植物学/植物の働き

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

この章では、植物が生きていくために行っているさまざまな働きについて学びます。 植物は、光合成や呼吸、栄養素の吸収や移動、水分の吸収や輸送、発生と生活環、成長や増殖など、多様な働きを行っています。 これらの働きには、植物の生存に欠かせない重要な役割があります。本章では、その中でも特に光合成と呼吸について詳しく学び、植物の生命活動の基本となるメカニズムを解説します。

光合成[編集]

光合成は、植物が太陽光を利用して、二酸化炭素と水を反応させて有機物(糖質)を作り出す過程です。この反応には、光合成色素である葉緑素が必要で、光合成は葉緑体内で行われます。光合成は、地球上の生命活動にとって非常に重要であり、酸素を放出することによって、地球の大気中の酸素濃度を上げ、生態系を維持する役割も果たしています。

呼吸[編集]

呼吸は、生物が有機物を分解して、エネルギーを取り出す過程です。植物の呼吸は、糖質や脂肪などの有機物を分解して、酸素を消費して二酸化炭素と水を作り出します。呼吸は、光合成の逆の過程であり、光合成で作られた糖質をエネルギー源として利用するために必要です。呼吸は、生物の生命活動にとって欠かせない過程であり、エネルギーを作り出すことによって、生物が成長し、運動し、代謝を行うことができます。

栄養素の吸収や移動[編集]

植物は、根から土壌中の水や栄養素を吸収し、茎や葉を通じて移動させます。栄養素は、窒素、リン、カリウム、マグネシウムなど植物の成長に必要なものがあります。植物は、栄養素の不足を感じると、根の周りの微生物に信号を送り、微生物は土壌中の栄養素を分解して、植物が吸収しやすい形に変えます。このように、植物は栄養素を吸収し、土壌中に豊富な栄養素がある限り、成長を続けることができます。

水分の吸収や輸送[編集]

植物は、根から土壌中の水を吸収し、茎や葉を通じて蒸散することで、水分を輸送します。水分の輸送は、樹液の流れを通じて行われます。樹液は、茎の中の導管を通って輸送され、葉の表面にある気孔から蒸散します。この作用によって、植物は水分を取り込み、栄養素を吸収することができます。

発生と生活環[編集]

植物の発生と生活環は、以下のようになります。

  • 接合子の形成:植物は、花粉という精子を含んだ細胞を、花の雄しべから花粉管と呼ばれる管状の構造を介して、雌しべの柱頭に伸ばします。花粉管は、柱頭内に伸びる過程で、一つの細胞が先端に到達すると、接合子と呼ばれる精子と卵細胞とを形成します。
  • 受粉:接合子は、卵細胞と融合し、胚珠に受粉が起こります。
  • 胚珠の発育:受粉によって、胚珠内には胚珠核という細胞が形成されます。胚珠核は、栄養細胞と胚乳細胞に分化し、胚乳細胞が発育して種子を形成します。
  • 種子の発芽:種子は、外部から水分や栄養分を吸収して、発芽します。芽が出て、新しい植物が生まれます。
  • 成長:成長には、光合成や呼吸といった生理現象が関わります。葉や茎、根が形成され、新しい花や果実をつけることで、生殖の循環が繰り返されます。

植物の生活環は、一次生殖体である胚珠が、二次生殖体である種子を形成し、種子からは新たな一次生殖体である植物が生まれる、というサイクルで構成されています。このサイクルは、受粉による有性生殖によって成立するものです。また、無性生殖によって、株分けや挿し木などの方法で、同一の個体から新たな植物を作り出すこともできます。

シダ植物[編集]

シダ植物の生活環には、複数の段階があります。この生活環は、世代交代の一形態で、複相世代と単相世代が交互に現れます。

複相世代(2n)は、シダ植物の成熟した胞子体、またはスポロフィットであり、胞子体は減数分裂(meiosis)を行い、四つの単細胞胞子を形成します。これらの胞子は、風や水によって散布され、新しいシダ植物の単相世代(n)である前葉体またはガメトフィットを形成します。

前葉体は、シダ植物の単相世代であり、単細胞の胞子が落下して発芽し、多細胞の前葉体を形成します。前葉体は、有性生殖によって雄性配偶体と雌性配偶体を形成し、それぞれが花粉体または卵細胞を形成します。

雄性配偶体は、減数分裂によって多数の精子を形成し、花粉粒として放出されます。一方、雌性配偶体は、卵細胞を形成します。花粉粒は、風や水によって前葉体に運ばれ、卵細胞と結合して受精します。受精によって形成された受精卵は、新しい複相世代の胞子体であるシダ植物を発生させます。

以上のように、シダ植物の生活環では、複相世代と単相世代が交互に現れ、それぞれが減数分裂または有糸分裂を行って、新しい世代を生み出します。

成長や増殖[編集]

植物の成長や増殖には、様々な要因が関わっています。栄養素の吸収や移動、水分の吸収や輸送、光合成、呼吸などの基本的な働きが、植物の成長や増殖に必要なエネルギーや材料を提供します。 植物の成長は、細胞分裂や細胞拡大、分化などの過程が重要な役割を担っています。細胞分裂によって、植物の根や茎、葉などの器官が成長し、細胞拡大によって細胞が大きくなります。分化によって、植物の異なる組織が形成されます。これらの過程は、植物の成長や増殖に不可欠です。 また、植物の成長や増殖には、外部からの刺激や環境条件も影響します。例えば、根が土壌中の栄養素を十分に吸収できない場合や、乾燥した環境下で水分不足に陥ると、植物の成長や増殖は抑制されます。さらに、温度、日照時間、土壌の酸性度などの環境要因も、植物の成長や増殖に影響を与えます。