中学校社会 地理/アジア州
アジア全般
アジアの気候
アジア州はユーラシア大陸の大部分を占めているため、各地の気候は変化に富む。
東部と東南部では、アジア特有の季節風(モンスーン)の影響を受ける。このモンスーンにより、夏には海からの湿った風がくるので、東部と南部で降水量が多い。モンスーンは夏と冬で向きが逆になるのだが、東アジアの場合、夏は南風、冬は北風である。また、季節風により、アジア東部では、四季が明確である。
東南アジアと南アジアは熱帯雨林気候に属している国とサバナ気候に属している国がある。熱帯雨林気候の国ではスコールとよばれる大雨が、ほぼ決まった時間に降るため一年中雨が多く、赤道にも近いため非常に高温になっている。サバナ気候の国は降水量の非常に少ない乾季と大雨が降る雨季に分かれている。
西アジアと中央アジアには雨が非常に少ないので、砂漠気候やステップ気候などの乾燥帯に属している国々が多い。
また、シベリアとよばれるアジアの北部は冷帯(亜寒帯)に属しており、北極に近い地域にはツンドラ気候もある。
人口と農業
アジアには、中国やインドなど、人口の多い国が多い。 世界の人口の6割がアジアに集まっている。世界人口は約72億人(2014年)の内、約43億人がアジアにいる。東南アジアは、雨が多く、稲作を中心とした農業が盛ん(さかん)なため、人口密度が高い。タイやベトナムは、米の輸出国になっており、東南アジアでは、米を年に2回つくる二期作(にきさく)も多い。 世界の米の大部分はアジアで生産されている。生産量では中国が1位だが、輸出量ではタイが1位。中国の米は国内消費が中心。生産量は1位は中国、2位はインドである。輸出量は1位はタイ、2位はベトナムである。
しかし、これら東アジアや東南アジアの地域は、すでに人口が増えすぎたため、今後は少子化や人口減に向かっていく可能性がある。
一方、気候の暑い南部でも、山地や、内陸部や西アジアなどの乾燥帯などは、農業には向かないため、人口密度も低い。乾燥帯では、砂漠や草原(ステップ)が広がっている。乾燥帯の人々は、草や水を求めて家畜と移動しながら生活する遊牧をして生活していることが多い。チベット高原は、標高が高いため、冷帯であり、あまり農業には向かない。
これら西部の地域で農業をする場合は、稲作には向かないため、米以外の作物の畑作が通常。中国西部やインドでの主要な作物は、小麦などの畑作である。
アジア北部のシベリアも、アジア州である。ロシアの東部のほとんどがシベリアに含まれているが、人口密度は低い。理由は、寒くて住むには厳しいことや、あまり農業に向かない土地であるためである。
工業
東アジアや東南アジアでは、工業化が進んだ。特に日本を中心に、東アジアで工業化が進んでいる。まず日本の高度経済成長で工業化が進んだ。続いて、韓国、シンガポール、台湾などのアジアNIESで工業化した。
日本以外の東アジアや東南アジアでは、かつては、人件費の安さを利用した雑貨などの生産が多かったが、最近は技術力が高まり、東南アジアなどでも自動車部品や電気機械部品なども分業して生産するようになった。
例えば韓国では、技術力が高まり、半導体や電気機械、自動車なども多く輸出するようになっている。東南アジアでは、タイやベトナムなどに工業団地も作られている。
半導体などのハイテク産業も、韓国や日本などの東アジアでは比較的に盛んである。
また、インドでは、ソフトウェア開発などが進んでおり、IT産業がインドで
- ※ 検定教科書では、写真画像で、インドのバンガロール(地名)のITパークなどの写真がよく紹介されるが、ウィキペディアに適した写真がないので、ウィキブックスでは説明を省略する。
インドの工業ではコンピュータだけでなく、自動車産業も盛んである。
日本とアジアの関係
ここでは主に第二次世界大戦後のアジア諸国との関係についてまとめて紹介します。
韓国・北朝鮮
韓国(大韓民国)とは1965年に成立した日韓基本条約で正式に国交を回復しました。植民地時代の
北朝鮮とは2018年現在、国交がありません。
中国
中国(中華人民共和国)とは1972年に日中共同声明を出して国交を回復しました。 農業も盛んになりました。
台湾
1972年まで日本政府は台湾(中華民国)を「中国」として承認していました。日中共同声明で、中華人民共和国を「中国」としてからは、正式な国交はなくなりましたが、民間レベルでの日本と台湾の経済交流はつづいています。
東南アジア諸国
国交を回復したときに戦後
西アジア
日本は西アジア諸国から多くの原油を輸入しています。
東アジア
中国
中国(中華人民共和国)は、人口が約14億人であり、世界で二番目に人口が多く、世界の人口の約5分の1をしめている。
- 首都:北京(ペキン)
- 面積:959万 km2
- 人口:14億2570万人(2023年)
- 主な言語:中国語
中国の人口の多くは、東部の平野部や東部の沿海部に集中しています。中国の西部は山地や 砂漠 が多く、人口は少ない。
中国は、人組の夫婦の子供の数は1人だけとする 一人っ子政策(ひとりっこせいさく) を1979年から行っている。 このため、現在、人口の増加は抑えられている。かわりに、高齢者の割合がふえる高齢化(こうれいか)が予測されており、心配されている。 (中国の人口は長い間1位だったが、2023年にインドが中国の人口を抜いたと判明した。)
2015年に中国は「一人っ子政策」を廃止すると発表し、すべての夫婦に2人目までの子供をもつことを許可した。
なお、人口の分布に偏り(かたより)が見られ、東部の沿岸部に集中している(受験研究社、旺文社)。
中国の人口のうち、およそ9割の民族は漢民族(かんみんぞく)である。漢民族は、おもに中国東部に住んでいる。
ある国で、多数派でない民族は、少数民族(しょうすう みんぞく)という。中国は50以上の少数民族を持つ多民族国家(たみんぞく こっか)である。 漢民族以外に少数民族が、何種類もある。中国の民族は多くあるが、おおまかには、漢民族、ウイグル族、モンゴル族、チベット族、ミャオ(苗)族、朝鮮族、ホイ(回)族、チョワン(壮)族、などに分けられる。
中国政府は、チベット自治区など、少数民族の自治区をもうけており、伝統文化などを保護しているが、少数民族の中国からの独立などは認めてない。そのため、中国の支配に対する抵抗運動などが、チベットやウイグルなどで、たびたび起きている。中国ではチベット人やウイグル人などに対する少数民族への人権問題が生じている。
チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世(14th Dalai Lama)は、1959年にインドに亡命した。
- 政治
政治に関しては、共産党が政治の決定権をにぎっており、共産党による独裁政治の国である。たとえば政治指導者は、国民からの直接の選挙では選ばれていない。1989年には、天安門で民主化をもとめる学生の抗議運動がおきたが、この運動は弾圧された。この天安門での抗議運動に関する事件を
- 農業
中国は農業の大国である。農業は、華南(「かなん」、意味:中国の南部のこと)や華中(かちゅう、意味:北部と南部のあいだ)では、雨が多いため、稲作が多い。 東南アジアに近いハイナン(海南)島のあたりでは、年に2回、米を作る、二期作も行われる。 華北(「かほく」、意味:中国の東北部)では、雨が少ないため、小麦・大豆などの畑作が多い。西部は、乾燥しており、あまり農業にはむかず、遊牧などの牧畜である。
中国は、小麦の生産量が世界1位である。(2位インド、3位アメリカ。)
中国北部の乾燥地帯の農業では、小麦など乾燥に強い作物の畑作が盛んである。
近年、トウモロコシの生産量が増加しており、世界2位である。特に東北部で、トウモロコシの生産が多い。
- ※ 復習でここを読んでいる人は、アメリカを参考にすると良い。アメリカも中国も、小麦・大豆・トウモロコシの生産量が多い。
日本では、あまり中国の羊は有名ではないが、じつは中国は羊の飼育数が世界トップの水準である(旺文社)。2020年代では中学は世界1位の羊の飼育数である。
- ※ ただし、中国では羊毛ではなく食肉用にも生産しているようであり、オーストラリアと比べると、飼育数の割には羊毛の生産量は低いが、それでも世界1~2位の羊毛の生産量である。
- ※ 日本では、羊の肉をあまり食べないのと、羊毛ではオーストラリアがブランドになっているので、あまり中国の羊が有名ではない。
豚や牛の飼育数も、世界有数である。豚は世界1位で、4億頭以上を飼育している。
- 工業
工業は、人件費の安さを利用している。そのため、世界の多くの国に中国の製品が輸出されており、中国は「世界の工場」とも言われている。 南部の沿岸部の地域などに経済特区が多く、そのため工業地帯も南部の沿岸部に多い。南部の香港(ホンコン)の近くにあるシェンチェン(しんせん、深玔)市が経済特区であり、シェンチェンなどを中心に工業が発展している。
南部とは別にも、中国東北部には第2次大戦の前から日本の旧・満州国への投資などで発達していた工業地帯があり、戦後も東北部の工業地帯が重工業の地帯になっている。
自動車の生産台数は、中国が2023年は世界1位です。(※ 高校入試では表が与えられるので、暗記の必要はありません)
年度によって多少の変動はあるが、2022年ごろでは、2位のアメリカ合衆国が、年間で1000万台ちかくの生産であるのに比べ、中国はその2倍~3倍の 2500万~3000万台の生産をしている傾向である。
なお日本は世界3位の自動車生産国である。
4位以下は、インド(4位)、韓国(5位)、ドイツ(6位)、などが続く。
ドイツや日本と違って、中国はあまり自動車の生産国としては有名ではないですが、しかし実際の工業統計を見ると中国が世界1位です。
- 経済
第2次大戦後、中国の経済は、市場経済を禁止して、政府が経済を管理する経済政策を取った。そのため、中国は経済発展が遅れた。1980年ごろから、経済のおくれを取り戻すため、経済特区 をシェンチェン(しんせん、深圳)市やアモイ(廈門)市など一部の地域に導入し、市場経済を部分的に取り入れた。
欧米や日本などの工場も、人件費の安さや、人口の多さによる消費者の多さを当てにして、多くの外国企業の工場などが中国に進出した。こうして、中国は、経済の規模がアメリカや日本につぐ経済大国になり、中国の国内総生産(こくない そうせいさん、GDP)も日本やアメリカと同じ程度になった。
しかし、近年では、中国でも人件費が上昇しつつあり、外国企業は、より人件費の安いベトナムなどの東南アジア諸国に工場を移している。
貧富の格差も大きい。
とくに、内陸部の農村部は貧しい。そのため、農村部から出稼ぎなどで、沿岸部などの都市部に働きに出る。農村部から出稼ぎに来る人たちを 農民工(のうみんこう) と言う。
中国の経済は、その貧富の格差によって、人件費を低くおさえているという面もある。
2008年には北京(ペキン)オリンピックが開催された。2010年には、上海国際博覧会(シャンハイ こくさい はくらんかい)が開かれた。(いわゆる上海万博(シャンハイばんぱく)。 )
中国は、BRICS(ブリックス)のうちの一国として、各国の投資家などが経済発展を期待している。BRICSとはブラジル (Brazil) 、ロシア (Russia) 、インド (India) 、中国 (China) 、シンガポール (Singapore) のこと。 BRICSは国土と人口と資源の多いことから、経済発展するだろうと期待された5国のことである。(シンガポールを抜いた4国でBRICsともいわれる。)
インターネットや携帯電話やテレビなどは、都市部を中心に普及している。しかし検閲(けんえつ)などの言論統制(げんろん とうせい)が厳しく、インターネットやテレビや雑誌などでの自由な議論などは出来ない。
- 華僑
中国人は、中国の本国とは別の場所にも多く移住している。世界中のいろんな国に中国人は移住しており、それら外国にいる中国人を華僑(かきょう)と言う。
- 開発
近年(2014年に記述)では、西部の内陸部で大規模な開発が進んでいる。理由は、主に、経済格差を解消するためや、すでに沿岸部の開発が進んで沿岸部は開発の余地が減ったこと等だろう。
2009年に、内陸部の湖北(こほく、フーペイ)省で、長江(ちょうこう、揚子江(ようすこう)とも言う。)ぞいに、サンシヤ(三峡、さんきょう)ダムが完成した。ダムの建設により、長江の水の流れがせき止められるので、生態系への影響が各国の環境保護団体により心配されている。
鉄道の建設も、各地で進んでいる。西部のチベット自治区では、青蔵(せいぞう)鉄道が2006年に開通した。
環境問題
- 大気汚染
工業地帯や都市を中心に、大気汚染が深刻である。理由は主に、燃料の石炭などが大量に燃やされているため。
- 酸性雨
大気の汚染にともない、酸性雨の被害も発生している。
- 森林破壊
耕地を広げたり、工業地域や商業地域の開発などのための無理な森林開拓により、森林破壊も起きている。
- 水質汚染
工場などから出る排水などによる、水質汚染も各地で深刻である。川の魚が大量に死んだりする事例も多く発生している。
中国の国民1人あたりのエネルギー消費量は世界の平均と比べて低く、経済発展によるエネルギー消費量の上昇にともない、今後も環境破壊が進む恐れ(おそれ)がある。
領土問題
中国は周辺国と領土問題でもめている。東南アジア諸国と中国とのあいだでは、スプラトリー諸島(Spratly Islands、 中国名:南沙(ナンシャー)諸島 )をめぐって、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイと領土問題がある。
日本とは、日本の尖閣諸島(せんかく しょとう)の領有に、中国は反対をしている。2010年には、中国の漁船が、日本の海上保安庁が所有している船に衝突する事件が起きた。
台湾
- 首都:台北
- 面積:3.6万 km2
- 人口:2342万人
中国には、中国大陸を中心とした政府を持つ中華人民共和国と、もう一つ、台湾に中華民国(ちゅうかみんこく)という政府がある。
(※ この記事では、たんに「中国」といったら、中華人民共和国のこととする。台湾の中華民国政権のことを言う場合には、この節では「台湾」や「中華民国」などと区別することにする。)
台湾の政治は民主主義であり、普通選挙が行われている。
台湾(タイワン)を中心とした政権である。工業国である。
- 農業
台湾は南方にあることもあって、農業では稲作が多い。
- 工業
台湾の工業では、半導体産業やコンピュータ部品などの産業が盛んである。大陸側の人件費の安い労働力などを利用するため、台湾の企業が大陸側に工場をもうけたりしている。
- 2つの中国が出来た経緯
第二次大戦の前や戦中では、中国は中華民国という国であり、国民党という政党が支配をしていて、蒋介石(しょうかいせき)という人物が国の支配者だった。しかし第二次大戦後、ソビエト連邦の支援を受けた中国共産党が、国民党と戦闘し、中国は内戦になった。そして共産党が勝利して、中国は、1949年に 中華人民共和国(ちゅうか じんみん きょうわこく) という国になった。 共産党の支配者は毛沢東(もう・たくとう)という人物で、毛沢東が中国大陸の支配者になった。
いっぽう、負けた蒋介石ひきいる国民党は台湾に逃れた。 このため、台湾は中華民国になった。このころの中国は、「中華人民共和国」と「中華民国」との2つの中国が存在する状況になった。
しかし、日本をふくめ世界の多くの国は、台湾は中国の一部という立場にたっている。また、現在の国際連合では、中華人民共和国を中国の代表として認めており、台湾は国連に加盟できない。
東南アジア
東南アジアでは、いくつもの国があり、民族や宗教もさまざまである。
東南アジアの国々は、かつては欧米諸国の植民地であったが、第2次大戦後に独立した。第二次大戦で、日本軍と、東南アジアを支配していた欧米諸国の軍とが戦闘をした。日本が戦闘を有利にすすめるため、現地の独立運動を軍事的に支援したり、欧米の軍との戦闘によって欧米の軍が弱体化したこともあり、東南アジア諸国での戦後の独立を早めることになった。 だがベトナムなど一部の地域では、戦時中に現地の住民と日本軍とが対立し、住民に被害も出た。
農業
気候的に暖かく、降水量も多いため、米(コメ)の栽培に有利である。地域によっては、年に2回の米を作る二期作(にきさく)が行われる。ただし、かんがい設備などの不足で、貧しい米農家は一期作である。
農業では、ヨーロッパ州などの植民地の時代に、天然ゴムやコーヒーなどの大農園(プランテーション)が開かれた地域も多い。独立後は、現地の人や現地の企業などによって、それらの農園が経営されている。現在では、それらの農産物が主要な輸出品になっている国も多い。プランテーションの作物は、輸出用の商品作物が中心である。
なお現在では合成ゴムの発明によって、天然ゴムの売れ行きが減っている。
マレーシアではアブラやし(油やし) が、さかんに栽培されている。 油やしから取れる油をパーム油という。パーム油は洗剤や食用油やせっけんやマーガリンなどの原料である。日本にも東南アジア産パーム油は輸出されている。
第二次大戦後、天然ゴムの売り上げが減るいっぽう、アブラやしの売り上げが増えたので、マレーシアでは天然ゴム園をアブラやし園に変える転換が進んだ。
フィリピンでは、バナナが主要な産業。
インドネシアなどで、木材を輸出するためやアブラやし園をつくるために熱帯雨林を伐採していたり、農地を無理に拡大するために熱帯雨林を伐採していたりするので、熱帯雨林の破壊が、あやぶまれている。インドネシアの焼き畑による農業も、森林の破壊をまねいている。
かつてインドネシアは丸太をそのまま日本など先進国に輸出していたが、1970年代ごろから自国の工業化のため、丸太のままの輸出を禁止し、板などに加工しないと輸出できないようにする規制がされるようになり、現在も規制が続いている。
タイやベトナムは、米の輸出国である。タイは米の輸出量が世界1位。ベトナムは米の輸出量が世界2位。(生産量では中国のほうが多いが、中国の米は国内消費用であり、輸出量はやや少ない。)
タイやインドネシアなど海沿いの国は、えびを日本向けに養殖して輸出してる産地でもある。えびの養殖場をつくるため沿岸部のマングローブ林が伐採され、森林破壊につながっている、という問題点もある。
資源
インドネシアなどは、石油や石炭、天然ガス、すず などが産出し、輸出されている。第2次大戦で日本軍が東南アジアに進出した目的の一つは、これらの資源を獲得するため。軍艦などの兵器を動かすには、石油が必要である。戦前の当時、日本は欧米諸国と対立し、石油などの輸入制限をされており、日本は石油などが不足していた。
宗教
東南アジアの宗教は、地域によってさまざまである。 インドネシアではイスラム教が多くの人に信仰されている。インドネシアは国全体ではイスラム教徒が多いが、例外的に、インドネシアのバリ島では、ヒンドゥー教を信仰する人が多い。(※ 教育出版の検定教科書にインドネシアのバリ島にはヒンドゥー教が広まっていることが記述されている。)タイでは仏教徒が多い。フィリピンでは欧米の植民地の時代にキリスト教が普及したため、キリスト教徒が多い。
工業や経済
欧米などの企業や工場が、かつては中国の人件費が安かったので中国に進出をしていたが、近年では、欧米諸国は、より人件費の安い東南アジアのベトナムなどに進出先を変えている。 また、1980年ごろから欧米や日本企業が、シンガポールやタイやマレーシアなどに進出している。
この1980年ごろからの工業化にともない、タイやマレーシアでは都市部などに工業団地が作られた。
- 1980年代、マレーシアのマハティール首相(当時)が日本に見習うルックイースト政策を打ち出し、植民地時代のイギリスという西洋ではなく(マレーシアはイギリスの植民地だった)、これからは、日本や韓国・台湾など東洋のアジアの工業国を見習って工業化をしていこうという政策を掲げ、また日本など先進工業国からの工場を誘致していった。(※ 「ルックイースト政策」は中学範囲外だが、マレーシアが1980年代以降から工業国であることは範囲内。教育出版の教科書などに、1980年代からのマレーシアの工業化が書かれている。)
このような日本からの工場誘致の政策が成功したため、マレーシアで工場が増えていった。
同じころ、タイも、日本から工業を誘致する政策を行った。そのため現在では、東南アジアではタイとマレーシアが主な工業国である。
これら(タイ、マレーシア、インドネシアなど)の国で工業団地がつくられたのが都市部の近くだったため、都市部の周辺は豊かになったが、しかし都市から離れた農村部は豊かにならなかった。そのため都市と農村との経済格差がこれらの国で存在している、と考えられている。
いっぽう、1980年代ごろまでのベトナムは、ソビエト連邦などと友好的であり、いっぽう日本やアメリカとは対立していた。このため、ベトナムには日本やアメリカからの投資がなく、ベトナムは工業化におくれることになった。
2016年の今でこそ、ベトナムも工業国であるが、それは、ベトナムの発展がおくれたため、ベトナムでは人件費が安いので、衣服など人手の掛かる産業の工場がベトナムに建てられていった、というような事情によるものである。
現在、工業団地もタイやベトナムやインドネシアなどに作られている。日本の製造業も、タイやインドネシアの工業団地に多く進出している。 東南アジアの工業では、かつては人件費の安さを利用した雑貨などの生産が多かった。しかし、最近は技術力が高まり、東南アジアなどでもインドネシアやタイなどの工業団地で、自動車部品や電気機械部品などを生産するようになった。
ASEAN
ASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)は、1967年に結成された、東南アジア諸国どうしの経済協力のための連合。1967年にインドネシア、タイ、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5カ国が加盟した。加盟国は、現在では10国に増えている。 本部はインドネシアのジャカルタにある。
東南アジアの国々
タイ
第二次大戦前、東南アジアの多くが欧米の植民地になる時代のなかで、タイは唯一、植民地にならなかった国である。その理由は、ヨーロッパ諸国どうしが領土問題を起こして戦争しないようにさせるため、ヨーロッパ諸国の植民地の領土を直接は接触させないように、「
シンガポール
マレー半島の先端にある島国。 中国系の住民が多い。東南アジアなどでの中国系の住民のことを華人(かじん)という。シンガポールでは華人が経済の中心である。
観光重視の政策のため、路上にごみを捨てると、きびしく罰せられる。金融や、電子機械などの工業などが中心である。農業は盛んではない。シンガポールは比較的早くから貿易の拠点として経済発展したこともあり、東南アジアにおける金融の中心地にもなっている。
南アジア
インドと周辺国
インドの気候は熱帯である。地域によって、雨の多い地域と少ない地域がある。
インドは東部の地域は多雨。西部は乾燥。東部に ガンジス川 がある。西部に インダス川 がある。
インド東部のガンジス川流域では稲の栽培がされており、降水量が比較的に多かったり、川の豊富な水を利用したりなどして、農業で稲の栽培もされている。
一方、西部の農業では、乾燥に強い小麦の生産がインド西部のインダス川流域のパンジャブ地方などで盛んに行われている。 インドは、世界的なコメの産地である。だが、インドのコメは国内消費用であり、輸出される割合は少ない。
インドの周辺国には東部の隣国に バングラデシュ があり、西部の隣国に パキスタン がある。バングラデシュの気候も、インド東部と同様に多雨であり、バングラデシュの農業も米の生産が盛ん(さかん)である。
インドでの米や小麦など穀物の生産は、国内での自給用であり、輸出はタイなどの東南アジアよりも少ない。
インドは茶や綿花の栽培も盛んである。とくに、降水量のすくないインド西部の農業では、綿花の栽培が盛ん。インド北東部のアッサム地方が、世界的にも紅茶の産地。インドの周辺国のスリランカも、紅茶の産地として有名。アッサム地方は、
インドがイギリスの植民地だったこともあり、イギリスなどヨーロッパに人気のある紅茶用の茶の栽培が、これらの地域で盛ん。
インド中部のデカン高原では綿花の栽培が盛ん。このため、繊維工業も盛ん。
インドでは近年、情報技術(IT)産業が盛んで、BRICSのひとつである。
- 民族と言語
インドが多民族国家なこともあり、公用語のヒンディー語についで英語がインド国民どうしの共通語として普及している。人口は約14億である。2023年に中国の人口を抜き世界1位となった。
- 工業など
インドはコンピューターのソフトウェア開発の産業が盛んなIT大国である。インドは英語が得意な人も多いので、アメリカなどとのビジネス交渉に有利であり、また人件費も安い。時差を利用して、アメリカから受けた注文を、アメリカでは夜中のうちに仕事を片づけるので(アメリカが夜のとき、インドは昼間)、アメリカからするとインドと協力することで開発が速く出来る。インド南部のバンガロールなどでソフトウェア開発などのIT産業が盛ん。
鉄鋼業や機械工業が盛んである。
インドはBRICsのうちの一国であり、各国の投資家などが経済発展を期待している。
- 宗教
ヒンドゥー教 が信仰されている。ヒンドゥー教などの、インドの古い身分制度である カースト制 の影響がインドに残っている。カースト制は法律では禁止されているが、インドの人々の意識に深く残っている。インドでの職業の固定化の傾向や格差などは、カースト制の影響だろうと言うのが、国際的な通説である。
ガンジス川 が「聖なる水」としてヒンドゥー教の信仰の対象になっており、ガンジス川に水浴びにくる信者も多い。ヒンドゥー教は多神教である。牛を神聖な動物として崇めているため、牛肉は食べない。
- 周辺国
イギリスからのインドの独立後、ヒンドゥー教徒の多い民族と、イスラム教など異教徒の多い民族との対立から、いくつかの国がインドから独立した。 1947年にはイスラム教の多いパキスタンがインドから独立。1948年には仏教徒の多い スリランカ(当時の国名は「セイロン」) がインドから独立。1971年には、東西に分かれていた東パキスタンからバングラデシュが独立。 なお、スリランカは茶の産地として有名。スリランカの丘陵地(きゅうりょうち)で、茶が栽培されている。茶は水捌けのよい場所で栽培しやすいので、丘陵地などで栽培される。
スリランカは1972年に国名を「セイロン」から「スリランカ」に改称した。
西アジア
具体的にどの国を「西アジア」というかというと、おおむね、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦などである。
西アジアは降水量が少なく、あまり農業に向かないが、乾燥につよい小麦やナツメヤシを栽培する。
サウジアラビアなど、西アジアの気候は 乾燥帯(かんそうたい) であり、さばくが多い。東アジアを湿潤(しつじゅん)アジアと言う場合があるのに対し、西アジアは乾燥アジアと呼ばれることもある。
- ※ なお、エジプトは西アジアではない。エジプトはアフリカ大陸の北部にあり、つまりエジプトはアフリカ州の国である。
西アジアの国々では石油が産出する国が多く、それら産油国では石油産業が主な産業である。石油産業は1960年代ごろから国有化がなされている。貿易で石油や原油を多く輸出している。日本も西アジアから石油を多く輸入している。
西アジアで、最も石油の生産量が多いのはサウジアラビアである。そのほか、イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦で、石油の産出量や輸出量が多い。
サウジアラビアは石油の産出量で世界3位。(1位はアメリカ、2位はロシア) サウジアラビアの原油の埋蔵量は世界の約5分の1で、埋蔵量ではサウジアラビアが世界2位。1位はベネズエラである。西アジアの国々は世界の石油埋蔵量の半数近くを占めている。
産油国は石油価格をコントロールするため、産油国どうしで 石油輸出国機構(せきゆ ゆしゅつこく きこう、OPEC、オペック) を1960年代につくった。当初はOPECにイラク、イラン、クウェート、サウジアラビアなどが加盟した。現在は、アラブ首長国連邦、カタールなども加盟している。 現在ではOPECの影響力が低下しており、理由はOPEC加盟国以外の石油の産出が原因である。
(※ OPECは、西アジア諸国だけが加盟しているのでなく、アフリカ諸国の産油国も比較的に初期から加盟している。アフリカ州の国であるリビアやアルジェリアやナイジェリアなどが、比較的に初期から加盟している。)
西アジアの宗教は、 イスラム教の国が多い。サウジアラビアは、イスラム教の発祥の地であり、聖地のメッカとメディナはサウジアラビアにある。サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦などで、イスラム教がおもに信仰されている。イスラム教の最大派閥はスンナ派である。また、イランやイラクなどではイスラム教シーア派が信仰されている。
西アジアの民族には、アラブ系の民族が多い。西アジアの言語の文字にはアラビア文字や、その系統の文字を用いる。
ただし、イスラエルはユダヤ教の国である。イスラエルは、文化などがヨーロッパ州に近い。
OPECは、決してヨーロッパにおけるEUのような地域経済の統合を目指した機構ではない。
2024年現在のOPEC加盟国を見ると、アフリカ州の西南部のナイジェリア、いわゆる中南米(アメリカ州の一部地域)のベネズエラなど、西アジアからは遠く離れた国も入っている。北アフリカのリビアなども加盟している。
あくまでOPECは、石油の輸出国が、自分たちに有利な国際社会の合意をつくるための機構である。