地学I/海洋と気象
海水の運動
[編集]表面付近の風や波で混ざり、鉛直方向の温度差が少ない層を混合層という。その下の水温が急激に下がる層を水温躍層という。海水には塩化ナトリウムや塩化マグネシウムなどの塩類が溶けており、海水あたりの塩類の割合を塩分濃度という。循環している海流のことを環流とよび、黒潮の流れが強いのは地球の自転による影響で、西岸強化という。
熱塩循環
[編集]熱塩循環は、表面の熱および淡水の流入によって作られる密度勾配によって駆動される大規模な海洋循環の一部です。 風によって駆動される表層流(例えば、メキシコ湾海流)は、赤道付近の大西洋から極地方へ向かって移動し、途中で冷却され、最終的に高緯度で沈んで(北大西洋深層水を形成して)海洋盆地に流れ込む。 この密度の高い水は、南極海で大部分が上昇する一方で、最も古い水(推定輸送時間約1000年)は北太平洋で上昇する。 したがって、広範な混合が海洋盆地間で行われ、それらの差異を減らして、地球の海洋を一体的なシステムとている。 これらの循環の水は、熱エネルギーおよび物質(溶存した固体および気体)を世界中に運ぶ。 従って、循環の状態は地球の気候に大きな影響を与える。
エルニーニョ・南方振動
[編集]エルニーニョ・南方振動(El Niño-Southern Oscillation; ENSO)とは、熱帯東太平洋上の風と海面温度の不規則な周期的変動であり、熱帯および亜熱帯の気候に影響を与える。海水温度の上昇期はエルニーニョ、下降期はラニーニャとして知られている。
海水温の変化と相まって、付随する大気成分として南方振動がある。エルニーニョは熱帯西太平洋で高気圧が伴い、ラニーニャはそこで低気圧が伴う。これら2つの期間はそれぞれ数ヶ月続き、数年ごとに発生し、期間ごとに異なる強度で発生する。
これら2つの期間は、20世紀初頭にギルバート・ウォーカーによって発見されたウォーカー循環に関係している。ウォーカー循環は、東太平洋上に高気圧があり、インドネシア上空に低気圧があることから生じる圧力勾配力によって引き起こされる。ウォーカー循環(貿易風を含む)の弱体化や逆転は、冷たい深海水の上昇を減少または停止させ、海面温度を平均より高くさせてエルニーニョを引き起こする。特に強いウォーカー循環はラニーニャを引き起こし、上昇が増加するため海水温度が下がる。
振動を引き起こすメカニズムは現在も研究中である。この気候パターンの極端な振動は、世界中の多くの地域で洪水や干ばつなどの極端な気象を引き起こする。特に太平洋に接する農業や漁業に依存する発展途上国が最も影響を受ける。
大気の熱収支と大気の運動
[編集]地球に入る太陽放射を日射といい、太陽光線に垂直な面が受ける日射量を太陽定数という。地球自身が外に出す電磁波を地球放射といい、地表からの赤外放射による温度低下を放射冷却という。大気中に存在する二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが、太陽光線を大気中に入れながら、地球の表面に戻ってくる熱エネルギーを吸収する現象を温室効果という。
赤道付近の空気が上昇し、亜熱帯ジェット気流により緯度20~30度で下降する循環をハドレー循環という。中緯度の偏西風が常に吹き、特に強い流れをジェット気流という。偏西風の蛇行は偏西風波動と呼ばれる。季節ごとに交代する風のことを季節風といい、晴れた日中に海から吹く風を海風、夜間に陸から吹く風を陸風という。両者を合わせて海陸風といい、限定された地域に吹く風を局地風という。山谷風も1日が周期の局地風である。 気団とは、高気圧が停滞してできる巨大な空気の団塊である。接した気団の地表面には前線が形成され、温暖前線では暖気が寒気の斜面を這い上がり、寒冷前線では寒気が暖気を押し込み、急激な上昇により強いにわか雨が降る。寒冷前線が温暖前線に追いつき低気圧が閉じた部分の前線は閉塞前線と呼ばれる。 最大風速が約17m/sを超える熱帯低気圧を台風という。台風の中心で雲がほとんどない場所を台風の目という。
日本の冬において、シベリア高気圧から北西の季節風が吹く気圧配置を西高東低型という。海面から供給された潜熱でできた積雲が脊梁山脈にぶつかったあとの太平洋側ではからっ風が吹き降りる。春に日本の北側にある低気圧によって吹く強い南風を春一番という。温帯低気圧の間には移動性高気圧があり、偏西風帯に対応している。6・7月ごろには梅雨とよんでいる現象がある。寒気のオホーツク海高気圧と、暖気の北太平洋高気圧の間には梅雨前線と呼ばれる停滞前線がある。南西からは湿舌という暖湿気が伸び出てくる。ジェット気流の合流による下降流でできたオホーツク海高気圧は親潮で冷やされる。冷えて密度が高まると東日本の太平洋側にやませが吹き付け、長く続けば冷夏になる。このように偏西風の蛇行で切り離される高気圧をブロッキング高気圧という。夏型の気圧配置は南高北低型である。秋は北太平洋高気圧が弱まり、秋雨前線による秋雨がもたらされる。
都市気候において、排熱によるヒートアイランドがよく見られる。化石燃料の燃焼により硫酸や硝酸が雨に混じると酸性雨が降る。
単位面積当たりの大気の圧力のことを気圧という。1気圧は1013ヘクトパスカルである。高度が上がるに従って気温が下がっていく割合のことを気温減率といい、地表から高度11km前後までの上空ほど気温が下がる層のことを対流圏という。各圏同士の境界を圏界面といい、対流圏と成層圏の間は対流圏界面と呼ばれる。対流圏では高度が上がるほど気温が低くなるが、成層圏ではオゾン層での紫外線の吸収により、上に行くほど高くなる。中間圏では再び高度の上昇とともに低くなるが、熱圏では、また上のほうが高くなる。熱圏の高度100-300km前後には、分子が太陽の紫外線を吸収することによる電離が起きる電離層がある。
物質が、気体・液体・固体というように状態を変化させることを相変化という。相変化に使われる熱を潜熱という。飽和したときの水蒸気量を飽和水蒸気量といい、そのときの水蒸気圧を飽和水蒸気圧という。ある温度における飽和水蒸気量(圧)に対する水蒸気量(圧)の百分率を相対湿度という。水蒸気圧が飽和水蒸気圧になり、凝結し始めたときの温度をw:露点という。水蒸気圧が飽和水蒸気圧を上回れば過飽和の状態である。雲をつくる非常に小さな水滴のことを雲粒という。 周囲と熱のやり取りがない空気塊の温度変化を断熱変化という。飽和していない空気塊が断熱的に上昇したときの温度が降下する割合を乾燥断熱減率という。空気塊が凝結高度に達したあとの上昇による温度の低下率はw:湿潤断熱減率と呼ばれ、潜熱で暖められた分、温度の低下がゆるやかになる。風が山を湿潤断熱減率で上昇し、乾燥断熱減率で山を下降するとき、風下側の山麓が高温・乾燥になる現象のことをフェーン現象という。 空気塊の温度が周囲の気温より高いと、大気の状態は不安定である。空気塊の温度が周囲の気温より低ければ、大気の状態は安定である。飽和していない空気塊には安定だが、飽和している空気塊には不安定な状態のことを条件つき不安定という。高度が上がるつれにて気温も上がっていく部分を逆転層という。氷晶が含まれている雲からの雨を冷たい雨(または氷晶雨)、水滴だけの雲でできている雨を温かい雨という。
気圧差によって働く力のことを気圧傾度力という。地球の自転により運動の方向を曲げているように見える力のことを転向力(コリオリの力)という。気圧傾度力とコリオリ力がつり合った状態で吹く風を地衡風という。気圧傾度力と転向力と遠心力がつり合って吹く風は傾度風である。