制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/連立微分方程式の解法/行列表示と解法

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(1)[編集]

前章までで取り扱った単独高階の微分方程式,

(5.9)

は,次のような変数を選べば,連立微分方程式とみなすことができる.すなわち,

とおけば,

となり,また初期条件は,

となる.

そこで,この節では,もう少し一般化した定数係数の連立 1 階線形微分方程式,

(5.10)

および初期条件

を取り扱うことにする.ここで,

および,

とおけば,式 (5.10) と初期条件は,

(5.11)

と簡潔に表示できる.ここに,

である.


(2)[編集]

ここで少し記号の約束をしておこう. 関数を成分とする行列,

に対して,この行列の微分あるいは積分を,その成分の微分あるいは積分を成分とする行列と定義する.すなわち,

あるいは,

と約束する.この約束に従えば,



は必然である[1]. また を関数を成分とする行列とし,積 が定義できるものとすれば,

(5.11a)
(5.11b)

などは明らかであろう.

例114

式 (5.11a), 式 (5.11b) を示せ.

解答例

(1) 式 (5.11a)の証明.
行列 の第 行第 列成分を , これと並行に成分の表示方法として,行列 の各成分を と表示するものとすると,


よって,






以上により式 (5.11a)の証明が完了する.


(2)式 (5.11b)の証明.





ここで より,






  1. ^


    また, とおけば,





    両辺に左から を働かせて,





したがって,

(5.12)
(5.13)

などの計算が許される.ただし 式 (5.13) は定数行列とする. たとえば式 (5.12) の証明は次のとおりである。

と略記すると,

ただ定義に従って変形していくだけでよい[1]


  1. ^ 式 (5.13) の証明は次のとおり.
    まず, 行 1 列のベクトルになることに注意して,
    上述のとおり,行列 の各成分を と,また,ベクトル の第 成分を と表記するものとすると,
    .…①



    ①.

(3)[編集]

さて以上の準備の下に,

は次のように解くことができる. この式を Laplace 変換すると,

すなわち,

となる.ここに 次の単位行列である. の逆行列とすれば,

となる.いま,

(5.14)

とおけば,

(5.14b)

となる.以上は例題を通して考察したことの繰り返しに過ぎない. これからわかるように,連立微分方程式を解くことの中心は式 (5.14) を計算することである.