ドイツ語/アルファベットと発音

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文字[編集]

ドイツ語では、 A a から Z z までの26字のほかにアー・ウムラウト (Ä ä), オー・ウムラウト (Ö ö), ウー・ウムラウト (Ü ü), エスツェット (ß) の4文字を用いる。

ウムラウトは変音記号を母音字の上につけたものである。タイプライターなどでは、それぞれの母音字に e を続けて書いたもの (Ä → Ae, ö → oe, ...) で代用してもよい。

エスツェット (ß) は名のとおりエス (s) とツェット (z) の合字である。エスツェットは語頭に立たず大文字を持たない。タイプライターなどでエスツェットがない場合は、エスを二つ並べた ss を書くことで代用する。

かつては独特のドイツ文字が使われたが、20世紀に入りラテン文字(英語などで使われるアルファベットど同一)が使われるようになった。しかし現代でも、古い書物の復刻などでは、ドイツ文字の使われる書籍がある。

母音[編集]

ドイツ語の発音はほぼ綴りどおりである。

母音字 a, e, i, o, u で短母音 /a/, /ɛ/, /ɪ/, /ɔ/, /ʏ/ または長母音 /aː/, /eː/, /iː/, /oː/, /uː/ を表す。ただし母音を重ねた(i のみ ie)場合や h を後置した場合は長母音、直後の子音を bb, tt などのように二つ重ねた場合は短母音となる。 a を除き、短母音より長母音の方が口の開きが狭く、緊張の強い音となる。

  • a の短音は /a/, 長音 (a, aa, ah) は /aː/
    日本語の「ア」「アー」とほぼ同じ音。
  • e の短音は /ɛ/、長音 (e, ee, eh) は /eː/
    /ɛ/ は日本語の「エ」と同じか、やや「広い音」(口を上下に広く開いて出す音)である。
    狭い /e/ は英語やフランス語などのものより狭く、「イ」に近く聞こえる。
    語尾などでは弱いあいまい母音 /ə/ になる。
  • i の短音は /ɪ/, 長音 (i, ie, ieh, ih) は /iː/
    日本語の「イ」「イー」と比べて /ɪ/ はやや広い。 /iː/ はやや狭く、唇の両端を強く外側に引く。
  • o の短音は /ɔ/, 長音 (o, oo, oh) は /oː/
    日本語の「オ」「オー」と比べて /ɔ/ はやや広い。 /oː/ はやや狭く、かつ唇を丸める。
  • u の短音は /ʊ/, 長音 (u, uh) は /uː/
    短音・長音とも、日本語の「ウ」「ウー」と比べて狭く、かつ唇を丸めて突き出す。長音の方がより狭く、強く突き出す。
  • ウムラウト:
    • ä は短音の e と同じ /ɛ/。長音 (ä, äh) は e のようには狭めず、同じ音のまま長く /ɛː/ 発音する。
    • ö の短音は /ø/, 長音 (ö, öh) は /œː/
      それぞれ o の /ɔ/, /oː/ と同じ唇の形のまま「(広めの)エ」「(狭い)エー」と言う。
      o の発音で舌を前に持ってくるだけでもよい。
    • ü の短音は /ʏ/, 長音 (ü, üh) は /yː/
      それぞれ u の /ʊ/, /uː/ と同じ唇の形のままで「(広めの)イ」「(狭い)イー」と言う。「ユ」「ユー」のように聞こえる。
      u の発音で舌を前に持ってくるだけでもよい。
  • y は外来語にのみ使われる。ギリシア語・ラテン語からの外来語の場合は一般に ü と同様に発音する。

二重母音は ai, äi, ei, au, äu, eu.

  • ai ,äi, ei - /aɪ/ (アイ)
    「ア」に「(広めの)イ」を軽く添える。「ア」の影響で舌が「イ」の位置まで上がりきらず「アエ」に近く聞こえる([aɪ] ないし [ae])。
  • au - /aʊ/ (アオ)
    「ア」に「(丸口の)ウ」を軽く添える。「ア」の影響で舌が「ウ」の位置まで上がりきらず「アオ」と聞こえる([aʊ] ないし [ao])。
  • äu, eu - /ɔʏ/ (オイ)
    「オ」に「イ」を軽く添える。「オ」の影響で「イ」に唇の丸みが残って自然にウムラウト音となり「オユ」に近く聞こえる([ɔʏ] ないし [ɔø])。

ie は語によって /iː/ ではなく i + e と発音することがある。

Ingrediens /ɪŋˈgreːdiɛns/
Italien /iˈtaːliən/
italienisch /italiˈeːnɪʃ/
Anthologien /antoloˈgiːən/ (cf. Anthologie /antoloˈgiː/)

子音[編集]

二つ重ねた子音字 bb, dd, ff, ll, tt などは、直前の母音が短いことを表し、子音そのものは一つの子音字と同じである。

b[編集]

b の音は日本語のバ行の子音 /b/。

Baden
Bruder
bitte

ただし、音節末、または無声子音の前では無声の /p/ になる。

Lob
Leib

語中の音節末で有声子音の前では、語により /b/ となる場合と、無声の /p/ になる場合がある。

Gabler /ˈgaːblɐ/
farblos /ˈfaɐploːs/

c[編集]

c は本来のドイツ語では、単独では用いない。

ラテン語からの外来語では a, o, u の前で /k/ となる。e, i の前では /ts/ となリ、短縮語などでも /ts/ となることがある。その他の外来語の場合はもとの言語の発音が反映される。語によってドイツ語風に転訛することもある。例: Cicero ツィツェロ、CeBIT ツェービット、City スィティ、Cembalo チェンバロ、Ceylon ツァイロン

ck は k と同じくカ行の子音 /k/ で、直前の母音が短いことを表す。

ch の発音は次の通り。

  • sch はシャ行の子音、 tsch はチャ行の子音。例: waschen ヴァシェン, Deutsche イチェ
  • chsはクス。例: wachsen ヴァクセン
    • ただし、語尾変化などで生じた ch+s はこの限りでない。例: sprichst シュプヒスト
  • ch の直前が a, o, u, au のいずれかならば、喉で摩擦する子音 x 「ホ」(前後の母音によりハ、フ、ヘとも聞こえる)。例: Bach ッハ, Tochter ホター, Kuchen ーヘン, auch オホ
    • eu, äu はこれに該当せず、次項「ヒ」となる。例: euch イヒ, räuchen イヒェン
  • 上記以外は原則として、舌の上で摩擦する子音 ç 「ヒ」 。例: Märchen ールヒェン, Töchter ヒター, Küche キュッヒェ, Psychologie プスュヒョロー, Chemie ヒェミー, milchig ルヒヒ
  • 外来語には英語(チャ行)、フランス語(シャ行)、ギリシャ語(カ行)等の発音を残しているものも少なくない。例: checken チェッケン, Chef シェフ, Charakter ラクター

d[編集]

d の音は日本語のダ行の子音 /d/。

Dach
dauern /ˈdaʊɐn/

音節末、または無声子音の前では無声の /t/ になる。

Rad /raːt/
Pfand /pfant/

語中の音節末で有声子音の前では、語により /d/ となる場合と、無声の /t/ になる場合がある。

niedrig /ˈniːdrɪç/
Ländler /ˈlɛntlɐ/

dt は t と同じくタ行の子音 /t/ で、直前の母音が短いことを表す。

Stadt

ds は /ʦ/ と発音する。

abends /ˈaːbɛnʦ/

dsch は /dʒ/ と発音する。

Dschungel /ˈdʒʊŋəl/

f[編集]

f は英語と同じく唇歯音 /f/。

fahren
Freund

g[編集]

g の音 /g/ は日本語のガ行だが、鼻にかかった鼻濁音ではなく、喉でしっかり破裂させる。

gehen
Gegner

音節末、または無声子音の前では無声の /k/ になる。

Tag

語中の音節末で有声子音の前では、語により /g/ となる場合と、無声の /k/ になる場合がある。

Regler /ˈreːglɐ/
möglich /ˈmœːklɪç/

音節末、または無声子音の前で -ig の場合は /ɪç/ (イヒ)と発音する。

König /ˈkøːnɪç/
Honig

ただし一部例外もある。

königlich /ˈkøːnɪklɪç/

ng は、語末やあいまい母音の e、後綴りの -ig、-ung などの前では /ŋ/ 、他の母音の前では /ŋɡ/ と発音する。子音の前では /ŋ/ と発音する場合と /ŋɡ/ と発音する場合がある。

lang /ˈlaŋ/
Singer /ˈzɪŋɐ/
Evangelist /evaŋgeˈlist/
Pinguin /ˈpɪŋguiːn/
England /ˈɛŋlant/
Anglomanie /aŋglomaˈniː/

h[編集]

h は単独では /h/ と発音する。

Holz
Haus

母音の後に来る h は発音しない(母音を長音化する)。

mehr
sehr

j[編集]

j は /j/ と発音する。ドイツ語ではヤ行の子音であり、英語のようにヂャ行の子音にならないことに注意。日本語の「ひ」の子音[Ç]が有声音化した音(厳密には[ʝ]と表記する)とも言われている。

Jacke
Jahr

k[編集]

k の音は日本語のカ行の子音 /k/。

Kenntnis
Kind

l[編集]

l は英語とほぼ同じ /l/ と発音する。

Lachen
Leiden

m[編集]

m の音は日本語のマ行の子音 /m/。

Monat /ˈmoːnat/
Mehrheit /ˈmeːrhaɪt/

n[編集]

n の音は日本語のナ行の子音 /n/。

Nacht /ˈnaxt/
Neutral /nɔʏˈtraːl/

ng の場合は /ŋ/ 、または /ŋg/ と発音する。nk の場合は /ŋk/ と発音する。

singen /ˈzɪŋən/
sinken /ˈzɪŋkən/

p[編集]

p の音は日本語のパ行の子音 /p/。

Paar
Polen /ˈpoːlən/

pfは破擦音 /pf/ ([p͡f]) と発音する。

ph はギリシア起源の語で /f/ と発音する。

q[編集]

q は u とともに書かれ、 qu を /kv/ と発音する。

Qualität /kvaliˈtɛːt/ (クヴァリテート)
Quelle /ˈkvɛlə/ (クヴェレ)

r[編集]

r は口蓋垂ふるえ音 [ʀ] で発音するのが標準とされるが、有声口蓋垂摩擦音 [ʁ] (いわゆるパリの R 音)あるいは歯茎ふるえ音 [r] (いわゆる「巻き舌」)で発音してもよく、地域差や個人差が見られる。以下、それらをまとめて /r/ と記す。

Rat /raːt/
Rechnung /ˈrɛçnʊŋ/

語末の r は母音化し /ɐ/ となることがある(斜体で /r/ とも書かれる)。

er /ɛɐ/, der /dɛɐ/, her /hɛɐ/

二音節以上の語では語末の er が母音化する。

Mutter /ˈmʊtɐ/

接頭辞 er-, ver-, zer- は /ɛɐ/, /fɛɐ/, /ʦɛɐ/

erinnern /ɛɐ ˈɪnɐn/

s[編集]

s は母音の前では /z/ と発音する。

Salz
Sohn
Hose

それ以外のときは無声音の /s/ と発音する。

Sklave /ˈsklaːfə//ˈsklaːvə/
Was /vas/
hast

ただし語によっては母音の前でも /s/ と発音することがある。

Erbse /ˈɛɐpsə/
Ypsilon /ˈʏpsilɔn/

sch は /ʃ/ と発音する。

Schwein /ʃvaɪn/
schön /ʃøːn/

st は語頭では /ʃt/ と発音する。

Straße /ʃtraːsə/
Stadt /ʃtat/

sp は語頭では /ʃp/ と発音する。

su は外来語や固有名詞などで /sv/ と発音することがある。

Suite /ˈsviːtə/

ss はつねに無声音の /s/ と発音し、直前の母音が短いことを表す。ただし、エスツェット (ß) が使えないときは ss で代用することがある(タイプライターなど)。

ß (エスツェット)はつねに無声音の /s/ と発音し、直前の母音は長母音か二重母音である。ただし、旧正書法では短母音に続く場合もある (daß → dass /das/)。

Fuß
Süßigkeit

t[編集]

t は単独では /t/ と発音する。タ行の子音である。

Tag
teuer

ts 、tz は /ʦ/ と発音する。

bereits
Satz

tsch は /ʧ/ と発音する。チャ行の子音である。

Deutsch
Tschüss

ラテン語からの外来語では母音の前の ti を /ʦi/ と発音する。

Nation /naʦiˈoːn/
national /naʦioˈnaːl/
Tertia /ˈtɛɐʦia/
Aktie /ˈakʦiə/

v[編集]

v は f と同様に /f/ と発音する。

Vater ファー
verstehen フェアシュテーエン

ただし外来語や固有名詞では /v/ となることがある。

Violine ヴィオリー
Leverkusen レーヴァクーゼン

語末で /f/ 、母音が後続すると /v/ と発音する語もある。

Relativ /relaˈtiːf/
Relativum /relaˈtiːvʊm/

w[編集]

w は母音の前では /v/ と発音する。

Wasser ヴァ
Wesen ヴェーゼン

それ以外のときは無声音の /f/ と発音する。

Löwchen /ˈløːfçən/

固有名詞の -ow は /ɔf/ と発音する場合と /o/ と発音する場合がある。

Tschechow /ˈtʃɛxɔf/
Bülow /ˈbyːlo/

x[編集]

xは /ks/ と発音する。外国語由来のものにのみ出現する。

z[編集]

zは /ʦ/ と発音する。英語のように /z/ とならないことに注意。

Zucker ッカ
Zeichen ツァイヒェン