線型代数学/行列概論

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ベクトル 線型代数学 線型方程式

定義[編集]

定義0.2.1

数mと数nはそれぞれ自然数とする、つまりm,n \in \N とする。mn個のKの元 a_{i,j}\in\bold K(i=1,2,\cdots,m,~j=1,2,\cdots,n)を、丸括弧で囲んだ中に次のように縦にm個、横にn個、表のように並べて書いたものを、m行n列の行列(matrix)と言う。(m×n)-行列とも言う。

\begin{pmatrix}
  a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \dots & a_{1,n}\\
  a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \dots & a_{2,n}\\
  a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \dots & a_{3,n}\\
  \vdots  & \vdots  & \vdots  & \ddots& \vdots\\
  a_{m,1} & a_{m,2} & a_{m,3} & \dots & a_{m,n}\\
\end{pmatrix}

行列を表す時に、( )ではなく [ ] で囲むこともしばしばある。本書ではすべて( )で統一することにする。

この行列を構成するa_{i,j}\in \bold Kを行列の成分(element)と言う。横に並んだ一列を(row)、縦に並んだ一列を(column)と言う。上からi番目の行を第i行といい、左からj番目の列を第j列と言う。行列内の第i行、第j列に位置する成分を、この行列の(i,j)-成分と言う。しばしば行列AをA=(ai,j)と書くことがあるが、これは(i,j)-成分がai,jであるような行列を示す。成分が全て実数の行列を実行列と言い、成分が全て複素数の行列を複素行列という。また、m=nの場合、(n×n)-行列を特にn次正方行列あるいはn次行列と呼ぶ。

定義0.2.2

成分が全て体Kの元であるような(m×n)-行列全体の集合を M (m,n;K)で表す。特に成分が全て体Kの元であるn次行列全体の集合を M (n;K)で表す。

定義0.2.3

成分が全て0の行列を零行列(zero matrix)といい、Oと書く。特に(m×n)-行列であることを明示する場合には、Om,nと書き、n次行列であることを明示する場合にはOnと書く。

相等関係[編集]

定義0.2.4

2つの(m×n)-行列A,Bに関し、AとBが等しいとは、2つの行列の対応する成分が全て等しいことを言う。すなわち、

A,B \in M(m,n;\bold K), A=(a_{i,j}), B=(b_{i,j}) (i=1,\cdots,m,~j=1,\cdots,n)のとき、
A = B \iff \forall i,j,~a_{i,j} = b_{i,j}

演算[編集]

和・定数倍[編集]

2個のm行n列行列ABについて、つまりA,B \in M(m,n;\bold K)について、行列の和 A+B を次のように定義する。

定義0.2.5

A=\begin{pmatrix}
  a_{1,1} & a_{1,2} & \cdots & a_{1,n}\\
  a_{2,1} & a_{2,2} & \cdots & a_{2,n}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots \\
  a_{m,1} & a_{m,2} & \cdots & a_{m,n}\\
\end{pmatrix}, B=\begin{pmatrix}
  b_{1,1} & b_{1,2} & \cdots & b_{1,n}\\
  b_{2,1} & b_{2,2} & \cdots & b_{2,n}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots \\
  b_{m,1} & b_{m,2} & \cdots & b_{m,n}\\
\end{pmatrix} のとき、

A+B=\begin{pmatrix}
  a_{1,1}+b_{1,1} & a_{1,2}+b_{1,2} & \cdots & a_{1,n}+b_{1,n}\\
  a_{2,1}+b_{2,1} & a_{2,2}+b_{2,2} & \cdots & a_{2,n}+b_{2,n}\\
  \vdots          & \vdots          & \ddots & \vdots\\
  a_{m,1}+b_{m,1} & a_{m,2}+b_{m,2} & \cdots & a_{m,n}+b_{m,n}\\
\end{pmatrix}

また、行列A \in M(m,n;\bold K)と定数\lambda \in \bold Kについて、行列の定数倍 \lambda A を次のように定義する。

定義0.2.6

A=\begin{pmatrix}
  a_{1,1} & a_{1,2} & \cdots & a_{1,n}\\
  a_{2,1} & a_{2,2} & \cdots & a_{2,n}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots \\
  a_{m,1} & a_{m,2} & \cdots & a_{m,n}\\
\end{pmatrix} のとき、

\lambda A=\begin{pmatrix}
  \lambda a_{1,1} & \lambda a_{1,2} & \cdots & \lambda a_{1,n}\\
  \lambda a_{2,1} & \lambda a_{2,2} & \cdots & \lambda a_{2,n}\\
  \vdots         & \vdots         & \ddots & \vdots \\
  \lambda a_{m,1} & \lambda a_{m,2} & \cdots & \lambda a_{m,n}\\
\end{pmatrix}
定義0.2.7

特に、\lambda=-1のとき、(-1)Aを-Aと書く。

また、A+(-B)をA-Bと書く。

次の性質は明らかであろう。

定理0.2.8

m行n列の3個の行列A,行列B,行列Cについて、つまり3個の行列A, B, C \in M(m,n;\bold K)について 、任意の2個の定数を\lambda, \mu \in \bold Kとすると、以下の関係が成り立つ。

  • 結合法則: (A+B)+C=A+(B+C)
  • 交換法則: A+B=B+A
  • \lambda (A+B)=\lambda A+ \lambda B
  • (\lambda +\mu )A=\lambda A+\mu A
  • (\lambda \mu )A=\lambda (\mu A)
  • 1A=A, 0A=O
  • A+O=A, A-A=O

[編集]

2個の行列ABについて、Aの列数とBの行数が同じでA \in M(m,n;\bold K), B \in M(n,l;\bold K)の場合に、行列の積ABを次のように定義する。

定義0.2.9

A=\begin{pmatrix}
  a_{1,1} & a_{1,2} & \cdots & a_{1,n}\\
  a_{2,1} & a_{2,2} & \cdots & a_{2,n}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots\\
  a_{m,1} & a_{m,2} & \cdots & a_{m,n}\\
\end{pmatrix} , B=\begin{pmatrix}
  b_{1,1} & b_{1,2} & \cdots & b_{1,l}\\
  b_{2,1} & b_{2,2} & \cdots & b_{2,l}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots\\
  b_{n,1} & b_{n,2} & \cdots & b_{n,l}\\
\end{pmatrix} のとき、AとBの積ABを

c_{i,j}=\sum_{k=1}^n a_{i,k}b_{k,j} = a_{i,1}b_{1,j} + a_{i,2}b_{2,j} + \cdots + a_{i,n}b_{n,j}~(i=1,\cdots,m,~j=1,\cdots,l) によって
AB=\begin{pmatrix}
  c_{1,1} & c_{1,2} & \cdots & c_{1,l}\\
  c_{2,1} & c_{2,2} & \cdots & c_{2,l}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots\\
  c_{m,1} & c_{m,2} & \cdots & c_{m,l}\\
\end{pmatrix} \in M(m,l;\bold K)

と定める。

行列同士の積は全ての二行列に対して定義されているわけではない。(m×n)-行列と(n×l)-行列の間にのみ定義されているのである。

例題 次の計算をせよ。

\begin{pmatrix}
 -7 & -6 & -5\\
 -4 & -3 & -2\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 -1 & 0 &1\\
 2 & 3 & 4\\
 5 & 6 & 7\\
\end{pmatrix}
解答
\begin{align}
\begin{pmatrix}
 -7 & -6 & -5\\
 -4 & -3 & -2\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 -1 & 0 &1\\
 2 & 3 & 4\\
 5 & 6 & 7\\
\end{pmatrix} &=
\begin{pmatrix}
 (-7)(-1)+(-6)\times 2+(-5)\times 5 & (-7)\times 0+(-6)\times 3+(-5)\times 6
 & (-7)\times 1+(-6)\times 4+(-5)\times 7\\
 (-4)(-1)+(-3)\times 2+(-2)\times 5 & (-4)\times 0+(-3)\times 3+(-2)\times 6
 & (-4)\times 1+(-3)\times 4+(-2)\times 7\\
\end{pmatrix} \\
&=\begin{pmatrix}
 -30 & -48 & -66\\
 -12 & -21 & -30\\
\end{pmatrix}
\end{align}

例題

A \in M(k,l), B \in M(l,m), C \in M(m,n) について、A(BC)=(AB)Cを証明せよ。

解答

A=(ap,q)B=(bq,r)C=(cr,s)

(p=1,2,...,k;q=1,2,...,l;r=1,2,...,m;s=1,2,...n)とすると、

ABの(p,r)成分は\sum_{q=1}^l


よって(AB)Cの(p,s)成分は

\sum_{r=1}^m\sum_{q=1}^l a_{p,q}b_{q,r}c_{r,s}     (1.5)

一方、BCの(q,s)成分は\sum_{r=1}^r b_{q,r}c_{r,s}なので、

A(BC)の(p,s)成分は、

\sum_{q=1}^l\sum_{r=1}^m b_{q,r}c_{r,s}a_{p,q}

これは、(1.5)と等しい。よって、(AB)C=A(BC)                     #

行列の積について、次が成り立つ。

定理0.2.10
  1. A \in M(m,n;\bold K),~B,C \in M(n,l;\bold K) のとき、
    A(B+C)=AB+AC
  2. A, B \in M(m,n;\bold K),~C \in M(n,l;\bold K) のとき、
    (A+B)C=AC+BC
  3. A \in M(m,n;\bold K) のとき、
    AO_{n,l}=O_{m,l}, ~O_{k,m}A=O_{k,n}
  4. 特に、A \in M(n;\bold K) のとき、
    AO_{n}=O_{n}A=O_{n}

任意の行列に、適当な零行列をかけると、常に零行列が得られる。零行列は、実数における0に似ている。

単位行列[編集]

定義0.2.11

A=(a_{i,j}) \in M(n;\bold K) に対して、成分a_{k,k} \in \bold K, ~k=1,\cdots,nを、n次正方行列Aの対角成分(diagonal element)という。

定義0.2.12

対角成分がすべて1で、その他の成分がすべて0であるようなn次正方行列を単位行列(elementary matrix、あるいはidentity matrix)といい、EnやInと表す。nが明らかである場合にはしばしば省略して、EやIと表すこともある。

すなわち、

I_n =\begin{pmatrix}
  1 & 0 & \cdots & 0 \\
  0 & 1 & \cdots & 0 \\
  \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
  0 & 0 & \cdots & 1 
\end{pmatrix} \in M(n;\bold K)

である。

EやIは、それぞれElementary, Identityの頭文字である。どちらも一般的に用いられるが、本書ではIと表記することにする。

単位行列は次の性質をもつ。

定理0.2.13
  • A \in M(m,n;\bold K), ~ AE_n = A
  • B \in M(n,l;\bold K), ~ E_nB = B

特に、A \in M(n;\bold K)であれば、

AE_n = E_nA = A

である。

実数における1にあたるものが、単位行列だと思えばよい。

転置行列[編集]

定義0.2.14

A=\begin{pmatrix}
  a_{1,1} & a_{1,2} & \cdots & a_{1,n}\\
  a_{2,1} & a_{2,2} & \cdots & a_{2,n}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots\\
  a_{m,1} & a_{m,2} & \cdots & a_{m,n}
\end{pmatrix} \in M(m,n;\bold K) に対して

\begin{pmatrix}
  a_{1,1} & a_{2,1} & \cdots & a_{m,1}\\
  a_{1,2} & a_{2,2} & \cdots & a_{m,2}\\
  \vdots  & \vdots  & \ddots & \vdots\\
  a_{1,n} & a_{2,n} & \cdots & a_{m,n}\\
\end{pmatrix} \in M(n,m;\bold K)

をAの転置行列(transposed matrix)と言い、^tAと表す。

つまりtAとは、Aの縦横をひっくり返した行列である。

以下のような性質が成り立つ。

定理0.2.15
  1. A \in M(m,n;\bold K)のとき、
    t(tA)=A
  2. A, B \in M(m,n;\bold K)のとき、
    t(A+B)=tA+tB
  3. A \in M(m,n;\bold K), \lambda \in \bold Kのとき、
    ^t(\lambda A) = \lambda (^tA)
  4. A \in M(m,n;\bold K),~B \in M(n,l;\bold K)のとき、
    t(AB)=tBtA

複素行列[編集]

この項では、\bold K = \Cとして話を進める。

定義0.2.16

行列 A=(a_{i,j}) \in M(m,n;\C) の全ての成分をその複素共役と置き換えた行列

(\overline{a_{i,j}}) \in M(m,n;\C)

を、Aの複素共役行列(complex conjugate matrix)といい、\overline{A} で表す。

以下のような性質がある。

定理0.2.17

A, B \in M(m,n;\C), ~C \in M(n,l;\C), ~\lambda \in \Cのとき、

  • \overline{\overline{A}}=A
  • \overline{A+B}=\overline{A}+\overline{B}
  • \overline{\lambda A}=\overline{\lambda}~\overline{A}
  • \overline{AC}=\overline{C}~\overline{A}

一番最後の式には注意せよ。とりあえず、ここで一休みして、演習をやろう。

演習

1.定理(1.5.1)を証明せよ
2.計算せよ
(1)\begin{pmatrix}
 1 & -2 & 3\\
 2 & 1 & 0\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 -2 & -1 & 1\\
 1 & 2 & -3\\
 2 & 0 & 3\\
\end{pmatrix}
(2)\begin{pmatrix}
 1 & 1 & 1\\
 1 & 1 & 1\\
 1 & 1 & 1\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 2\\
 3\\
 4\\
\end{pmatrix}
(3)\begin{pmatrix}
 1 & i\\
 -i & 1\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 1-i & 0\\
 0 & 1+i\\
\end{pmatrix}
(4)\begin{pmatrix}
 2 & 1+i & 3i\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 2\\
 1+i\\
 -3i\\
\end{pmatrix}
(i=\sqrt{-1})

3.

対角成分*1が全て1それ以外の成分が全て0のn次正方行列*2を、単位行列と言い、Enと書く。つまり、
E_n=(\delta_{i,j}), \delta_{i,j}=\begin{cases}
 1(i=j)\\
 0(i\neq j)
\end{cases}
このδi,jを、クロネッカーのデルタ(Kronecker delta)と言う、またはクロネッカーの記号と言う。この時、次のことを示せ。
(1)A=\begin{pmatrix}
 -1 & -2\\
 -2 & -4\\
\end{pmatrix}のとき、AX=E2を満たすXは存在しない
(2)B=\begin{pmatrix}
 -1 & -2\\
 0 & 0\\
\end{pmatrix}の時、(1)の定義で、BX=AとなるXが存在しない。
また、YB=Aを満たすYが無数に存在する。
(3)n次行列(n次正方行列)Aのある列が全て0なら、AX=Eを満たすXは存在しない。
*1対角成分:n次正方行列A=(ai,j)で、(i=1,2,...,n;j=1,2,...,n)ai,i=a1,1,a2,2,...,an,nのこと
*2n次正方行列:行と、列の数が同じnの時の行列

区分け[編集]

A=\begin{pmatrix}
 1 & 3 & -1 & 0\\
 2 & 1 & 3 & 2\\
 1 & 2 & 3 & 4\\
\end{pmatrix}は、

A_1=\begin{pmatrix}
 1 & 3 & -1\\
 2 & 1 & 3\\
\end{pmatrix},  A_2=\begin{pmatrix}
 0\\
 2\\
\end{pmatrix}

A_3=\begin{pmatrix}
 1 & 2 & 3\\
\end{pmatrix},  A_4=\begin{pmatrix}
 4\\
\end{pmatrix}

とすることで、

A=\begin{pmatrix}
 A_1 & A_2\\
 A_3 & A_4\\
\end{pmatrix}

一般に、

定義(2.1)行列の区分け

(l,m)型行列A=(ai,j)をp-1本の横線とq-1本の縦線でp×qの島に分けて、上からs番目、左からt番目の行列をAs,tとおいて、

A=\begin{pmatrix}
 A_{1,1} & A_{1,2} & A_{1,3} & \dots & A_{1,q}\\
 A_{2,1} & A_{2,2} & A_{2,3} & \dots & A_{2,q}\\
 A_{3,1} & A_{3,2} & A_{3,3} & \dots & A_{3,q}\\
 \dots & \dots & \dots & \dots & \dots\\
 A_{p,1} & A_{p,2} & A_{p,3} & \dots & A_{p,q}\\
\end{pmatrix}

とすることを、行列の区分けと言う。


定理(2.2)

同様に区画された同じ型の、

A=\begin{pmatrix}
 A_{1,1} & A_{1,2} & A_{1,3} & \dots & A_{1,q}\\
 A_{2,1} & A_{2,2} & A_{2,3} & \dots & A_{2,q}\\
 A_{3,1} & A_{3,2} & A_{3,3} & \dots & A_{3,q}\\
 \dots & \dots & \dots & \dots & \dots\\
 A_{p,1} & A_{p,2} & A_{p,3} & \dots & A_{p,q}\\
\end{pmatrix},  B=\begin{pmatrix}
 B_{1,1} & B_{1,2} & B_{1,3} & \dots & B_{1,r}\\
 B_{2,1} & B_{2,2} & B_{2,3} & \dots & B_{2,r}\\
 B_{3,1} & B_{3,2} & B_{3,3} & \dots & B_{3,r}\\
 \dots & \dots & \dots & \dots & \dots\\
 B_{q,1} & B_{q,2} & B_{q,3} & \dots & B_{q,r}\\
\end{pmatrix}

C=AB=\begin{pmatrix}
 C_{1,1} & C_{1,2} & C_{1,3} & \dots & C_{1,r}\\
 C_{2,1} & C_{2,2} & C_{2,3} & \dots & C_{2,r}\\
 C_{3,1} & C_{3,2} & C_{3,3} & \dots & C_{3,r}\\
 \dots & \dots & \dots & \dots & \dots\\
 C_{p,1} & C_{p,2} & C_{p,3} & \dots & C_{p,r}\\
\end{pmatrix}

がある。この時、

C_{s,u}=\sum_{t=1}^q A_{s,t}B_{t,u}=A_{s,1}B_{1,u}+A_{s,2}B_{2,u}+...+A_{s,q}B_{q,u}     (2.3)

(s=1,2,...,p;u=1,2,...,r)

(証明)

(i)
As,tを(ls,mt),Bt,uを(mt,nu)とすると、As,tBt,uは、tと関係なく、(ls,mt)型行列であるから、それらの和Cs,uも(ls,mt)型行列である。よって、(2.3)は意味を成す。
(ii)
Aを(l,m)Bを(m,n)型、(2.3)の両辺の対応する成分を(α,β)、
i=\sum_{j=1}^{s-1} l_j+\alpha=l_1+l_2+\dot+l_{s-1}+\alpha,
k=\sum_{j=1}^{u-1} n_j+\beta=n_1+n_2+\dot+n_{u-1}+\beta.
とおけば、Cs,uの(α,β)成分とCの(i,k)成分,As,tBt,uは等しく、それは
\sum_{j=1}^m a_{i,j}b_{j,k}であり且
\sum_{j=(\sum_{j=1}^{t-1} m_j)+1}^{\sum_{j=1}^t m_t} a_{i,j}b_{j,k}
\sum_{t=1}^q A_{s,t}B{t,u}の(α,β)成分=\sum_{j=1}^m a_{i,j}b_{j,k}
(i),(ii)より、定理(2.2)は証明された                             #

p=q=r=2とすると、\begin{pmatrix}
 A_{1,1} & A_{1,2}\\
 A_{2,1} & A_{2,2}\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 B_{1,1} & B_{1,2}\\
 B_{2,1} & B_{2,2}\\
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
 A_{1,1}B_{1,1}+A_{1,2}B_{2,1} & A_{1,1}B_{1,2}+A_{1,2}B_{2,2}\\
 A_{2,1}B_{1,1}+A_{2,2}B_{2,1} & A_{2,1}B_{1,2}+A_{2,2}B_{2,2}\\
\end{pmatrix}     (2.4)
A2,1,B2,1=Oとすると、(2.4)右辺は
\begin{pmatrix}
 A_{1,1}B_{1,1} & A_{1,1}B_{1,2}+A_{1,2}B_{2,2}\\
 O & +A_{2,2}B_{2,2}\\
\end{pmatrix}
と、区分けはこの時威力を発揮する。A1,2,B1,2=Oならさらに威力を発揮する。
\begin{pmatrix}
 A_{1,1}B_{1,1} & O\\
 O & +A_{2,2}B_{2,2}\\
\end{pmatrix}

気付いた人もいると思うが、(m,1)型行列はm項ベクトルである。特に、m項列ベクトルm項縦ベクトルと言う。高校の教育課程を学んだ人は、(1,n)型行列が表す、n項行ベクトルn項横ベクトルにも馴染みがあるだろう。(だが本来はベクトルは縦ベクトルで書くべきなのだ)そこで、(m,n)型行列Aを縦ベクトルn個(a1,a2,...,an)に分割するとき、
A=(a1 a2 ... an)
と表せる。また、同様に横ベクトルm個(b1,b2,...,b)
分割したとすれば、
A=\begin{pmatrix}
 \mathbf{b}_1\\
 \mathbf{b}_2\\
 \dots\\
 \mathbf{b}_m\\
\end{pmatrix}と書ける。
単位行列Enをn個の縦ベクトルに分割したときの、そのベクトルをn項単位ベクトルと言う。これは、ベクトルの項でのべた、2,3次における単位ベクトルの定義の一般化である。Eのことを単位行列と言う意味が分かっただろうか。ここでAを、(l,m)型Bを(m,n)型と定義しなおし、
B=(b1,b2,...,bn)
とすると、
AB=(Ab1,Ab2,...,Abn)
この事実は、定理(2.2)の特殊化である。
数学とは関係ないが、ウィキ文では縦ベクトルをあらわすときも、行列を表す時も、\begin{pmatrix}~\end{pmatrix}の形をしている


縦ベクトルx=(xi)は、

x=x1e1+x2e2+...+xkek

と表す事が出来るが、一般に

x1a1+x2a2+...+xkak

a1,a2,...,ak線型結合と言う。

演習

計算せよ

(1)\begin{pmatrix}
 1 & 1 & 0 & 0\\
 0 & -2 & 0 & 0\\
 0 & 0 & -2 & 3\\
 0 & 0 & 1 & 1\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 2 & 1 & 0 & 0\\
 0 & 1 & 0 & 0\\
 0 & 0 & 1 & 1\\
 0 & 0 & -2 & 3\\
\end{pmatrix}

(2)\begin{pmatrix}
 2i & 0 & 0\\
 0 & -i & 0\\
 0 & 0 & 3i\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 -1 & 0 & 0\\
 0 & 2 & 0\\
 0 & 0 & 1\\
\end{pmatrix}(i=\sqrt{-1})

行列の演算続き[編集]

A-1[編集]

一章の演習3の内容を思い出して欲しい。AX=EとなるようなXは必ずしも存在しなかった。逆行列は、AX=Eが成り立つような行列にのみ定義される。

定義(3.1.1)正則行列、逆行列

AX=XA=EとなるXが存在するときXはA-1と書け、Aの逆行列と言う。またA自身を正則行列と言う。


A-1は一意的に定まらなければならない。なぜならば、AX=XA=AY=YA=Eであれば、

X=XE=X(AY)=(XA)Y=EY=Y


定理(3.2.2)

 AX=EならばAは正則


この証明は5章で。次の性質は容易に示される。

 (1)Aが正則ならば、A-1も正則。

 (2)A,Bは共にn次正則行列なら、(AB)-1=B-1A-1


この定理は、正則行列の集合がである事を示す。群の定義はこの項目の続きと位置づける\行列式で。

定義(3.2.4)対称区分け

 正方行列を一辺が等しい正方形の島に区分けするとき、この区分けを対称区分けと言う。

簡単な証明で

「定理(3.2.5)

対称区分けで、

A=\begin{pmatrix}
 A_{1,1} & A_{1,2}\\
 O & A_{2,2}\\
\end{pmatrix}

において、A1,1とA2,2が正則ならば、Aも正則である。」

及び次のことが言える。

「対称区分けで、

A=(Ai,j)で、(i,j=1,2,...n)A_{i,j}=\begin{cases}
 A_i(i=j)\\
 O
\end{cases}ならば、Aが正則である必要十分条件は、Aiがすべて正則である事である」

その逆行列は、次のように与えられる。

A^{-1}=\begin{cases}
 A_i^{-1}(i=j)\\
 O
\end{cases}

また、(3.2.5)の逆行列A-1は、

A^{-1}=\begin{pmatrix}
 A_{1,1}^{-1} & -A_{1,1}^{-1}A_{1,2}A^{-1}_{2,2}\\
 O & A_{2,2}^{-1}
\end{pmatrix}である。

その他[編集]

正方行列(ai,j)において、ai,iを対角成分と言う。また、対角成分意外が全て0である正方行列のことを対角行列(diagonal matrix)と言う。対角行列が正則であるための、必要十分条件は、対角成分が全て0でないということである。4章で示される。対角行列の中でも更にスカラー行列と呼ばれるものがある。それはcE(c≠0)の事である。勿論Eはc=1の時のスカラー行列で、対角行列である。また、スカラー行列cEを任意行列Aに掛けると、CAとでる。対角行列が定義されたので、固有和が定義できる。

定義(3.2.6)固有和または跡(trace)

正方行列Aの固有和
TrA
とは、対角成分の総和である。


次のような性質がある

Tr(cA)=cTrA, Tr(A+B)=TrA+TrB, Tr(AB)=Tr(BA)

定義(3.2.7)行列の指数

A^a=\underbrace{AA...A}_a


指数法則と呼べるような次の性質が成り立つ。ただし、k,l\isin \mathbb{N}であるが。

AkAl=Ak+l,  (Ak)l=Akl
AB=BA⇒(AB)k=Ak,Al

Aが正則ならば、A0=E, A-k=(A-1)^kとして、k,l\isin \mathbb{Z}において定義可能である。