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中学校保健体育/飲酒の害と健康

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
小学校・中学校・高等学校の学習>中学校の学習>中学校保健体育>飲酒の害と健康

お酒を飲むと体はどのようになりますか?

キーワード

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アルコール(エチルアルコール)・急性アルコール中毒・依存性・アルコール依存症

飲酒の急性的な影響

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※お酒を飲むと体と心にどのような影響を受けますか?

お酒の主な成分は、アルコール(エチルアルコール)です。どのようなお酒を飲むかで、アルコール濃度が変わります。アルコールは胃や腸で吸収され、血液を通って全身に行き渡ります。麻酔作用がアルコールにあるので、脳を麻痺させて、運動機能・自制力・思考力を鈍らせます。その結果、暴力・傷害などの事件や転落などの事故を起こしやすくなります。このため、飲酒運転は法律で厳しく禁止されています。飲酒運転をすると、飲酒運転をしない人と比べて約7.1倍の人が交通事故で亡くなっています(2022年)。

「アルハラ」は人権侵害
飲酒の人権侵害として、飲酒の無理強い・一気飲ませ・意図的な酔いつぶし・飲めない相手を気にしない・酔った上での迷惑行為などが挙げられます(アルコール・ハラスメント)。

お酒を飲むと、血中アルコール濃度はゆっくりと上がり、心と体の健康に様々な悪影響をもたらします。一度に大量のお酒を飲むと、急性アルコール中毒になり、呼吸停止して命を落としてしまいます。また、嘔吐物が喉に詰まらせてしまいます。これまで多くの若者が無理やり飲まされて亡くなっており、家族は悲しみと怒りを感じています。この場合、お酒を相手に飲ませたら、その人に損害賠償責任を問われます。

肝臓は主にアルコールを消化します。しかし、アルコールの消化は限られており、個人差もあります。化学物質のアセトアルデヒドは中間段階で作られます。アセトアルデヒドは有害で、頭痛や吐き気を引き起こします。日本人の約半数は、アセトアルデヒドを壊す酵素を持っていないか、アセトアルデヒドを壊す酵素の働きが限られています。

★血中アルコール濃度と酔いの状態

血中アルコール濃度 酔いの状態
0.02~0.15%
  • 脈が速くなります。
  • 体温が上がります。
  • ほろ酔い気分になります。
  • 判断力が少し弱くなります。
  • 陽気になります。
  • 皮膚が赤くなります。
0.16~0.30%
  • 吐き気や嘔吐が起こります。
  • 千鳥足になります。
  • 立つとふらつきます。
  • 気が大きくなります。
0.31~0.40%
  • 言語が意味不明になります。
  • 意識がはっきりしません。
  • まともに立てません。
0.41~0.50%
  • 死亡します。
  • 大小便を垂れ流します。
  • 意識を失います。

上の表は公益社団法人アルコール健康医学協会の資料から抜粋しています。

★血中アルコール濃度と脳の状態

血中アルコール濃度 脳の状態
0.02~0.15% 論理的な部分が少し麻痺します。
0.16~0.30% 小脳が麻痺して、運動機能も下がります。
0.31~0.40% 記憶部分が少し麻痺します。
0.41~0.50% 脳全体が麻痺します。

上の表は公益社団法人アルコール健康医学協会の資料から抜粋しています。

大学生対象の調査に基づくと、短時間に大量の飲酒をすると、飲まない人に比べて約25倍も怪我をしやすくなります。お酒を飲んで急性中毒を起こさなくても、身体を傷つけやすいので注意しましょう。

常習的な飲酒による影響

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※飲酒を続けると健康にどのような影響を受けますか?

アルコールはとても依存性を持っています。お酒を飲み続けると、さらにお酒を飲んでしまい、日常生活・仕事・人間関係などに影響が出てもやめられなくなります(アルコール依存症)。また、アルコールをよく飲むと、肝臓・脳・胃・腸・膵臓などの病気や癌にかかりやすくなります。さらに、妊婦の飲酒は胎児の発育に悪影響をもたらします。

★大量飲酒の影響

喉・食道
  • 喉頭癌
  • 食道炎
  • 食道癌など
  • 性格の変化
  • 急性アルコール中毒
  • アルコール依存症
  • アルコール性認知症など
肝臓
  • 脂肪肝
  • アルコール性肝炎
  • 肝硬変など
心臟
  • 心筋症
  • 不整脈
  • 高血圧など
生殖器 男性:男性ホルモン低下

女性:卵巣機能不全・月経不順など

  • 胃炎
  • 胃潰瘍など
神経・骨 末梢神経障害(痺れや震え)など 膵臓
  • 膵炎
  • 糖尿病など
  • 大腸癌
  • 十二指腸炎
  • 十二指腸潰瘍など

発育・発達期での影響

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※どうして20歳未満の飲酒を禁止していますか?

発育・発達期はアルコールの悪影響も大きくなります。このため、脳が小さくなり、学習能力・集中力・記憶力が落ちてしまいます。性ホルモンの分泌も正常に行われなくなり、生殖器官の働きが妨げられます。また、アルコールも中々吸収出来ないので、急性アルコール中毒になってしまいます。さらに、発育発達期からお酒を飲み始めると、短期間でアルコール依存症になってしまいます。そのため、20歳未満の飲酒は法律で認めていません。親は子供にお酒を飲ませないようにしなければなりません。お酒の販売業者は20歳未満の人に販売出来ません。

資料出所

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  • 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著  2021年
  • 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年