囲碁/囲碁とは
用具
[編集]- 碁石 : 単に石ともいう。黒・白の二色あり、合わせて碁盤を埋め尽くせる数(黒181、白180)だけ用意される(グリーン碁石では、濃い緑と薄い緑の二色である。)。理論的には、碁石の数は無限個で良い。碁石を入れる器を碁笥(ごけ)と言う。盤上の碁石を数える時の単位は子(し)であり、一つを一子(いっし)、二つを二子(にし)などと表す。
- 碁盤 : 板の上に、直行する縦横それぞれ同じ本数の直線を引いたもの。碁石を置くのは縦線と横線の交点である。一般に、縦横19本ずつの19路盤が使われる。初心者用に13路盤や9路盤もある。線は最も辺にあるものから順に第2線・・・第5線あたりまでこのように呼ぶ。また第4線の交点や中間、碁盤の中心の天元にある黒点を星と呼ぶ。
- 対局時計 : 公式戦では制限時間を定め、時間切れによる勝敗を厳正に定めるために対局時計を扱う。時間無制限の対局の場合は必要無い。
ゲームの概要
[編集]詳細は、ルールで説明し、ここでは大まかな囲碁の特徴を説明する。
初心者向けに、しばしば、囲碁は黒と白が地の大小を争うゲームであるといわれる。実際、戦争の領土争いと囲碁には、著しい類似性が見られるだろう。石を兵力に例えるとなおさら分かりやすい。
黒と白が、できるだけ効率良く石を配置して、相手が地を作りにくくして、自分はできるだけ大きな地を確保しようとする。しかし、地を「囲う」というイメージよりは、戦いに勝つことによって領土を確保するというイメージのほうが正しい。
ポイントは石の死活である。相手の石を取り囲むと、それを捕虜(これをハマという)として取り上げることが出来る。逆に、相手が囲おうとしているところに石を突入させて(打ち込み)生きてしまえば、そこは自分の地となる。また、相手が地だと思って囲っている壁の一部を、国境を侵害するように切り取ってしまえば、地はそれだけ減ってしまう。
このように、大まかに囲っている地域(これを模様という)と最終的な地との間には大きな違いがあり、ゲームの進行と共に、景色が大きく入れ替わる。相手の地や捕虜と自分の地や捕虜を交換するフリカワリというテクニックもある。
戦争で条約締結まで領土が確定しないのと同様に、終局するまでは、地は確定しない。最終的に相手の石が生きることができず、かつ境界が破られないような領域が地となる。
地の面積とハマ(捕虜)の数の和の大小によって勝敗を争う。形勢判断などでは、この和の数値のことを地というため、例えば、黒地○○目、白地○○目などというときは、この和のことを言う。
なお、中国ルールでは、ほとんどの場合、日本ルールと勝敗判定は変わらないが、イメージは異なる。まず、ハマは「死ぬ」。すなわち資産価値がない。その代わり、盤上に置かれた石一つ一つに価値がある。つまり、地と盤上の石の和を自分の点数とする。
ルール
[編集]囲碁は、石(将棋で言えば駒に相当)を置いて良い場所にきわめて制約が少ないことが特徴的である。
さらには、囲碁のルールにおいてもっとも重要な概念である石の死活が、戦略を極めて難しくする。
こうした事情から、囲碁は他に類を見ない複雑なゲームとなっている。チェスなどでコンピュータプログラムが世界チャンピオンを負かしたりしているのに対して、コンピュータ囲碁ソフトがいまだに(2012年)きわめて弱いのも、これが原因である。
基本的な考え方は同じだが、細かい違いをもつ二つのルールの系統として、中国ルールと日本ルールがある。
以下では、日本囲碁規約に基づき、日本ルールを中心に説明する。
対局者(プレーヤー)
[編集]黒と白と呼ばれる2人のプレイヤーがそれぞれ、黒、白の石の碁笥を持つ。
盤上の石の状態
[編集]交点
[編集]盤上にある石は、盤上の罫線の交点の上にある。
連続
[編集]複数個の一つの色の石が縦横の碁盤の線に沿ってつながっているものを石の一団とよぼう。
- 縦横の方向だけが重要で、斜めは関係ない。「つながっている」「囲まれる」などの言葉は、縦横に限った話であることに注意。
取り
[編集]石の一団は、その周囲の交点全てに相手の石を置かれると取られる。
- 石の一団は隣接点で呼吸をしている。隣接点が空点(石が存在しない交点)であれば、呼吸ができる。隣接点に相手の石があれば呼吸を邪魔される。上下左右四方向とも相手の石にふさがれると窒息してしまい取られてしまう。もし、隣接点に味方の石がある場合は、味方の石を通じて呼吸ができ、石の一団で一つでも呼吸のできる石があれば、その石の一団全体が呼吸できる。全ての石の縦横が塞がれ、呼吸のできる石が一つも無くなった場合は、その石の一団全体が窒息し取られてしまう。取った石はハマとよばれる。
石の存在
[編集]取られない石は、着手されてから終局まで盤上に存在し続ける。
着手
[編集]黒と白が、交互に一つずつ石を置いていく(打つ)。黒が先手で白が後手となる。
以下に説明するような制約を除くと、すでに石が置かれていない盤上の線の交点上のどこに打っても良い。さらに、パスや投了をすることも許される。
空点
[編集]石が打たれている点に打つことはできない。
自殺の禁止
[編集]自分の石を置くとその石が取られる状態になる点は着手禁止点となる。つまり自殺は禁止。ただし、自殺手によって、相手の石が取れる場合は、自殺手は許され、打ち込んだその石自体も取られない。
同型反復禁止(コウ)
[編集]対局者の一方が一つの石(以後一子と称す)を取った後、即座にもう一方の対局者が一子を取れる状態になる場合。この状態をコウと呼ぶ。一子の取り合いを続けていると永久に対局が終わらないことになるため、コウには特別ルールを設けている。一方の対局者がコウの一子を取った後、もう一方の対局者は別の場所に1手打たない限りはコウの一子を取り返すことが出来ないものとする。なお、この別の場所に打たれる一手のことを、コウ材またはコウダテと呼ぶ。
終局
[編集]まず、片方のプレーヤーが投了を告げると終局し、もう片方のプレーヤーが勝ちになる。
また、二人のプレーヤーが連続でパスをすると終局処理に入る。通常は、パスの代わりに、両対局者の合意によって終局状態に移行する。言葉で終局を確認したり、頷きあったりして確認することが多い。逆に、「両対局者の合意」などの終局状態への移行手続きを形式化した表現が連続パスであると考えて良い。
終局処理(終局状態の確定)
[編集]囲碁は、他のゲームと比べて、終局処理が極めて複雑なことも特徴的である。
投了以外の場合の終局状態においては、盤上は、活きた石とそれによって囲まれた地によって分割されることが、勝敗が判定可能であることの条件である。誤って地が確定しない状態で終局に同意してしまった場合は、勝敗判定は不可能になる。麻雀で、アガリの状態でないのに、ロンを宣告してしまった状態と同様の事態が生じると思って良い。ある程度以上の実力になれば、こうした誤りはめったに起こらない。
以下では、地の確定している正常な終局状態における終局手続きを述べる。
ダメ詰め
[編集]地の境界線を定めるために打つ(ダメを詰める)。ダメは漢字で駄目と書き、打っても何の価値も生じない手という意味であり、日本語の駄目もここからきている。しかし場合によっては死活などで駄目を詰めることで手筋が生じたり、相手の手入れが必要となることもある。中国ルールでは、ダメを詰め終えるまでは終局しない。
死活判定
[編集]盤上にある石は活き、死にの二つの状態のどちらかになる。
- プレーを続ければ相手の石を取ることができる場合(死に)
- 死にでない場合(活き)
- 着手禁止点を2つ以上もつ石のグループ
- セキ=相手の石を取りに行くと、自分の石が取られる。よって両者ともこれ以上手入れをできない状態。
死活判定は必ずしも簡単ではない。ここでも対局者両者の合意が前提となる。
死石の除去
[編集]相手の死んだ石は、盤上から取り除き、自分のハマに加える。セキの場合は何もせず、その場所については両者とも0目とする。
地の定義
[編集]死石を除去すると、盤上には活きた白石と黒石のみが存在する。自分の石と碁盤の端で囲んだ領域を、自分の地と定義する。
勝敗判定
[編集]地の面積は、交点の数で数え、単位は目(もく)である。日本ルールでは、自分の地から相手のハマの数を引いた数を計算し、その大小によって勝敗を決める。中国ルールにおいては、地の目数、盤面で生きている石の数の合計 [訂正:取ったハマの数を削除] の大小で勝敗を決する。このため、セキの場合に勝敗が大きく変わる。
麻雀などの他の点数を使うゲームと異なり、囲碁においては通常目数の差は重要ではない。そのため、複数回対局して優劣を競う大会などでは、目数差は累積せず、単に勝敗のみを記録して集計する。
ハンディキャップ
[編集]囲碁は先手有利のゲームなので互先の場合、コミと呼ばれるハンディキャップを先手の地の計算から引くことが一般的。実力差がある場合は、置碁が行われることがある。
ルールにまつわるエピソード: 終局に関するトラブル
[編集]とりわけ、日本ルールは、終局に関するルールが高度である。そこで、例えば、お互いの合意が成立していないのに終局が成立していると勘違いし、駄目詰めに対して必要な着手(手入れという。)をせずに石をとられてしまい、終局していたかどうかで争いになってしまうといったトラブルが後を絶たない。こういったトラブルはアマチュアだけでなくプロでも起こり得る。
2002年王立誠二冠(棋聖・十段)に柳時薫七段が挑戦した第26期棋聖戦七番勝負第五局において、終局したと思っていた柳時薫は「駄目詰め」の作業に入っていたが、王立誠は終局とは思っておらず柳時薫の石を六子も取ってしまった。終局していないのなら柳時薫は取られないように「手入れ」すべきで、終局しているなら順序関係なくお互いの地にならない駄目をつめるだけだったため柳時薫は手入れを怠った。これにより王立誠の逆転勝利となり、行為の正当性を巡り囲碁界に論争を巻き起こした。
対局の進行
[編集]序盤
[編集]通常、対局が始まるとしばらくは布石が行われる。大体の場合は碁盤の四隅に打つ事から始まる。なお初手を四隅に打つ場合は、慣例的に右上隅に打つ。
- 三々(さんさん) - 碁盤の隅から3・3の位置の事。地に対して最も堅い手であるが中央への働きが弱い。
- 小目(こもく) - 碁盤の隅から3・4あるいは4・3の位置の事。古くから布石の基本とされる。
- 星(ほし) - 碁盤の隅から4・4の位置の事。現在の布石の花形。特に初心者はこの手より始める事が多い。
- 目外し(もくはずし) - 碁盤の隅から3・5あるいは5・3の位置の事。相手の作戦をくじくための物として打たれることが多い。
- 高目(たかもく) - 碁盤の隅から4・5あるいは5・4の位置の事。
- 五の五(ごのご) - 碁盤の隅から5・5の事。
- 大高目(おおたかもく) - 碁盤の隅から4・6あるいは6・4の位置の事。
- 天元(てんげん) - 碁盤の中心。中心に打つため四方全ての向きからのシチョウに有利とされるが、五の五・大高目とともに未だあまり研究が成されていない。
中盤
[編集]中盤は死活の絡んだ戦いになる。互いに死活がはっきりしていない弱い石を意識しながら打ち進める。
中盤でもっとも重要な概念は、厚みと実利であろう。全局的に影響が及ぶような石の配置を厚みといい、それに対して、局所的に地になりそうなところを実際に地とみなしたときの利益を実利という。経営で言えば、厚みが長期、実利が短期である。このバランスが重要である。とりわけ厚みは、使い方、またその効果の評価が難しく、コンピュータ囲碁プログラムにとって最大の難関の一つである。
中盤は、もっとも作戦が富んだところである。基本的な構想をいくつかあげると:
- 相手の弱い石を攻撃して、地模様をつくるのに役立つ厚み(壁)を作る
- 相手の石をとる
- 自分の石を捨てて(捨石)、別のところで利益を得る
- 打ち込んで生きる
などがある。
終盤
[編集]ヨセは双方共に、死活の心配がなくなった状態の事を言い、大まかな領域線を決める大ヨセと細かい一目・二目で争う小ヨセに分かれる。プロならば小ヨセの段階で勝敗が解るのは極自然である。