地政学/理論/ランドパワー理論
ランドパワー理論の提唱者ハルフォード・マッキンダー(Hartford Mackinder)は19世紀末期のイギリス地理学者である。1861年にリンカンシャーで医者の息子として生まれる。オクスフォード大学で地質学、法学、歴史を修めた。マッキンダーは自然への関心が高く「新しい地理学」を提唱し、オックスフォード大学の地理学院の創設にあたっては初代院長となり、さらにロンドン大学の地理学院の院長にもなり、経済地理学の授業を担当した。また政治家でもあり、下院に議席を持っていた。1947年に自宅にて死去する。
ランドパワー理論はマハンのシーパワー理論に対比することが出来る。マッキンダーは人間は陸生動物であり、従って陸地を支配することの重要性を主張している。まず世界最大の大陸であるユーラシア大陸及びアフリカ大陸を一つの地政学的に重要な大陸として世界島と名づけた。そして世界島の本島であるユーラシア大陸の中心部すなわち北極海沿岸からヒマラヤ山脈、シベリア、モンゴル高原、イラン高原の一部、ボルガ河を含む領域をハートランドと呼び、シーパワーが到達しない海から隔絶された陸の聖域として考えられ、このハートランドはランドパワーの根拠地であると論じた。
またハートランドの外側にはハートランドを囲むように三日月地帯(crescent)が二重に存在しているとしており、ハートランドに対してブリテン島を除く欧州、サハラ以北の北アフリカ、西アジア、南アジア、マレー半島までの東南アジア、シナ大陸、ユーラシア東北部を含む内側の三日月地帯(inner or marginal crescent)と、それ以外の南北アメリカ大陸、サハラ以南の南アフリカ、オセアニア、ブリテン島、日本列島を外側ないし島嶼の三日月地帯(outer or insular crescent)として大別した。ただしハートランドについては、その領域からエニセイ川東一帯を指すレナランドを除外し、また北極圏や北米大陸のロッキー山脈以東を含めるなど変更がなされている。
マッキンダーは著書『デモクラシーの理想と現実』の中で「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制す。」と論じた。この理論はスパイクマンのリムランド理論に大きな影響を与えることとなる。