「線型代数学/ベクトル」の版間の差分
編集の要約なし |
法線ベクトル例追加図以外 |
||
18 行 | 18 行 | ||
== ノルム == |
== ノルム == |
||
ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、 |
ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、 |
||
⚫ | |||
:< |
|||
⚫ | |||
と定義される。これをaの''ノルム''と言う。 |
と定義される。これをaの''ノルム''と言う。 |
||
431 行 | 430 行 | ||
\end{pmatrix}</math> |
\end{pmatrix}</math> |
||
'''演習 |
'''演習''' |
||
1.2x-y+3z=1を助変数表字にせよ |
1.2x-y+3z=1を助変数表字にせよ |
||
515 行 | 514 行 | ||
なので、'''a'''と直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このとき'''a'''を直線(5.1)の''法線ベクトル''と言う。 |
なので、'''a'''と直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このとき'''a'''を直線(5.1)の''法線ベクトル''と言う。 |
||
⚫ | |||
Oでない点A,Xがある。いま、半直線OAに向かって線分OXから垂線を引く。交点をX'とする。A,X,X'の位置ベクトルをそれぞれ、'''a''','''x''','''x''''とするとき、'''x''''を'''x'''の'''a'''への''正射影''と言う。 |
|||
⚫ | |||
点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。 |
|||
l:'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub> (5.3) |
|||
'''x'''<sub>0</sub>:Pの位置ベクトル,'''x''''<sub>0</sub>:P'の位置ベクトル |
|||
と定義して、||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよう。 |
|||
(5.3)について、'''x'''='''x''''<sub>0</sub>を代入し、変形すると、 |
|||
<math>\mathbf{x'}_0=\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)\over |
|||
(\mathbf{a},\mathbf{a})}+\mathbf{x}_1</math> (5.4) |
|||
ここは躓きやすいところなので解説を加える。aと'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>の交角をθとする。 |
|||
<math> |
|||
{(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})} |
|||
={{||\mathbf{a}||||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||\cos \theta}\over {||\mathbf{a}||^2}} |
|||
</math> |
|||
<math>={{||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||\cos \theta}\over {||\mathbf{a}||}}</math> (5.5) |
|||
(5.5)右辺の分母は、'''a'''の長さ、分子は、'''x'''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>の'''a'''への正射影('''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>)の長さである。すると、(5.4)右辺第一項は'''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>となる。'''x'''<sub>0</sub>は'''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>と,'''x'''<sub>1</sub>との和であることは自明の理である。 |
|||
ゆえに求める最短距離||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||は、 |
|||
:<math>||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}'_0||={{\sqrt{||\mathbf{a}||^2 |
|||
||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||^2-(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)^2}}\over {||\mathbf{a}||}}</math> |
|||
と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。 |
|||
'''演習''' |
|||
1.例5.1で||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を実際に計算せよ。 |
|||
2.例5.1でl:('''b''','''x''')=cとして||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。 |
|||
3. |
|||
:空間内の平面の場合についても同様に考えられる。 |
|||
:F:ax+by+cz=d |
|||
:を平行移動し、原点を通る平面 |
|||
:F<sub>0</sub>:ax+by+cz=0 |
|||
:<math>\mathbf{a}= |
|||
\begin{pmatrix} |
|||
a\\ |
|||
b\\ |
|||
c\\ |
|||
\end{pmatrix}</math> <math>\mathbf{x}= |
|||
\begin{pmatrix} |
|||
x\\ |
|||
y\\ |
|||
z\\ |
|||
\end{pmatrix}</math>とすれば、 |
|||
:F:('''a''','''x''')=d |
|||
:F<sub>0</sub>:('''a''','''x''')=0 |
|||
:であるから、'''a'''はF<sub>0</sub>故にFと垂直である。この時'''a'''をF<sub>0<sub>の法線ベクトルと言う。 |
|||
:さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。 |
|||
:'''x'''<sub>0</sub>:Pの位置ベクトル,'''x''''<sub>0</sub>:P'の位置ベクトル |
|||
:とするとき、||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。 |
|||
4. |
|||
:平面Fの法線ベクトル'''a'''と平面F'の法線ベクトル'''a''''の交角を平面Fと平面F'の交角と言う |
|||
:F:x+2y+2z=3 |
|||
:F':3x+3y=1 |
|||
:の交角を求めよ。 |
|||
==線型変換== |
2009年1月19日 (月) 16:27時点における版
複素数の概念は既知のものとした。ただし、複素数のことを知らない読者は、複素数に関する記述を読み飛ばしたとしても差し支えない。
ベクトル
n次元ベクトル(vector)とは(n ∈ N)、n個の複素数の組
の事である。n次元ベクトルを総じてベクトルという。 は、ベクトルaの要素または成分(element)と呼ばれていて、成分がすべて実数のベクトルを特に実ベクトルと言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に複素ベクトルと言う。また、成分が全て0のベクトルを零ベクトルといい、oと書く。
二次元、三次元実ベクトルは、二次元空間、三次元空間内の、大きさと方向を持った量を表すものと見ることもできる。これは空間の図の中に矢印を書いて表すこともあり、このベクトルを特に空間ベクトルと言う。原点を起点とする空間ベクトルの行き先の点は、このベクトルによって一意に表すことができる。これをこの点の位置ベクトルという。
ノルム
ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、
と定義される。これをaのノルムと言う。
例
演習
- 次のベクトルのノルムを求めよ
ベクトルの演算
一般に2つのベクトルの間には、和、差、内積が定義される。 それぞれは、成分の個数が同じ時だけ次のように定義される。
以下では、
とする。
相等関係
a=b ⇔a_i=b_i(∀i∈{1,2,...,n})
和・差
をaとbの和という。
をaとbの差という。平面、空間ベクトルの場合は図のようになる。 和差に関して、次の性質が成り立つ。
- a+b=b+a
- (a+b)+c=a+(b+c)
- a+o=a
証明は、簡単なので読者に任せたい。
定数倍
を、ベクトルaのk倍と言う。
次の諸性質の証明は、読者の演習問題としよう。
- c(a+b)=ca+cb
- (c+d)a=ca+da
- (cd)a=c(da)
演習
空間ベクトルに関して、次のことを示せ。
1.二点PQの位置ベクトルを、a,bとすると、PQの中点の位置ベクトルは
2.三角形の頂点の位置ベクトルをそれぞれa,b,cとすると、その三角形の重心の位置ベクトルは、
内積
ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。
をaとbの内積という。
特に2,3次元空間ベクトルaとbとの内積は、aとbのなす角をθとすると、
と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。
内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。
- aとbが直交する⇔(a,b)=0
- c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
- (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
- (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
- (a,b)=(b,a)
- ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
- |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)
演習
空間ベクトル
とのなす角がであり、かつ
とのなす角がであるようなノルムが1のベクトルを求めよ。
注)そのようなベクトルはただひとつではない。
助変数表示
平面上の直線
以後、特に空間ベクトルについて議論する。
一般の直線を、平面ベクトルの式で表すとこうなる。
- x=at+x0 (4.1)
構文解析失敗 (SVG(ブラウザのプラグインで MathML を有効にすることができます): サーバー「http://localhost:6011/ja.wikibooks.org/v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \mathbf{x}= \begin{pmatrix} x\\ y\\ \end{pmatrix}}
とすると、
これをよく見てみると、うえで定義したベクトルの演算から、 という構造が見えてくる。これは、単に直線の媒介変数表示である。式①を助変数表示または、ベクトル表示と言う。勿論助変数表示の仕方は、一つではない。しかし、一般にaはノルム1のものを選ぶと便利な事が多い。三次元においても同様である。
例題
- 3x+2y=5
を助変数表示にせよ。
- x=tとすると、
- よって、
演習
ベクトル表示は座標表示に、座標表示はベクトル表示にせよ
1.6x-3y=9.5
2.x=a
3.
4.
空間内の直線
グラフを描いてみれば分かるとおり、空間内の曲線は一本の式では表すことができない。 一本の式で表せるのは、曲面だけであるである。曲線は、二曲面の交線として、表される。 直線は特に、二平面の交線である。平面の式は、平面内の直線と同じく、一次方程式で表される。 つまり、空間内の一般の直線は、次のように表される。
方法論的にはxにtを代入し、y,zの値を求める。
(但し,A1,A2,x1,x2は定数)
と書けることは自明である。この式は、下の形にできる
と書ける。これこそが、空間内の直線の助変数表字である。驚くべきことに式が増えたのにも関わらず平面内と同じく、 助変数表字では、式は一本である。
例題
を助変数表字にせよ。
- x=tとすると、
- 2y+3z=-t+4
- 6y+7z=-5t+8
これを解いて、
よって、
演習
1.
を助変数表示にせよ
空間内の平面
前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。
方法論的には今度は変数がtだけでは足りないので、もう一つsを代入する。x=t,y=sである。すると、
とやって、下の形へ持っていくことになる。
そして、一般に
を
平面の助変数表示と言う。
例題
- 2a+b+3c=5を助変数表字にせよ。
- a=t,b=sとすると、
- 3c=5-2t-s⇔
- よって、
演習
1.2x-y+3z=1を助変数表字にせよ
2.
を、直交座標表示で表せ。
まとめ
右の図は、読者の理解を助けるであろう。
1.平面上の直線のベクトル表示
2.空間内の直線のベクトル表示
3.空間内の平面のベクトル表示
演習
1.
- 二点P,Qの位置ベクトルをp,qとすると、線分PQ上の点の位置ベクトルは
- t1p+t2q, t1+t2=1, t1,t2≧0
- の形で表される。これを証明せよ
2.
- 三点の位置ベクトルをx1,x2,x3とすると、
- この三点が構成する三角形内の任意の点は、
- t1x1+t2x2+t3x3, t1+t2+t3=1, t1,t2,t3≧0
と表される。これを証明せよ
法線ベクトル
さて、平面上の平行二直線ax+by=c,ax+by=0は、
とすれば、
(5.1)
(5.1)'
なので、aと直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このときaを直線(5.1)の法線ベクトルと言う。
Oでない点A,Xがある。いま、半直線OAに向かって線分OXから垂線を引く。交点をX'とする。A,X,X'の位置ベクトルをそれぞれ、a,x,x'とするとき、x'をxのaへの正射影と言う。
例5.1
点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。
l:x=at+x1 (5.3)
x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル
と定義して、||x0-x'0||を求めよう。
(5.3)について、x=x'0を代入し、変形すると、
(5.4)
ここは躓きやすいところなので解説を加える。aとx0-x'0の交角をθとする。
(5.5)
(5.5)右辺の分母は、aの長さ、分子は、x0-x1のaへの正射影(x'0-x1)の長さである。すると、(5.4)右辺第一項はx'0-x1となる。x0はx'0-x1と,x1との和であることは自明の理である。
ゆえに求める最短距離||x0-x'0||は、
と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。
演習
1.例5.1で||x0-x'0||を実際に計算せよ。
2.例5.1でl:(b,x)=cとして||x0-x'0||を求めよ。
3.
- 空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
- F:ax+by+cz=d
- を平行移動し、原点を通る平面
- F0:ax+by+cz=0
- とすれば、
- F:(a,x)=d
- F0:(a,x)=0
- であるから、aはF0故にFと垂直である。この時aをF0の法線ベクトルと言う。
- さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。
- x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル
- とするとき、||x0-x'0||を求めよ。
4.
- 平面Fの法線ベクトルaと平面F'の法線ベクトルa'の交角を平面Fと平面F'の交角と言う
- F:x+2y+2z=3
- F':3x+3y=1
- の交角を求めよ。