コンテンツにスキップ

中学校社会 地理/南アメリカ州

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

人種、言語など

[編集]
南アメリカ大陸
笛を吹くインディオ
マチュピチュの遺跡(いせき)。(ペルー)
アルパカと飼育者(ポンチョをまとったボリビア人男性)

南アメリカの国の数は、12 カ国である。

16世紀ごろからスペインやポルトガルの侵略によって、それらのヨーロッパの国の植民地になった歴史がある。 そのため、多くの国では公用語がスペイン語。ただしブラジルではポルトガル語が公用語。

人種は混血が進んでいる。主に先住民と、ヨーロッパ系の白人と、先住民との混血がある。

先住民は「インディオ」などと呼ばれている。ヨーロッパや北アメリカの国は、南北アメリカ大陸の先住民を「インティオ」と呼んでいる。この呼び方になった理由は、ヨーロッパ人が南北アメリカ大陸に植民をしはじめたころ、ヨーロッパ人が南北アメリカ大陸をインドだと勘違いしたことによる。

古代や中世には、先住民がインカ文明やマヤ文明などを築いていた。アメリカ大陸の黒人の先祖は奴隷としてアフリカ大陸から連れて来られ、農場や鉱山の労働力として働かされた。

先住民とヨーロッパ系との混血はメスティーソ(スペイン語:Mestizo、ポルトガル語:Mestiço)(あるいはメスチーソと表記。スペイン語などで「混血」という意味。)と呼ばれ、南アメリカの各国にいる。


ちなみに白人と黒人との混血をムラートという。

宗教

[編集]

スペインやポルトガルの影響が強く、そのためキリスト教が多い。また南アメリカで多いキリスト教の宗派は、スペインやポルトガルでカトリックという宗派が多いのと同様に、南アメリカでもカトリックが多い。

このように、ヨーロッパ南部のスペインやポルトガルなどのラテン系ヨーロッパと、南アメリカ州(およびメキシコ)とは共通点が多いこともあり、よって南アメリカ州およびメキシコのことをまとめてラテンアメリカともいう。

気候と地形

[編集]

南アメリカ大陸の気候は、熱帯から寒帯まで、さまざまである。 南アメリカ大陸の北部を赤道が通っている。 気候は赤道に近い北部は熱帯であり、高温で雨も多く、熱帯雨林が多い。世界の熱帯林の、およそ3分の1が、南アメリカ州にある。

赤道からはなれ、南に行くにつれて気温は下がり、雨も少なくなっていき、草原になっていく。 ただし、赤道近くでもアンデス山脈の高地では標高が高いため気温は下がり、涼しく、アンデス山脈の気候は高山気候である。 大陸の南端は寒帯である。

南アメリカ大陸のほとんどの地域の気候は、熱帯気候である。

太平洋岸近くに、アンデス山脈があり、南北に長く約1万kmも(地球の全周は約4万km)、アンデス山脈は伸びている。アンデス山脈の標高は5000m〜6000m級である。

アマゾン川
アマゾンの熱帯雨林

赤道近くの大陸北東部にアマゾン川という長い川があり、東西方向に長く流れている。アマゾン川は南アメリカ大陸で最も長い川である。アマゾン川の流域面積は世界最大である。 熱帯林の多くは、このアマゾン側のあたりにある。アマゾン川流域の熱帯林のことを「セルバ」と言う。

大陸の北東部にギアナ高地があり、大陸の東部にブラジル高原がある。アマゾン川が流れている場所は、それらの間の低地であるアマゾン盆地に、アマゾン川が内陸の西から東の海岸方向へと流れているのである。熱帯林は、アマゾン盆地のあたりに広がっている。

このアマゾンの熱帯林が、近代の19世紀ごろから、農地の開拓などのために森林が伐採されており、世界各国から森林破壊のおそれが考えられている。特に第二次世界大戦後、ブラジルが開発のため、アマゾンの熱帯林の地域の開拓をすすめたので、開拓のための森林伐採が多くなった。


ブラジル高原の中央部は乾燥している。

パンパ
パンパの風景。

いっぽう、アンデス山脈とブラジル高原との間には、別の大きな川が北から南に流れており、ラプラタ川と言う。ラプラタ川の下流域のアルゼンチンあたりには草原が広がり、そのラプラタ川の下流域の草原をパンパと言う。パンパの気候は温暖湿潤気候やステップ気候であり、パンパの農業では、小麦の栽培や肉牛の放牧などが、さかんに行われている。

南アメリカ州の農業

[編集]

ブラジルは、数十年前まではコーヒー豆に頼ったモノカルチャー経済の国だったが、しかし2010年代後半からは開発が進み、大豆・綿花・トウモロコシなどの他の農作物なども多く生産されるようになったた。

ブラジル

[編集]

中部の大西洋側に、ブラジルという広い国がある。 ブラジルでは工業が発達している。自動車や航空機もブラジルで生産されている。航空機では世界4位の生産量である。 ブラジルの面積は、南アメリカの面積の半分近くであり、世界でも第5位の面積である。人口も多く約1億8000万人である。 かつてポルトガルの植民地だった。(16世紀にポルトガルの植民地になった。)

都市化も進んでいる。人口の増加が速すぎて、水道などの整備が追いつかず、都市部ではスラムも発生している。

気候と森林

[編集]

ブラジルの気候については、意外と南北に大きいので、南北で気候が違う。

北部の多くが熱帯雨林気候であり、1年を通して高温で多雨である。当然だが、熱帯雨林も、この北部に多い。

なお、この熱帯雨林気候は、ブラジルに限らず、赤道付近にある世界の多くの地域に多くみられる特徴であり、ブラジル北部もその例である。

世界一流域面積の広いアマゾン川のほとんどもブラジルを流れている。そのためブラジルの開発が、アマゾンの熱帯林の森林破壊をともなってきたという問題もある。20世紀後半には、アマゾン盆地を横断する大きな道路を作るために森林を伐採したり、農地や牧場を作るために森林を伐採するなど、熱帯林の大規模な伐採も行われた。

熱帯林が、先住民のすみかであり、動植物のすみかでもあるので、それらの保護の観点からも、熱帯林の森林伐採が不安視されている。

ブラジル政府は、近年、熱帯林の開発方針を変え、森林保護を行う方針に変わった。

熱帯林での伝統的な農法は、焼畑農業である。   アマゾン川が流れ、流域が広いのが特徴である。


ブラジル南部は赤道から離れていくので、当然だが、気候が変わってくる。だが、基本的には北部ほどではないが、比較的にブラジル全体を通して雨は多い。つまり、けっして砂漠のような気候はブラジルには無い。

ブラジル中部は、雨季と乾季のあるサバナ気候である。

後述するブラジルの農業では、サトウキビやコーヒーの栽培が盛んな事と合わせて考えれば、けっして雨が少なくないのは、分かるだろう。

ほか、文化としては、サッカーが盛んである。

都市と工業

[編集]

ブラジルの国民の所在は、多くがサンパウロやリオデジャネイロなどの大都市に集まっている。なお、ブラジルの首都はブラジリアであって、サンパウロではない。

南アメリカ州の都市の多くは、おもに大西洋側の沿岸部にある。

都市のスラム化はブラジルだけでなく、ペルーなど他の多くの国でも起きている。


ブラジルは南アメリカ州の中では工業が盛んであり、南アメリカ最大の工業国である(受験研究社)。鉄鉱石が産出される。鉄鉱石などの国産の資源を利用した工業が盛んである。バイオエタノールも、この文脈でも説明できるだろうか。

自動車産業でもブラジル国産の自動車を生産できる水準である、。

BRICs (「ブリックス」。ブラジル、ロシア、インド、チャイナ(中国))と言われる、1990年ごろから経済発展の期待されてきた国家であり、実際にブラジルやインド、中国は経済発展をした。

ブラジルの農業

[編集]

ブラジルの農業を代表する農産物は、コーヒー豆である。ブラジルはコーヒー豆の生産量で世界1位である。ちなみに同じく南アメリカ州にあるコロンビアという国が、コーヒー豆の生産量が世界3位である。

ブラジルの農業では、植民地の時代からプランテーションで、さとうきび を作ってきた。やがて、コーヒーも栽培するようになった。こうして さとうきび とコーヒーが、ブラジルを代表する農産物になった。しかし、これだけだと、輸出品の農産物の種類が少なく、不景気の影響を受けやすい。

このような、特定の産業にかたよった経済のことを、「モノカルチャー経済」という。

ブラジル政府は近年では農業の多角化をすすめた。こうして、コーヒーと さとうきび 以外に綿花、カカオ、大豆、たばこ、とうもろこし、オレンジなどを栽培するようになった。

ブラジル、サンパウロでのガソリンスタンド。左奥(A)はエタノール100%燃料、右手前(G)はガソリン

さとうきびから、バイオ エタノール(バイオ燃料)を作る産業もさかんである。

バイオエタノールは石油と違い、有限の地下資源ではないことが注目されています。また、植物は大気中の二酸化炭素を光合成により吸収しているので、バイオエタノールを燃やしても、吸収したぶんの二酸化炭素が排出されるだけで、差し引きが変わらないので、地球温暖化の防止の観点からも注目されています。二酸化炭素は地球温暖化の原因の物質と考えられています。

しかし、さとうきびを新たに栽培するための農地はどうやって確保するのかという問題があります。既存の森林を切り開いて、さとうきび畑に変えるのが現実的な例です(※ 帝国書院の2022年の教科書の見解)。この場合、既存の森林には保水や土壌の維持の役割があるのですから、その森林を開いて畑に変えることは保水力の低下につながり、実際に土壌の流出も実際にたびたびブラジルでは問題になっています(※ 帝国書院の見解)。

※ これがバイオ燃料の現実です。世間では、投資などを集めたいあまり、欠点のない理想の技術のように新技術を宣伝することもありますが、そういう宣伝に惑わされてはいけません。また、知識不足の人が優越感にひたりたくて、新技術を偶像的に崇拝して「私は頭のかたい人とは違って、思考が柔軟で頭がいいのだ」などと自己陶酔して新技術の欠点から目をそむける例もあります。また、中学生相手に説明してもわかる上述の程度の論理や知識が、大人でも分からない人も残念ながらいます。
※ なお、2024年の時点では、バイオエタノールの世界生産量の1位の国はアメリカ合衆国です。かつてはブラジルが世界1位でしたが、現在はブラジルは2位になっています。(※ 高校入試では表が与えられるので、暗記の必要はありません)
それでも3位以下のインドネシアやドイツなどと比べて、3倍ちかくはブラジルの生産量が多いので、当分はブラジルが2位をキープし続けるでしょう。

サトウキビとコーヒー豆がブラジルの代表的な農産物として、よく教材で語られますが、実際に2020年代ではサトウキビもコーヒー豆も世界一位の生産量です(受験研究社)。


ブラジルでは肉牛の生産もさかんであり、世界2位である。アルゼンチンは世界4位の肉牛生産量である。ブラジルとアルゼンチンが、南アメリカでの代表的な肉牛生産国である。ちなみに世界1位はアメリカ合衆国で、世界3位は中国である。

牛や豚や馬は、ヨーロッパ人が南アメリカに持ち込んだ。もともと、牛や豚や馬は南アメリカには住んでいなかった。

サンパウロの日本人街。リベルダージ地区。

焼畑農業という、森林を伐採して、またはやしての繰り返しをしながら行う農業。

日系ブラジル人

[編集]

ブラジルには日系人(にっけいじん)が約150万人ほど暮らしている。20世紀の初めごろの1908年から日本からブラジルへの移民が始まった。当時の日系移民の仕事の多くは農作業であり、コーヒー農園やカカオ農園などで重労働をしていた。現在のブラジルの日系人は、かれら日系移民の子孫であり、日系2世〜6世くらいなどである。(2世は第二次大戦後などの近年に移住した人の子孫。) ブラジルのサンパウロには日本人街もある。 最近はブラジルから日本に出稼ぎ(でかせぎ)にくる人も多く、日本国内の自動車工場などで働いている。

日本人街は、近年では中国人や韓国人などの移民が増えており、東洋人街になっている。

リオのカーニバルでの踊り子の衣装の例。

カーニバル

[編集]

ブラジルで有名な行事で、リオのカーニバルがあり、リオデジャネイロで行われている。カーニバルとは、もともとキリスト教の謝肉祭(しゃにくさい)という行事である。だが、ブラジルのカーニバルでは、このキリスト教の謝肉祭に、アフリカなどの祭りが結びついて、独特の祭りになっている。もともとのヨーロッパのカーニバルとは、かなり違った祭りになっている。

その他

[編集]
1970年のサッカーでのブラジル代表。

南アメリカは、鉄鉱石や銅などの地下資源も豊富である。ブラジルで鉄鉱石が取れ、チリで銅が取れ、ベネズエラでは原油が取れ、それらの国の重要な輸出品になっている。

日本やヨーロッパにも、ブラジルは鉄鉱石を多く輸出している(受験研究社、旺文社)。

アンデス山脈の高地には、先住民の多い都市がある。これは、もとから先住民が高地に住んでいたのであり、標高が高いため他の所よりは他の国の侵攻が遅かった。標高の高い高地は気候がすずしいので、古代から都市が発展していた。インカ帝国などの古代文明が、古くはアンデス山脈に存在していた。インカ帝国は16世紀に侵入してきたスペインによって、滅ぼされた。

文化では、南アメリカ州ではヨーロッパの影響も強い。 スポーツでは、南アメリカ州で全体的にサッカーが人気である。

音楽の曲の「コンドルは飛んでいく」という曲は、もともと南アメリカの音楽。

サッカーの強豪国が多い。


エクアドルでは、バナナの生産が盛ん。

アルゼンチン

[編集]

アルゼンチンは、白人の多い国であり、国民の8割が白人(スペイン系とイタリア系)である。

かつて、スペインの植民地であった。南半球に位置しているため、北半球で小麦の収穫がすくない時期に、アルゼンチンから小麦など農産物を輸出してきた。

さらに、19世紀に冷凍船が発明されてから、牛肉や酪農製品などをヨーロッパに輸出する事も可能になり、そのような貿易がさかんである。

首都のブエノスアイレスの近くにあるラプラタ川の近くに、バンパと言われる温帯の草原がある。そのバンパで、小麦やトウモロコシが栽培されたり、牧牛などの飼育が行われている。

文化的には、スペインの植民地だったため、公用語はスペイン語であり、主な宗教はキリスト教カトリックである。

メルコスール

[編集]
メルコスール

1995年に発足(はっそく)した関税引下げの協定であるメルコスール(南米南部共同市場、MERCOSUL)という協定を、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの4か国が結んだ。(※中学の範囲内。教育出版の教科書に記述あり。「MERCOSUL」の綴りも、教育出版の教科書では写真で紹介している。)

現在は、さらにベネズエラがメルコスールに加盟している。つまり、現在の加盟国はブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ベネズエラの5か国である。

※ メルコスールを「南アメリカ南部共同市場」と書いてもよいと思う。文英堂『詳しい地理』が「南アメリカ南部共同市場」の表記で記述をしているじゃない?

歴史や科学との関係

[編集]
ナスカの地上絵

インカ文明など

[編集]

インカ文明は、アンデス山脈のペルーあたりに16世紀まで存在した文明であり、インカ帝国が支配していた。16世紀に、インカ帝国は、スペインから派遣されたコンキスタドール(征服者)のピサロに滅ぼされた。

ナスカの地上絵も、ペルーにある。(※ インカ文明、ナスカ地上絵ともに、中学地理の範囲内。日本文教出版の教科書に記述あり。)つまり、ナスカの地上絵は、インカ帝国によるものだと考えられている。

マチュピチュ遺跡があるのも、ペルーである。(※中学の範囲内。教育出版、日本文教出版、東京書籍の教科書に記述あり。)

なお、「ナスカの地上絵」もマチュピチュ遺跡も、世界文化遺産に登録されている。


なお、「マヤ文明」と「アステカ文明」は、メキシコの古代文明なので、混同しないように。

ガラパゴス諸島

[編集]

生物学者のダーウィンが進化論を発見するキッカケにもなった ガラパゴス諸島 は、南アメリカ州にある。(※中学の範囲内。日本文教出版の教科書に記述あり。)

ガラパゴス諸島の生物は、大陸から遠く離れているため、生物が独自の進化をとげており、その発見が進化論の発想に影響をあたえた。