宇宙望遠鏡
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宇宙望遠鏡は、地球の大気圏外で天体観測を行う望遠鏡である。地上望遠鏡と比べて、大気による光の歪みや吸収の影響を受けないという大きな利点を持つ。
概要
[編集]宇宙望遠鏡は、その観測波長によって以下のように分類される:
- X線望遠鏡
- 紫外線望遠鏡
- 可視光線望遠鏡
- 赤外線望遠鏡
- 電波望遠鏡
宇宙望遠鏡の利点
[編集]- 大気による光の歪みがない
- 天候に左右されない
- 大気に吸収される波長の観測が可能
- 24時間観測が可能
宇宙望遠鏡の課題
[編集]- 打ち上げコストが高額
- メンテナンスが困難
- 放射線による機器の劣化
- スペースデブリとの衝突リスク
歴史
[編集]初期の構想と開発
[編集]宇宙望遠鏡の構想は1923年にヘルマン・オーベルトによって初めて提唱された。その後、1946年にリーマン・スピッツァーが具体的な提案を行い、実現に向けた取り組みが始まった。
年表
[編集]名称 | 国旗 | 打ち上げ日 | 概要 | |
---|---|---|---|---|
OAO-2 | 🇺🇸 | 1968年12月7日 | 11の紫外線望遠鏡を搭載、初の宇宙望遠鏡 | |
IUE(国際紫外線探査衛星) | 🇺🇸🇪🇺🇬🇧 | 1978年1月26日 | 紫外線の電磁スペクトルの観測を目的とした宇宙望遠鏡 | |
IRAS | 🇺🇸🇳🇱🇬🇧 | 1983年1月25日 | アメリカ、オランダ、イギリス共同の赤外線天文衛星。10ヶ月間観測を行い、赤外線天文学の発展に寄与。 | |
ハッブル宇宙望遠鏡 | 🇺🇸 | 1990年4月 | NASAの光学式宇宙望遠鏡。修理ミッションを経て30年以上稼働中。多くの画期的な天文発見に貢献。 | |
スピッツァー宇宙望遠鏡 | 🇺🇸 | 2003年8月 | 赤外線天文衛星。IRASの後継機で、銀河系内の観測に成功。2020年に運用終了。 | |
チャンドラX線観測衛星 | 🇺🇸 | 1999年7月23日 | X線天文衛星。中性子星やブラックホールの精密なX線観測に成功。 | |
XMM-Newton | 🇪🇺 | 1999年12月10日 | 欧州宇宙機関のX線観測衛星。X線バースト現象の観測で多くの成果を上げた。 | |
すざく (ASTRO-EII) | 🇯🇵 | 2005年7月 | 日本のX線天文衛星。硬X線から軟ガンマ線を観測。2015年に機能停止。 | |
あかり (ASTRO-F) | 🇯🇵 | 2006年2月 | 日本の赤外線天文衛星。IRASよりも高精度な赤外線分布の観測を達成。2011年に運用終了。 | |
ひので (SOLAR-B) | 🇯🇵 | 2006年9月 | 太陽観測衛星。太陽フレアやコロナの観測で多くの成果を上げている。 | |
ひさき (SPRINT-A) | 🇯🇵 | 2013年 | 日本の惑星観測衛星。太陽系内の惑星の気象現象を継続的に観測中。 | |
COROT | 🇫🇷🇪🇺 | 2006年12月27日 | 太陽系外惑星の観測を目的としたフランスと欧州宇宙機関の共同衛星。2014年に運用終了。 | |
ケプラー宇宙望遠鏡 | 🇺🇸 | 2009年3月7日 | 太陽系外惑星探査に特化。2600以上の惑星を発見、2018年に運用終了。 | |
ハーシェル宇宙望遠鏡 | 🇪🇺 | 2009年5月14日 | ヨーロッパの赤外線観測衛星。2013年に運用終了。 | |
TESS | 🇺🇸 | 2018年4月18日 | 太陽系外惑星探査を目的とするNASAの望遠鏡。広角の望遠鏡を搭載。 | |
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 | 🇺🇸 | 2021年12月25日 | ハッブルの後継となる赤外線宇宙望遠鏡。より遠くの天体を観測可能。 |
主要な宇宙望遠鏡
[編集]ハッブル宇宙望遠鏡
[編集]1990年に打ち上げられた可視光・紫外線望遠鏡。
主な仕様
[編集]- 口径:2.4m
- 軌道:地球低軌道(高度約540km)
- 観測波長:紫外線~可視光~近赤外線
主な成果
[編集]- ハッブル深宇宙観測
- 宇宙の加速膨張の発見に貢献
- 系外惑星の直接観測
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
[編集]2021年に打ち上げられた赤外線望遠鏡。
主な仕様
[編集]- 口径:6.5m
- 軌道:ラグランジュ点L2
- 観測波長:赤外線
期待される成果
[編集]- 最初の銀河の観測
- 系外惑星の大気組成分析
- 暗黒物質・暗黒エネルギーの研究
観測技術
[編集]光学系の種類
[編集]- カセグレン式
- リッチー・クレチアン式
- オフアクシス式
検出器
[編集]- CCD(電荷結合素子)
- CMOS(相補性金属酸化膜半導体)
- 赤外線検出器
データ伝送
[編集]宇宙望遠鏡で得られたデータは、以下の手順で地上に送られる:
- 観測データの一時保存
- 地上局との通信機会の待機
- 高速データ伝送
- 地上でのデータ処理
将来計画
[編集]開発中の主な宇宙望遠鏡
[編集]- w:ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(2027年打ち上げ予定)
- w:PLATO (宇宙望遠鏡)(2026年打ち上げ予定)
構想段階の計画
[編集]- w:宇宙重力波望遠鏡
- 100m級大型宇宙望遠鏡
練習問題
[編集]- 宇宙望遠鏡の利点を3つ挙げ、それぞれについて説明しなさい。
- ハッブル宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の違いを、観測波長と主な観測対象の観点から説明しなさい。
- 宇宙望遠鏡が直面する技術的課題について考察しなさい。