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エスペラント/文字と発音

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

アルファベット

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エスペラントのアルファベット
A a B b C c Ĉ ĉ D d E e F f G g Ĝ ĝ H h Ĥ ĥ I i J j Ĵ ĵ
アー ボー ツォー チョー ドー エー フォー ゴー ヂョー ホー ホー イー ヨー ジョー
K k L l M m N n O o P p R r S s Ŝ ŝ T t U u Ŭ ŭ V v Z z
コー ロー モー ノー オー ポー ロー ソー ショー トー ウー ウォー ヴォー ゾー

エスペラントのアルファベットは、上の表の28文字です。Qq, Ww, Xx, Yy は、エスペラント本来の単語の表記には用いませんが、エスペラント化していない人名や地名など固有名詞の表記に使われることがあります。

ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝ の五つの文字は、c, g, h, j, s の上に山形( ˆ )をつけたものです( ĵ は、j の上の点をとってから山形をつける)。

ŭ は、u の上に小さな弧( ˘ )をつけます。


それぞれの文字の名称は、母音字はその発音がそのままその文字の名称になり、子音字はその発音に o を添えたものがその文字の名称になります。

a [a], b [bo], c [co], ĉ [ĉo], d [do], e [e], f [fo], g [go], ĝ [ĝo], h [ho], ĥ [ĥo], i [i], j [jo], ĵ [ĵo], k [ko], l [lo], m [mo], n [no], o [o], p [po], r [ro], s [so], ŝ [ŝo], t [to], u [u], ŭ [ŭo], v [vo], z [zo]

文字の名称の正確な発音は、以下の発音の説明を参照してください。

文字の発音

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エスペラントでは、一つの文字はつねに同じように発音され、同じ発音はつねに同じ文字で記されます。したがって、単語の発音は、書いてあるとおりに発音すればよく、発音を覚えれば、書くときはそのとおりに書けばよいので、英語のように複雑な綴りを覚える必要はありません[1]。

母音

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エスペラントの母音は、a「ア」、e「エ」、i「イ」、o「オ」、u「ウ」の五つです[2]。それぞれの母音字の発音は、日本語と同じでかまいません[2]。アクセントの有無によってあいまい母音になったりすることはありません。つねにはっきり明瞭に「アイウエオ」を発音します。

io のように母音が並んだときは、i と o のどちらもはっきりと発音します。母音の長短の区別はありませんが、アクセント(つねに後ろから二番目の母音にある。詳しくは後述)のある母音は、少し長めに発音されるのが普通です。

io「イーオ」(何か)、ie「イーエ」(どこか)、iea「イエーア」(どこかの)

子音

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b, d, f, g, h, k, l, m, n, p, r, s, t, v, z は、おおむね日本語のローマ字や英語の子音と同じです。

l と r の区別は重要です。ただし、r は、英語のような舌をそらした r よりも巻き舌の r が標準で、日本語のラ行のほうが英語式よりも標準に近いです。r はつねに発音されますから、parto「パルト」は、英語のように「パート」とならないように、きっちり発音してください。l は、舌先を上前歯の裏にしっかり押しつけて発音すると、r との区別がしやすいです。

t は、英語のような「チャ」と聞こえる t ではなく、普通の日本語のタ行のほうが標準音です。

  • bona「ボーナ」 (よい)、biero「ビエーロ」 (ビール)、sub「スブ」 (~の下)
  • dio「ディーオ」 (神)、donas「ドーナス」 (与える)、sed「セド」 (しかし)
  • familio「ファミリーオ」 (家族)、filmo「フィルモ」 (映画)、Afriko「アフリーコ」 (アフリカ)
  • gaso「ガーソ」 (ガス)、getao「ゲターオ」 (下駄)、aglo「アグロ」 (鷲)
  • havas「ハーヴァス」 (もっている)、homo「ホーモ」 (人)、historio「ヒストリーオ」 (歴史)
  • kaso「カーソ」 (会計)、haki「ハーキ」 (断ち割る)、akra「アークラ」 (鋭い)
  • lano「ラーノ」 (ウール)、libro「リーブロ」 (本)、al「アル」 (~へ)
  • mono「モーノ」 (お金)、amas「アーマス」 (愛する)、mem「メム」 (自身)
  • nomo「ノーモ」 (名前)、ni「ニ」 (私たち)、ondo「オンド」 (波)
  • pano「パーノ」 (パン)、pura「プーラ」 (清潔な)、sep「セプ」 (7)
  • rano「ラーノ」 (カエル)、parto「パルト」 (部分)、per「ペル」 (~で)
lano (舌先を上の歯の後ろに押しつけて l を発音)と rano (巻き舌で r を発音、ただし巻くのは1回でよい)の区別に注意。
  • sano「サーノ」 (健康)、silko「スィルコ」 (絹)、disko「ディスコ」 (円盤)
  • teamo「テアーモ」 (チーム)、Esperanto「エスペラント」 (エスペラント)、tio「ティーオ」 (それ)
  • venis「ヴェーニス」 (来た)、varma「ヴァルマ」 (暖かい)、ugviso「ウグヴィーソ」 (うぐいす)
  • zono「ゾーノ」 (帯)、zeno「ゼーノ」 (禅)、Azio「アズィーオ」 (アジア)


c は「ツァ、ツェ、ツィ、ツォ、ツ」と発音します。

  • ceremonio「ツェレモニーオ」 (セレモニー)、cunamo「ツナーモ」 (津波)、dancu「ダンツゥ」 (踊れ)

j は、半母音[j]を表し、「ヤ、イェ、イ、ヨ、ユ」と発音します。英語の y の音です。母音の後ろに j がついた aj, oj, uj, ej は「アイ」「オイ」「ウイ」「エイ」という二重母音のように発音されます。しかし、音韻論的にはエスペラントには二重母音は存在せず、aj, oj, uj, ej はあくまで母音 + 子音 j と解釈されます。

  • japano「ヤパーノ」 (日本人)、majo「マーヨ」 (五月)、hajko「ハィコ」 (俳句)、plej「プレィ」 (最も)

ĉ は「チャ、チェ、チ、チョ、チュ」と発音します。

  • ĉeno「チェーノ」 (鎖)、ĉokolado「チョコラード」 (チョコレート)、eĉ「エチ」 (~さえ)

ĝ は「ヂャ、ヂェ、ヂ、ヂョ、ヂュ」と発音します。※チャ行を濁らせた音です。

  • ĝena「ヂェーナ」 (じゃまな)、ĝangalo「ヂャンガーロ」 (ジャングル)、mesaĝo「メサーヂョ」 (メッセージ)

ĥ は、のどの奥をこすって出す口蓋垂摩擦音[χ]で、ドイツ語の ch, スペイン語の j, ロシア語の х の音です。この音は h との区別が難しいため他の音に置き換えられる傾向があり、現在ではこの音を含む単語は、固有名詞を中心に、ごく少数しかありません。

  • jaĥto「ヤフト」 (ヨット)、Ĉeĥio「チェヒーオ」 (チェコ)

ĵ は「ジャ、ジェ、ジ、ジョ、ジュ」と発音します。※シャ行を濁らせた音です。

  • ĵaluza「ジャルーザ」 (嫉妬深い)、ĵudo「ジュード」 (柔道)、ĵurnalo「ジュルナーロ」 (新聞、日記)

ŝ は「シャ、シェ、シ、ショ、シュ」と発音します。

  • ŝafo「シャーフォ」 (羊)、ŝi「シ」 (彼女)、poŝto「ボシュト」 (郵便)

ŭ は、半母音[w]を表し、主に aŭ, eŭ (非常にまれに oŭ)の形で、「アゥ」「エゥ」 (「オゥ」)という二重母音のように発音されます。しかし、音韻論的にはエスペラントには二重母音は存在せず、aŭ, eŭ はあくまで母音 a/e + 子音 ŭ と解釈されます。

  • aŭto「アゥト」 (自動車)、eŭro「エゥロ」 (ユーロ)、saŭco「サゥツォ」「ソース」


※ĝ, ĵ の違いは、ĝ [dƷ] が ĉ [tʃ] のw:有声音w:破擦音、ĵ [Ʒ] が ŝ [ʃ]の有声音でw:摩擦音であることです。ĵ は ŝ の濁った音なので ĵĵĵĵĵĵĵĵ...と継続して発声できますが、ĉ が濁った音である ĝ ではそれができません。

アクセント

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エスペラントのアクセントは、強弱アクセントで、つねに後ろから二番目の母音にあります[3]。例外はありません。アクセントのある母音のあとに子音が1つしかないばあいは少し長めに発音されるのが普通です[3]。しかし、ほかの音節の母音と同じ長さで発音しても間違いではありません。

アクセント母音を大文字で表すと、例えば

ano [Ano], strato [strAto], tiea [tiEa], historio [historIo], historiisto [historiIsto]

のようになります。

半母音の ŭ, j は、あくまで子音なので、アクセントの位置決定には関係しません。

  • balau [balAu], baldaŭ [bAldaŭ], eŭro [Eŭro], Seulo [SeUlo], homo [hOmo], homoj [hOmoj]

脚注

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  1. 安達(2008: 12-13)
  2. 安達(2008: 14)
  3. 安達(2008: 13)

参考文献

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  • 安達信明 『ニューエクスプレス エスペラント語』 白水社、2008年 ISBN 978-4-560-06793-2

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