ロジバン/文法/表記法
ロジバンはアスキー文字で書けます。つまりどんな国のコンピュータ・キーボードからでも入力できます。アスキー式はあくまで主流のものであり、公式とされているわけではありません。ロジバンは音声が主体となっているので、音をきちんと表し分けれるかぎりではどの文字体系で書いても結構なのです。
アスキー式で書かれるロジバンの特徴が二つあります:
- 英語などでは文や固有名詞の頭を大文字にしますが、その習慣がロジバンにはありません。大文字はロジバンにおいて語句のデフォルト以外の強勢を示すためなどに用いられます。
- 日本語や英語などでは文の途中や末尾に句読点を打ちますが、そのようなルールがロジバンにはありません。文節や文の結びつきはロジバンにおいて無音の記号でなく有音の言葉で表します。
ロジバンに固有の言葉は全てデフォルトの強勢に準じますから、大文字を含むのは外来の言葉のみ、ということになります。デフォルトの強勢は最後から二番目の音節(penultimate)ですから、それ以外の音節をアクセントとする外来の語句が大文字化の対象となります。必須ではありません。たとえば「隆志/たかし」という日本語名は、元来の強勢を維持させれば tAkaci としますが、ロジバン内のデフォルトを適用させて takaci (=takAci)で済ましてもいいのです。話者自身が選ぶことです。また、 tAkaci の別の書き方として、母音だけでなく音節全体を大文字化させた TAkaci やアクセント符号をあしらった tákaci があります。大文字を好まないロジバニストが後者をよく使います。
強勢の選択はさておき、 takaci はそのままではロジバン内で使えません。名称として用いる外来の言葉は全て、それが外来の名称であるとわかるような姿をしている必要があります。最重要なのは末尾が子音であることです。これによって、全てが母音で終わるという内来の言葉と区別できるようになります。このような区別がなぜ大切なのでしょうか。同音異義語の発生を防ぐためです。たとえば英語では、「近畿大学」という名称を持ち込むと「Kinki University」となりますが、「kinki」という発音は英語の内来の言葉である「kinky」と重り、「変態大学」と解されかねません。持ち込む言葉の形(音)を変えて内来の言葉と識別できるようにすることでこのような問題は解決されます。その処方がロジバンに備わっているというわけです。外来語のロジバン化の詳細については cmevla の項を参照してください。ここでは、末尾を子音とすることに加え、わかりにくい音節を /,/ で区切ること、そして語の両端に /./ を付けること、とだけ説いておきます。
以下は日本語の名称のロジバン化の例です:
- 洋太 : .iotan. / .ioutan. / .iout. / ...
- 葵 : .aoin. / .aois. / ...
- 松本人志 : .matsumót.xitoc. / .matsumóton.xitocin. / ...
- 東京 : .tokion. / .tokiok. / ...
- カラオケ : .karaokek. / .karaok. / ...
- おりがみ : .origamim. / .origamin. / ...
ロジバンでは [h] を表す /'/ も文字の一つなのですが、外来語の転写には用いません。代わりに /x/ を当てます。したがって「人志/ひとし/hitoshi」は /'itoci/ ではなく /xitoci/ となります。(もっとも、日本語の「ひ」はローマ字で /h/ ですが発音は [ç] であり、もともと /'/ よりも /x/ に近いものです。)「Hegel」や「Heidegger」も /xegyl/、/xaidegyr/ とされます。
観点を換えて、表意文字である漢字を訳すことでロジバン化してみるのもおもしろいでしょう:
- 洋太 : xamsi + rotsu = .xamrot.
- 松本人志 : ckunu + jicmu + remna + djica = .ckucmuremjic.
- 東京 : stuna + tcadu = .tuncad.
- おりがみ : polje + pelji = .polpelj.
チャットなどカジュアルな環境では /,/ や /./ をまったく使わないロジバニストもいます。