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地政学/基礎論/生存適地

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

生存適地とは活動しやすく、植物の生息に適した温暖な気候、工事や交通しやすい平坦な地形であり、水源と衣食住の材料入手が便利である地域である。そのため生存適地は農業適地でもあり、その地域においては人口密度が一般的に高くなる。地球上の生存適地には東アジア、インド半島、ヨーロッパ、北アメリカ大陸東海岸がある。これらは気候と強い関係がある。ケッペンは気候を熱帯雨林機構、サバナ気候、地中海性気候、温暖冬季少雨気候、西岸海洋性気候、温暖湿潤気候、亜寒帯冬季少雨気候、亜寒帯湿潤気候、砂漠気候、ステップ気候、ツンドラ気候、氷雪気候に分類した。この分類で地球を観察している通り、東アジア、インド半島、ヨーロッパ、北アメリカ大陸東海岸はいずれも農耕に適した地中海性気候、温暖冬季少雨気候、温暖湿潤気候、西岸海洋性気候である。

東アジア地域においては黄河流域に文明が発達し、また現在でもこの地域を領有する中華人民共和国が最大級の人口大国であることからも分かる。 インド半島地域においてはインダス川流域に文明が発達し、人口密度も極めて高い。しかしインダス半島はヒマラヤ山脈、パトカイ山脈、スライマン山脈に包囲されて独自の文明を発展させてきた。 ヨーロッパ地域においては古代よりメソポタミア文明との文化交流や民族移動が行われ、現在のヨーロッパ文明の形成が進んだ。ヨーロッパ地域は元来生存適地ではなかったが、地域の農業技術が発展したために人口も増大して文明的発展を遂げることが出来た。ヨーロッパ文明と深い関係にあったエジプト文明、メソポタミア文明、古代ギリシア文明は砂漠や山地のために経済圏が拡大できずに発展が遅れた。しかしながらこの地域も過去の人口稠密地域であったために一種の生存適地と言えるかもしれない。北アメリカ大陸東海岸はその他の生存適地とは異なっており、ユーラシア大陸から大西洋により離隔しているために独自的な発展を遂げた。このアメリカ大陸ではマヤ文明、インカ帝国が存在していたが、1492年のコロンブスによる地理上の発見でヨーロッパ列強の侵略を受けることになった。現在でもこの北アメリカ大陸東海岸は世界中に輸出している小麦やジャガイモの産出地である。

生存適地は地上においても非常に限定された面積であり、さらに生存適地においては面積の大小に限らず人口の高密度化の傾向があり、従って僅かな生存適地を巡って内敵や外敵との武力紛争が重点的に発生しうる。ただしこの生存適地は科学技術の発展や自然環境の変動によって移り変わることもありうる。