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中学校保健体育/薬物乱用の害と健康

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
小学校・中学校・高等学校の学習>中学校の学習>中学校保健体育>薬物乱用の害と健康

覚醒剤や大麻などを乱用すると、体や心にどのような影響が出ますか?

キーワード

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覚醒剤・大麻・薬物乱用・ドーピング・依存症状

薬物乱用とは

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※薬物乱用について調べてみましょう。

危険ドラッグの恐ろしさ
多くの薬物は名前や見た目だけで危険だと思われないようになっています。薬物の中でも、「合法」「脱法」として売られたり、「お香」「ハーブ」「入浴剤」などと嘘をついて売られたりします。このような薬物は危険ドラッグと呼ばれています。服用者は急性の錯乱状態などのような症状が出たり、転落事故や交通事故などを起こしたりしています。危険ドラッグは店舗やインターネットでも買えます。どのような危険性があるかわからないので、危険ドラッグも絶対に手を出してはなりません。

★様々な乱用薬物

  • 様々な形をしているので、見た目では分かりません。
  • 薬物や有害物質を隠すために、隠語(別のよび名)を使います。
種類 隠語 主な症状
有機溶剤

(シンナー・トルエン)

アンパン・ジュントロなど
  • 幻覚・妄想・意識障害
  • 延髄麻痺による突然死
覚醒剤 スピード・エス・アイス・シャブなど
  • 興奮作用・睡眠欲求・食欲や疲労感の低下・気分の高揚
  • 幻覚・妄想・錯乱状態
  • 強い依存性
  • 1回の使用でも急性中毒で亡くなります。
大麻 マリファナ・チョコ・ハッパ・ハシシュ・グラスなど
  • 心拍数の増加・目の充血・思考力や記憶力の低下
  • 幻覚・妄想
  • 白血球減少・免疫力の低下・生殖機能の障害・意欲の低下

もし、禁止薬物(覚醒剤・大麻・麻薬)・禁止化学物質(モルヒネ・有機溶剤)を息抜きのために1回でも使ったら、薬物乱用になります。

薬物の名前や見た目に騙されないようにしましょう。誰かに言われても、薬物に手を出さないようにしましょう。

覚醒剤取締法第1条(この法律の目的)
覚醒剤取締法は、覚醒剤の濫用から保健衛生上の危害を防止するためにあります。覚醒剤取締法では、覚醒剤・覚醒剤原料の輸入・輸出・所持・生産・譲渡・譲受・使用についての必要な決まりを定めます。

薬物乱用の健康への影響

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※薬物を乱用すると、脳にどのような悪影響をもたらしますか?

覚醒剤を乱用すると、気分が高まったり、疲れがとれたように感じたりします。しかし、薬が切れると、疲れやすくなり、気分も落ち込み、体力も落ちてきます。乱用を繰り返すと、幻覚や妄想も見られます。乱用をやめても、お酒を飲んだり、強いストレスを受けたりすると、いきなり幻覚や妄想が現れます(フラッシュバック)。また、体が弱くなったり歯が抜けたりして、身体にも大きく影響します。覚醒剤を1回使っただけで呼吸が止まったり、脳の血管が破れたりして、命を落としてしまう場合もあります。

大麻を乱用すると、不思議な感覚になったり、精神が錯乱状態になったり、幻覚や妄想が見られます。乱用を繰り返すと、頭の中がすっきりしなくなったり、気力がわかなくなったりします。また、身体的な障害(気管支炎や白血球数の減少など)や性機能の障害(精子数の減少や月経異常など)が起こります。

このように、薬物を乱用すると脳に大きな影響を与えるので、脳の損傷部分の働きを弱めたり、様々な悪影響をもたらしたりします。

薬物を乱用すると、幻覚(幻視や幻聴)が出たり、急死したりします。薬物をやめてからしばらく経っていても、いきなり幻覚などの症状がみられるようになります(フラッシュバック)。また、ドーピングでは、禁止薬物を使ってスポーツの成績を上げようとします。不整脈・肝障害・精神症状が出たり、公平・公正な競技を妨げたりするので、ドーピングを厳しく禁止されています。

薬物乱用の悪循環

★薬物乱用は脳に影響します。

頭頂葉 視覚 【幻視】
  • 物が大きく見えます。
  • 物が小さく見えます。
  • 物が変わって見えます
  • そこにないのに見えてしまいます。
後頭葉 運動
  • 手足が震えます。
  • 手足の動きがはっきりしません。
側頭葉 聴覚 【幻聴】

そこにない音が聞こえます。

記憶 記憶が薄れます。
前頭葉 運動 手足が痺れて自由に動けません。
言葉・思考 考える力が弱くなります。

妊娠中に薬物を乱用すると、胎児の発達に影響が出ます。そして、赤ちゃんが薬物依存症になりやすくなります。また、男性が薬物を乱用すると、精子を傷つけてしまいます。

薬物乱用の悪循環

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※薬物を乱用すると、体や心にどのような影響が出ますか?

薬物乱用を繰り返すと、体が疲れやすくなったり、体が震えやすくなったりします。また、薬物の効き目がなくなると、精神的な苦痛から薬物を再び使いたくなったりします(依存症状)。1回だけ使用しても、依存症状が現れます。依存症状が現れると、自分の意思で薬物をやめにくくなります。そのため、心身の健全な発育や人格の形成に大きな悪影響をもたらします。

資料出所

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  • 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著  2021年
  • 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年