高等学校数学A/集合と論理

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集合と論理[編集]

集合とは[編集]

ある事柄の集まりのうち、定義が具体的に示されている物を集合(しゅうごう、英:set)という。例えば、「自然数」は「n > 0となる整数n の全体」という定義があるので、集合といえるが、「大きな数」は、どこからが大きな数といえるのかがはっきりしないため、集合とはいえない。ただし、「大きな数」を例えば「1億以上の整数」と定義すれば集合になりえる。

定義がはっきりしさえすれば、例えば「3年B組の生徒たち」等も集合として考えることができる。このような集合を構成するもの一つ一つ(例えば、「3年B組の生徒たち」という集合であれば、「3年B組の生徒一人一人」)を要素(ようそ、英:element)という。

集合や要素の関係の表し方[編集]

aは集合Aに属する

集合と要素[編集]

aが集合Aの要素であるとする。このとき、aは集合Aに属する(ぞくする)といい、記号で、

a ∈ A

と表す。また、bがAの要素でないときは、

bA

と表す。

集合をあらわすとき、その方法はいくつかある。(例は2~20の2の倍数の集合を表す。)

  • 要素を書き表す方法
{2,4,6,…,20}
  • 条件を書き表す方法
{x|x=2n(nは自然数), 2≤x≤20}
{x|xは2以上20以下の2の倍数}
{2n|1≤n≤10(nは自然数)}
{2n|nは1以上10以下の自然数}

集合どうし[編集]

集合Aは集合Bの部分集合である。
紫色の部分はAとBの積集合
紫色の部分はAとBの和集合
紫色の部分はAの補集合
部分集合[編集]

2つの集合A,Bがあり、x∈A ならば x∈Bが成り立つとき、AはBの部分集合(ぶぶんしゅうごう、英:subset)であるといい、「BはAを含む」か「AはBに含まれる」という。この状態を記号でA⊂BやB⊃A と表す。

補足:Aの部分集合にはA自身もある(A⊂A)。また、A,Bの集合の要素が同じとき、A=Bと表す。
空集合[編集]

{ }、つまり「要素がなにもない」というのもひとつの集合として考えられる。 これを空集合(くうしゅうごう、英:empty set あるいは null set)といい、

であらわす。ギリシャ文字のファイ(φ,)で表されることが多くあるが、厳密にはそれは誤りである。上の記号の他に等も用いられるが、この教科書では、を用いる。

補足:空集合は全ての集合に含まれる。(例:⊂A)
積集合・和集合[編集]

2つの集合A,Bがあるとき それらの両方を満たす集合を AとBの積集合(せきしゅうごう、英:intersection)あるいは共通集合(きょうつう しゅうごう)と呼び、 A ∩ B と書く。積集合は2つの集合の要素の共通部分(きょうつうぶぶん)である。

また、集合A,Bどちらかの条件を満たす集合を AとBの和集合(わしゅうごう、英:union)あるいは合併集合(がっぺい しゅうごう)と呼び、 A ∪ B と書く。和集合は2つの集合の全体をあらわす。

全体集合・補集合[編集]

集合について考えるときは普通、全ての要素を含む集合をUとして考える。このときのUを全体集合(ぜんたいしゅうごう、英:universal set)という。 また、全体集合Uの中で集合Aに属さない物を Uに関するAの 補集合(ほしゅうごう、英:complement)という。これを記号で、と表す。

補足:全体集合は全ての要素を含んでいるので、全体集合は空集合ではなく(例:)、また、全体集合の補集合は空集合である(例:)。
ド・モルガンの法則

下の図を用いて上の法則が正しい事を確かめよう。

  • 問題

A={x|xは1以上20以下の2の倍数}・B={y|yは1以上20以下の3の倍数}とする時、以下に適する集合の要素を列挙せよ。ただし、全体集合U={z|zは1以上20以下の整数}とする。

  • 解答
  1. ={1,3,5,7,9,11,13,15,17,19}
  2. ={1,2,4,5,7,8,10,11,13,14,16,17,19,20}
  3. ={6,12,18}
  4. ={2,3,4,6,8,9,10,12,14,15,16,18,20}
  5. ={1,2,4,5,6,7,8,10,11,12,13,14,16,17,18,19,20}
  6. ={1,2,3,4,5,7,8,9,10,11,13,14,15,16,17,19,20}
  7. ={1,2,3,4,5,7,8,9,10,11,13,14,15,16,17,19,20}
  8. ={1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20}
  9. = {3,6,9,12,15,18}
  10. ={2,4,8,10,14,16,20}
  11. ={3,9,15}


命題と証明[編集]

(数学的に)正しいかどうかを明確に判断できる主張を命題(めいだい、英: proposition)と呼ぶ。 例えば、"7は素数である"は命題の例である。 ("5000は大きい数である"などは命題とはならない。 「大きい」という言葉の判断が主観的なものであり、判断に明確な基準が設定できないからである。)


ある命題が明確に正しい(と証明される)とき、その命題は(しん、英:truth)であると呼ぶ。(たとえば、命題「7は素数である」は真である。) 命題が真でないとき、命題は(ぎ、英:false)であると言う。たとえば、命題 「 もし であれば である。 」 は、偽の命題である。 この方程式はも解に持つ。


上の命題"ならばである"はもあてはまるので偽になった。 命題が偽であるときは、は満たすがを満たさない例が存在する。そのような例を反例(はんれい)という。命題が偽であることを示すには、反例を1つあげればよい。


  • 問題

次の命題の真偽を判定し、偽の場合は反例も挙げよ。

  1. ならばかつである。
  2. かつならばである。
  3. 正三角形を2つ用意すればそれらは相似である。
  4. 素数ならば奇数である。
  • 解答
  1. 偽(反例:など)
  2. 偽(反例:2)


pが"Aである"の形の条件のとき、"Aでない"の形の条件をpの否定(ひてい、英:negation)という。pの否定を、もしくはとあらわすことがある。


ある命題Pが、 "AならばBである"というように 述べられているとする。 このとき、条件Aを命題Pの仮定(かてい、英:assumption)といい、条件BをPの結論(けつろん)と呼ぶ。このとき、Pを のようにあらわすことがある。

  • 逆(ぎゃく)

命題Pに対して"BならばAである()"という命題を命題Pの(ぎゃく、英:converse)と呼ぶ。

  • 裏(うら)

また、"AでないならばBでない()"という命題を命題Pの(うら、英:inverse)と呼ぶ。

  • 対偶(たいぐう)

"Bでないならば、Aでない()"とする命題を命題Pの対偶(たいぐう、英:contraposition)と呼ぶ。


ある命題が真であるとき、その命題の対偶も真となる。 ある命題が偽であるとき、その対偶も偽である。


  • 十分条件と必要条件

"AならばBである"という命題が成り立つとき、 AをBの十分条件(じゅうぶん じょうけん)と呼ぶ。 逆に"BならばAである"という命題がなりたつとき、AはBの必要条件(ひつよう じょうけん)という。 また、"AならばBである"、"BならばAである"の両方の 命題が成り立つとき、 AはBの必要十分条件(ひつようじゅうぶん じょうけん)であるといい、このとき AとBとは同値(どうち)であると言う。 (BはAの必要十分条件であるともいえる。) これを、 と書くこともある。


背理法[編集]

ある命題の結論を否定して、その否定のもとで矛盾が起こることを述べることで、 その命題が真であることを導出する仕方を背理法(はいりほう、英: proof by contradiction など)と呼ぶ。

たとえば、「Aではないことを証明せよ」という問題を解く時は「Aであると仮定する」と書き出して、仮定したことと矛盾する部分を作って「矛盾するのでAではない。」と証明を終える。

  • 例題

素数は無限に存在する。

  • 証明

素数が有限個であったと仮定する。すべての素数の積をとすると、はどの素数で割っても1余ることになり、1以外の自然数であって、素数の積に分解できないものが存在することになる。の約数のうち1以外で最も小さいものをとすると、は1と以外の約数を持たない。したがってが素数であることになるが、がどの素数でも割り切れないことと矛盾する。したがって、素数は有限個ではない。■