中学数学2年 連立方程式

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連立方程式とは何か[編集]

まず、この問題を考えてみてほしい。

例題1
  • 1本30円の鉛筆と1個50円の消しゴムをそれぞれいくつか買ったら、合計で290円になった。
鉛筆と消しゴムをそれぞれいくつ買ったのだろうか。
解説

ここで、鉛筆をx本、消しゴムをy個買ったとすると、次の等式が成り立つ。

30x+50y=290     ・・・(1)

このような、文字が2種類あり、一次式である方程式を二元一次方程式(にげんいちじほうていしき)という。(「元」とは文字の種類と考えればよい)

ここで、xとyにどのような数が当てはまるか考えると(問題文より、x,yはともに整数)、

    1    2   3  ・・・  8  ・・・
          4  ・・・  1  ・・・

などと、x,yの組が求められる。

このような、x,yについての二元一次方程式の当てはまるx,yの組のことを、その方程式の(かい)という。上に挙げたものは、すべてこの方程式の解である。解がいくつもあるため、このままでは本当に求めたい答えが定まらない。(もし解を自然数だけに限定したとしても、(3,4)のほかに(8,1)という解もあるからである)


解の表し方
※ なお、答えの組を

(,) = (1,), (2,), (3,4)・・・ のように、「(xの数,yの数)」の記法で書きあらわしてもいい。


さて、上記の問題では、解がいくつもあるため、そのままでは本当に求めたい答えが定まらなかった。

しかし、この例題に、

また、鉛筆と消しゴムをあわせて7個買った

という条件がつくとどうだろう。これは、

x+y=7 …(2)

という式で表せる。この二元一次方程式の解は、

(0,7),(1,6),(2,5)…

と考えられる。


では、次に、方程式(1)と(2)という2つの方程式を組みにして書き表す記法を学ぼう。2つ以上の方程式を組み合わせる場合、次のように書きあらわす。

このように、二つ以上の方程式を組にしたものを 連立方程式(れんりつほうていしき) という。また、その連立方程式に代入することですべての方程式が成立する文字の値の組を 連立方程式の解 といい、その解を求めることを 連立方程式を解く という。上の連立方程式の解は、(x,y)=(3,4)と表せる。

この2つの方程式に共通する解である(x,y)=(3,4)が、最終的に求めたい答えだとわかる。


問題

つぎのア~ウの選択肢のなかから、連立方程式

の解を選べ。

ア) , 
イ) , 
ウ) , 
解法と答え

実際に方程式の左辺に代入して確認してみればいい。

アの (3,-2) を代入してみると、

これは、それぞれ与えられた方程式の右辺に等しいので、よってアは解のひとつである。

では、他に解は無いだろうか。

念のため、イとウも確認してみよう。

まず、イから調べる。イの (1,4) を方程式に代入してみると、

となり、(イ)は1番目の方程式は満たすが、2番目の方程式は満たさないので、イ は解ではない。


,  を代入して確かめてみると、

となり、2番目の方程式は満たすが、1番目の方程式を満たさないので、ウ は解ではない。


よって、選択肢のうち、解は ア のみである。

連立方程式の解き方[編集]

加減法[編集]

加減法とは、2つの方程式を足したり引いたりすることによって文字を消去し、方程式を解く方法である。

たとえば、

という式について考える。

まず、下の式(2)の両辺を2倍して

2x +2y =4

となり、2つの式のyの係数がそろう。ここで、上の式(1)から下の式(2)を引くと、

    4x + 2y = 8
-)    2x + 2y = 4
    2x = 4

となる。だから、x=2となる。


このように、xとyをふくむ方程式から、式を足したり引いたりして、yをふくまないでxだけの式を作ることを、 yを消去(しょうきょ)する という。

ここで、これをもともとの下の式(2)にx=2を代入してみると、

ゆえに、y=0となり、解 (x,y)=(2,0) が求められる。


このように、連立方程式を解くときに2つの方程式を足したり引いたりすることによって文字を消去し、方程式を解く方法のことを加減法という。

※ 加減法は数学の用語のひとつだが、高校以上では あまり使わない用語なので、用語の暗記は不要。用語の暗記よりも、実際に計算をできるようになることのほうが必要である。


加減法で解くときのポイントは、どちらかひとつの文字の係数の絶対値をそろえることである。等式は両辺に同じ数をかけても成立する、という性質があるので、それを利用してそろえればよい。


例題2

さきほどの例題では、どちらか片方を整数倍するだけで、xまたはyの少なくとも片方の係数が、2つの方程式で同じになった。

しかし

のような連立方程式の場合、どちらか片方を整数倍するだけでは、係数が同じにならない。

これを解くには、どうすればいいだろうか?

解くための方針として主に2通りある。

方針1  片方の整数倍では係数が一致しないなら、だったら両方の式とも別々の整数で整数倍すればいいのでは? (仮に「両方の整数倍アイデア」と呼ぼう)
方針2  整数倍でだめなら、分数倍すればいいのでは? (仮に「分数倍アイデア」と呼ぼう)

のような、少なくとも2通りの方針がある。

とりあえず、方針1「両方の整数倍アイデア」で解いてみよう。

私達はxかyのどちらか片方を消去したいが、さきほどの例題1ではxを消去したから、今度の例題2ではyを消去してみよう。

yの係数に注目すると、(1)のyの係数は3、(2)のyの係数は2である。

(1)の式全体を2倍して(この「2」は(2)のyの係数)、(2)の式全体を3倍すれば(この「3」は(1)のyの係数)、(1)と(2)の両方ともyの係数が6になる。

このように、2つの式のある文字の係数が等しくなるようにすればよい。

では、やってみよう。

分配法則などを使って、この連立方程式からカッコを外すと、

になる。

さらにかけ算して整理して

となる。

(2)の式のxの係数のほうが、(1)の式のxの係数よりも大きいので、(2)の式から(1)の式を引き算したほうが、解を求めるための計算がラクになりそうであるので、そうしよう。

となる。

計算を実行すれば

両辺を11で割れば、

となる。


こうして、解の片方として x=-4 が求められた。

では、これから残りのyの解も求めよう。

のうち、(1)か(2)のどちらか片方に先ほどの x=-4 を代入すればいいのであるが、上の(1)の式ばかりに代入していたら()きるので、今回は(2)の式に代入してみよう。

すると、

になる。

両辺に20を足せば、(つまり -20を移項して右辺に移せば)、

あとはyの係数の2で割れば(倍すれば)

よって が求められた。

例題2の解   
                
問題
次の連立方程式を加減法で解け。

問1  


問2  


問3  


解答

問1  (x,y)=(5,-3)
問2  (x,y)=(11/2,-51/2)
問3  (x,y)=(-4/7,-13/14)

代入法[編集]

まずは、次の連立方程式を考えることにする。

このような連立方程式は、文字がひとつの、つまり、1年生で学習した一次方程式の形にして解くことができる。

上の式を(1)、下の式を(2)とする。(1)の式では、"y"と"2x+7"の2つが等しいことを示しているわけであり、また、(1)と(2)のxとyにはまったく同じ物が解として入る。そこで、(2)のyを(1)の2x+7に置き換える。つまり、(1)の式を(2)に代入するのである。このとき、(2)のyという文字を消去できる。

(1)を(2)に代入して、

これで、yが消去された。これを解いて、

また、このxの値を(1)に代入して、

これで、この連立方程式の解、(3,13)が得られた。普通、連立方程式の解は次のように書く。

(x,y)=(3,13)

あるいは、

この教科書では、以後上の書き方を用いる。

このように、一方の式を他方に代入することで連立方程式を解くことができる。これを、代入法という。

問題
次の連立方程式を代入法で解きなさい。
  1.  
  2.  
  3.  

解答 1 (x,y)=(3/5,19/5) 2 (x,y)=(10/19,4/19) 3 (x,y)=(7/17,11/17)

解の定まらない連立方程式


いろいろな連立方程式の解法[編集]

カッコのある連立方程式[編集]

例題

次の方程式を解きなさい。


(解法と答え)

上のようにカッコのある連立方程式の場合、分配法則などをつかってカッコを外したり、移項したりして、簡単な式に置きかえておくと、解を求めやすくなる。

カッコのあるのは(2)だけなので、(2)を式変形すれば済む。

まず、(2)左辺を式変形すると

となる。

(2)の右辺より、左辺が11と等しいのであるから、つまり、

である。

次に、左辺の -2 を移項して、定数項どうしをまとめると、

になる。

よって、(2)は最終的に

に変形される。


すると、この例題の方程式を求めるには、新たな連立方程式

を解けばいいことになる。なお、(1)式と(1)'式とは同じであるが、新しい連立方程式を見やすくするために、新たに(1)'と置いた。

カッコの含まない連立方程式の解き方は、1年生で学んだ。 なので、あとはもう、今まで習ったとおりに加減法や代入法などで、この新たな連立方程式を解けば、解がもとめられる。 

yの係数が(xの係数と比べると)絶対値が小さいので、yに注目して加減法で解くと計算がラクそうなので、では、加減法で その方法で解いてみよう。 (1)''式を2倍、(2)''式を3倍すれば、

式(2)''から式(1)''を引き算すれば、

よって、

になる。まず、解の片方であるxの解が求められた。

このx=3の結果を(1)''すれば、

左辺の定数項24を移項して、

よって

最終的に求めたいのは、連立方程式(1),(2)の解であるので、よって解が求められた。

例題の解   
                

分数や小数のある連立方程式[編集]

のように、分数の係数をもつ連立方程式の解法を考えよう。

このような場合も、分母の数で掛け算することで、整数の式に置きかえればよいだけである。

とりあえず、係数から分数を一掃したいので、式(1)の両辺を6倍してしまおう。この6倍という数の根拠は、xの係数の分母の2と、yの係数の分母の3の公倍数が6だからである。

では、実際に式(1)を6倍すると、

これを式(2)と連立させるので、

となる。

あとはもう、係数がすべて整数なので、習ったとおりの方法で解けばいい。


解法は加減法でも代入法でも、どちらでも解けるが、とりあえず代入法で解いてみると、式(2)のxの係数が1なので、これを代入法に利用するためにyを移項すると、

これを式(1)'に代入してみると、

2つめの式と3つ目の式を取り出し、

分配法則などを使ってカッコを外して

同類項をまとめて、定数項9を左辺に移項して定数項どうしでまとめて、

両辺をマイナス7で割り算して、

が求められた。

この結果を、

に代入し、


よって答えは、である。

例題の解   
                
※ここから先の、「分母に文字がある連立方程式」「A=B=C の形の連立方程式」「3元1次方程式」は、発展内容です。

分母に文字がある連立方程式[編集]

 例題  次の連立方程式を解きなさい。

解き方は数通りありますが、ここでは「別の文字に置く方法」で、やってみましょう。
まず、 と おいてみよう。

A=B=C の形の連立方程式 [編集]

 例題  次の連立方程式を解きなさい。


一般に、のとき、次のことが成り立ちます。



ですから、の形の連立方程式は、上の3つのどれかの連立方程式に直して解きます。

3元1次方程式[編集]

今まで解いてきたのは、含(ふく)まれる文字が1つか2つの方程式(2元1次方程式)だったが、ここでは、3つの文字が含まれる「3元1次方程式」を考えてみよう。

連立方程式の利用[編集]

連立方程式の問題を解くポイントは、

  1.  求めるものをx、yに置き換える
  2.  2つの式を立てる

ことである。次の問題を考えてみよう。

例題1
全長24kmのコースを、スタートからA地点までは自転車で進み、そこから先は自転車を降りて走ります。自転車の速さが時速18km、走る速さが時速9kmのとき、スタートしてからゴールするまで1時間半かかりました。自転車で進んだ距離と走った距離を求めなさい。
解説

連立方程式では、このような速さの問題や、あるいは食塩水の濃度に関する問題がよく出される。

さて、問題を考えることにするが、この問題文から次の関係がわかる。

  1. (自転車で進んだ距離)+(走った距離)=24km
  2. (自転車で進んだ時間)+(走った時間)=1.5時間

ここで、自転車で進んだ距離をx km、走った距離をy kmとすると、この関係は

と表せる。この連立方程式を解くと、(x,y)=(21,3)となるので、答えは、

自転車で進んだ距離は21km、走った距離は3km

となる。

総括[編集]

連立方程式では、(x,y)という二つの文字を使って方程式を解いてきました。ピンときた方は、「この問題は1次方程式で解けるよね?」と疑問を抱くと思います。決して間違いではないです。先ほどの文章題は、スタートからA地点までをx(km)、A地点からゴール地点までを(24-x)kmとして、x/18+(24-x)/9=1.5の方程式を作成することも可能です。
でもこうしてしまうと式が複雑になり、解くのに時間がかかる。変な疲労を溜めてしまうこともあります。皆さんが受験することになる高校入試、身近なところで言えば定期テスト。時間勝負であり、ほかの問題を解く際に支障をきたしてしまいます。
そこで連立方程式を利用するのです。文字化してしまえば、解くのは非常に楽になります。また皆さんはこれから高度な数学を学んでいきます。そこでは必ずしも今回のx,24-xのように繋がりがあるとは限らないのです。1次方程式のみでは限界があります。
連立方程式は中高、さらにはその先の世界でも出会うことになります。マスターされることを祈念しております。