホスティング事業者は、3つの条件を満たせば、サービス利用者が保存しているデータの内容に責任を負わない。①ホスティング事業者が権利侵害を知らない or 損害賠償請求まで権利侵害の事実を知らない、②ホスティング事業者がそれを知ってから迅速に削除・アクセス遮断の手段を講じた、③権利侵害をしたサービス利用者本人がホスティング事業者の指示・管理下にない。

14条も12条・13条と同様、開示請求系の加盟国独自ルールOK、ホスティング事業者は従えって条項あり。

第15条

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第12~第14条のセーフハーバー条項に関し、違法行為がないか監視したり、積極的に事実調査する義務を各種事業者に負わせるような法制度を加盟各国で設けてはならない。ただし、違法行為発覚後に事業者が当局にインシデント報告する義務は課してもいい。

第16条

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加盟各国およびEU執行機関である欧州委員会の義務。第5条(プロバイダーの基礎情報管理)と第15条(ホスティング事業者から当局へのインシデント報告)を遵守できるよう、行為準則を別途定めること。この行為準則は、ECの全言語で記述されること。行為準則は策定しただけではダメで、業界が守ってもらえるように奨励し、業界で運用されているか、問題はないかなど事後評価も行うこと。未成年者の保護や基本的人権の尊重を忘れないこと。視覚障害者を含む障害者を支援する団体から、行為準則について助言を貰うこと。

第17条

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プロバイダーとサービス利用者間の紛争解決の手段として裁判外紛争解決手続 (ADR) の利用を加盟各国が妨げてはならない。ADRの機関が紛争解決の役割を果たせるよう、加盟各国が手続上の保証を与えなければならない。ADRの決定内容やそれに不随する実務や業界慣行に関する情報など、加盟各国は欧州委員会にも通知する努力をすること。

第18条

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裁判の結果が下ったら、仮差止や侵害防止などの措置を加盟各国は迅速に講じること。

第19条

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加盟各国は他の加盟国との横連携、プロバイダーとの官民連携、欧州委員会との上下連携をする。情報共有や苦情受付窓口などを設置し、当事者間の紛争の解決を迅速に支援する。

第20条

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加盟各国が紛争事件に下す制裁は、効果的でなければならず、比例原則に基づいていなければならない。

第21条

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2年おきの周期で電子商取引指令の効果・現状分析の報告書を欧州委員会が作成し、欧州議会、欧州連合理事会および欧州経済社会委員会の3者に提供する。当該報告書では特に、ハイパーリンクの提供者や検索エンジンの責任について考察すること、またノーティスアンドテイクダウン手続についても考察すること、第12条および第13条のセーフハーバー条項が現状の技術に対応しておらず不足していないか確認すること。

第22条

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2002年1月17日の前までに国内法化すること。

第23条

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官報公布日を電子商取引指令の発効日とする(即時発効)。

第24条

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全EU加盟国が国内法化の対象。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, § はしがき.
  2. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 10.
  3. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, pp. 10–12.
  4. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, pp. 12–13.
  5. ^ 5.0 5.1 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 13.
  6. ^ 6.0 6.1 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 14.
  7. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, pp. 14–15.
  8. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 15.
  9. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, pp. 15–16.
  10. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 16.
  11. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, pp. 16–17.
  12. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 17.
  13. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, pp. 17–18.
  14. ^ 電子商取引指令 日本語訳 2021, p. 18.

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引用文献

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