前章では Laplace 変換,
![{\displaystyle {\mathcal {L}}[f]=\int _{0}^{\infty }f(t)e^{-st}dt}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/240913be2561f18e6781083a0a12e0a9e20dd1a5)
において,
は実変数
の実数値関数,
は実数と考えた.
この章では,
としては実変数
の複素数値関数をも許すものとする.[1]
すなわち,

を考える.ここに
は実数値関数であり,

の実部

の虚部
と呼ぶ.また,
は実数でも,複素数でもよいが,一応複素数としておく.[2]
以下で取り扱う複素数値関数としては,次のものが一番重要である.

ここに
は複素数である.この関数の定義を述べよう.指数関数の Taylor 展開,

が,
が複素数
であっても成り立つとすればどのような結果が得られるか考えてみよう.

ここで最右辺の式の括弧内はそれぞれ
と
の Taylor 展開であるから,
(4.1)

という関係が得られる.これを Euler の公式と呼んでいる.
ここで
とおくと,

となる.これも Euler の公式ということがある.
この公式の発見は,当時の数学界(サロン)におけるセンセーショナルな事件であったという.
それは
という当時知られていた数学の基本定数が,このような簡単なそして美しい関係で結び付けられていることに対する驚きによるものである.
我々は以後この結果から出発する.すなわち 式 (4.1) を指数関数
の定義とするのである.“良き結果は良き定義として採用できる”からである.このことは,これからの議論によって次第に明らかになるであろう.
まず,指数関数の加法定理,


が導かれる.なぜなら三角関数の加法定理から,

が出[3],
これより直ちに,

が得られる[4]
からである.これらの式は d'Moivre の公式として知られている.
- ^
定義域の変数
としては常に実数を考える.
- ^
複素数は既知として取り扱う.複素数の全体を
,実数の全体を
で表す.
- ^


実部は
の加法定理,虚部は
の加法定理.)
- ^







この加法定理が,もっと一般に成立するものだとすれば,

でなければならない.これが最初に述べた
の定義である.すなわち,
定義 4.1

例83
この定義から,

を示せ.
解答例
とおくと,




.