公拡法届出制度入門

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ウィキペディア公有地の拡大の推進に関する法律の記事があります。

この項目は、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号)に基づく届出などの制度に関する入門的な解説である。

この制度については、市販の書籍では解説が充実しているとは言い難く、本項目の執筆においても、市町村などの手続案内ページに依存するところが大きくならざるを得ない状況である(実際の届出等においては、当該土地の所在する都道府県・市町村のページを参照されたい)。

この制度には本法第4条による届出と、本法第5条による申出がある。一言で言うと、特に届出の対象となると、少なくとも売買などができない期間が生ずることとなるもので、特にリストラで普段経験のない大規模画地を売る場合などに注意が必要となる。

制度の目的[編集]

本法の目的である「都市の健全な発展と秩序ある整備を促進するため必要な土地の先買いに関する制度の整備、地方公共団体に代わつて土地の先行取得を行なうこと等を目的とする土地開発公社の創設その他の措置を講ずることにより、公有地の拡大の計画的な推進を図り、もつて地域の秩序ある整備と公共の福祉の増進に資すること」(第1条)による。

公共施設整備のために必要な土地を、取得しやすくするために制度化された土地の先買い制度と位置づけられる[1]

道路(横浜市日本大通り)この写真はイメージだか、写真奥側の交差点には都市計画道路区域がある。
横浜市行政地図情報- 「施設から探す」で「神奈川県庁」で検索して県庁本庁舎南東側の国道133号が現地であり、試しに各自で検索されてはいかが?

買取り価格[編集]

この「先買い」における買取り価格は、地価公示法に基づく公示価格規準として算定した価格(当該土地が同法第2条第1項の公示区域以外の区域内に所在するときは、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した当該土地の相当な価格)をもってその価格としなければならないものとされている(第7条-総務省法令データベース)。

届出[編集]

条文(第4条)[編集]

(土地を譲渡しようとする場合の届出義務)

第4条

  1. 次に掲げる土地を所有する者は、当該土地を有償で譲り渡そうとするときは、当該土地の所在及び面積、当該土地の譲渡予定価額、当該土地を譲り渡そうとする相手方その他主務省令で定める事項を[shorei#4 1]、主務省令で定めるところにより[shorei#4 2]、当該土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない。
    都市計画施設(土地区画整理事業(土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業をいう。以下同じ。)で第三号に規定するもの以外のものを施行する土地に係るものを除く。)の区域内に所在する土地
    二 都市計画区域内に所在する土地で次に掲げるもの(次号に規定する土地区画整理事業以外の土地区画整理事業を施行する土地の区域内に所在するものを除く。)
    イ 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第十八条第一項 の規定により道路の区域として決定された区域内に所在する土地
    ロ 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第三十三条第一項 又は第二項 の規定により都市公園を設置すべき区域として決定された区域内に所在する土地
    ハ 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第五十六条第一項 の規定により河川予定地として指定された土地
    ニ イからハまでに掲げるもののほか、これらに準ずる土地として政令で定める土地[seirei#4 1]
    都市計画法第十条の二第一項第二号 に掲げる土地区画整理促進区域内の土地についての土地区画整理事業で、都府県知事が指定し、主務省令で定めるところにより公告したものを施行する土地の区域内に所在する土地
    四 都市計画法第十二条第二項 の規定により住宅街区整備事業の施行区域として定められた土地の区域内に所在する土地
    五 都市計画法第八条第一項第十四号 に掲げる生産緑地地区の区域内に所在する土地
    六 前各号に掲げる土地のほか、都市計画区域(都市計画法第七条第一項 に規定する市街化調整区域を除く。)内に所在する土地でその面積が二千平方メートルを下回らない範囲内で政令で定める規模[seirei#4 2]以上のもの
  2. 前項の規定は、同項に規定する土地で次の各号のいずれかに該当するものを有償で譲り渡そうとする者については、適用しない。
    一 国、地方公共団体等若しくは政令で定める法人[seirei#4 3]に譲り渡されるものであるとき、又はこれらの者が譲り渡すものであるとき。
    文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第四十六条 (同法第八十三条 において準用する場合を含む。)又は大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)第八十七条 の規定の適用を受けるものであるとき。
    三 都市計画施設又は土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)第三条 各号に掲げる施設に関する事業その他これらに準ずるものとして政令で定める事業[seirei#4 4]の用に供するために譲り渡されるものであるとき。
    四 都市計画法第二十九条第一項 又は第二項 の許可を受けた開発行為に係る開発区域に含まれるものであるとき。
    五 都市計画法第五十二条の三第一項 (第五十七条の四において準用する場合を含む。)の公告の日の翌日から起算して十日を経過した後における当該公告に係る市街地開発事業等予定区域若しくは同法第五十七条の二 に規定する施行予定者が定められている都市計画施設の区域等内の土地の区域に含まれるものであるとき、同法第五十七条第一項 の公告の日の翌日から起算して十日を経過した後における当該公告に係る同法第五十五条第一項 に規定する事業予定地に含まれるものであるとき、又は同法第六十六条 の公告の日の翌日から起算して十日を経過した後における当該公告に係る都市計画事業を施行する土地の区域に含まれるものであるとき。
    六 前項の届出に係るものであつて、第八条に規定する期間の経過した日の翌日から起算して一年を経過する日までの間において当該届出をした者により有償で譲り渡されるものであるとき。
    国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第十二条第一項 の規定により指定された規制区域に含まれるものであるとき。
    八 国土利用計画法第二十七条の四第一項 又は第二十七条の七第一項 に規定する土地売買等の契約を締結する場合に第二十七条の四第一項 (第二十七条の七第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による届出を要するものであるとき。
    九 その面積が政令で定める規模[seirei#4 5]未満のものその他政令で定める要件[seirei#4 6]を満たすものであるとき。
  3. 国土利用計画法第二十七条の四第一項 の規定による届出は、第六条、第七条、第八条(同法第二十七条の五第一項 若しくは第二十七条の八第一項 の規定による勧告又は同法第二十七条の五第三項 (同法第二十七条の八第二項 において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知を受けないで土地を有償で譲り渡す場合を除く。)、第九条及び第三十二条第三号(同法第二十七条の五第一項 若しくは第二十七条の八第一項 の規定による勧告又は同法第二十七条の五第三項 の規定による通知を受けないで土地を有償で譲り渡した者を除く。)の規定の適用については、第一項の規定による届出とみなす。
  • 関係政省令の概要

本項目では、基本的に、公有地の拡大の推進に関する法律施行令(政令)を「施行令」、公有地の拡大の推進に関する法律施行規則(主務省令)を「施行規則」と呼ぶ。

  1. ^ 第1項第2号ニの「政令で定める土地」は、次のものである(施行令第2条第1項)。
    1. 文化財保護法第109条第1項 の規定により指定された史跡、名勝又は天然記念物に係る地域内に所在する土地で、都道府県知事が指定し、総務省令・国土交通省令で定めるところにより公告したもの
    2. 港湾法第3条の3第9項又は第10項 の規定により公示された港湾計画に定める港湾施設の区域内に所在する土地
    3. 航空法第40条などの規定により空港の用に供する土地の区域として告示された区域内に所在する土地
    4. 高速自動車国道法第7条第1項 の規定により高速自動車国道の区域として決定された区域内に所在する土地
    5. 全国新幹線鉄道整備法第10条第1項などの規定により行為制限区域として指定された区域内に所在する土地
  2. ^ 本条第1項第6号の「政令で定める規模」は、施行令第2条第2項で、都市計画法第7条第1項 の規定による市街化区域又は大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法第四条第七項 の規定による同意を得た基本計画(同法第5条第1項 の規定による変更の同意があつたときは、変更後のもの)に定める重点地域の区域 5000平方メートル(第1号)、前号に掲げる区域を除く都市計画区域 10000平方メートル(第2号)と規定されている。
  3. ^ 法第4条第2項第1号に規定する政令で定める法人は、法人税法別表第一に掲げる公共法人(法第2条第2号に規定する地方公共団体等を除く。)及び総務省令・国土交通省令で定める法人をいう(施行令第3条第1項)。
  4. ^ 法第4条第2項第3号 に規定する政令で定める事業は、鉱業法第105条 の規定により採掘権者が他人の土地を収用することができる事業をいう(施行令第3条第1項)。
  5. ^ 法第四条第二項第九号 に規定する政令で定める規模は、二百平方メートルとする。ただし、当該地域及びその周辺の地域における土地取引等の状況に照らし、都市の健全な発展と秩序ある整備を促進するため特に必要があると認められるときは、都道府県(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下「指定都市」という。)又は同法第二百五十二条の二十二第一項 の中核市(以下「中核市」という。)の区域内にあつては、当該指定都市又は中核市)は、条例で、区域を限り、百平方メートル(密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律 (平成九年法律第四十九号)第三条第一項第一号 に規定する防災再開発促進地区の区域(次条において「防災再開発促進地区の区域」という。)内にあつては、五十平方メートル)以上二百平方メートル未満の範囲内で、その規模を別に定めることができる(施行令第3条第4項)。
  6. ^ 本条第2項第9号に規定する政令で定める要件は、当該土地が農地若しくは採草放牧地であり、かつ、これらの土地の譲渡しにつき農地法第3条第1項 の許可を受けることを要する場合(これらの土地の譲渡しが同項各号に掲げる場合に該当し、同項 の許可を要しない場合を含む。又は国土利用計画法施行令第17条の2第1項第6号に掲げる場合に該当すること(施行令第3条第4項)。
  1. ^ 本法の本条第1項に規定する主務省令で定める事項は、一 当該土地の地目、二 当該土地に所有権以外の権利があるときは、当該権利の種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名及び住所、三 当該土地に建築物その他の工作物があるときは、当該工作物並びに当該工作物につき所有権を有する者の氏名及び住所、四 前号の工作物に所有権以外の権利があるときは、当該権利の種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名及び住所(施行規則第1条第1項)。
  2. ^ 本条第1項 の届出は、施行規則別記様式第一の土地有償譲渡届出書の正本1部及び写し1部を提出してしなければならない。この土地有償譲渡届出書には、当該土地の位置及び形状を明らかにした図面を添付しなければならない(施行規則第1条第2項、第3項)。

解説[編集]

届出の対象となるのは、一定の要件に該当する土地を所有する者が当該土地を有償で譲り渡そうとするときである。つまり、届出義務者は、売買の場合は売主となる。

届出先は、当該土地が所在する市町村の長を経由して都道府県知事とあるが、政令指定都市中核市においては、第29条により、市町村長が届出先となる。

対象となる土地は、面積規模で分類すると次のとおり。

  • 10000平方メートル以上 : 都市計画区域
  • 5000平方メートル以上 : 市街化調整区域を除く都市計画区域
  • 200平方メートル以上(都道府県等の規則で引下げもありうる) : 道路の区域として決定された区域内、都市計画施設の区域内(都市計画法上、これらは都市計画区域外にも存在する場合がある)など

対象となるか否かの判断については、届出受付を所管する部署のページでは、都市計画図などで都市計画施設(道路など)などの指定状況を確認する、大規模な土地の面積への注意などが呼びかけている(#参考)。

届出事項は、

  1. 当該土地の所在及び面積
  2. 当該土地の譲渡予定価額
  3. 当該土地を譲り渡そうとする相手方
  4. 当該土地の地目
  5. 当該土地に所有権以外の権利があるときは、当該権利の種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名及び住所
  6. 当該土地に建築物その他の工作物があるときは、当該工作物並びに当該工作物につき所有権を有する者の氏名及び住所
  7. 前号の工作物に所有権以外の権利があるときは、当該権利の種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名及び住所

である(第1項、施行規則第1条第1項-法令データベース)。

土地有償譲渡届出書様式については、施行規則で定められており、都道府県などのホームページでダウンロードできる様式は概ね同一と言える。

届出書の宛名は市町村長で、記載事項は、次のように整理されていることが多い。

  1. 譲り渡そうとする相手方に関する事項
  2. 土地に関する事項
    地目」の欄には、田、畑、宅地、山林等の区分により、その現況を記載すること。
    「地積」の欄には、土地登記簿に登記された地積を記載すること。実測地積が知れているときは、当該実測地積を「地積」の欄にかっこ書きで記載すること。
    「内容」の欄には、存続期間、地代等当該権利の内容をできる限り詳細に記載すること。
  3. 当該土地に存する建築物その他の工作物に関する事項
    譲り渡そうとする者、譲り渡そうとする相手方、土地に存する所有権以外の権利を有する者又は当該土地に存する建築物その他の工作物に関し所有権若しくは所有権以外の権利を有する者が法人である場合においては、氏名は、その法人の名称及び代表者の氏名を記載すること。
  4. 譲渡予定価額に関する事項
  5. その他参考となるべき事項
    当該土地が法第4条第1項第1号から第5号までのいずれに該当するかが明らかな場合には、「その他参考となるべき事項」の項にその内容を記載すること。

申出[編集]

条文(第5条)[編集]

(地方公共団体等に対する土地の買取り希望の申出)

第5条

  1. 前条第一項に規定する土地その他都市計画区域内に所在する土地(その面積が政令で定める規模[seirei#5 1]以上のものに限る。)を所有する者は、当該土地の地方公共団体等による買取りを希望するときは、都道府県知事に対し、同項の規定に準じ主務省令で定めるところにより、当該土地が所在する市町村の長を経由して、その旨を申し出ることができる。
  2. 前項の申出があつた場合においては、前条第一項の規定は、当該申出に係る同項に規定する土地につき、第八条に規定する期間の経過した日の翌日から起算して一年を経過する日までの間、当該申出をした者については、適用しない。
  • 関係政省令の概要
  1. ^ 施行令第4条で法第5条第1項に規定する政令で定める規模は、200平方メートルが原則であるが、当該地域及びその周辺の地域における土地取引等の状況に照らし、都市の健全な発展と秩序ある整備を促進するため特に必要があると認められるときは、都道府県知事は、都道府県の規則で、区域を限り、100平方メートル(防災再開発促進地区の区域内にあつては、50平方メートル)以上200平方メートル未満の範囲内で、その規模を別に定めることができる。

解説[編集]

土地の所有者から買取りを申し出ることができる制度である。申し出ができるのは、一定の要件に該当する土地を所有する者で、申出先は土地の所在する市町村長を経由して都道府県知事とあるが、政令指定都市、中核市においては、第29条により、市町村長が申出先となる。

対象となる土地は、上記申出の対象となるものに加えて、原則として200平方メートル以上の土地が含まれる。つまり、都市計画区域内の土地等で200平方メートル以上のものが対象となる。

届出、申出をした場合の譲渡制限[編集]

第4条第1項の届出又は第5条第1項の申出をした者は、次の日時までの間、当該届出等に係る土地を当該地方公共団体等以外の者に譲り渡してはならない(第8条)。

  1. 第6条第1項の通知があった場合 : 当該通知があった日から起算して3週間を経過する日(その期間内に土地の買取りの協議が成立しないことが明らかになつたときは、その時)
  2. 第6条第3項の通知があった場合 : 当該通知があった時
  3. 第6条第2項に規定する期間内に同条第1項又は第3項の通知がなかった場合 : 当該届出等をした日から起算して3週間を経過する日

(土地の買取りの協議)

この通知については、第6条で、都道府県知事が、届出・申出があった場合において、

  1. 当該届出等に係る土地の買取りを希望する地方公共団体等のうちから買取りの協議を行なう地方公共団体等を定め、買取りの目的を示して、当該地方公共団体等が買取りの協議を行う旨を当該届出等をした者に通知するもの(第1項)。この通知は、届出等のあつた日から起算して3週間以内に、これを行なうものとされている。
  2. 当該届出等に係る土地の買取りを希望する地方公共団体等がないときは、当該届出等をした者に対し、直ちにその旨を通知しなければならない(第3項)。

ものであり、買取りの協議を行う旨通知を受けた者は、正当な理由がなければ、当該通知に係る土地の買取りの協議を行なうことを拒んではならない。 第1項の通知については、行政手続法第3章の規定は、適用しない。

重要事項説明において[編集]

宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明においては、本法第4条1項及び第8条は、「法令に基づく制限」として説明事項とされている(宅地建物取引業法施行令第3条第1項第15号 -総務省法令データベース)。

届出義務や譲渡制限への違反[編集]

届出義務や譲渡制限に違反した者は、50万円以下の過料に処せられる(本法第32条-総務省法令データベース)。

歴史[編集]

1998年国土利用計画法改正により、同法に基づく届出の事後届出制への移行が行われ、公拡法の届出が国土法届出と分かれる形となった[2]。国土法届出が事前届出の場合は、事前届出により本法の届出も同時に行ったこととなるが、2011年現在、事前届出の対象となる地域は監視区域の東京都小笠原村のみにある。

福島県などは、本法の届出も事後届出になったと誤解しないよう注意を呼びかけている(下記HP-2011年11月22日閲覧)。

注釈[編集]

  1. ^ 参考例 : 横浜市税制局[1]
  2. ^ 国土交通省[2]

参考[編集]

都道府県、市町村の説明・様式例

[3](届出書様式)
[4](届出書様式)
[5](届出書様式)  
[6](届出書様式)
[7](届出書様式)