定義1.1 集合 と の部分集合族 の組 が位相空間であるとは, 次の2条件が満たされることをいう:
を台集合, を位相構造あるいは単に位相という.
注意1.2 誤解の恐れのないときには, 位相空間を台集合と同じ という記号で表すことが多い. しかし, 台集合 を定めたからといって位相空間が一意に決まるわけではない.
定義1.3 位相空間 が位相多様体であるとは, 次の3条件が満たされることをいう:
- は Hausdorff 空間である.
- は第二可算空間である.
- 任意の に対して, の開近傍 , 自然数 , の開集合 , 同相写像 が存在する.
組 を の座標近傍という.
事実1.4 ならば の空でない開集合と の空でない開集合は同相でない.
注意1.5 これはホモロジー論の初歩的だが重要な結果である.
定義1.6 位相多様体 の各点 に対応する自然数 は一意に定まり, これを と表し, これが によらず一定であることを が純次元位相多様体であるという. 任意の点 に対して であれば特に を 次元位相多様体という.
注意1.7 この「純次元」という語は pure dimension や equidimension の訳語でありスキーム論でよく用いられる.
定義1.8 位相多様体 の開集合 上の関数からなる集合 を定める対応 が 上の 級微分構造であるとは, 次の3条件が満たされることをいう:
- を満たす の開集合 , に対し, ならば .
- の開集合 , , 上の関数 , の開被覆 に対し, ならば .
- 任意の に対し, の座標近傍 で次を満たすものが存在する: 任意の の開集合 に対し, . これが成り立つことを「 と両立する」という.
組 を 級多様体という.
注意1.9 誤解の恐れのないときには, 級多様体(resp. 微分構造)のことを単に多様体(resp. 微分構造)といい, 多様体を位相多様体と同じ という記号で表すことが多い. しかし, 位相空間 を定めたからといって多様体が一意に決まるわけではないことに注意せよ.