中学校数学/2年生/数量/一次関数

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

※ 中1の範囲[編集]

まず、関数(かんすう)とはどういうものなのかというと、ともなって変わる2つの変数x,yがあって、xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まるなら、yはxの関数であるといえる。


関数とは[編集]

たとえば、小学校などで一日の気温の変化を1時間ごとに観測した折れ線グラフでも、xを時間、yを気温とすれば、xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる。

このように、xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる場合、この関係を関数であるという。


関数とは何かについて、さきほど「xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる」と説明したが、実はこの決まりさえ守れば、一次式で表せなくても関数である。(たとえば、気温グラフは、直線では あらわせない。)


このように「xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる」とだけ関数の要件を決めておくことにより、数式であらわせないものであっても、必要に応じて関数として利用できるので、活用しやすくなる。

また、この気温の折れ線グラフの例からも分かるように、関数は折れ線であってもいいし、一次式や文字式であらわせなくてもいい。


そして重要なこととして、「xとyの関係を一次式や文字式などの数式であらわせなくてもいい」ということは、「関係を数式であらわせてもいい」ということである。

なので、正比例や反比例などの比例関係も、関数であるといえる。

なお、中学二年で習う「一次関数」とは、xとyの関係が一次式で表せる場合である。


関数の変域[編集]

気温の折れ線グラフでは、気温を測定してない時間帯には、当然、関数が存在しない。

たとえば、その日の朝6時から夕方5時まで気温を測定したら、そのあいだの時間だけが、関数の値が存在する時間帯である。

この、気温グラフで気温測定した時間帯のように、関数の値が存在する変数の領域のことを変域(へんいき)という。


なお、文字式であらわせる関数にも変域のある場合がある。

たとえば、反比例の式の関数


では、x=0 の部分は、変域から外れる(どんな数も0では割れない)。


一次式であらわせる式でも、文章題などの応用問題では変域が存在する。 たとえば

窓があります。窓の高さは90 cmとします。窓を x cmあけたときの、あけられた部分の面積 y (単位はcm2とする)は、いくらでしょうか?

という問題では、

y = 90x

と式で表せるが、 窓のあけられた長さを0よりも小さくはできないし、窓の可動範囲までしか窓を開けないので、xに上限も存在する。


さいごに[編集]

中学1年で習う『関数』の単元は入門的な内容のため、数式であらわせる関数については中学1年では「比例」や「反比例」といった、一次式またはその逆数であらわせる関数だけを検定教科書ではあらわしており、関数の概念を使わなくても式を解けるため、わざわざ「関数」という概念を構築する必要性が分かりづらい。

しかし、本来の関数とは、たとえ、もしyの式がxの二次式または二次より大きい次数の数式であっても、それが条件「xの値を決めるとそれに対応するyの値が1つだけ決まる」という条件を満たしているならば、その場合「yはxの関数である」である。

最終的に読者が中学3年や高校で習う関数の理論は、このような、xについての二次式以上のyの式でも関数としてあつかう理論である。

※ 下記から中2の範囲[編集]

一次関数[編集]

一次関数とは?[編集]

xとyの関係を式で表したときに、y =2x とか、y =4x +3などのようにyがxの一次式で表せるとき、yはxの一次関数(いちじ かんすう、英:linear function)である、という。

一次関数は普通、

y = ax + b  (a ≠ 0、a,b は定数)

という式で表す。

そして一次関数のy = ax + b におけるaを 傾き (かたむき、英:gradient グレディエント)(変化の割合)といい、bを 切片 (せっぺん、英:intercept インターセプト)という。

ここでb=0のとき、この式は

y = ax

となり、これは比例を表す式であるから、比例はb=0である一次関数の特別な形である。

反比例の場合、一般式は

であり、これはyがxの一次式で表されていないから、一次関数ではない。


一次関数のグラフ[編集]

1次関数 y=2x+3のグラフ

一次関数のグラフがどんなものか考えてみよう。

問題
     y =2x +3 のグラフを書きなさい。

グラフを書くために、まずはx の値に応じてy の値がどう変化するのか調べる。

 x  ……  -3   -2   -1   0   1   2   3  ……
 y  ……  -3   -1   1   3   5   7   9  ……

これを座標平面上にとっていくと、直線のグラフになる。


まず、y 軸とは(0,3)で交わっている。

なお、この例からも分かるように、

一次関数y=ax+bの定数の部分(切片) b は、グラフで考えたさいの一次関数の直線とy軸との交点のy座標である。


また、グラフの傾きから分かるように、

一次関数 y=ax+b の傾きは、原点を通る直線 y=ax の傾きと同じである。つまり、一次関数 y=ax+b と y=ax とは平行である。

つまり、

一次関数 y=ax+b のグラフは、原点を通る直線 y=ax の傾きと平行で、切片の座標(0,b)を通る直線である。

と言える。 または、

一次関数 y=ax+b のグラフは、原点を通る直線 y=ax をy軸の方向に bだけ移動した直線である。

とも言える。


また、右図のように、傾きの数aだけ、xが1増えたときにyもa増える。

関数において、xの値(定義域)が変化したとき、yの値(値域)も変化しますが、このときyの変化量をxの変化量で割ったものを変化の割合といいます。一次関数において、変化の割合は(直線の傾き)となります。 たとえば、一次関数において、xの値が-2から5まで変化したとき、yの値はx=-2のとき-5で、x=5のとき、y=16なので、yの値は-5から16となる。よってxの変化量は7で、yの変化量は21なので、変化の割合はとなります。これは、この一次関数の傾きと等しいですね。

※ 範囲外: なぜ「関数」という概念が必要か?[編集]

※ 範囲外: なぜ「関数」という概念が必要か?

なぜ、「比例」という概念をそのまま使わずに、わざわざ「一次関数」という概念を用いるのだろう?


まず、上述したように、気温のグラフなど比例であらわせないグラフも関数であるので、「関数」という考えかたは必要である。


二次関数のグラフ

それとは別に、読者は「一次関数」という名前から予想すると思うが、じつは数学には「二次関数」や「三次関数」という関数もある。(※ 「二次関数」以降の計算式を習う学年は高校なので(2017年現在では)、中学生はまだ覚えなくていい。)

なお、二次関数の一般式は

である。

二次関数の式やグラフからも分かるように、二次関数はもはや比例式ではない。

高校では、数学や理科などで、二次関数のように、比例的でない関数がたくさん登場する。

二次関数の計算は、高校生ですら、なかなか難しい。中学生は、まず一次関数の性質と計算法を勉強する必要がある。

右の二次関数のグラフを見れば分かるように、曲がっている図形をあらわす場合、二次関数を使うことになる場合もある。




方程式と関数[編集]

2元1次方程式のグラフ[編集]

2つの文字x , yを含む2元1次方程式 を考える。

この方程式の表は次のようになる。

-3 -2 -1 0 1 2 3
2 1 0

を成り立たせるx , yの値の組は無数にある。この x , y の値の組を座標とする点をとってグラフをかくと、直線になっており、一次関数の形になっている。

また、 をyについて解くと となり、一次関数の式の形になっていることからも、もとの方程式が一次関数でもあることが分かる。

よって のグラフは、傾きが、切片が1の直線になる。
この直線を 方程式 のグラフ という。


このように、2元1次方程式は、一次関数である。また、2元1次方程式のグラフは、式を変形してyについて解くことで、その傾きと切片を求めることができる。


のグラフ[編集]

のグラフは、右図のようになる。


なぜなら、この方程式 y=3 を満たすxとyの解の組み合わせは、

・・・(ー1,3), (0,3), (1,3), (2,3), (3,3), (4,3),・・・

と無数にあり、それらの点のある位置は、右図のように、x軸に平行で、y軸方向に原点から3だけx軸を移動させた直線の上にあるからである。


一般に、 のグラフは、点 を通り、x軸に平行な直線である。

見方によれば とは、2元1次方程式 な場合であるとも、みなせる。

(発展)のグラフ[編集]

のグラフは、右図のようになる。

なぜなら、この方程式をみたすxとyの組み合わせ (x,y) は、

・・・(2,ー1) ,(2,0) ,(2,1) ,(2,2) ,(2,3) ,・・・

のようになるからである。


一般に、 のグラフは、点 を通り、y軸に平行な直線である。

は、2元1次方程式 の特別な場合である。

一次関数の式を求める[編集]

傾きと切片が分かっている場合[編集]

例題
傾きが-3、切片が4の一次関数の式を求めなさい。

これは、一次関数の式y = ax + bに、数を代入すれば分かります。
aが傾き、bが切片なので、

y = -3x + 4

となります。


傾きと通過する1点が分かっている場合[編集]

例題
傾きが2で、(3,7)を通る一次関数の式を求めなさい。

傾きが分かっているので、一次関数の式y=ax+bに傾きを代入します。

y = 2x + b

(3,7)とは、x=3,y=7ということなので、先ほど導き出したy=2x+bに3,7を代入します。

7 = 2 × 3 + b

この式をbについて解くと、

7 = 6 + b
b = 1

よって、例題の答えは、

y = 2x + 1


通過する2点が分かっている場合[編集]

例題
(-3,8),(1,-4)を通る一次関数の式を求めなさい。
連立方程式を使う

分かっているのは通過点だけなので、通過点の座標を代入した連立方程式を作ります。

この連立方程式を解くと、

(a,b) = (-3,-1)

よって、例題の答えは、

y = -3x - 1
傾きと通過する1点が分かる形に直す

実は2点の座標の差から、傾きを求めることもできます。
傾き,変化の割合は、yの変化量÷xの変化量なので、それぞれの座標差から変化量が出るのです。

これを代入し、 さらにx,yをどちらかの座標に代入すれば、

8 = -3 × (-3) + b
b = -1

よって、

y = -3x - 1

が求められました。


連立方程式とグラフ[編集]

連立方程式をグラフにあらわしたときの意味について考えよう。

次の方程式を例に考えよう。


まず式(1)は一次関数 に変形できる。

同様に式(2)は一次関数 に変形できる。

これをグラフにすると、それぞれ右図のような直線になる。

このように、グラフにおける一次関数どうしの線どうしの交点は、それに対応する連立方程式の解になる。

関数の利用[編集]

かさ
ダイヤグラム
動点と図形の面積