「線型代数学/ベクトル」の版間の差分

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法線ベクトル例追加図以外
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== ノルム ==
== ノルム ==
ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、
ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、
:<math>||\mathbf{a}||=\sqrt {\sum^{n}_{i=1} |a_i|^2}</math>
:<
math>||\mathbf{a}||=\sqrt {\sum^{n}_{i=1} |a_i|^2}</math>
と定義される。これをaの''ノルム''と言う。
と定義される。これをaの''ノルム''と言う。


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\end{pmatrix}</math>
\end{pmatrix}</math>


'''演習問題'''
'''演習'''


1.2x-y+3z=1を助変数表字にせよ
1.2x-y+3z=1を助変数表字にせよ
515 行 514 行
なので、'''a'''と直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このとき'''a'''を直線(5.1)の''法線ベクトル''と言う。
なので、'''a'''と直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このとき'''a'''を直線(5.1)の''法線ベクトル''と言う。



'''例'''
 Oでない点A,Xがある。いま、半直線OAに向かって線分OXから垂線を引く。交点をX'とする。A,X,X'の位置ベクトルをそれぞれ、'''a''','''x''','''x''''とするとき、'''x''''を'''x'''の'''a'''への''正射影''と言う。

'''例5.1'''

点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。

l:'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>       (5.3)

'''x'''<sub>0</sub>:Pの位置ベクトル,'''x''''<sub>0</sub>:P'の位置ベクトル

と定義して、||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよう。

(5.3)について、'''x'''='''x''''<sub>0</sub>を代入し、変形すると、

<math>\mathbf{x'}_0=\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)\over
(\mathbf{a},\mathbf{a})}+\mathbf{x}_1</math>       (5.4)

ここは躓きやすいところなので解説を加える。aと'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>の交角をθとする。

<math>
{(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}
={{||\mathbf{a}||||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||\cos \theta}\over {||\mathbf{a}||^2}}
</math>

<math>={{||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||\cos \theta}\over {||\mathbf{a}||}}</math>        (5.5)

(5.5)右辺の分母は、'''a'''の長さ、分子は、'''x'''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>の'''a'''への正射影('''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>)の長さである。すると、(5.4)右辺第一項は'''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>となる。'''x'''<sub>0</sub>は'''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>と,'''x'''<sub>1</sub>との和であることは自明の理である。

ゆえに求める最短距離||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||は、

:<math>||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}'_0||={{\sqrt{||\mathbf{a}||^2
||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||^2-(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)^2}}\over {||\mathbf{a}||}}</math>

と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。


'''演習'''

1.例5.1で||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を実際に計算せよ。

2.例5.1でl:('''b''','''x''')=cとして||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。

3.
:空間内の平面の場合についても同様に考えられる。

:F:ax+by+cz=d

:を平行移動し、原点を通る平面

:F<sub>0</sub>:ax+by+cz=0

:<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
c\\
\end{pmatrix}</math> <math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z\\
\end{pmatrix}</math>とすれば、

:F:('''a''','''x''')=d

:F<sub>0</sub>:('''a''','''x''')=0

:であるから、'''a'''はF<sub>0</sub>故にFと垂直である。この時'''a'''をF<sub>0<sub>の法線ベクトルと言う。

:さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。

:'''x'''<sub>0</sub>:Pの位置ベクトル,'''x''''<sub>0</sub>:P'の位置ベクトル

:とするとき、||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。

4.

:平面Fの法線ベクトル'''a'''と平面F'の法線ベクトル'''a''''の交角を平面Fと平面F'の交角と言う

:F:x+2y+2z=3

:F':3x+3y=1

:の交角を求めよ。

==線型変換==

2009年1月19日 (月) 16:27時点における版

複素数の概念は既知のものとした。ただし、複素数のことを知らない読者は、複素数に関する記述を読み飛ばしたとしても差し支えない。

ベクトル

n次元ベクトル(vector)とは(n ∈ N)、n個の複素数の組

の事である。n次元ベクトルを総じてベクトルという。 は、ベクトルa要素または成分(element)と呼ばれていて、成分がすべて実数のベクトルを特に実ベクトルと言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に複素ベクトルと言う。また、成分が全て0のベクトルを零ベクトルといい、oと書く。


二次元、三次元実ベクトルは、二次元空間、三次元空間内の、大きさと方向を持った量を表すものと見ることもできる。これは空間の図の中に矢印を書いて表すこともあり、このベクトルを特に空間ベクトルと言う。原点を起点とする空間ベクトルの行き先の点は、このベクトルによって一意に表すことができる。これをこの点の位置ベクトルという。

ノルム

ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、

と定義される。これをaのノルムと言う。

演習

次のベクトルのノルムを求めよ

ベクトルの演算

一般に2つのベクトルの間には、和、差、内積が定義される。 それぞれは、成分の個数が同じ時だけ次のように定義される。

以下では、

とする。

相等関係

a=b ⇔a_i=b_i(∀i∈{1,2,...,n})

和・差

abの和という。

ベクトルの和

abの差という。平面、空間ベクトルの場合は図のようになる。 和差に関して、次の性質が成り立つ。

  • a+b=b+a
  • (a+b)+c=a+(b+c)
  • a+o=a

証明は、簡単なので読者に任せたい。

定数倍

ベクトルの定数倍

を、ベクトルaのk倍と言う。
次の諸性質の証明は、読者の演習問題としよう。

  • c(a+b)=ca+cb
  • (c+d)a=ca+da
  • (cd)a=c(da)

演習

空間ベクトルに関して、次のことを示せ。

1.二点PQの位置ベクトルを、a,bとすると、PQの中点の位置ベクトルは

2.三角形の頂点の位置ベクトルをそれぞれa,b,cとすると、その三角形の重心の位置ベクトルは、

内積

ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。

ab内積という。

特に2,3次元空間ベクトルabとの内積は、abのなす角をθとすると、

と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。

内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。

  • abが直交する⇔(a,b)=0
  • c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
  • (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
  • (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
  • (a,b)=(b,a)
  • ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
  • |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)

演習

空間ベクトル

とのなす角がであり、かつ

とのなす角がであるようなノルムが1のベクトルを求めよ。

注)そのようなベクトルはただひとつではない。

助変数表示

平面上の直線

以後、特に空間ベクトルについて議論する。

一般の直線を、平面ベクトルの式で表すとこうなる。

  • x=at+x0           (4.1)

構文解析失敗 (SVG(ブラウザのプラグインで MathML を有効にすることができます): サーバー「http://localhost:6011/ja.wikibooks.org/v1/」から無効な応答 ("Math extension cannot connect to Restbase."):): {\displaystyle \mathbf{x}= \begin{pmatrix} x\\ y\\ \end{pmatrix}}

とすると、

これをよく見てみると、うえで定義したベクトルの演算から、 という構造が見えてくる。これは、単に直線の媒介変数表示である。式①を助変数表示または、ベクトル表示と言う。勿論助変数表示の仕方は、一つではない。しかし、一般にaはノルム1のものを選ぶと便利な事が多い。三次元においても同様である。

例題

  • 3x+2y=5

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
よって、

演習

ベクトル表示は座標表示に、座標表示はベクトル表示にせよ

1.6x-3y=9.5

2.x=a

3.

4.

空間内の直線

グラフを描いてみれば分かるとおり、空間内の曲線は一本の式では表すことができない。 一本の式で表せるのは、曲面だけであるである。曲線は、二曲面の交線として、表される。 直線は特に、二平面の交線である。平面の式は、平面内の直線と同じく、一次方程式で表される。 つまり、空間内の一般の直線は、次のように表される。

方法論的にはxにtを代入し、y,zの値を求める。

(但し,A1,A2,x1,x2は定数)

と書けることは自明である。この式は、下の形にできる

と書ける。これこそが、空間内の直線の助変数表字である。驚くべきことに式が増えたのにも関わらず平面内と同じく、 助変数表字では、式は一本である。

例題

を助変数表字にせよ。

x=tとすると、
2y+3z=-t+4
6y+7z=-5t+8

これを解いて、

よって、

演習

1.

を助変数表示にせよ

空間内の平面

前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。

方法論的には今度は変数がtだけでは足りないので、もう一つsを代入する。x=t,y=sである。すると、

とやって、下の形へ持っていくことになる。

そして、一般に

平面の助変数表示と言う。

例題

  • 2a+b+3c=5を助変数表字にせよ。
a=t,b=sとすると、
3c=5-2t-s⇔
よって、

演習

1.2x-y+3z=1を助変数表字にせよ

2.

を、直交座標表示で表せ。

まとめ

右の図は、読者の理解を助けるであろう。

1.平面上の直線のベクトル表示

2.空間内の直線のベクトル表示

3.空間内の平面のベクトル表示

演習

1.

二点P,Qの位置ベクトルをp,qとすると、線分PQ上の点の位置ベクトルは
t1p+t2q, t1+t2=1, t1,t2≧0
の形で表される。これを証明せよ

2.

三点の位置ベクトルをx1,x2,x3とすると、
この三点が構成する三角形内の任意の点は、
t1x1+t2x2+t3x3, t1+t2+t3=1, t1,t2,t3≧0

と表される。これを証明せよ

法線ベクトル

さて、平面上の平行二直線ax+by=c,ax+by=0は、

 とすれば、

           (5.1)

           (5.1)'

なので、aと直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このときaを直線(5.1)の法線ベクトルと言う。


 Oでない点A,Xがある。いま、半直線OAに向かって線分OXから垂線を引く。交点をX'とする。A,X,X'の位置ベクトルをそれぞれ、a,x,x'とするとき、x'xaへの正射影と言う。

例5.1

点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。

l:x=at+x1       (5.3)

x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル

と定義して、||x0-x'0||を求めよう。

(5.3)について、x=x'0を代入し、変形すると、

       (5.4)

ここは躓きやすいところなので解説を加える。aとx0-x'0の交角をθとする。

        (5.5)

(5.5)右辺の分母は、aの長さ、分子は、x0-x1aへの正射影(x'0-x1)の長さである。すると、(5.4)右辺第一項はx'0-x1となる。x0x'0-x1と,x1との和であることは自明の理である。

ゆえに求める最短距離||x0-x'0||は、

と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。


演習

1.例5.1で||x0-x'0||を実際に計算せよ。

2.例5.1でl:(b,x)=cとして||x0-x'0||を求めよ。

3.

空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
F:ax+by+cz=d
を平行移動し、原点を通る平面
F0:ax+by+cz=0
 とすれば、
F:(a,x)=d
F0:(a,x)=0
であるから、aはF0故にFと垂直である。この時aをF0の法線ベクトルと言う。
さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。
x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル
とするとき、||x0-x'0||を求めよ。

4.

平面Fの法線ベクトルaと平面F'の法線ベクトルa'の交角を平面Fと平面F'の交角と言う
F:x+2y+2z=3
F':3x+3y=1
の交角を求めよ。

線型変換