聖書原典購読初級/5

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わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか[編集]

אֵלִי אֵלִי לָמָה עֲזַבְתָּנִי[編集]

詩篇221

十字架上でイエスが叫んだ言葉である。マタイ2746には、ēli ēli lema sabachthani 「エーリ、エーリ、レマー、サバクターニ」、マルコ1534には elōi elōi lema sabachthani 「エローイ、エローイ、レマー、サバクターニ」とある。これらがヘブライ語と異なるのは、アラム語だからである。

‏ אֵלִי ‎ ‏ אֵל ‎ ēl「神」に一人称の接尾代名詞 ‏ ־ִי ‎「わたしの」がついた形。ヘブライ語で「神」は普通 ‏ אֱלֹהִים ‎ elōhīm (‏ אֱלוֹהַּ ‎ eah「神」の複数形。数の上での複数ではなく、尊厳の複数)だが、詩文などには ‏ אֵל ‎ も頻繁に使われる。‏ אֵל ‎ は、元来、カナン人の至高神の名であったといわれる。アラム語でも ‏ אֵל ‎。マルコ福音書の elōi は ‏ אֵלִי ‎ でなく ‏ אֱלֹהַי ‎ elōhay( ‏ אֱלֹהִים ‎ +一人称接尾代名詞)がなまった形。

‏ לָמָה ‎「何故」。前置詞 ‏ לְ ‎「‥‥に、‥‥のために」に疑問詞 ‏ מָה ‎「何が、何を」がついた形。「何のために」、「何故」。‏ לְמָה ‏ ləmā、‏ לָמָּה ‎ lāmmā に同じ。アラム語の場合も同様である。なお意外な驚きを表す「どうして‥‥なのか」は ‏ מַדּוּעַ ‎ maddūaˁ である。

‏ עֲזַבְתָּנִי ‎「あなたはわたしを見捨てた」。‏ עָזַב ‎ `āzaḇ「見捨てる」のカル二人称単数男性完了形 ‏ עֲזַבְתָּ ‎ に、一人称単数接尾代名詞 ‏ ־נִי ‎「わたしを」がついた形。福音書の sabachtani は、「見捨てるの」のアラム語 ‏ שׁבק ‎ から来ている。なお創世記224「人はその父と母を離れて、妻と結び合い‥‥」(協会訳)の「離れて」、エレミア書217「あなたは主を捨てたので」(協会訳)の「捨てた」なども、ヘブライ語では ‏ עָזַב ‎ である。