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ロジバン/形態論

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

概要

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ロジバンの言葉は、その姿から3つの型に分けられる。brivla(内容語)、ma'ovla(機能語)、cmevla(名称語)である。これら3つの形態品詞は、それぞれに固有の音声構造すなわち子音(C)と母音(V)の並び方に特徴づけられており、混同されないようになっている。つまり、ロジバンにおいて或る語が発せられるとき、読み手・聞き手は、その語の意味を知らなくとも品詞は察知できる、ということである。この特質は、ロジバンに固有の言葉と外から借り入れる言葉とが同音異義語となるのを防ぐうえで有意義である。(例えば「近畿大学」という日本語名称を英語に持ち込むと「Kinki University」となるが、「kinki」の音は「kinky」と重複し、「近畿」本来の意味を知らない英語話者には「Kinky University」すなわち「変態大学」と解されかねない。ロジバンでは借入語をその音形から固有語と区別できるのでこのような問題が起こらない。)


brivla

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母音で終わり、1対以上の連続子音を含むもの。いわゆる内容語で、自然言語の動詞・形容詞・副詞などに相当する。 brivla はさらに以下のように分化する。


gimvla 系

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CVCCV : cazdu, cuxna, pagre, nelci, ...
CCVCV : klama, zgike, prami, gleki, ...

異なる語派の自然言語から同じ意味の言葉を寄せ集め、特殊なアルゴリズムで融合させたものの一つ一つが、 gimvla (gismu valsi) である。一般には単に gismu と呼ばれている。5字2音節からなる。最後から2番目の音節を強勢とするロジバンの音韻論に従い、必然的に1音節目にアクセントが置かれる。形態素(rafsi)を有する。自然言語における語根基本語彙に通ずるところがある。

gismu はコンピュータで生成された。1985年現在での各6言語の話者の比率に応じて、どの音声を優先するかが定められた:
  • アラビア語 7%
  • ロシア語 9%
  • スペイン語 11%
  • ヒンディー語 16%
  • 英語 21%
  • 中国語 36%

科学数学の用語は、各分野で既に定着しているラテン語ギリシャ語由来の語句から取り込まれ、国名や文化名は土着的に用いられている言葉をロジバン化したものとなっている。例えば「ケルビン/kelvin」からは「kelvo」が、「日本/nippon」からは「ponjo」が造られた(終わりの母音が o であることは、このように例外的に生成された gimvla のほぼ全てにわたって共通している)。しかし、借用語すなわち fu'ivla のシステムがある以上、国や文化の名称をわざわざ基本語彙レベルで用意することに必然性が無いこと、また、基本語彙として備えられている名称(「日本」等)と借用語として間に合わせられている名称(「スウェーデン」等)との間に不平等があること、そういった懸念から、国・文化の名称を gismu から除くよう求める声が上がってきている。このことから gismu の総数は観点によって異なってくる。公式に登録されているのは約1350だが、真に基本語彙と定義できるものは1200以下だという声もある。


jvovla 系

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CCVCCV : zdukla (cazdu + klama)
CVCCVCCCV : cuxselgre (cuxna + se + pagre)
...

形態素(rafsi)を合わせて1つの単語としたものが jvovla (lujvo valsi) である。一般には単に lujvo と呼ばれている。必然的に5字以上となる。

形態論上は jvovla でなくても特定の用法によって複数の語を1つの lujvo として扱うことができる。 zei を用いる。これは、 jvovla の原形(tanru)を説明したり、 rafsi を持たない語(cmevla やUI類 ma'ovla 等)との合成語を造るのに役立つ:

.ui zei klaku (嬉+泣く=嬉し泣きする)
.ii zei krixa (怖+叫ぶ=ぎゃあと叫ぶ)
.u'o zei cmoni (勇+唸る=雄たけびをあげる)
B zei batke (B+ボタン=Bボタン)
MP3 zei zgica'a (MP3+音楽機器=MP3プレイヤー)
(la) .obaman. zei jecta (オバマ+政体=オバマ政権)
(la) .tokion. zei tcadu (東京+都市=東京都)

fu'ivla 系

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VCCV : iglu (igloo)
VVCCV : uiski (whisky)
CCVCVCV : spageti (spaghetti)
CCVCCVCV : zginroku (zgike + rock)
CVCCCVCV : sigrcica (sigja + شيشة)
CVCCCVCVVCV : sagrkaraoke (sanga + カラオケ)
CCVCCCVCCCCV : stasrborctci (stasu + борщ)
...

他言語の言葉を、その音声・綴りをロジバン化し、ロジバンの形態論上で使えるようにしたものが fu'ivla (fukpi valsi) である。元の形からの変化の度合にしたがって1から4までの段階に分けられる。「スパゲティ」と「おりがみ」を例に紹介する:

第1段: 外来語をそのままの綴りで cmene にし、これをさらに me でまとめる。

me la'o zoi spaghetti zoi
me la'o zoi おりがみ zoi

第2段: 外来語をロジバン化し、 cmene にし、これをさらに me でまとめる。

me la .spagetis.
me la .origamis.

第3段: ロジバン化したものに、その概念の種類を表す適切な gismu の rafsi 形を加える。

djanspageti (cidja + spageti)
larnxorigami (larcu + x + origami)

第4段: ロジバン化したものを fu'ivla の形態に順応させる。

spageti
orgami

連続子音を含む「spa」は単独の語とはなれず、またこのとき「ge」にアクセントが置かれれば「ti」は分離できない。したがって「spa ge ti」のようにばらけない。「spageti」はそのままで fu'ivla として使える。一方、「origami」はそのままでは「o ri gami」等のようにばらける。正しい fu'ivla 形ではない。「orgami」とすると、開始子音となれない「rg」が「o」を抱え込むのでばらけない。

第4段 fu'ivla の造成は高度な知識を要するので上級者向けである。可能な第4の型はこちらに詳しい。

「larnxorigami」のように、外来語部分が母音で始まる場合はこれを子音で始まるように変える。「larnorigami」のままでは最初の5字が gimvla となって「larno ri ga mi」等のようにばらける。

それ自体は有効な fu'ivla でも、冠詞などを付けると全体が jvovla に化けてばらけてしまうことがある。 fu'ivla がそうならないように確かめることを slinku'i テストという。「slinku'i」それ自体は有効な fu'ivla だが、例えば冠詞「lo」を付けて「lo slinku'i」とすると、口頭で「los-lin-ku'i」という jvovla 型として解される余地が生まれる。

ma'ovla

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母音で終わり、連続子音を含まないもの。いわゆる機能語で、自然言語の前置詞・接続詞・冠詞・助詞などに相当する。

V : a, e, i, o, u, ...
VV : au, ei, ia, o'u, u'e, ...
CV : ba, ce, di, fo, gu, ...
CVV : coi, pei, ki'a, mi'o, cu'u, ...

brivla や cmevla に属さない VVV や CVVV といった型も必然的に ma'ovla ではあるが、これらは実験用の型とされ、公式の辞書には掲載されないことになっている。

ma'ovla 同士は、繋がったり離れたりしても意味や構文に変化をもたらさない。常に連続子音を含まないので brivla の型にはならず、常に末尾が母音なので cmevla の型にもならない。例えば「u'u pu za ze'u」と「u'upuzaze'u」は、書き方が違うだけで、意味は同じである。

ma'ovla はどれも構文上の働き方にしたがって分類されている。類名(selma'o)は、その類の代表的な ma'ovla を大文字化(/'/ があればこれを小文字の /h/ に)したものから採られている。例えば「ze'i」「ze'a」「ze'u」の類名は ZEhA である。同じ分類に属する ma'ovla は同じ文法則理にしたがう。例えば「ze'u」の用法を習得するということは、 ZEhU に属する全ての ma'ovla の用法を習得することである。


cmevla

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子音で終わるもの。いわゆる名称語で、外部言語から取り込むもの(外来系)と、ロジバン内部の言葉から捻出するもの(内来系)とがある。


外来系

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CVVCC : maikl
VCVCVCVC : origamin/origamim/origamis/..
...

外来系は、音声をロジバンの音韻論に準じて調整されている。これを“ロジバン化”という。これによってロジバンの音韻論・形態論内で無理なく外来語を使えるようになる。

開音節を基本とする日本語の名称は子音で終わらなければならないロジバンの cmevla の条件を満たすことがなく、ほぼ常にロジバン化されるといっていい(ロジバン化しない用法については後述)。自分の名前や母語の言葉の音声と綴りが変えられてしまうことに困惑する初心者は少なくない。しかしこのような音韻調整は自然言語においてもごく普通に行われていることである。例えば「Michael Jackson」という英語名を日本語話者は「マイケル・ジャクソン」とカタカナにして自分達にとって扱いやすいようにする。このとき発音が [maɪkl dʒæksn] から [ma.i.ke.ɺ̠ɯ ʥa.kɯ.son] に大きく変化する。同様に「葵」 [a.o.i] という日本語名を英語話者は [eɪoɪ][eɪə.aɪ] と変えて発音する。ただしロジバンにおける語形調整は発音のしやすさを基準としているのではなく形態論上の非曖昧性・一貫性を保つことを目的としている。例えば「甘露/かんろ」という言葉をそのまま /kanro/ として持ち込むと、ロジバンに固有の「kanro/健康」と重複することとなる。持ち入れる「kanro」を /kanr/ や /kanror/ のように変えることで同音語の発生を防げる。

ロジバン化の手順:

1. 発音されない字を除去し、発音される字をロジバン用に調整・変換する。
ballet → bale
Hautes-Alpes → otzalp
Tokyo → tokio
Michael → maikl
2. 正しい音節構造をカンマで示す。
aoi (葵 [a.o.i]) → ao,i
nuiork → nu,iork
3. デフォルトでは最後から2番目の音節(penultimate)が強勢となるが、これを受け容れたくない場合、目的の強勢音節にアクセント符号をふったり大文字にして明示してもよい。
nu,iork → nu,iórk / nu,iOrk
fuku,oka → fukú,oka / fukU,oka
4. 禁音列があればこれを母音(望ましくは /y/ )で緩衝する。
racjak → racyjak
5. 末尾が子音であるようにする(母音を取り除く、或いは子音を付け加える)。
matsumoto → matsumot
tokio → tokion
ao,i → ao,is
6. 両端を /./ (ピリオド)で囲む。
tokion → .tokion.
ao,is → .ao,is.

ピリオドで区切った部分は複数個繋がって構成されていてもいい。あるいはそれらを1つの言葉としてまとめてもいい。よって /.natsumem.sosekik./ と /.natsumemsosekik./ は共に「夏目漱石」の正当なロジバン化である。また、カジュアルな用法としてピリオドを使わないロジバニストもいる。

ロジバン化をせずに外国語を用いるための処方がある:

la'o gy. Michael Jackson .gy.
la'o py. おりがみ .py.
la'o jy. 孔子 .jy.
la'o ry. هيفا وهبي .ry.
la'o xy. गौतम सिद्धार्थ .xy.

「la'o」は非ロジバン系の言葉を挿入する冠詞。挿入する語句の境界を示すための文字列が別に必要。「gy」「py」「jy」「ry」「xy」はそれぞれ「glico/英語」「ponjo/日本語」「jungo/中国語」「xrabo/アラビア語」「xindo/ヒンディー語」に由来する。字詞の末端にはドットを付けるという原則に加え、他言語部分との区切を確実にするために2つ目の境界子の頭にもドットを付けて「.py.」とする。また、自然言語以外にもコンピュータ言語、例えばWEBアドレスの境界を、字詞系 ma'ovla の代わりに cmevla で次のように示せる:

la'o .uik. http://www.wikipedia.com .uik.
la'o .gugl. http://www.google.com .gugl.
la'o .utub. http://www.youtube.com .utub.
la'o .retcan. http://www.2ch.net .retcan.
la'o .net. http://www.editgrid.com/user/tijlan/%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%90%E3%83%B3%E8%BE%9E%E6%9B%B8 .net.

しかしこのような分別は必須ではなく、他言語系全般を指す「zoi」で代用できる:

la'o zoi おりがみ zoi
la'o zoi http://www.wikipedia.com zoi

要は同じ2つの境界子で語句を囲むことで該当範囲が設定されるということ。また、字詞と違って「zoi」にはドットは不必要。

ロジバン化を回避するこの用法は、例えばリンネ式学名など、既に定着しているラテン語・ギリシャ語名称を学術的な理由からそのままの形で使い続けたい場合などに有用である。また、試験的な冠詞として「la'oi」がある:

la'oi . おりがみ .
la'oi . http://www.youtube.com .

このように境界子をドットで済ませられる。主にチャットでみかける用法である。

内来系

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CVC : pav, rel, cib, ...
CVCC : ralj, solr, nobl, ...
CCVC : cmal, klam, zgik, ...
...

「主要」を意味する「ralju」からはその末尾母音を削って「la .ralj.」とすれば「おやぶん」、「一」を意味する「pa」からはその rafsi 形「pav」を使って「la .pav.」とすれば「トップ」のようなニュアンスになる。同じ要領で「太陽」の「solri」から「la .solr.」で「おてんとさま」、「高貴」の「nobli」から「la .nol.」で「お嬢さん」、「小」の「cmalu」からは「la .cmal.」で「おチビちゃん」などとできる。


その他

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rafsi

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語を合成する形態素は rafsi と呼ばれる。子音で始まり、母音で終わる。 rafsi は単体では機能せず、必ず組み合わさって用いられる。以下で太字の部分は rafsi である:

bartyklama (jvovla)
barklama (jvovla)
barkla (jvovla)
zgiknroko (fu'ivla)
zginroko (fu'ivla)
larcnxorigami (fu'ivla)
larnxorigami (fu'ivla)