中学校家庭/持続可能な食生活を目指して

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日常食の調理[編集]

包丁[編集]

右手で包丁を使うときの食材の押さえ方

包丁を使用する際、左手の指先は内側にまるめておく。右または上の図を参照してもらうが、手の指の関節の甲の側を、包丁の側面に当てておくと、指先は自然に手の内側に入るので、もし包丁が滑っても、包丁の刃の先に指は無いので、あやまって指を切る危険がなくなる。また、包丁を使うときには、親指を刃の方に出さないように注意する。

  • 包丁の種類
    • 洋包丁(ようぼうちょう)
    • 菜切り包丁(なぎりぼうちょう)
    • 出刃包丁(でばぼうちょう)
出刃包丁

前日の準備[編集]

実習日の前までには、(つめ)をきちんと短めに切っておくのが望ましい。

当日の準備[編集]

手を石鹸で洗う。細菌は水だけでは落ちにくいためだ。指先のつめ先の間や指と指の間、手首まで洗うのが望ましい。また、アルコール消毒[1]ができると良い。

  • 服装
    • 三角巾をかぶる。三角巾は、髪が料理に落ちるのを防ぐため。
    • エプロンを着用。
    • 必要に応じてマスクをする。
  • まな板(木の場合)
    • 水で濡らして、ふきんで、よく拭き取る。
      • 乾いたままだと、汁がしみこみやすいので。
    • 肉や魚をまな板で切るときは、魚や肉を切る面と、野菜を切る面を分ける。
    • まな板は、使用後は、洗剤などで洗ってから、乾かす。最後は、日光に当てて乾かす。

調理[編集]

生肉など、熱を通す必要のある食事は、中まで火が通るように、よく火を通す。 中心温度75度で1分以上加熱すること。

日本の家庭用計量カップ(200 mLタイプ)
  • 計量カップ
    • 日本の料理用の計量カップは、ふつうは200mLまでを測れる物である。
  • 計量スプーン
    • 日本の場合、計量スプーンの量は、大さじ15mL、小さじ5mLである。

できた料理は、なるべく早めに食べる。

  • 切り方
    • ()切り
    • 小口(こぐち)切り
    • くし形切り
      • トマトなど、球形の物を切るときの切り方の一つ。
    • 乱切り
      • 斜めに切り、そして材料をまわして断面が手前にくるようにする。
    • ささがき
      • 主に、ごぼうを切るときの切り方。
    • ななめ切り
    • 半月(はんげつ)切り
    • せん切り
    • いちょう切り

など。

調味[編集]

さしすせそ」と呼ばれる順番で、砂糖醤油味噌の順に入れる。しょうゆは、昔は「せうゆ」と書いたので、「さしすせそ」の「せ」になっている。この「さしすせそ」は、味が単純な物から先に入れる順番を覚え易くしたものである。

配膳[編集]

和食の配膳[編集]

ご飯とみそ汁などの、主食と汁ものは手前に置く。ご飯などの主食が手前左側にあり、みそ汁など汁物は手前右側に来る。箸は、最も手前にて利き手と反対を向いて配置する。

この他、副菜 (煮物など) は左奥に、主菜 (焼き魚など) は右奥に、漬物は真ん中に配置する。

後かたづけ[編集]

  • 調理用具や、使い終わった食器などは、すぐに洗って、拭くなどしてから、元あった戸棚などに、すぐに戻す。
  • まな板は、洗ってから、ふきんなどで水を吹いてから、日のあたる風通しの良い場所で乾かす。
  • ごみは分別する。

調理方法[編集]

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肉は、たんぱく質を主に含むが、脂質、ビタミンなども多く含んでいる。それゆえ、肉を食べることで、成長に必要な栄養を手早く得られる。

一口に言ってもと、種類や部位によって、脂肪のつき方や硬さなどが違っている。味も、種類や部位によって、違ってくる。

肉の加熱は、フライパンで加熱するのが一般的。肉を加熱するときは、中心部まで、十分に加熱する。十分に加熱することで、肉についている細菌を死滅させることができる。目安は中心温度75度で1分以上。

肉は加熱すると、油を失い縮むため、硬くなる。

焼肉を作る際は、最初に強火で表面を固めて、中の油やうまみが外に出ないようにしてから、中火で焼く。

湯で煮ると、うまみが水に出るので、汁をつくるときには、煮る場合もある。

かたい肉も、湯で加熱しながら、長時間、煮ると、やわらかくなる。筋(すじ)は かたいので、長時間、煮ることで、食べられる やわらかさになる。

また、肉を加熱する際に砂糖を用いることによって、タンパク質との性質と結合し、より柔らかく仕上がる。

すき焼きなどをする際には、先に砂糖で肉を痛めてから、醤油や酒を入れるのが好ましい。

  • ぶた肉

○ ヒレ、ロース   …ロースト、ソテー、カツレツ

○ ばら   …煮込み、ひき肉

○ もも   …焼き肉、煮込み


  • 牛肉

○ 肩ロース、サーロイン   …ステーキ、焼き肉、すき焼き

○ ばら   …煮込み、ひき肉

○ すね   …煮込み

○ もも   …ステーキ、すき焼き


  • とり肉

○ むね   …ロースト、ソテー、揚げ物、

○ ささみ   …蒸し物

○ もも   …揚げ物、ロースト、ソテー

○ 手羽(てば)   …揚げ物、煮込み

野菜[編集]

野菜は、ビタミンや無機質、食物繊維を多く、含んでいる。

加熱すると、やわらかくなる。また、加熱すると、野菜は、かさ が減るので、一度に多く食べられる。

あくの強い野菜は、ゆでることで、あくを抜くことができる。生のほうが、ビタミンや無機質は豊富である。

地域の食文化[編集]

郷土料理[編集]

郷土料理とは、その地域の産物を使っていて、その地域で昔から広く伝えられている、地域特有の伝統的な料理。

北海道の石狩鍋(いしかりなべ)、青森県のじゃっぱ汁、秋田のきりたんぽ、岩手県のひっつみ、茨城県のあんこう鍋、栃木県のしもつかれ、東京都の深川丼(ふかがわどん)、長野県のおやき、山梨県のほうとう、三重県の手こねずし、香川県のさぬきうどん、大分県のだんご汁、長崎県のちゃんぽん、

など、各都道府県に郷土料理がある。一つの県の郷土料理は、べつに一つに限らず、ここに例をあげた都道府県にも他の郷土料理がある。例にあげていない都道府県にも、郷土料理がある。

郷土料理は、その土地の特産物などを利用していることが多い。

小麦は、現在は外国からの輸入小麦が多いが、昔は、日本各地の農地で、米などとの二毛作などで生産されていた。二毛作とは、春~夏には米をつくり、秋~冬に小麦などの作物をつくる農法のこと。

また、米は、もともと東南アジアなどで栽培されていた熱帯の作物であることから、日本でも寒冷地では米の栽培がむずかしかった歴史もある。また水の少ない地域でも米は栽培がむずかしい。日本の寒冷地などでは、場所によっては、歴史的には米よりも麦を中心に栽培していた場所もあった。

行事食[編集]

正月に食べる「おせち」や、子供の日に食べる「柏餅(かしわもち)」や「(ちまき)」など、行事の時に食べる伝統になっている食事を、行事食という。

年間の行事食の例
  • 元日(1月1日)… おせち、お雑煮
  • 1月7日 … 七草がゆ
  • 節分(2月3日)… 恵方巻(えほうまき)、福豆
  • ひなまつり(3月3日)… ちらしずし、桜餅
  • 春の彼岸(ひがん)(3月20日 あるいは 3月21日)… ぼたもち
  • 子供の日、端午(たんご)節句(せっく)(5月5日)… 柏餅(かしわもち)(ちまき)
  • 七夕(7月7日)… そうめん
  • 土用(どよう)(うし)(7月下旬)… うな重
  • 秋の彼岸(ひがん)(9月20日 あるいは 9月21日)… おはぎ
  • 月見(十五夜)… 月見だんご
  • 冬至(12月21日 あるいは 12月22日)… かぼちゃ
  • 大晦日(12月31日)… 年越しそば

社会と食料[編集]

地産地消(ちさんちしょう)[編集]

ある地域で生産された物を、その地域で消費することを地産地消(ちさんちしょう)という。食材は、なるべく地産地消すると、鮮度も高いので、効率的な消費のしかたである。


食料自給率[編集]

2019年現在の日本の食料自給率は約37%(カロリーベース)である。

フード・マイレージ[編集]

食料を輸送するのにも、燃料などのエネルギーを消費しており、環境に負荷を与えている。この輸送のエネルギーを数値化するために、 輸送量(t トン) × 輸送距離(km キロメートル) で計算して求めた指標をフード・マイレージといい、単位は t・km (トン・キロメートル)である。

地球環境の保護の観点から、フードマイレージを小さくすることが望ましい。なるべく、消費地に近い食材を地産地消するように行動するのが、フードマイレージの観点からも望ましい。

  1. ^ アルコール消毒液には、アルコールが含まれていることにより酒税が課される。しかし、安価な物は、人が摂取すべきではない成分を含むことで酒税の課税を避けることで価格を抑えている。このような物は調理に適さないため、注意が必要である。