デザインパターン

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コンピューターサイエンスにおけるデザインパターンは、ソフトウェア設計において再利用可能な解決策の一般的なモデルやテンプレートです。これらのパターンは、共通の課題や問題に対処するために繰り返し使われ、設計の柔軟性、拡張性、保守性を向上させます。デザインパターンは、ソフトウェアエンジニアリングのコミュニティで広く受け入れられており、GoF(Gang of Four)による "Design Patterns: Elements Of Reusable Object-Oriented Software"(邦題『オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン』)などの文献で有名です。

デザインパターンの主な特徴は以下の通りです:

再利用性
デザインパターンは、共通の設計上の問題に対処するための汎用的な解決策を提供するため、再利用が容易です。同じまたは類似の課題に対して何度も設計を行う必要がなくなります。
柔軟性
デザインパターンは柔軟性をもたらし、変更が必要な場合にも容易に対応できるような設計を促進します。新しい要件や機能の追加があっても、デザインパターンを利用することで変更の影響を最小限に抑えられます。
共通の語彙
デザインパターンは、ソフトウェア開発者やエンジニアの間で共通の語彙を提供します。これにより、チーム内でのコミュニケーションが向上し、設計の理解が容易になります。
ソフトウェアアーキテクチャ
デザインパターンはソフトウェアアーキテクチャを構築するための基本的な構成要素として使われます。これにより、ソフトウェアの構造が理解しやすく、拡張が容易になります。

一部の有名なデザインパターンには、Singleton(単一のインスタンスを保持するパターン)、Factory Method(ファクトリークラスがオブジェクトの生成を担当するパターン)、Observer(オブジェクトの状態変化を監視するパターン)などがあります。これらのパターンはソフトウェア設計の中で広く利用され、開発者が共通の問題に対してより効果的にアプローチできるようになります。

デザインパターンの分類と概要[編集]

デザインパターンは、ゴフ(Gang of Four)によって提案された23のパターンを、以下の3つの大きなカテゴリに分類できます。それぞれのカテゴリには、ソフトウェア開発における特定の課題に対処するためのパターンが含まれています。

生成(Creational)デザインパターン[編集]

生成デザインパターンは、オブジェクトの生成に焦点を当て、オブジェクトの生成と構成に関する柔軟で再利用可能な手法を提供します。これらのパターンは、インスタンスの生成方法やクラスの初期化に関する課題に対処し、アプリケーションの柔軟性と保守性を向上させます。

Singleton(シングルトン)パターン[編集]

シングルトンパターンは、アプリケーション内で唯一のインスタンスを持つように設計されたデザインパターンです。このパターンは、クラスが単一のインスタンスしか持たないようにし、その唯一のインスタンスにアクセスするための手法を提供します。以下に、シングルトンパターンの基本的な説明とRubyでのコード例を示します。

シングルトンパターンの特徴
  1. 単一のインスタンス:
    • シングルトンクラスは一つのインスタンスしか持ちません。
  2. グローバルアクセスポイント:
    • シングルトンインスタンスにアクセスするためのグローバルなアクセスポイントが提供されます。
  3. 共有リソース管理:
    • シングルトンパターンは、共有のリソースや設定にアクセスする場合に有用です。例えば、データベース接続やログ管理など。
Rubyでのシングルトンパターンの実装(1)
class SingletonClass
  # クラス変数で唯一のインスタンスを保持
  @@instance = nil

  # newメソッドをprivateにすることで、外部から直接インスタンス化できなくなる
  private_class_method :new

  # インスタンスにアクセスするためのメソッド
  def self.instance() @@instance ||= new end

  # その他のシングルトンクラスのメソッドやプロパティ
  def some_method() puts "Singleton instance method called" end
end

# シングルトンクラスのインスタンスを取得
singleton_instance = SingletonClass.instance
singleton_instance.some_method

この例では、SingletonClassクラスがシングルトンパターンを実現しています。instanceメソッドを通じて唯一のインスタンスにアクセスできます。newメソッドはprivate_class_methodでprivateになっており、外部から直接インスタンス化ができないようになっています。

Rubyには、シングルトンパターンをクラスで実践するために Singleton Mix-in が用意されています。

Rubyでのシングルトンパターンの実装(2)
require 'singleton'

class SingletonClass
  include Singleton

  # その他のシングルトンクラスのメソッドやプロパティ
  def some_method() puts "Singleton instance method called" end
end

# シングルトンクラスのインスタンスを取得
singleton_instance = SingletonClass.instance
singleton_instance.some_method

この例では、SingletonClassクラスがSingletonモジュールをincludeしています。これにより、SingletonClassのインスタンスはシングルトンとして扱われ、instanceメソッドで唯一のインスタンスにアクセスできます。

singletonモジュールを使用することで、シングルトンパターンの実装が簡潔になり、また必要なメソッドやプロパティを追加できます。シングルトンパターンは、共有リソースへのアクセスや設定管理などのシナリオで役立ちます。

このように実装されたシングルトンパターンでは、複数のインスタンスが作成されることを防ぎ、唯一の共有リソースへのアクセスを確実に制御できます。

Factory Method(ファクトリーメソッド)パターン[編集]

Factory Methodパターンは、オブジェクトの生成をサブクラスに委譲し、具体的な生成プロセスをサブクラスで実装する手法です。これにより、生成されるオブジェクトの型をサブクラスによって動的に変更できます。Factory Methodは、生成するオブジェクトの種類に依存せず、柔軟性を提供するために使用されます。

Factory Method パターンの特徴
  1. 抽象クラスまたはインターフェース:
    • Factory Methodパターンでは、オブジェクトの生成を抽象クラスまたはインターフェースで定義します。
  2. サブクラスでの生成プロセス実装:
    • 具体的な生成プロセスはサブクラスに委譲され、サブクラスでそれぞれの生成方法が実装されます。
  3. 動的な型変更:
    • Factory Methodによって生成されるオブジェクトの型は、実行時にサブクラスの選択によって動的に変更できます。
RubyでのFactory Method パターンの実装
以下は、Factory Methodパターンの簡単なコード例です。
# Product(生成されるオブジェクト)の抽象クラス
class Product
  def operation() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# ConcreteProduct1(具体的な生成物1)
class ConcreteProduct1 < Product
  def operation() "Operation from ConcreteProduct1" end
end

# ConcreteProduct2(具体的な生成物2)
class ConcreteProduct2 < Product
  def operation() "Operation from ConcreteProduct2" end
end

# Creator(生成するオブジェクトの抽象クラス)
class Creator
  def factory_method() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end

  def some_operation()
    product = factory_method
    "Creator: #{product.operation}"
  end
end

# ConcreteCreator1(具体的な生成者1)
class ConcreteCreator1 < Creator
  def factory_method() ConcreteProduct1.new end
end

# ConcreteCreator2(具体的な生成者2)
class ConcreteCreator2 < Creator
  def factory_method() ConcreteProduct2.new end
end

# クライアントコード
def client_code(creator) creator.some_operation end

# 具体的な生成者1を利用する場合
creator1 = ConcreteCreator1.new
puts client_code(creator1)  # Output: "Creator: Operation from ConcreteProduct1"

# 具体的な生成者2を利用する場合
creator2 = ConcreteCreator2.new
puts client_code(creator2)  # Output: "Creator: Operation from ConcreteProduct2"

この例では、Productが生成されるオブジェクトを表す抽象クラスであり、ConcreteProduct1およびConcreteProduct2が具体的な生成物を表します。Creatorが生成するオブジェクトの抽象クラスであり、ConcreteCreator1およびConcreteCreator2が具体的な生成者を表します。クライアントコードは、具体的な生成者を選択して生成物を得ることができます。

Factory Methodパターンを使用することで、クライアントコードは生成物の種類に依存せず、柔軟に生成プロセスを変更できるメリットがあります。

Abstract Factory(抽象ファクトリー)パターン[編集]

Abstract Factoryパターンは、関連する一連のオブジェクトを生成するためのインターフェースを提供し、一貫性を持たせます。異なるファクトリーを利用することで、異なるオブジェクトのファミリーを生成できます。このパターンは、オブジェクトが互いに関連しており、一緒に利用される場合に特に有用です。

Abstract Factory パターンの要素
  1. AbstractFactory(抽象ファクトリー):
    • オブジェクトの生成に関するインターフェースを定義します。関連する一連のオブジェクトを生成するメソッドを提供します。
  2. ConcreteFactory(具体的なファクトリー):
    • AbstractFactoryを実装し、具体的なオブジェクトの生成を行います。通常、同じファミリーのオブジェクトを生成します。
  3. AbstractProduct(抽象製品):
    • 生成されるオブジェクトの抽象クラスまたはインターフェースを定義します。
  4. ConcreteProduct(具体的な製品):
    • AbstractProductを実装し、具体的なオブジェクトのクラスを提供します。
  5. Client(クライアント):
    • Abstract Factoryを利用してオブジェクトを生成します。クライアントは具体的なファクトリーを意識せずにオブジェクトを取得できます。
Rubyでの Abstract Factory パターンの実装
以下は、Abstract Factoryパターンの簡単なコード例です。
# AbstractProduct
class Button
  def click() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# ConcreteProduct1
class WindowsButton < Button
  def click() "Windows button clicked" end
end

# ConcreteProduct2
class MacOSButton < Button
  def click() "MacOS button clicked" end
end

# AbstractProduct
class Checkbox
  def check() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# ConcreteProduct1
class WindowsCheckbox < Checkbox
  def check() "Windows checkbox checked" end
end

# ConcreteProduct2
class MacOSCheckbox < Checkbox
  def check() "MacOS checkbox checked" end
end

# AbstractFactory
class GUIFactory
  def create_button() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
  def create_checkbox() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# ConcreteFactory1
class WindowsFactory < GUIFactory
  def create_button() WindowsButton.new end
  def create_checkbox() WindowsCheckbox.new end
end

# ConcreteFactory2
class MacOSFactory < GUIFactory
  def create_button() MacOSButton.new end
  def create_checkbox() MacOSCheckbox.new end
end

# Client
class Application
  def initialize(factory)
    @button = factory.create_button
    @checkbox = factory.create_checkbox
  end

  def run()
    puts @button.click
    puts @checkbox.check
  end
end

# クライアントコード
windows_app = Application.new(WindowsFactory.new)
macos_app = Application.new(MacOSFactory.new)

windows_app.run
# Output:
# "Windows button clicked"
# "Windows checkbox checked"

macos_app.run
# Output:
# "MacOS button clicked"
# "MacOS checkbox checked"

この例では、WindowsおよびMacOS用のボタンとチェックボックスを生成するGUIFactoryが抽象ファクトリーとなります。具体的な製品はそれぞれWindowsButtonWindowsCheckboxMacOSButtonMacOSCheckboxです。Applicationクラスが抽象ファクトリーを通じてオブジェクトを生成し、クライアントコードが異なるプラットフォーム用のオブジェクトを利用できます。

Builder(ビルダー)パターン[編集]

Builderパターンは、複雑なオブジェクトの構築プロセスを抽象化し、同じ構築プロセスを使用して異なる表現のオブジェクトを作成できるようにします。これにより、柔軟で再利用可能な構築手法を提供します。Builderパターンは、複雑なオブジェクトを一貫して構築する必要があり、同じ構築プロセスで異なるオブジェクトを生成する必要がある場合に有用です。

Builder パターンの要素
  1. Product(製品):
    • ビルダーで構築されるオブジェクトの表現を定義します。
  2. Builder(ビルダー):
    • 複雑なオブジェクトを構築するための抽象インターフェースを提供します。具体的なビルダーがこのインターフェースを実装します。
  3. ConcreteBuilder(具体的なビルダー):
    • Builderを実装し、製品の各部分の構築を担当します。ビルドされた製品を取得するメソッドも提供します。
  4. Director(ディレクター):
    • クライアントからの指示に基づいてビルダーを利用してオブジェクトを構築します。ビルダーの組み合わせ方を知っています。
Rubyでの Builder パターンの実装
以下は、Builderパターンの簡単なコード例です。
# Product
class Computer
  attr_accessor :cpu, :memory, :storage

  def to_s() "Computer with CPU: #{@cpu}, Memory: #{@memory}, Storage: #{@storage}" end
end

# Builder
class ComputerBuilder
  def build_cpu() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
  def build_memory() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
  def build_storage() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
  def computer() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# ConcreteBuilder
class HighPerformanceComputerBuilder < ComputerBuilder
  def initialize()    @computer         = Computer.new end
  def build_cpu()     @computer.cpu     = "High Performance CPU" end
  def build_memory()  @computer.memory  = "16GB RAM" end
  def build_storage() @computer.storage = "1TB SSD" end
  def computer()      @computer end
end

# Director
class ComputerEngineer
  def initialize(builder) @builder = builder end

  def assemble_computer()
    @builder.build_cpu
    @builder.build_memory
    @builder.build_storage
  end

  def get_computer() @builder.computer end
end

# クライアントコード
builder = HighPerformanceComputerBuilder.new
engineer = ComputerEngineer.new(builder)

engineer.assemble_computer
high_performance_computer = engineer.get_computer

puts high_performance_computer.to_s
# Output: "Computer with CPU: High Performance CPU, Memory: 16GB RAM, Storage: 1TB SSD"

この例では、Computerがビルダーパターンで構築される製品を表しています。ComputerBuilderがビルダーの抽象クラスであり、HighPerformanceComputerBuilderが具体的なビルダーです。ComputerEngineerがディレクターで、ビルダーを利用して製品を組み立てます。クライアントコードはディレクターを通じてビルダーを利用して製品を構築し、最終的な製品を取得します。

このように、Builderパターンを使用することで、複雑なオブジェクトの構築プロセスをカプセル化し、柔軟かつ再利用可能な方法で異なる表現のオブジェクトを生成できます。

Prototype(プロトタイプ)パターン[編集]

Prototypeパターンは、オブジェクトのコピーを作成する手法を提供し、新しいオブジェクトを既存のオブジェクトを基にして生成できるようにします。これにより、オブジェクトの生成コストを削減できます。プロトタイプパターンは、同じようなオブジェクトが複数必要であり、それぞれのオブジェクトが少しだけ異なる場合に有用です。

Prototype パターンの要素
  1. Prototype(プロトタイプ):
    • オブジェクトのコピーを作成するためのインターフェースを提供します。
  2. ConcretePrototype(具体的なプロトタイプ):
    • Prototypeを実装し、オブジェクトのコピーを作成する具体的な実装を提供します。
  3. Client(クライアント):
    • プロトタイプを使用して新しいオブジェクトのコピーを作成します。
Rubyでの Prototype パターンの実装
以下は、Prototypeパターンの簡単なコード例です。
# Prototype
class Cloneable
  def clone() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# ConcretePrototype
class ConcreteCloneable < Cloneable
  attr_accessor :attribute

  def initialize(attribute) @attribute = attribute end
  def clone() self.class.new(@attribute) end
end

# Client
class ObjectCloner
  def initialize(prototype) @prototype = prototype end
  def clone_object() @prototype.clone end
end

# クライアントコード
original_object = ConcreteCloneable.new("Original Attribute")
cloner = ObjectCloner.new(original_object)

cloned_object = cloner.clone_object

puts "Original Object Attribute: #{original_object.attribute}"
puts "Cloned Object Attribute: #{cloned_object.attribute}"
# Output:
# Original Object Attribute: Original Attribute
# Cloned Object Attribute: Original Attribute

この例では、Cloneableがプロトタイプの抽象クラスを表し、ConcreteCloneableが具体的なプロトタイプを表しています。ObjectClonerがクライアントで、指定されたプロトタイプを使用して新しいオブジェクトのコピーを作成します。クライアントコードは、元のオブジェクトとクローンされたオブジェクトの属性を出力しています。

このようにプロトタイプパターンを使用することで、オブジェクトの生成コストを低減し、柔軟性を向上させることができます。

これらの生成デザインパターンは、オブジェクトの生成と初期化に関連する様々な課題に対処し、柔軟性や再利用性を向上させるために広く使用されています。それぞれのパターンは異なる状況や要件に対応し、効果的なソフトウェア設計を支援します。

構造(Structural)デザインパターン[編集]

構造デザインパターンは、ソフトウェア設計においてクラスやオブジェクトの組み合わせを利用して大きな構造を形成する方法を提供します。これらのパターンは、ソフトウェアのコンポーネントを効果的に組み合わせ、機能や構造を拡張しやすくするための手法を提供します。

Adapter(アダプター)パターン[編集]

アダプターパターンは、互換性のないインターフェースを持つクラス同士を連携させるための手法を提供します。これにより、既存のクラスを変更せずに連携できるようになります。アダプターは、既存のクラスと新しいクラスの仲介を行います。

クラスベースのアダプター
クラスベースのアダプターパターンでは、既存のクラスを継承して新しいクラスを作成します。
# 既存のクラス
class LegacySystem
  def specific_request() "Legacy System Request" end
end

# アダプタークラス
class Adapter < LegacySystem
  def adapted_request() "Adapter: #{specific_request}" end
end

# クライアントコード
adapter = Adapter.new
puts adapter.adapted_request
# Output: "Adapter: Legacy System Request"
オブジェクトベースのアダプター
オブジェクトベースのアダプターパターンでは、既存のクラスのオブジェクトを新しいクラスの内部で使用します。
# 既存のクラス
class LegacySystem
  def specific_request() "Legacy System Request" end
end

# アダプタークラス
class Adapter
  def initialize(legacy_system) @legacy_system = legacy_system end
  def adapted_request() "Adapter: #{@legacy_system.specific_request}" end
end

# クライアントコード
legacy_system = LegacySystem.new
adapter = Adapter.new(legacy_system)
puts adapter.adapted_request
# Output: "Adapter: Legacy System Request"

アダプターパターンは、既存のコードとの互換性を維持しながら新しいコードを導入する際に役立ちます。新しいクラスを既存のクラスと同じように振る舞わせることができ、クライアントコードは変更せずに利用できるようになります。

Bridge(ブリッジ)パターン[編集]

ブリッジパターンは、抽象化と実装を別々に拡張できるようにし、これらの間に橋渡しを行う手法を提供します。これにより、異なる抽象化と実装を組み合わせて新しい機能を追加できます。ブリッジパターンは、抽象クラスと実装クラスを分離して、それらが独立して拡張できるようにします。

クラスベースのブリッジ
クラスベースのブリッジパターンでは、抽象クラスと実装クラスがそれぞれ独立して拡張されます。
# 実装層
class Implementation
  def operation_implementation() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# 具体的な実装クラス
class ConcreteImplementationA < Implementation
  def operation_implementation() "Concrete Implementation A" end
end

class ConcreteImplementationB < Implementation
  def operation_implementation() "Concrete Implementation B" end
end

# 抽象化
class Abstraction
  def initialize(implementation) @implementation = implementation end
  def operation() "Abstraction: #{implementation_operation}" end

  private

  def implementation_operation() @implementation.operation_implementation end
end

# クライアントコード
implementation_a = ConcreteImplementationA.new
abstraction_a = Abstraction.new(implementation_a)
puts abstraction_a.operation
# Output: "Abstraction: Concrete Implementation A"

implementation_b = ConcreteImplementationB.new
abstraction_b = Abstraction.new(implementation_b)
puts abstraction_b.operation
# Output: "Abstraction: Concrete Implementation B"
オブジェクトベースのブリッジ
オブジェクトベースのブリッジパターンでは、抽象クラスと実装クラスをそれぞれオブジェクトとして組み合わせます。
# 実装層
class Implementation
  def operation_implementation() raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'" end
end

# 具体的な実装クラス
class ConcreteImplementationA < Implementation
  def operation_implementation() "Concrete Implementation A" end
end

class ConcreteImplementationB < Implementation
  def operation_implementation() "Concrete Implementation B" end
end

# 抽象化
class Abstraction
  def initialize(implementation) @implementation = implementation end
  def operation() "Abstraction: #{@implementation.operation_implementation}" end
end

# クライアントコード
implementation_a = ConcreteImplementationA.new
abstraction_a = Abstraction.new(implementation_a)
puts abstraction_a.operation
# Output: "Abstraction: Concrete Implementation A"

implementation_b = ConcreteImplementationB.new
abstraction_b = Abstraction.new(implementation_b)
puts abstraction_b.operation
# Output: "Abstraction: Concrete Implementation B"

ブリッジパターンは、抽象化と実装の組み合わせが複雑になる場合や、将来的な変更に備えて柔軟性を持たせる場合に有用です。

Composite(コンポジット)パターン[編集]

コンポジットパターンは、オブジェクトとオブジェクトの構造を同一視し、個々のオブジェクトとその構造を再帰的に扱う手法を提供します。これにより、単一のオブジェクトと複数のオブジェクトの同一視が可能になります。このパターンは、個々のオブジェクトとオブジェクトのコンポジション(構造)を同じように扱い、クライアントが統一的に操作できるようにします。

特徴
  1. 同一視: コンポジットパターンでは、個々のオブジェクト(葉ノード)とオブジェクトの構造(複合ノード)を同じく扱います。これにより、単一のオブジェクトと複数のオブジェクトを同一視できます。
  2. 再帰的構造: 複合ノードは他の葉ノードや複合ノードを子に持つことができ、これが再帰的な構造を作ります。これにより、階層的で複雑な構造を表現できます。
  3. クライアントの簡略化: クライアントコードは、単一のオブジェクトとコンポジションを同じように扱うことができ、構造の詳細を気にせずに統一的な操作が可能です。
用途
  1. グラフィカルな構造: グラフィカルなツリーや図形の構造において、個々の要素とグループ(コンポジション)を同一視するのに適しています。
  2. ファイルシステム: ファイルやディレクトリといった構造を再帰的に扱う場合に利用されます。各要素はファイルかディレクトリかを同じように扱います。
  3. メニューシステム: GUIアプリケーションにおいて、メニュー項目とサブメニューを同様の要素として扱うのに適しています。
コード例
# コンポーネント
class Component
  def operation
    raise NotImplementedError, "#{self.class} has not implemented method '#{__method__}'"
  end
end

# 葉ノード
class Leaf < Component
  def operation() "Leaf" end
end

# 複合ノード
class Composite < Component
  def initialize() @children = [] end
  def add(child) @children << child end
  def remove(child) @children.delete(child) end
  def operation()
    results = @children.map(&:operation).join(', ')
    "Composite: [#{results}]"
  end
end

# クライアントコード
leaf1 = Leaf.new
leaf2 = Leaf.new
composite = Composite.new

composite.add(leaf1)
composite.add(leaf2)

puts leaf1.operation
# Output: "Leaf"

puts composite.operation
# Output: "Composite: [Leaf, Leaf]"

この例では、Leafは葉ノードを、Compositeは複合ノードを表しています。クライアントコードは、葉ノードと複合ノードを同様に扱っています。

Decorator(デコレーター)パターン[編集]

デコレーターパターンは、オブジェクトに新しい機能を動的に追加できるようにする手法を提供します。これにより、クラスを拡張する際に継承を使わずに機能を追加できます。デコレーターパターンは、既存のクラスを変更せずに新しい機能を追加する柔軟な手段を提供します。

特徴
  1. 柔軟な機能追加: デコレーターパターンは、既存のクラスを拡張せずに新しい機能を追加できます。これにより、クラスの変更が最小限に抑えられます。
  2. 再帰的なスタッキング: 複数のデコレーターを組み合わせて使用することができます。これにより、機能を再帰的にスタックすることが可能です。
  3. オープンクローズドの原則: 新しい機能は既存のコードを変更せずに追加できるため、オープンクローズドの原則をサポートします。
用途
  1. GUIコンポーネント: ウィンドウやボタンなどのGUIコンポーネントにおいて、外観や動作を動的に変更したい場合に利用されます。
  2. ファイルハンドリング: ファイルやストリームの処理において、データを暗号化する、圧縮するなどの機能を追加するのに適しています。
  3. ログ出力: ログ出力において、ログのフォーマットやレベルを動的に変更する際に利用されます。
コード例
# コンポーネント
class Component
  def operation() "Component" end
end

# デコレーター基底クラス
class Decorator < Component
  def initialize(component) @component = component end
  def operation() @component.operation end
end

# 具体的なデコレータークラス
class ConcreteDecoratorA < Decorator
  def operation() "ConcreteDecoratorA: [#{super}]" end
end

class ConcreteDecoratorB < Decorator
  def operation() "ConcreteDecoratorB: [#{super}]" end
end

# クライアントコード
component = Component.new
decorator_a = ConcreteDecoratorA.new(component)
decorator_b = ConcreteDecoratorB.new(decorator_a)

puts decorator_b.operation
# Output: "ConcreteDecoratorB: [ConcreteDecoratorA: [Component]]"

この例では、Componentが基本のコンポーネントを表し、Decoratorがデコレーターの基底クラスを、ConcreteDecoratorAConcreteDecoratorBが具体的なデコレータークラスを表しています。クライアントコードは、これらのデコレーターを組み合わせて新しい機能を追加しています。

Facade(ファサード)パターン[編集]

ファサードパターンは、ソフトウェアデザインにおいて、サブシステムの一連のインターフェースを提供し、クライアントがサブシステムをより簡単に利用できるようにする手法を指します。このデザインパターンは、クライアントとサブシステムとの間に中間層を導入し、クライアントにとって使いやすい方法でサブシステムを操作できるようにします。これにより、クライアントはサブシステムの詳細に関与することなく、シンプルで一貫性のあるAPIを使用して機能を利用できます。

特徴
簡単なインターフェース提供
ファサードパターンは、サブシステム全体にわたる単一の簡潔なインターフェースを提供します。クライアントはこのファサードを通じてサブシステムを利用し、複雑な構造や相互作用を気にする必要がありません。
サブシステムの複雑性を隠蔽
ファサードはサブシステムの内部構造や複雑な操作をクライアントから隠蔽します。これにより、クライアントは必要な機能をシンプルなインターフェースを介して利用でき、サブシステムの詳細に気を取られることなくコードを記述できます。
カプセル化
サブシステムの各コンポーネントはファサードによってカプセル化され、外部からの直接アクセスを防ぎます。これにより、サブシステム内の変更が影響を及ぼす範囲が狭まります。
利点
シンプルな利用
ファサードを使用することで、クライアントは複雑なサブシステムを理解せずにシンプルなインターフェースを利用できます。これにより、プログラムの理解や保守が容易になります。
柔軟性と拡張性
サブシステムの変更や新しい機能の追加があっても、ファサードを変更するだけで済みます。これにより、システム全体の柔軟性と拡張性が向上します。
クライアントとサブシステムの分離
クライアントはサブシステムの詳細について知る必要がなくなります。ファサードによって、クライアントとサブシステムが疎結合になり、それぞれの変更が影響を及ぼしにくくなります。

音声処理システムのファサードパターンの例を示します。

# サブシステムの一部
class AudioPlayer
  def play(file) puts "Playing audio file: #{file}" end
end

class AudioConverter
  def convert(file, format) puts "Converting audio file #{file} to #{format}" end
end

class AudioMixer
  def mix(files) puts "Mixing audio files: #{files.join(', ')}" end
end

# ファサード
class AudioFacade
  def initialize() 
    @player = AudioPlayer.new
    @converter = AudioConverter.new
    @mixer = AudioMixer.new
  end

  def play_audio(file) @player.play(file) end
  def convert_audio(file, format) @converter.convert(file, format) end
  def mix_audio(files) @mixer.mix(files) end
end

# クライアント
if __FILE__ == $0
  audio_facade = AudioFacade.new

  # クライアントはファサードを通してサブシステムを利用
  audio_facade.play_audio("song.mp3")
  audio_facade.convert_audio("song.mp3", "wav")
  audio_facade.mix_audio(["song1.wav", "song2.wav"])
end

この例では、AudioFacadeがファサードとして機能し、クライアントはこのファサードを介して音声処理システムを利用します。クライアントはサブシステムの詳細について心配する必要がなく、ファサードが提供する単純で使いやすいインターフェースを通じて操作を行います。

Flyweight(フライウェイト)パターン[編集]

フライウェイトパターンは、メモリ使用量を最適化するために多くの類似したオブジェクトを共有するデザインパターンです。このパターンでは、共有される部分とインスタンス固有の部分を分離し、共有される部分を再利用することで効率的なリソース利用を実現します。特に大規模なオブジェクトの集合を扱う場合に威力を発揮します。

特徴
共有
フライウェイトは、同じ状態を持つ複数のオブジェクトが共有されることによってメモリ使用量を最適化します。これにより、大量のオブジェクトが同じデータを保持する場合に効果を発揮します。
状態の内外部化
フライウェイトは、内部状態(共有可能な部分)と外部状態(インスタンス固有の部分)を分離します。共有可能な部分は共有され、インスタンス固有の部分はインスタンスごとに持たれます。
イミュータブル
フライウェイトの内部状態は通常、イミュータブルであることが好まれます。これにより、共有状態が変更されることなく安全に共有できます。
利点
メモリ効率
類似のオブジェクトが共有されることで、メモリ使用量が減少し、効率的なリソース利用が可能になります。
インスタンスの生成コスト低減
インスタンスの生成がコストが高い場合、同じデータを持つオブジェクトを共有することで生成コストを低減できます。
変更容易性
共有状態が変更される場合、それが全ての参照先に影響を与えるため、変更が容易になります。
フライウェイトパターンのコード例
# フライウェイト
class SharedData
  attr_reader :data

  def initialize(data) @data = data end
end

# フライウェイトファクトリ
class FlyweightFactory
  def initialize() @flyweights = {} end
  def get_flyweight(key) @flyweights[key] ||= SharedData.new(key) end
  def flyweights_count() @flyweights.length end
end

# クライアント
class Client
  def initialize(factory)
    @factory = factory
    @flyweights = []
  end

  def get_or_create_flyweight(key)
    flyweight = @factory.get_flyweight(key)
    @flyweights.push(flyweight)
  end

  def report
    puts "Number of unique flyweights: #{flyweights_count}"
  end

  private

  def flyweights_count()
    @flyweights.map(&:object_id).uniq.length
  end
end

# クライアントの使用例
if __FILE__ == $0
  factory = FlyweightFactory.new
  client = Client.new(factory)

  client.get_or_create_flyweight("A")
  client.get_or_create_flyweight("B")
  client.get_or_create_flyweight("A")

  client.report
  # 出力: Number of unique flyweights: 2
end

この例では、FlyweightFactorySharedDataのインスタンスを共有し、Clientがそれを利用しています。Clientは同じデータを持つSharedDataを共有することで、効率的にメモリを利用しています。

Proxy(プロキシ)パターン[編集]

プロキシパターンは、別のオブジェクトにアクセスするためのプレースホルダーを提供し、そのアクセスを制御するデザインパターンです。主にアクセス制御、キャッシュ、遠隔アクセス、ログなどの機能を追加したり、本物のオブジェクトを生成する遅延初期化を行ったりする場合に使用されます。

特徴
制御機能の追加
プロキシは本物のオブジェクトへのアクセスを制御するため、特定の機能を追加することができます。例えば、アクセス制御、キャッシュ、遠隔アクセス、ログなど。
遅延初期化
プロキシは本物のオブジェクトの生成を遅延させることができます。本物のオブジェクトが本当に必要になるまで生成を遅らせ、リソースの効率的な利用が可能です。
単純なインターフェース
プロキシは本物のオブジェクトと同じインターフェースを提供します。クライアントはプロキシと本物のオブジェクトを同様に扱うことができます。
利点
アクセス制御
プロキシは本物のオブジェクトへのアクセスを制御できるため、セキュリティや権限の管理が容易になります。
遅延初期化
本物のオブジェクトの生成を遅延させることで、リソースを効率的に利用できます。
透過性
プロキシは本物のオブジェクトと同じインターフェースを提供するため、クライアントはプロキシと本物のオブジェクトを同様に扱うことができます。
プロキシパターンのコード例
# 本物のオブジェクト
class RealSubject
  def request() puts "RealSubject handles the request" end
end

# プロキシ
class Proxy
  def initialize(real_subject) @real_subject = real_subject end

  def request
    check_access
    @real_subject.request
    log_request
  end

  private

  def check_access
    puts "Proxy: Checking access before making request."
    # アクセス制御のロジックをここに実装
  end

  def log_request
    puts "Proxy: Logging the request."
    # ログの記録ロジックをここに実装
  end
end

# クライアント
class Client
  def initialize(subject) @subject = subject end
  def make_request() @subject.request end
end

# クライアントの使用例
if __FILE__ == $0
  real_subject = RealSubject.new
  proxy = Proxy.new(real_subject)

  client = Client.new(proxy)
  client.make_request
  # 出力:
  # Proxy: Checking access before making request.
  # RealSubject handles the request
  # Proxy: Logging the request.
end

この例では、ProxyRealSubjectへのアクセスを制御し、リクエスト前にアクセスをチェックし、リクエスト後にログを記録します。クライアントはプロキシと本物のオブジェクトを同様に扱うことができます。

これらの構造デザインパターンは、クラスやオブジェクトの構造に関する課題に対処し、ソフトウェア設計の柔軟性や拡張性を向上させるために広く使用されています。それぞれのパターンは特定の課題に焦点を当て、適切な状況で使用されます。

振る舞い(Behavioral)デザインパターン[編集]

振る舞いデザインパターンは、オブジェクトが連携し、役割を果たす方法やアルゴリズムに焦点を当て、ソフトウェアの振る舞いや相互作用を改善するための手法を提供します。以下は、いくつかの代表的な振る舞いデザインパターンの概要です。

Chain of Responsibility(責任の連鎖) パターン[編集]

Chain of Responsibility(責任の連鎖)パターンは、複数のオブジェクトがリクエストを処理するための連鎖を形成します。リクエストは連鎖を順番に渡り、各オブジェクトがリクエストを処理できれば処理し、処理できなければ次のオブジェクトに転送されます。これにより、オブジェクトの連携を柔軟に構築し、処理の責任を分散させます。

Command(コマンド) パターン[編集]

Command(コマンド)パターンは、リクエストをオブジェクトとしてカプセル化し、これによりクライアントと受信者の間を切り離します。これにより、異なるコマンドオブジェクトを生成し、それらを利用して異なるリクエストを処理できるようになります。また、コマンドのキュー、アンドゥ/リドゥ、遅延実行などの機能を実現するのにも役立ちます。

Interpreter パターン[編集]

Interpreter(インタープリター)パターンは、特定の言語の文法を解析し、それを実行するためのインタープリタを提供します。これにより、柔軟な言語処理や文法の拡張が可能になります。例えば、クエリ言語やプログラミング言語の処理に利用されます。

Iterator パターン[編集]

Iterator(イテレータ)パターンは、オブジェクトの要素に順次アクセスするための方法を提供します。これにより、コレクション内の要素を順番にアクセスするための標準的な手法を提供し、同時にコレクションの内部構造を隠蔽します。

Mediator パターン[編集]

Mediator(仲介者)パターンは、オブジェクト間の相互作用をカプセル化し、オブジェクトが直接通信するのではなく、中央の仲介者を通じて通信する手法を提供します。これにより、オブジェクト間の結合度を低くし、変更に強いシステムを構築できます。

Memento パターン[編集]

Memento(メメント)パターンは、オブジェクトの内部状態を保存し、後で復元できるようにします。これにより、オブジェクトの状態のスナップショットを取り、任意の時点でそれを復元することができます。これは、アンドゥ/リドゥ機能や状態の履歴管理に利用されます。

Observer パターン[編集]

Observer(観察者)パターンは、オブジェクトの状態変化を監視し、これに応じて依存するオブジェクトに通知します。主に一対多の関係があり、状態変化が発生すると観察者に通知が行われます。これにより、オブジェクト間の疎結合性が確保され、変更が生じても柔軟に対応できるシステムが構築できます。

State パターン[編集]

State(状態)パターンは、オブジェクトの内部状態が変わると、そのオブジェクトの振る舞いも変わるようにします。これにより、オブジェクトが異なる状態にある場合に異なる振る舞いを持つことができます。Stateパターンは、条件分岐を減少させ、クラスの変更を最小限に抑えながら拡張性を提供します。

Strategy パターン[編集]

Strategy(戦略)パターンは、アルゴリズムを定義し、それをカプセル化し、交換可能にします。これにより、クライアントは異なるアルゴリズムを選択し、柔軟に切り替えることができます。Strategyパターンは、アルゴリズムの独立性を高め、新しいアルゴリズムの追加や既存のアルゴリズムの変更が容易になります。

Template Method パターン[編集]

Template Method(テンプレートメソッド)パターンは、アルゴリズムの構造を定義し、その一部をサブクラスで再定義できるようにします。共通の処理を抽象クラスで定義し、具体的な処理をサブクラスで実装することで、柔軟で再利用可能なアルゴリズムを構築できます。

Visitor パターン[編集]

Visitor(訪問者)パターンは、オブジェクトの構造を定義し、その構造内での処理を別々のクラスに委任します。これにより、新しい処理を追加する際に既存のクラスを変更せず、新しい処理クラスを追加するだけで済みます。Visitorパターンは、データ構造と処理の分離を促進し、拡張性を向上させます。

これらの振る舞いデザインパターンは、オブジェクト間の相互作用やアルゴリズムの適用において柔軟性や拡張性を提供し、効果的なソフトウェア設計を支援します。それぞれのパターンは特定の課題に焦点を当て、ソフトウェアの振る舞いを改善するために利用されます。

あとがき[編集]

デザインパターンは、ソフトウェアエンジニアリングの世界において実践的で効果的な解決策を提供するツールの一つです。本書を通じて、デザインパターンの基本概念や具体的なパターンについて学び、その利用方法やメリットについて理解を深めることができました。

デザインパターンを理解することは、ソフトウェア開発において優れた設計を行うための重要なスキルの一環です。これらのパターンは、再利用可能なコード、保守性の向上、柔軟性の確保など、さまざまな側面で開発者に利益をもたらします。一度習得したデザインパターンは、今後のプロジェクトやチームでのコーディングにおいて、より洗練された解決策を提供してくれることでしょう。

デザインパターンを適切に選択し、効果的に適用するためには、実際の開発プロジェクトでの経験が欠かせません。それによって、理論だけでなく実践的な洞察が得られ、より良いソフトウェアを構築する力が身につきます。

最後に、本書を通じてデザインパターンに触れてくださり、デザインの世界への探求心を共有できたことを嬉しく思います。今後もデザインパターンを活用し、より良いソフトウェアを作り出す旅が、より一層の洞察と発見をもたらすことでしょう。デザインパターンの素晴らしさと、その無限の可能性に向けて、新たなる冒険が始まりますように。

脚註[編集]