位相空間論/導入

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

解析学において、収束や連続という概念が重要であるが、これらの概念はかなり実数の公理系に依存している。しかし、これらの概念は非常に有用なので、実数とは違う集合に対しても同様にこの概念を考えたい、ということで位相空間の理論が始まった。

位相空間は「開集合」というもので定義される。実数において連続という概念は ε-δ 論法で定義されるが、実はこの開集合という概念で連続を定義できる。まず、開集合の定義と ε-δ 論法での連続の定義を確認する。


定義 (開集合の定義)

集合 が開集合であるとは、 が成り立つことをいう。

定義 (連続の定義)

関数 で連続であるとは、
が成り立つことをいう。
の全ての点で連続のとき、 で連続、または単に連続であるという。


このとき、次の命題が成り立つ。

命題

関数 が連続
任意の開集合 について、 が開集合

証明

として、 とおく。 なので、開集合の定義より、が成り立つ。
さて、ここで が連続であるという仮定から、この に対して、
(1), (2) より、
であり、 より、(3) から
ところで、 の取り方は任意だったので、つまり は開集合である。


を任意に取る。 は開集合なので、仮定より も開集合である。
であるから、つまりこの に対して
すなわち は連続である。 q.e.d.