出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
(1)[編集]
前章までで取り扱った単独高階の微分方程式,
(5.9)
は,次のような変数を選べば,連立微分方程式とみなすことができる.すなわち,
とおけば,
となり,また初期条件は,
となる.
そこで,この節では,もう少し一般化した定数係数の連立 1 階線形微分方程式,
(5.10)
および初期条件
を取り扱うことにする.ここで,
および,
とおけば,式 (5.10) と初期条件は,
(5.11)
と簡潔に表示できる.ここに,
である.
(2)[編集]
ここで少し記号の約束をしておこう.
関数を成分とする行列,
に対して,この行列の微分あるいは積分を,その成分の微分あるいは積分を成分とする行列と定義する.すなわち,
あるいは,
と約束する.この約束に従えば,
は必然である[1].
また を関数を成分とする行列とし,積 が定義できるものとすれば,
(5.11a)
(5.11b)
などは明らかであろう.
例114
式 (5.11a), 式 (5.11b) を示せ.
解答例
(1) 式 (5.11a)の証明.
行列 の第 行第 列成分を ,
これと並行に成分の表示方法として,行列 の各成分を と表示するものとすると,
よって,
以上により式 (5.11a)の証明が完了する.
(2)式 (5.11b)の証明.
ここで より,
- ^
また, とおけば,
両辺に左から を働かせて,
したがって,
(5.12)
(5.13)
などの計算が許される.ただし 式 (5.13) の は定数行列とする.
たとえば式 (5.12)
の証明は次のとおりである。
と略記すると,
ただ定義に従って変形していくだけでよい[1].
- ^
式 (5.13) の証明は次のとおり.
まず, は 行 1 列のベクトルになることに注意して,
上述のとおり,行列 の各成分を と,また,ベクトル の第 成分を と表記するものとすると,
- .…①
- ①.
(3)[編集]
さて以上の準備の下に,
は次のように解くことができる.
この式を Laplace 変換すると,
すなわち,
となる.ここに は 次の単位行列である.
を の逆行列とすれば,
となる.いま,
(5.14)
とおけば,
(5.14b)
となる.以上は例題を通して考察したことの繰り返しに過ぎない.
これからわかるように,連立微分方程式を解くことの中心は式 (5.14) を計算することである.