コンテンツにスキップ

モノポリー/戦略

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

テンプレート:Monopoly/Header

モノポリーはサイコロを振って進めるゲームなので、戦略上重要な土地を買えるか、あるいは他人の土地に止まって高額なレンタル料を取られてしまうかは、本質的には運次第です。スタート順が遅いというだけでも、土地を購入する機会が減り、他のプレイヤーの土地に入ってレンタル料を取られる可能性が増えるので、比較的不利になります。

しかし、モノポリーには、実力のあるプレイヤーが自らの勝率をより高くするための戦略があります。資産を増やすための基本的な戦略は同一カラーグループの土地を独占することですが、交渉によらず偶然独占できることは少なく、多くの独占はプレイヤー間の交渉によって生まれます。標準的な人数の6人でのゲームなら、自力独占はまず起きません。もし偶然の自力独占も、交渉による独占も起きなければ、1周してGOを通るごとに所持金が$200増えていくので、破産して脱落するプレイヤーは出ずにゲームは無限に続くでしょう。

プレイヤー間の交渉で生み出される独占は勝利のための重要なポイントであるので、上級者同士のゲームになると、終始取引と交渉、そして時宜を得た「汚い作戦」(たとえば、手元にホテルを建てる資金があるのに、あえて家4軒のままにして銀行の家の在庫を減らす「家止め」行為)が繰り広げられます。

取引で独占して建物を建てる

[編集]

プレイヤーは、誰がどの土地を入手したら独占になるのかを常に考え、土地が交渉時に持つ価値を考えなければなりません。2人のプレイヤーが2つのカラーグループを互いに持ち合っている、すなわち2人で取引をすれば双方ともに1つのカラーグループを独占できる場合、しばしば両者は取引をしてカラーグループを1つづつ独占します。最初に建物を建てたプレイヤーは勝利しやすいとされているからです。

金銭管理

[編集]

金銭管理も、物件の取引と同様に重要な戦略です。高額のレンタル料を取れる家やホテルを建てることは、他のプレイヤーへの大きなプレッシャーとなります。しかし、他のプレイヤーのレンタル料が高額な土地に入ってしまい、現金不足で建物を売却するハメになってしまった場合、売却で得られる現金は建設費の半分にしかなりません。建物を建てることは、建設を忌避することと同じくらいのリスクを伴います。

さらに、十分な現金を持っていることは、誰も所有していない土地が競売にかけられた時や、銀行にある建物が不足して競売となった時に重要な意味を持ちます。現金が不足していると、欲しい物件や建物があっても、競売でより高い価格を提示した他のプレイヤーに対抗できません。さらに、現金を多く持っていれば、現金不足のプレイヤーよりも有利に交渉することができます。たとえば、高額のレンタル料を請求されたプレイヤーが、本当は土地と現金の交換をしたくないと思いながらも、建物の売却を回避するために渋々土地の売却を考えたとします。この時1人だけ現金を多量に持っていれば、有利に交渉できます。

現金は戦略上重要なので、多くのプレイヤーは独占していない土地を資金源として利用して、独占している土地の建物を増やそうとします。抵当は比較的安価な現金調達手段なので、抵当にも入れず建物も建っていない土地を所有することは現金を持っておくことと同じようなものです。抵当は、抵当価格に加えて抵当価格の10%(すなわち抵当価格の110%)を支払うことで解除できますが、建物を売却して資金を調達しようとした場合、売却価格は建設費の半分なので、建物を建て直すためには売却時に受け取った金額の200%が必要になります。

現金に関してもう1つ重要なポイントは、公式ルールでも「公式トーナメントルール」でも、各プレイヤーは他のプレイヤーに所持金の額を公表する必要はないことです。他のプレイヤーの所持金の額を知っていると交渉が有利になります。たとえば、交渉相手に独占を許す交渉において、相手が独占するグループに建物を建てるだけの十分な資金を持っていないと分かっていれば、多少自分にデメリットがあっても交渉に応じることが可能になります。

モノポリーで勝利するための基本戦略は、独占したカラーグループに建物をたくさん建てて他のプレイヤーから多額のレンタル料を取ることですが、4人以上のゲームでは交渉無しでカラーグループを独占することはほぼ不可能です。それゆえ、どのカラーグループにどれほどの価値があるかを判断する能力は重要です。

ボード上の物件の価値は以下の4つの要素で決まります。

  1. 購入価格 (プレイヤーがどこに止まるかは運任せであるうえ、止まった土地を次々に買うのが一般的な戦略なので、この要素はあまり重要でない)
  2. 建設費
  3. レンタル料
  4. ボード上の場所 (すなわちプレイヤーが止まる頻度)

最初の3要素はわかりやすいでしょう。価値が高い土地は費用対効果がよいのです。物件所有者がどれくらいの頻度でレンタル料を受け取れるかは、4つ目の要素で決まります。 近年では、コンピューターによる計算で、どのマスにどれくらいの頻度で止まるかを統計的に解析することができます。

実例を考えてみましょう。刑務所マスは最も止まる頻度が高いマスとされています。「刑務所に入れ」マスに止まるか、チャンス・共同基金カードで「刑務所に行く」を引くか、3回連続でゾロ目を出したプレイヤーは皆刑務所送りにされてしまうからです。ここで、サイコロを振った時に6,7,8が出る確率が相対的に高いことを考えると、オレンジのカラーグループは最も止まる頻度が高いグループであると分かります。また、ブラウン(ダークパープル)及びダークブルーのカラーグループは、土地が2つしかないので、ボードウォークへの移動を指示するチャンスカードが存在することを考えても、止まる頻度が低いグループになります。


効率良く現金を稼げる土地

[編集]

土地(鉄道と公共会社以外の物件)の中で、オレンジのカラーグループは他のグループに比べて特に優れています。刑務所から6,8,9マス目にあるゆえに止まる頻度が高い上に、土地価格も比較的安く、多額の投資をすることなく他のプレイヤーから高額のレンタル料を取れるからです。

オレンジの次に効率が良いのはレッドのグループです。統計によれば、グループとしてはオレンジのグループに止まる頻度が最も高いのですが、土地単独ではイリノイ通りに止まる確率が最も高いです。それに加えて、レッドのグループは刑務所出所後にオレンジのグループを通り過ぎたプレイヤーが止まりやすいです。

一般的には、ボードの各辺の2番目(GOから遠い方)のグループは、1番目のグループと建設費が同額でありまがら、レンタル料が高いので、投資効率が良いとされています。ただ、レッドのグループは例外的に、上記の理由によりイエローよりも良いとされています。

その他の土地

[編集]

レッド同様、ライトパープルのグループも刑務所を出たプレイヤーが止まる可能性がありますが、刑務所に近すぎるので大きな収益は期待できません。 ライトブルーのグループは、GOのマスから来たプレイヤーが止まりやすいです。 ブラウン(ダークパープル)のグループは、2マスしかないゆえに止まりにくく、レンタル料も安いので、安価で買えるのにもかかわらず、価値は低いです。 イエローのグループにはレッドほど多くプレイヤーは止まりませんが、中盤から終盤にかけて力を発揮します。 グリーンのグループは、建物を建てれば高い収益が期待できますが、多額の投資が必要になります。 ダークブルーのグループには2つしか土地が無いので、他のプレイヤーが止まる頻度は低いですが、これらの土地の高いレンタル料は他のプレイヤーに致命的なダメージを与えることができます。これらの土地の相対的な価値を取引の際に参考にするプレイヤーは、長期的にはよい結果を残すでしょう。

その他の戦略

[編集]
  • 普通の立方体サイコロ2個を使用しているならば、最も出やすい目は7です(確率)。それ以外の目が出る確率は、7との差が1大きくなるごとにずつ減少し、2,12が出る確率はそれぞれです。このことを知っていれば、自分や他のプレイヤーが次の順番でどこに止まるかをある程度予測できます。もし他のプレイヤーが自分が独占しているカラーグループに近づいていたら、可能な限り他のプレイヤーがいるマスから7マス目に近いマスに建物を建てるのがよい戦略です。
  • まだ多くの土地が売れ残っている序盤には刑務所に留まるべきではありません。すみやかに出所料を支払って刑務所を出ましょう。一方、終盤は土地のレンタル料が高くなっているので、刑務所にいることはレンタル料支払いのリスクを回避できるのでメリットとなります。この場合は出所料を払わずにゾロ目が出るか3ターン経過するまで刑務所に残るのが得策です。
  • 各プレイヤーのボード1周当たりの平均収入は$170です。この値はレンタル料の収支・GOでもらえる$200・カードやマスの指示による現金の収支を含みます。
  • 所得税マスに止まった場合、プレイヤーは総資産を計算する前に$200と総資産の10%のどちらを払うかを決めなければなりません。一見決めるのは難しそうですが、決断のための簡単な目安があります。ゲーム開始時の資産は$1500であり、1周するごとにGOで$200がもらえるので、GOを3回通る前なら総資産の10%を払った方が得になることが多いです。あまりにも運が良い場合・悪い場合を除き、3回目にGOを通るときプレイヤーの総資産は$2000を超えます。その後は、高額のレンタル料を取られて破産寸前にならない限りは総資産が$2000を割ることはほぼありません。
  • 1つの土地に2軒以下の家しかない場合、建物への投資額を回収するためには長い時間がかかります。3軒以上建てるとレンタル料は高額になり、比較的早く投資額を回収できます。もし1人で2つのカラーグループを独占している場合、所有するカラーグループ全体に均等に家を建てるより、1つのグループに集中的に投資して、資金に余裕ができるまで残りのグループには家を建てないでおく方がよいです。また、独占するカラーグループに3軒家を建てることができない場合、抵当を多数使用して家を建てるのは得策ではありません。
  • 銀行にある家の数が不足している場合、家4軒が建っている土地にホテルを建てると、銀行に返した家4軒を使って他のプレイヤーが家を建ててしまうので、ホテルを建てる資金があっても家4軒のままにしておく戦略(いわゆる家止め)を考えます。もし銀行が持っている家が無くなってしまったら、誰も家を建設することはできません。この時、ホテルを持っているプレイヤーは所有しているホテルを簡単には売却できません。もし一部のホテルを売却した場合、「建物はカラーグループ内で均等に建てる」原則から、売却していないホテルを残すためには元々ホテルがあった土地に家4軒を建てなければなりませんが、それが不可能ならホテルを全部売る羽目になります。安価なカラーグループの所有者は、この「家止め」作戦を活用して高価な土地に建物が建つのをある程度は防ぐことができます。
  • 銀行にある家の数が不足している場合、一旦手持ちの家を売却してから、再び買い戻して別のカラーグループに建て直すという戦略が使える場合もあります。しかし、この時他のプレイヤーが家の購入の意思を表明し、購入希望数が銀行にある家の数を超える場合、さらに高い建設費を提示しなければ家を購入できません。この戦略は、高価なカラーグループに家を建てたい場合で、かつ自分の所持金が十分にあり他の購入希望者の所持金が少ない場合のみ有効です。
  • 交渉が思うように進まず、独占が無い場合は鉄道と公共会社が有力な収入源になります。鉄道を4社独占できれば、誰かが鉄道に止まるたびに$200をもらえます。さらに、ボードには3か所のチャンスマスがあり、チャンスカードには鉄道に進むよう指示するカードが含まれています。他のプレイヤーは、ひとたび鉄道マスに止まってしまえば、GOでもらった$200を丸ごと取られてしまうので、他のプレイヤーにとって独占された鉄道は大きな脅威になります。カラーグループを独占しているプレイヤーであっても、鉄道マスに度々止まれば資金繰りは悪化し、建物を売却したり、土地を抵当に入れざるを得なくなることもあります。公共会社は鉄道ほど使い勝手はよくありません。4人以上でのゲームでは、プレイヤーが建物を建てたい独占物件を持っている場合に公共会社は効率の良い収入源になります。しかし、独占されたカラーグループが増えてくると公共会社の価値は次第に下落します。
  • 大人数でのプレイの場合、交渉内容が自分にとって多少不利であっても取引をした方が結果的には有利なことがあります。取引に関わっていないプレイヤーにとって、取引によって独占が生じることは脅威になるからです。たとえば、4人でのゲームで、甲と乙が取引をすると双方ともに独占ができるとします。しかし、取引で甲が受け取る物件は、甲が乙に譲渡する物件より多少価値が低いとします。このとき甲は取引をするべきでしょうか?取引するべきでしょう。確かに取引直後は総資産の額面上は損をしていますが、独占を得ることにより、取引にかかわっていない残り2人のプレイヤーからより高額のレンタル料を得ることができます。このメリットは取引直後のデメリットを簡単に打ち消します。ゲームを進めるためには、特に理由が無い限り、積極的に取引をすることが重要です。誰も取引をしないと、ゲームが止まってしまうことがしばしばあります。
  • とくにゲームの終盤においては、負けそうなプレイヤーが反撃に出て、勝ちそうなプレイヤーを逆に打ち負かしてしまうことが起こるので、積極的に交渉に参加する必要があります。たとえば、レンタル料を交渉なしに払うことが出来なくなったプレイヤーがいたとします。このような状況に陥ったプレイヤーは、どのみちあと数ターンで破産するのだから、と勝利をあきらめて、所有する物件を比較的安い価格で債権者(レンタル料を受け取るべきプレイヤー)以外の誰かに売却してしまうことがあります。すると、物件を入手したプレイヤーは独占が出来た場合は有利な立場になり、時に元々の債権者を打ち負かしてしまうこともあります。
  • 他のプレイヤーの所持金を把握していると、土地を購入する時に自らに有利になることがあります。序盤では、各プレイヤーは止まった土地を次々に買い集めるので、どのプレイヤーも現金不足になりがちです。序盤は土地のレンタル料が安いので、通常はこのことはあまり問題になりませんが、この状況を利用することもできます。所有者のいない土地のマスに止まった時、他のプレイヤーの現金が不足していると分かっていれば、定価で購入せずに、あえて一旦購入を拒否して競売にかける作戦を取ることができます。作戦が成功すれば、安く土地を入手することができるので、浮いた資金を他の用途に使うことができます。しかし、他のプレイヤーが抵当を駆使してまで購入を試みたり、「隠し金」($1紙幣の山の中に$500紙幣を隠しておく、などの行為)をした場合、定価を超える価格で買う羽目になったり、他のプレイヤーに土地を買われてしまうことがあります。この作戦は、自分だけが多額の現金を持っていて、かつ人数が少ないとき、特に2人の時に有効です。

外部リンク

[編集]