地学I/海洋と気象

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海水の運動[編集]

表面付近の風や波で混ぜられ鉛直方向の温度差が少ない層を混合層といい、その下の水温が急激に下がる層を水温躍層という。海水には塩化ナトリウム塩化マグネシウムなどの塩類が溶けており、海水1kgあたりの塩類の量を塩分という。循環している海流のことを環流とよび、黒潮の流れが強いのは西岸強化という現象のためである。

海洋には熱塩循環と呼ばれる鉛直方向の大きな循環がある。エルニーニョ・南方振動は赤道太平洋の気圧変動により貿易風(東風)が弱まり、その東部の海水温が上昇することである。ラニーニャ現象は強い東風で冷たい海水が湧き上がることにより海水温が低下する現象である。

大気の熱収支と大気の運動[編集]

地球のエネルギー収支を簡略化した図(NASAによる)

地球に入る太陽放射を日射といい、太陽光線に垂直な面が受ける日射量を太陽定数という。地球自身が外に電磁波を出すことを地球放射という。地球大気が赤外放射を吸収することを大気の温室効果という。地表からの赤外放射で温度が下がることを放射冷却という。

赤道付近で空気が上昇し、その空気が亜熱帯ジェット気流により緯度20~30度で下降する循環をハドレー循環という。中緯度では偏西風という常に吹く西風があり、その特に強い流れの部分をジェット気流という。偏西風の蛇行は偏西風波動と呼ばれている。陸地と海洋の熱容量の差からくる気圧分布により、季節ごとに交代する風のことを季節風という。 晴れた日中に海から吹く風を海風、夜間に陸から吹く風を陸風といい、両者を合わせて海陸風という。このような限定された地域に吹く風を局地風と呼ぶ。山が暖められるために谷から吹き上がる風を谷風、放射冷却で山から吹き降りる風を山風という。山谷風も1日が周期の局地風である。 高気圧が停滞してできる巨大な空気の団塊を気団といい、接した気団の地表面には前線が形成される。温暖前線では、暖気が寒気の斜面をゆっくりと這い上がる。寒冷前線では、寒気が暖気を押し込み暖気の急激な上昇で強いにわか雨になる。寒冷前線が温暖前線に追いつき低気圧が閉じた部分の前線は閉塞前線と呼ばれる。日本において、最大風速が約17m/sを超えた熱帯低気圧を台風という。台風の中心で雲がほとんどない場所を台風の目と呼んでいる。

日本の冬において、シベリア高気圧から北西の季節風が吹く気圧配置を西高東低型という。海面から供給された潜熱でできた積雲が脊梁山脈にぶつかったあとの太平洋側ではからっ風が吹き降りる。春に日本の北側にある低気圧によって吹く強い南風を春一番という。温帯低気圧の間には移動性高気圧があり、偏西風帯に対応している。6・7月ごろには梅雨とよんでいる現象がある。寒気のオホーツク海高気圧と、暖気の北太平洋高気圧の間には梅雨前線と呼ばれる停滞前線がある。南西からは湿舌という暖湿気が伸び出てくる。ジェット気流の合流による下降流でできたオホーツク海高気圧は親潮で冷やされる。冷えて密度が高まると東日本の太平洋側にやませが吹き付け、長く続けば冷夏になる。このように偏西風の蛇行で切り離される高気圧をブロッキング高気圧という。夏型の気圧配置は南高北低型である。秋は北太平洋高気圧が弱まり、秋雨前線による秋雨がもたらされる。

都市気候において、排熱によるヒートアイランドがよく見られる。化石燃料の燃焼により硫酸や硝酸が雨に混じると酸性雨が降る。

単位面積当たりの大気の圧力のことを気圧という。1気圧は1013ヘクトパスカルである。高度が上がるに従って気温が下がっていく割合のことを気温減率といい、地表から高度11km前後までの上空ほど気温が下がる層のことを対流圏という。各圏同士の境界を圏界面と呼び、対流圏と成層圏の間は対流圏界面と呼ばれる。対流圏では高度が上がるほど気温が低くなるが、成層圏ではオゾン層での紫外線の吸収により、上に行くほど高くなる。中間圏では再び高度の上昇とともに低くなるが、熱圏では、また上のほうが高くなる。熱圏の高度100-300km前後には、分子が太陽の紫外線を吸収することによる電離が起きる電離層がある。

物質が、気体・液体・固体というように状態を変化させることを相変化という。相変化に使われる熱を潜熱という。飽和したときの水蒸気量を飽和水蒸気量といい、そのときの水蒸気圧を飽和水蒸気圧という。ある温度における飽和水蒸気量(圧)に対する水蒸気量(圧)の百分率を相対湿度という。水蒸気圧が飽和水蒸気圧になり、凝結し始めたときの温度をw:露点という。水蒸気圧が飽和水蒸気圧を上回れば過飽和の状態である。雲をつくる非常に小さな水滴のことを雲粒という。 周囲と熱のやり取りがない空気塊の温度変化を断熱変化という。飽和していない空気塊が断熱的に上昇したときの温度が降下する割合を乾燥断熱減率という。空気塊が凝結高度に達したあとの上昇による温度の低下率はw:湿潤断熱減率と呼ばれ、潜熱で暖められた分、温度の低下がゆるやかになる。風が山を湿潤断熱減率で上昇し、乾燥断熱減率で山を下降するとき、風下側の山麓が高温・乾燥になる現象のことをフェーン現象という。 空気塊の温度が周囲の気温より高いと、大気の状態は不安定である。空気塊の温度が周囲の気温より低ければ、大気の状態は安定である。飽和していない空気塊には安定だが、飽和している空気塊には不安定な状態のことを条件つき不安定という。高度が上がるつれにて気温も上がっていく部分を逆転層という。氷晶が含まれている雲からの雨を冷たい雨(または氷晶雨)、水滴だけの雲でできている雨を温かい雨という。

気圧差によって働く力のことを気圧傾度力という。地球の自転により運動の方向を曲げているように見える力のことを転向力(コリオリの力)という。気圧傾度力とコリオリ力がつり合った状態で吹く風を地衡風という。気圧傾度力と転向力と遠心力がつり合って吹く風は傾度風である。