利用者:Ninomy/金属イオンの系統分離
高等学校の化学Iレベルの系統分離を想定しています。現行の指導要領では扱いませんが、発展事項ないしは実験として書きます。もしかしてWikiversityの方がいいのかな。あと現実的には硫化水素を使わずにチオアセトアミドを使うなど、使う薬品が異なることがありますが、高等学校レベルなのであまり触れないことにします。
種々の金属イオンは、その性質から大きく6つに分類することができる。ここでは、A類、B類、…、F類と分類することにする。系統分離では、A類から順に分離を行う。
- A類: 塩化物イオンを加えて沈殿を生じるもの。
- B類: 酸性条件下で硫化水素を通じて沈殿を生じるもの。
- C類: 塩基性条件下で水酸化物が沈殿するもの。
- D類: 塩基性条件下で硫化物が沈殿するもの。
- E類: 炭酸塩が沈殿するもの。
- F類; A~E類の分離で沈殿しなかったもの。
系統分離法
[編集]A類の分離
[編集]- 分離される金属イオン
- Ag+、Pb2+
Ag+を含む金属イオンの溶液に希塩酸(HCl)を加えると、AgClの白色沈殿を生じる。また、Pb2+を含む金属イオン溶液に希塩酸を加えると、PbCl2の白色沈殿を生じる。これにより、金属イオン溶液からA類の金属イオンを分離することができる。
分離したイオンが何であるかを判別するためには、沈殿を熱水に加えればよい。熱水に溶ければその沈殿はPbCl2であり、溶けなければAgClである。
あるいは、一度この沈殿をろ過し、沈殿に希硝酸を加えて無色の水溶液とする。この水溶液にアンモニア水を加えると沈殿を生じるが、もしAg+が含まれているのであればAg2Oの褐色沈殿を生じた後、過剰のアンモニア水に溶けて無色の水溶液となる。一方、Pb2+が含まれているのであれば、Pb(OH)2の白色沈殿を生じ、しかも過剰のアンモニア水を加えてもこの沈殿は溶けない。これにより、イオンの判別が可能である。
参考: ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛、鉛、銀
B類の分離
[編集]- 分離される金属イオン
- Cu2+、Sn2+、Cd2+、Hg2+
A類を沈殿・分離した後のろ液に、硫化水素(H2S)を通じる。この時点でろ液はA類の分離時に加えた希塩酸により酸性となっているため、酸性条件下で硫化物の沈殿を生じる、Cu2+、Sn2+、Cd2+、Hg2+が沈殿として分離される。
沈殿の色: CuS(黒)、SnS(黒)、CdS(黄)、HgS(黒)
ここではこの4種のイオンが混在している可能性があるため、沈殿をさらに元素ごとに分離する。
沈殿に希塩酸を少しずつ加えると、CdSのみが溶解しCd2+の水溶液となる。CdSは酸性条件下では比較的溶けやすいためである。ろ液に再び硫化水素を通じ、黄色の沈殿を生じれば、それはCdSであり、Cd2+が存在していたことが分かる。
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C類の分離
[編集]分離される金属イオン: Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+
B類を沈殿させた後のろ液を煮沸し、希硝酸を加える。そこへアンモニア水(NH3)を加える...
D類の分離
[編集]分離される金属イオン: Zn2+、Mn2+、Ni2+、Co2+
C類を沈殿させた後のろ液に、硫化水素(H2S)を通じる...
E類の分離
[編集]分離される金属イオン: Ba2+、Ca2+、Sr2+
D類を沈殿させた後のろ液に、炭酸アンモニウム水溶液((NH4)2CO3)を加える...
F類の検出
[編集]検出される金属イオン: Na+、Li+、K+
これらは沈殿を生じないため、炎色反応によりイオンの存在を検出する...
系統分離の例
[編集]Ag+、Cu2+、Fe3+、Ba2+の4つの金属イオンを含む水溶液の系統分離を行うことにする。
初めに金属イオン水溶液に希塩酸を少量加えると、白色の沈殿を生じる。これをろ過し、沈殿にアンモニア水を加えると無色の水溶液になる。これにより、Ag+が分離されたことが分かる。
ろ液には残りのCu2+、Fe3+、Ba2+が含まれている。ここに硫化水素を通じると黒色の沈殿が生じる。これをろ過し、濃硝酸を加えると、沈殿は溶解する。ここにアンモニア水を加えると、はじめは青白色の沈殿が生じるが、過剰に加えると深青色の水溶液となる。これにより、Cu2+が分離できたことが確認できる。
ろ液にはFe2+、Ba2+が含まれている。ここでFe3+は硫化水素により還元されてFe2+となっている。これを煮沸して硫化水素を追い出し、濃硝酸を加えてFe2+を酸化しFe3+とする。これにアンモニア水を加えると、赤褐色の沈殿を生じる。これをろ過し、希塩酸を加えると沈殿は溶解する。ここにヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液を加えると、濃青色の沈殿を生じる。または、チオシアン酸カリウム水溶液を加えると血赤色の溶液となる。このことから、Fe3+が分離できたことが確認できる。
ろ液には残りBa2+が含まれている。ここに硫化水素を通じても、沈殿は生じない。その後炭酸アンモニウム水溶液を加えると、白色の沈殿を生じる。これをろ過し、硝酸を加えて沈殿を溶解させる。溶液を白金線の先につけて炎に入れると、黄緑色の炎色反応を示す。または、クロム酸カリウム水溶液を加えると黄色の沈殿を生じる。これにより、Ba2+が分離できたことが確認できる。
例題
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