コンテンツにスキップ

中学校保健体育/運動やスポーツの安全な行い方

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
小学校・中学校・高等学校の学習>中学校の学習>中学校保健体育>運動やスポーツの安全な行い方

怪我・事故を防ぐため、安全な運動やスポーツの仕方を考えてみましょう。

キーワード

[編集]

強度・時間・頻度・自己管理・健康状態・準備運動・水分補給・整理運動・自然に関する知識

安全な運動やスポーツの条件

[編集]

※スポーツを始める前に何を決めなければなりませんか?

運動やスポーツを安全に行うためには、まずその特性を知らなければなりません。自分の発達段階に合わせて、強度・時間・頻度をあらかじめ決めておきましょう。また、自分の目的に合わせて、運動やスポーツを選びましょう。

★強度・時間・頻度の決め方

強度 発達段階に合わせて、運動の強さ(抵抗の大きさや動きのスピードなど)を決めます。
時間 運動の強度を考えて、持続時間(秒や分、反復回数など)を決めます。
頻度 運動の強度や時間を考えて、週に何回行うかを決めます。

スポーツ活動の自己管理

[編集]

※スポーツ活動の体調管理についてまとめてみましょう。

スポーツを計画的に行っていても、疲れ過ぎて体調不良につながってしまうかもしれません。体調の変化に気を配り、必要ならスポーツ活動を休んだり、軽くしたりして、スポーツ活動の自己管理をしましょう。体重・起床時の脈拍数などで、体調の変化を確認出来ます。また、天候・活動場所・活動内容・体調(脈拍数・疲労感など)などをスポーツ活動の日誌に記録すると、スポーツ活動の自己管理に役立ちます。

運動やスポーツの準備と安全対策

[編集]

※どうして準備運動や整理運動を行いますか?

運動前

[編集]

運動前に、自分の健康状態を確かめましょう。次に、施設や用具の安全確認を行いましょう。そして、運動前は関節の動く範囲を広げるために必ず準備運動を行いましょう。準備運動を行うと、肉離れや捻挫などの怪我を防げます。

準備運動
準備運動を行うと、体が自然に動くようになります。まず、体を温めるために軽いジョギングを始めましょう。次に、肩・膝・手首などの関節・筋肉・腱をよく伸ばしましょう。最後に、種目に合わせて、準備運動用の用具を取り入れましょう。例えば、バスケットボールを使って両手ドリブルをしたり、サッカーボールを使ってリフティングをしたりします。

運動中

[編集]

暑い時の運動中も自分で体調管理を行わなければなりません。脱水症状や熱中症を防ぐため、こまめに水分補給をとりましょう。また、休憩するかどうかは、自分の体力や体調に合わせて決めましょう。もし、汗をかいたら体を冷やしすぎないように気をつけましょう。さらに、お互いの体調や安全に気をつけながら、自分・クラスの仲間・チーム全体に目を配って行動しましょう。もし、一人でも様子がおかしかったら、競技や練習の途中でも運動をやめましょう。

運動後

[編集]

運動後はクーリングダウン(軽い運動)をしたり、静的ストレッチングなどの整理運動を行ったりして、筋肉の疲れを回復させましょう。そうすると、疲れが取れやすくなります。激しい運動をしたら、休息をとり、運動量に合わせて食事を取りましょう。

整理運動
整理運動は、体に疲れがたまったり、筋肉が痛んだりしないために行われます。運動に使われた筋肉(脚や腕など)を伸ばすストレッチングや軽い動きは、疲れを取ったり、スポーツ障害などの怪我を防いだりします。整理運動は、リラックスしながら行いましょう。

★スポーツ活動の安全配慮

運動前
  • 体調の確認
  • 施設や用具の安全確認
  • 準備運動
運動中
  • 適切な休憩や水分補給
  • 仲間の安全確認
運動後
  • 適切な休憩や水分補給
  • 整理運動や体調確認
  • 施設・用具の点検や整備

野外活動時の注意

[編集]

※野外活動の注意点をまとめてみましょう。

運動やスポーツを野外で行うと、非日常的な経験として大きな魅力になります。しかし、しかし、野外活動は生命の危険も伴います。そのため、自然に関する知識を身につけ、自然を理解しましょう。いつも天気予報を見て、暴風雨・落雷・増水などの恐れがないか確認しましょう。少しでも危険を感じたら、すぐに中止しましょう。

スポーツ障害

[編集]

運動したり、スポーツをしたりすると、心身ともに良い効果をもたらします。しかし、やりすぎたり、正しくない方法でトレーニングを行ったりすると、体の様々な部位に障害が出てしまいます(スポーツ障害)。

発育・発達が盛んな中学生の骨はまだ成長途中です。そのため、この時期の骨は弱く脆くなっています。オスグッド・シュラッター病と野球肘は、子供の成長期に多く発症します。また、足に合っていない靴を履くと、親指の付け根が痛んだり曲がったりする外反母趾につながります。

症状が出たら、早めに医療機関を受診しましょう。

スポーツ障害の具体例
■テニス肘

ラケットでボールを打つと、前は少なくとも衝撃を受けます。テニス肘は、同じ動作を繰り返したり、強いボールを打ち返したりするとなります。特に、テニス肘は硬式のボールで起こりやすくなります。テニス肘になると、腕の外側が腫れてしまいます。

[起こりやすい種目]テニス

■オスグッド・シュラッター病

成長期は、骨の発育も活発なので、関節部の軟骨から新しい骨が作られます。この部分の骨は軟らかいので、膝などの関節に負担をかけると痛みやすくなります。オスグッド・シュラッター病になると、痛みがひどくて歩けなくなります。また、水もたまってきます。

[起こりやすい種目]サッカー・バスケットボール・バレーボール

■野球肘

成長期に、全力投球を何度も繰り返すと、前に負担がかかり、骨も成長しにくくなります。野球肘になると、肘の関節部分の成長軟骨部に障害を起こします。また、軟骨部がはがれ、骨の破片のように関節内を動き回り、激しい痛みを感じます。

[起こりやすい種目]野球・体操・卓球・テニス

■サッカー足

サッカー足では、ボールを蹴る動作を繰り返すと、足首の関節の前方を傷めます。棘が骨に当たったり、骨周辺の靭帯などが関節内に挟み込まれたりすると、痛みがでて、関節も動きにくくなります。

[起こりやすい種目]サッカー

野外スポーツを安全に行う

[編集]

※野外スポーツを安全に行うためには、何に気を付けなければなりませんか?

危険を予測し、対策を考えておく

[編集]

様々な危険が野外スポーツにつきまといます。自分達の経験と体力を考えつつ、頼もしい指導者の意見を参考に無理のない計画を立てましょう。危険を想定して、その対策を考えるようにしましょう。誰もが「自分の安全は自分で守る」と思わなければなりません。事前に保護者や先生の許可を取りましょう。

ルール・マナーをしっかり守る

[編集]

自分勝手な行動は、思わぬ事故を招いてしまいます。参加者全員が安全で快適な活動を行うために、法律・条例・集団の約束事・道具や用具の使い方などをしっかり守るようにしましょう。

気象情報に注意する

[編集]

当日の天気予報を見て、悪天候が見込まれるようなら予定を変えましょう。また、突然天候が変わっても大丈夫なように、避難場所と避難経路を前もって確認しましょう。当日は携帯電話やスマートフォンを使って最新の気象情報を手に入れて、天候の急変に注意しましょう。

安全を最優先する

[編集]

安全を最優先して、プログラムの中止や変更が必要な場合もあります。もし、怪我をしたり、病気になったり、事故に遭ったりしたら、落ち着いて近くの大人に助けを求めるようにしましょう。

場所 危険予知 対策
  • 晴れていても、ダムの放水や上流の大雨ですぐに増水します。
  • 場所によって、深さや水温、流れの速さが違います。
  • 放流や増水を知らせるサイレンや放送を聞き逃さないようにしましょう。
  • 水温や水の流れに気を付けましょう。
  • ライフジャケットなどを着るようにしましょう。
  • 潮位は時間と気圧に左右されます。
  • 水温は水深や場所に左右されます。
  • 水底や岩場は、鋭い岩・鋭い石・貝殻などで怪我をしやすいかもしれません。
  • 離岸流の危険があります。
  • ライフセーバーの指示に従い、遊泳区域を守ります。
  • 水温や水の流れに注意しながら泳ぎます。
  • 岩場を歩く時は靴を履きます。
  • 昼と夜の気温差がはっきりしています。
  • 100m登ると、気温は約0.6℃下がります。
  • 天気はすぐに変わります。
  • 落雷・濃霧・雪崩などの危険があります。
  • 熊などの大型動物に遭遇するかもしれません。
  • 植物にかぶれたり、スズメバチなどの虫に刺されたりします。
登山向きの服装:長袖・長ズボン・手袋・帽子・靴
  • 登山向きの服装を着て、防寒具と雨具なども用意しましょう。
  • 午後3時までには下山します。
  • 積乱雲が発生したり、雷が鳴ったりしたら、山の尾根(一番高い所)から離れましょう。
  • 事前に植物や動物の知識を学びましょう。

[1]溺れそうになったら

突然足を滑らせたり、深い場所に落ちたりすると、慌ててしまいます。もし、誰かが川に落ちたら、落ちた場所へ戻ろうとせず、下流へ流されながら、近くの岸へ泳ぐようにしましょう。

[2]溺れている人を助けるには

状況を受け入れ、周囲に助けを求めましょう。この時、慌てないようにしましょう。近くに浮き輪があったら、溺れている人に投げて陸から助けましょう。声を掛けて励ましましょう。もし助けられなかったら、119番通報をしてレスキュー隊に救助を求めましょう。

資料出所

[編集]
  • 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著  2021年
  • 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年