出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
工学全般において、ラプラス変換は数学的操作を行う上で必須のツールとなる。一般的には微分方程式を解くためのツールとして用いられることが多い。特に電気を扱う上では回路への入出力関係をラプラス変換を用いて表すことがある。ここでは、工学においてラプラス変換を扱うための基礎を解説する。数学的な厳密さは特に追求せず、その点は別の数学書を参照されたい。
ラプラス変換は、ある実数関数を次の式によって複素関数へ変換する操作である。
定義1.1(ラプラス変換)
で定義されたある関数のラプラス変換(Laplace transform)とは、
によって定義される複素関数である。sは複素数である。
ラプラス変換自体はただの積分操作であるが、実数関数のラプラス変換であっても、結果は複素関数になることに注意する。また、この積分がいかなるsに対しても収束しない場合、この関数はラプラス変換可能ではない。
主な関数のラプラス変換を見てみよう。例えば、時刻0まで常に0で、それ以降は常に1となるような関数
を考える。この関数はヘビサイド関数あるいはステップ関数と呼ばれ、しばしば用いられる。ヘビサイド関数のラプラス変換を求めてみると、これは定義式より、
となる。ここで、第2項の極限はであれば0に収束する。よって、ヘビサイド関数のラプラス変換は
- 、収束域:
である。