正則アラビア語/文字と発音

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アラビア文字は右から左に書かれ、左右の文字と繋げるために形が変わります。

シャクル[編集]

日本語でいうフリガナのようなもので、母音や読み方を表します。

子供や外国人向けの書籍などで使われるものなので、一般の書籍などでは書かれないことが多いです。

また、アラビア語には母音が3種類しかありません。

ハラカ[編集]

ハラカは、短母音を表す記号とスクーンのことです。

ـَ ファトハ[編集]

短母音aを表します。

例:أَب'ab/父)

ـِ カスラ[編集]

短母音iを表します。

例:مِــنْmin/から)

ـُ ダンマ[編集]

短母音uを表します。

例:خُــبْزkhubz/パン)

ـْ スクーン[編集]

無母音、つまり子音のみの発音になります。

例:أُخْــت('ukht/姉妹)

タンウィーン[編集]

短母音とn音を追加します。

語末にのみ使用されます。

ـً ファトハターン[編集]

この記号がついた子音の後ろにanを追加します。

この記号が付いた文字の後ろにはアリフ(ا)が添えられます[1]

例:كِتَابًا(kitāban/本〈非限定・対格〉)

ـٍ カスラターン[編集]

この記号がついた子音の後ろにinを追加します。

例:كِتَابٍ(kitābin/本〈非限定・属格〉)

ـٌ ダンマターン[編集]

この記号がついた子音の後ろにunを追加します。

例:كِتَابٌ(kitābun/本〈非限定・主格〉)

その他の記号[編集]

ـّ シャッダ[編集]

この記号がついた子音は重子音になります。

例:جَــدّ(jadd/祖父)

シャッダとカスラが重なるとカスラは文字の下ではなくシャッダの下に書かれます。

例:مُدَرِّس(mudarris/先生)

ـٰ 短剣アリフ[編集]

長母音āを表す。

例:هٰــذَاdhā/これは)

長母音・二重母音[編集]

特定の母音のあとに特定の文字が来ると、長母音や二重母音を表します。

長母音[編集]

ـَا ā[編集]

母音がaの子音の後ろにアリフ(ا)を置くと長母音āを表します。

例:كِــتَاب(kib/本)

ـِي ī[編集]

母音がiの子音の後ろにヤー(ي)を置くと長母音īを表します。

例:سَــرِيــر(sar/ベッド)

ـُو ū[編集]

母音がuの子音の後ろにワーウ(و)を置くと長母音ūを表します。

例:سُورr/柵)

二重母音[編集]

ـَي ay[編集]

母音がaの子音の後ろにヤー(ي)を置くと二重母音ayを表します。

例:بَيــتbayt/家)

ـَو aw[編集]

母音がaの子音の後ろにワーウ(و)を置くと二重母音awを表します。

例:زَوجzawj/夫)

アラビア文字[編集]

日本語にもある・近い発音[編集]

أ アリフ・ハムザ[編集]

ア行が語頭に来たときの子音、つまり、喉が閉じる音です。

ローマ字転写は[']とします。

例:أَنْتَ'anta/あなた〈男〉)

母音がiになるとハムザ(ء)が下に移動します。

例:إِنْسَان'insān/人間)

ب バー[編集]

バ行の子音です。

ローマ字転写は[b]とします。

例:بَــابbāb/扉)

ت ター[編集]

タ行の子音です。

ローマ字転写は[t]とします。

ただし、[ti]、[tu]は「ティ」、「トゥ」と発音します。

例:تَــكْــتُــبُtaktub/彼女は書く)

この場合は「タクトゥブ」と発音します。

ج ジーム[編集]

ジャ行の子音とほぼ同じです。

ローマ字転写は[j]とします

ただし、破裂音なので「ジャ行」ではなく「ヂャ行」を意識して発音しましょう。

例:جَــدِيدjadīd/新しい)

د ダール[編集]

ダ行の子音です。

ローマ字転写は[d]とします。

ただし、[di]、[du]は「ディ」、「ドゥ」と発音します。

例:دَرَسَdarasa/彼は学習した)

ر ラー[編集]

ラ行の子音です。

ローマ字転写は[r]とします。

ただし、この子音は「はじき音」と呼ばれる音で、母音に挟まれたラ行の子音になります。

例:رَجُلrajul/男性)

また、重子音化すると巻き舌のラ行の音に変化します。

例:مُدَرِّس(mudarris/先生)

ز ザーイ[編集]

ザ行の子音です。

ローマ字転写は[z]とします。

ただし、[zi]は「ズィ」と発音します。

例:زَرَافَةzarāfah/キリン)

س スィーン[編集]

サ行の子音です。

ローマ字転写は[s]とします。

ただし、[si]は「スィ」と発音します。

例:سِــتَّةsittah/六)

ش シーン[編集]

シャ行の子音とほぼ同じです。

ローマ字転写は[sh]とします。

例:شَــمْسshams/太陽)

ك カーフ[編集]

カ行の子音です。

ローマ字転写は[k]とします。

例:كَــلْبkalb/犬)

م ミーム[編集]

マ行の子音です。

ローマ字転写は[m]とします。

例:مَــدِينَةmadīnah/都市)

ن ヌーン[編集]

ナ行の子音です。

ローマ字転写は[n]とします。

例:نَــجْمnajm/星)

ه ハー[編集]

日本語のハ行とほぼ同じです。

ローマ字転写は[h]とします。

ただし、[hi]、[hu]は日本語の「ヒ」、「フ」とは違い、舌を持ち上げたり、唇を狭めたりはしません。(ヘ、ホを意識して発音してみましょう。)

例:هِــيَhiya/彼女は)

و ワーウ[編集]

日本語のワ行の子音です。

ローマ字転写は[w]とします。([u]の長母音を表すときは[ū]と表記します。)

ただし、唇を丸めて発音することを意識しましょう。[2]

例:وَلَد(walad/子供)

ي ヤー[編集]

日本語のヤ行の子音です。

ローマ字転写は[y]とします。([i]の長母音を表すときは[ī]と表記します。)

例:يَــأْتِيya'tī/彼は来る)

日本語にはない発音[編集]

ث サー[編集]

舌先を前歯で挟むサ行の子音(英語bathのthの音)です。

ローマ字転写は[th]とします。

例:شَــلَاشَةthalāthah/三)

ح ハー[編集]

舌を奥に引いて出すハ行の子音です。

母音を発音するときに舌の位置は元に戻ります。

「寒いとき手に息を吐く音」と表現されることがあります。

ローマ字転写は[H]とします。

例:حَــاسُوبHāsūb/コンピュータ)

خ ハー[編集]

舌の奥で空気の通り道を狭くして発音するハ行の子音です。

母音を発音するときに舌の位置が戻ります。

「痰を吐く音」と表現されることがあります。

ローマ字転写は[kh]とします。

例:خُــفَّاشkhuffāsh/コウモリ)

ذ ザール[編集]

舌先を前歯で挟むザ行(サー〈ث〉とは違う音です。)の子音(英語thisのthの音)です。

ローマ字転写は[dh]とします。

例:ذَهَبَdhahaba/彼は行った)

ص サード[編集]

この文字とダード(ض)、ター(ط)、ザー(ظ)は「強勢音」と呼ばれており、舌の根元を盛り上げ、喉に力を入れて発音します。

صはスィーン(س)を強勢音化した子音で、「ソァ」行のような音になります。

ローマ字転写は[S]とします。

例:صَــدِيقSadīq/友人)

ض ダード[編集]

ダール(د)を強勢音化した子音で、「ドァ」行のような音になります。

ローマ字転写は[D]とします。

例:ضِــفْدِعDifdi3/カエル)

ط ター[編集]

ター(ت)を強勢音化した子音で、「トァ」行のような音になります。

ローマ字転写は[T]とします。

例:طَــالِبTālib/学生)

ظ ザー[編集]

ザール(ذ)を強勢音化した子音で、「ゾァ」行のような音になります。

ローマ字転写は[DH]とします。

例:ظَــبِيDHabī/カモシカ)

ع アイン[編集]

舌を奥に引いて発音するア行(ハー〈ح〉とは違う音です。)の子音で、「エァ」行のような音になります。

母音を発音するときに舌の位置が戻ります。

ローマ字転写は[3]とします。

例:عَــشَرَة3asharah/十)

غ ガイン[編集]

舌の奥で空気の通り道を狭くして発音するガ行(ハー〈خ〉とは違う音です。)の子音です。

母音を発音するときに舌の位置が戻ります。

「うがいの音」と表現されることがあります。

ローマ字転写は[gh]とします。

例:غَــيمghaym/雲)

ف ファー[編集]

上唇に歯を当てるファ行の子音(英語favoriteのfの音)です。

ローマ字転写は[f]とします。

例:فِــيfī/で、の中に)

ق カーフ[編集]

舌の奥を使って発音するカ行の音で、「コァ」行のような音になります。

母音を発音するときに舌の位置が戻ります。

ローマ字転写は[q]とします。

例:قِــطّqiTT/猫)

ل ラーム[編集]

英語のLの音(ンの後のラ行の子音)です。

ローマ字転写は[l]とします。

例:لَــوْنlawn/色)

特殊な文字[編集]

アリフ(ا)、アリフ・マクスーラ(ى[編集]

正則アラビア語/اを参照

ハムザ(ء[編集]

声門破裂音(語頭にア行が来たときに喉が閉じる子音)を表す文字です。

他の文字を台にすることがあります。(أئؤ

ローマ字表記は[']とします。

ター・マルブータ(ة[編集]

語尾にしか置かれず、名詞や形容詞の女性形に置かれることが多いです。

直前の文字の母音をaに変えて、ター・マルブータ自体は「h」または「t」(イダーファ構文[3]の場合)と発音します。

例h:اِبْنَــة('ibnah/娘)

例t:اِبْنَــةُ الْخَال('ibnatu lkhāl/〈母方の〉叔父の娘=いとこ)

合字・その他[編集]

آ マッダ付きアリフ[編集]

أَ」が長母音化(أَا)するとこの形になります。

発音は「'ā」です。

例:آسِفٌsifun/すみません)

لا ラーム・アリフ[編集]

ラーム(ل)の後ろにアリフ(ا)が置かれたとき、形が変わります。

例:لَا/いいえ)

また、ラーム(ل)の後ろにハムザがついたアリフ(أ)が置かれた場合も合字(لأ)になります(発音は「l'a」)

脚注[編集]

  1. ^ 語尾が特定の文字のときはアリフが添えられません。
  2. ^ ja.wikipedia.org/wiki/有声両唇軟口蓋接近音
  3. ^ 文法編で説明する予定です。