中学校数学/2年生/図形/三角形と四角形
図形の性質[編集]
直角三角形[編集]
まず、直角三角形の用語を学ぼう。
直角三角形で、直角に対する線を 斜辺(しゃへん) という。
直角三角形の場合、三角形の合同条件に加え、次の条件がある。
- 斜辺とそれ以外の辺がそれぞれ等しい
- 斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい
たったこれだけの情報だけでも、直角三角形が合同だといえる。「斜辺とそれ以外の辺がそれぞれ等しい」については、中学3年で学ぶ「三平方の定理」が利用できる。「斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい」については、三角形の内角の和が180°であることから、もう一つの鋭角がわかり、三角形の合同条件、「1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい」が利用できる。
二等辺三角形[編集]
中学以上では、二等辺三角形の各部の用語を、右図および下記のように定義する。
- 二等辺三角形では、等しい2辺のつくる角(図では ∠A )を 頂角 (ちょうかく)という。
- 頂角に対する(「向かい側」の意味)辺を 底辺 (ていへん)という。
- 底辺の両端の角を 底角 (ていかく)という。
さて、二等辺三角形の重要な性質として、
二等辺三角形の底角の性質 |
二等辺三角形の2つの底角は等しい。 |
という性質があります。
では、これから、このことを証明してみましょう。
- 証明
まず、頂角 ∠ A の二等分線を引き、この二等分線と辺BCとの交点をDとする。
すると、△ABDと△ACDは合同である。
なぜなら、
- まず、∠ BAD と ∠ CAD が等しい。
- △ABDの辺ADと△ACDの辺ADは同じ辺ADなので当然に等しい。
- 辺ABと辺ACは、△ABCが二等辺三角形であるという仮定より正しい。
よって、一つの角度と、その両端の辺の長さが等しいので、三角形の合同条件を満たしているので、
- △ABD ≡ △ACD
である。
よって、合同な図形の対応する角どうしは等しく、角Bと角Cについては、頂点Bと頂点Cが 式 △ABD ≡ △ACD の2番目にある文字であることからも分かるように角Bと角Cは合同図形の対応しあう点なので、
- ∠ B = ∠ C
である。
そして、この角Bと角Cはそもそも底角であったので、よって二等辺三角形の2つの底角どうしは等しい。 (証明 おわり)
上で証明された、「二等辺三角形の2つの底角どうしは等しい」という性質は、数学では、さまざまな図形の性質の証明でも、説明の根拠として、よく利用される。
証明された ことがら のうち、説明の根拠として、よく利用されるものを 定理 (ていり)という。
二等辺三角形の底角の性質 |
定理 二等辺三角形の底角は等しい。 |
よって、上の2つの性質が示された。
- 逆
では、二等辺三角形とはかぎらない ある三角形ABC で、2つの角が等しいとき、その三角形ABCは、はたして二等辺三角形なのでしょうか?
このことは、次のような証明で、検証できます。
- 証明
Aの二等分線をひき、辺BCとの交点をDとする。
△ABDと△ACDにおいて、 底角が等しい という仮定から ∠ B = ∠ C ・・・ (1)
- ∠ BAD = ∠ CAD ・・・ (2)
三角形の内角の和は180°であるから、 (1), (2)より、
- ∠ ADB = ∠ ADC ・・・ (3)
また、 ADは共通。 ・・・ (4)
(2),(3),(4) より、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから、
- △ABD ≡ △ACD
合同な図形の対応する辺は等しいので、
- AB=AC ・・・(5)
(5)は、三角形ABCが二等辺三角形であることを表している。 そして、そもそもの仮定は「底角が等しい」 という内容の仮定であった。
よって、底角が等しいなら二等辺三角形であることが証明できた。(証明 おわり)
このことから、次の定理が証明できました。
定理 |
2つの角が等しいならば二等辺三角形である。 |
この定理「2つの角が等しいならば二等辺三角形である」は、一つ前に紹介した定理「二等辺三角形の2つの底角は等しい」の仮定と結論を入れかえたものになっています。
文章だと分かりづらいかそいれませんが、式で表すと、定理「二等辺三角形の2つの底角は等しい」は、
- 「 AB = AC ならば ∠ B = ∠ C 」
です。
いっぽう、定理「2つの角が等しいならば二等辺三角形である」は、
- 「 ∠ B = ∠ C ならば AB = AC 」
です。
こうやって数式で見ると、仮定と結論とを入れかえたものになっています。
当然、ここでいう「仮定」と「結論」とは、どこの部分かというと、
- 「(仮定) ならば (結論)」
の箇所のことです。
これらの定理のように、ある定理の仮定と結論を入れ替えた定理のことを、定理の 逆 といいます。
定理「2つの角が等しいならば二等辺三角形である」の逆は、定理「二等辺三角形の2つの底角は等しい」です。
定理「二等辺三角形の2つの底角は等しい」の逆は、定理「2つの角が等しいならば二等辺三角形である」です。
このように、定理の 逆 があるとき、相手方の定理から見れば、もとの定理のほうが 逆 です。
たとえば、
- 「a>0 で b>0 ならば、a+b > 0 である。」
という主張は、もし正しいとしても、
逆の「a+b > 0 ならば、a>0 で b>0 である。」は正しくない。
なぜなら、たとえば a = 100 で b = ー1 とすれば、a+b > 0 なのに a<0 (aが0より小さい)であるからだ。
また、これらの例(たとえば a = 100 で b = ー1 とする)のように、
ある主張(「a+b > 0 ならば、a>0 で b>0 である。」)が成り立たないことを説明する具体例のことを
また、反例は、1つ出せば、数学的には充分です。
数学で 逆 が正しくない場合があるのは、けっして文字式の分野だけではなく、図形の問題でも、逆が正しくない場合がある。
たとえば、「△ABCと△DEFが合同なら、対応する角度3つがそれぞれ等しい(つまり ∠A=∠D , ∠B=∠E , ∠C=∠F )。」は正しいが、
「△ABCと△DEFの対応する角度3つがそれぞれ等しいなら、その三角形が合同である」は正しくない。
なぜなら、たとえば△ABCを2倍の大きさに拡大したものでも、角度3つがそれぞれ、対応するもとの△ABCと等しいからである。
四角形[編集]
平行四辺形にかぎらず、一般に四角形において、向かい合う角どうしを 対角( たいかく)という。
たとえば図の場合、角Aと角Cは対角である。
向かい合う辺どうしを 対辺 (たいへん)という。
「対辺」という言葉を使うと、平行四辺形は、次のように定義される。
- 平行四辺形の定義
対辺どうしの平行な四角形のことを平行四辺形(へいこう しへんけい)という。
対辺という言葉を使わない場合、次のようにして平行四辺形は定義される。
- 対辺という言葉を使わない場合の、平行四辺形の定義
四角形ABCDで、AB//DC , AD // BC なら、その四角形ABCDは平行四辺形であるという。
平行四辺形[編集]
平行四辺形の図を見ると、平行四辺形では、対辺どうしの長さが等しいようにみえるが、定義のどこにも対辺が等しいとは書いてないので、では、これを証明してみよう。
- 証明
対角線ACを引く。
△ABCと△CDAで、平行線の錯角は等しいので、
- AB//DC から、 ∠BAC = ∠DCA ・・・(1)
- AD//BC から、 ∠BCA=∠DAC ・・・(2)
また、ACは共通だから
- AC=CA ・・・(3)
(1),(2),(3) より、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから、
- △ABC ≡ △CDA
したがって、 AB=CD , AD=BC (証明 おわり)
また、さきほど導いた右の図からも分かるように、平行四辺形では、対角どうしの角度は等しい。
- 対辺どうしの等しい四角形
いくつか前の定理で、平行四辺形では、対辺どうしの長さが等しいことを証明した。
では、逆の問題を考えてみよう。
つまり、対辺どうしの等しい四角形は、平行四辺形だろうか?
(証明)
証明の方針としては、対角線を引き、錯角が等しいことを利用して辺が平行であることを導きだせばいい。 では、実際に証明にとりかかる。
まず、対角線BDを引く。
すると、△ABDと△CDBは、仮定と合わせると結果的に、3つの辺の長さが等しいから合同であり、記号であらわすと
- △ABD ≡ △CBD
である。
念のためになぜ三辺が等しいかを述べると、
- BDとDBは共通だし、
仮定から対辺どうしは等しいので、
- AB=AD であり
- BC=DA であるから
である。
ともかく、三辺が等しいために合同であるのでしたがって、 ∠ADB=∠CBD である。
錯角の角度が等しいので、よって AD//BC ある。
同様にして AB // DC も証明できる。
そして、対辺どうしが平行の四角形であるので、平行四辺形であることが導ける。 (証明 おわり)
ひし形[編集]
長方形[編集]
平行線と面積[編集]
平行線と面積 |
定理 右上の図でℓ//mならば、△ABC=△A'BC=△ABCとなる。 |
平行線と面積の逆 |
定理 右上の図で△ABC=△A'BC=△ABCならば、ℓ//mとなる。 |