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線形定常常微分方程式
(4.13)

の解の
における振舞を調べるのが目的である.ここでは係数は実数としておく.
式 (4.13) には
という解がある.
これを零解という.零解は時間の経過には無関係に一定値を取り続ける.そのような解を式 (4.13) の平衡点と呼ぶことがある.
ならば式 (4.13) の平衡点は零解だけである[1].
さて,零解以外の任意の解
が,零解に近づくかどうか,その条件はなにかというのが我々の問題である.
安定の定義
(i) 式 (4.13) の解
が

となるとき,
は安定な解であるという.すべての解が安定な解となるとき,
式 (4.13) の零解は安定である,
あるいは微分方程式 (4.13) は安定であるという.
(ii)

となる解を不安定な解という.このような解が少なくとも一つ存在すれば,
式 (4.13) は不安定であるという.
(iii)
(i) でも (ii) でもないとき,すなわち
で発散する解は存在しない.しかしすべての解が
に漸近するわけではないとき,
式 (4.13) は安定限界であるという.
例95
(i)
(安定な解)
(ii)
(不安定な解)
(iii)
(安定限界となる解)
さて式 (4.13) の特性方程式を
とし,
をその根とすると,

なる根がある.

であるから,



となる.上から
は安定,不安定,安定限界であることが分かる.一般の解は,

のような解の 1 次結合から成り立っている.したがって,この解の安定,不安定を調べればよい.

であるから
なら,この解は
とともに発散する.また
なら,

なる負の実数
が存在し,この
に対して,
(4.13b)
[2]
であるから,

となる.よって
に留意すれば,

を得る.それゆえ,次の結果が得られた.
定理 4.1(安定定理)
式 (4.13) の特性方程式
の根
の実数部の最大なるものを
とする.すなわち,

とするとき,微分方程式 (4.13) は,

なら,安定

なら不安定
である.また,

ならば,
(i)

が

の単根のとき,安定限界
(ii)

が

の重根のとき,不安定
である.
証明
前半の安定・不安定の部分の証明はすでに与えた.後半の単根の場合も終わっている.
重根の場合は,
とすると[3],


であるから,この解は発散する.よって不安定である.
この定理から,安定・不安定の判別は,
の根の,複素平面 (
平面)上における配置によって決まることが分かる.
安定
根がすべて左半面にあるとき
不安定
少なくとも 1 根が右半面に存在するか,あるいは右半面には存在しないが,虚軸上に重根があるとき
安定限界
虚軸上の根は単根で、他はすべて左半面にあるとき
とまとめることができる.
- ^
…①で
とおく.
今,
が①の解であるとき,

より 
より
.
- ^ .
- ^
さらに
