高等学校数学II/式と証明・高次方程式

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高等学校数学II > 式と証明・高次方程式


本項は高等学校数学IIの式と証明・高次方程式の解説である。

式と証明[編集]

二項定理[編集]

数学Aで学んだ組み合わせの計算を多項式の展開に応用することが出来る。

を展開することを考える。これは、

という式を展開したものであり、その係数は "n個の(a+b)の中からいくつのa(またはb)を選ぶか"で決めることが出来る。 (かけ算なのでaかbのどちらかを必ず選ばなくてはならないことに注意。) しかし、この仕方の数は、aについてr次の項ではに等しい。

よって、次の式が得られる。

ここで、

は、整数rを0から0以上の整数nまで変化させながらその結果のそれぞれを足し合わせるという意味である。この記号はシグマと読まれる。


この式を 二項定理(にこうていり、英:binomial theorem) という。また、それぞれの項にかかる係数を 二項係数(にこうけいすう、英:binomial coefficient) と呼ぶことがある。 これによって、大きい次数の多項式を展開する方法が分かったことになる。

パスカルの三角形の最初の6段
パスカルの三角形の計算法

また、それぞれの二項係数はw:パスカルの三角形(英:Pascal's triangle)と呼ばれる方法でも計算することができる。

次数の低いものをあげておくと、

が得られる。

  • 問題例
    • 問題

(I)

(II)

(II)

(II)

をそれぞれ計算せよ。

    • 解答

二項定理を用いて計算すればよい。実際に計算を行なうと、

(I)

(II)

(III)

(VI)

となる。

    • 問題

二項定理

を用いてすべての自然数nに対して

(I)

(II)

(III)

が成り立つことを示せ。

    • 解答

二項定理

についてa,bに適当な値を代入すればよい。

(I) a = 1,b=1を代入すると、

となり確かに与えられた関係が成立することが分かる。

(II) a=2,b=1を代入すると、

となり確かに与えられた関係が成立することが分かる。

(III) a=1,b=-1を代入すると、

となり確かに与えられた関係が成立することが分かる。



整式の除法、分数式[編集]

ここでは、整式の除法と分数式について扱う。整式の除法は、整式を整数のように扱い除法を行なう計算手法のことである。実際に整数の除法と整式の除法には深いつながりがある。整式の因数分解を考えるとそれ以上因数分解できない整式が存在する。この整式を整数でいう素因数のように扱うことで整式の素因数分解が可能になる。この対応は後に詳しく調べられるが、これは指導要領の範囲外である。数学w:素因数分解などを参照。

上では、整式が整数に対応する性質を持つことを述べた。整数についてはたがいに素な2つの整数を取ることで有理数を定義することが出来る。整式に対しても同じ事が成立ち、そのような式を分数式と呼ぶ。


整式の除法[編集]

分数を用いないときには、整数の除法は商と余りを用いて定義された。この時、割られる数Bは商Dと割る数A、余りRを用いて

の性質を満たすことが知られている。整式に対しても似た性質が成立ち、割られる式B(x)が商D(x)と割る式A(x)、余りR(x)を用いて、

と書かれるとき、B(x)が、A(x)に割られたという。この時、整数の除法の性質R<Aに対応して、R(x)の次数<A(x)の次数が成立する。具体例として、x +1を、xで割ることを考える。割る式の次数が1であることから余りの次数は0となり余りは実数である必要がある。また、商がxの関数であると

の右辺でxについて2次の項が現われ左辺と一致しなくなる。よって商は実数である。商をa、余りをrとすると上の式は、

となるが、これはa=1,r=1で成立する。よって商1,余り1である。より高次の式に対しても同じ様に答えを定めていけばよい。例として、

のような式を考える。この場合、

で、B(x)が3次、A(x)が2次であることから、D(x)は1次であり、また、R(x)は2次より小さいことから1次以下の式になる。ここで、D(x)=ax+b,R(x)=cx+dとおくと、

が得られる。右辺を展開すると、

が得られるが、xにどんな値を入れてもこの等式が成り立たなければならないので、a = 1, b = 0, -a +c = 0, -b +d = 0が得られ、結局a=c=1, b=d=0が得られる。


この方法はどの除法に対しても用いることが出来るが、次数が高くなると計算が難しくなる。整数の場合と同様、整式の除法でも筆算を用いることが出来る。上の例を用いて結果だけを書くと、

のようになる。)右に書かれた式が割られる式であり、)左に書かれた式が割る式である。--の一番上に書かれた式は商であり、整数の割り算同様左に書かれた数から順に割っていく。ここでは次数が大きい項がより先に計算される項である。割られる式の下にある式は商の第1項を割る式にかけて得る式である。ここでは、で、となる。ただし、整数の除法と同様、位をそろえなくてはならない。その後、割られる式からを引き、残った式を新しい割られる式として扱う。ここでは、得た式が割る式よりも低次であることから、これで計算は終了である。

  • 問題例
    • 問題

を、で割った商と余りを求めよ。

    • 解答

この計算はアニメーションを使って 詳しく表示されている。計算手法は、 整数の場合の筆算と同じような手法が使える。

計算のアニメーション

が得られるので、商、余りである。

2つ目の式については、

が得られる。 よって、答は 商、余りである。

分数式[編集]

ここまでで整式を整数のように扱い、整式の除法を行なう方法について述べた。ここでは、整式に対して分数式を定義する方法について述べる。分数式とは、整数に対する分数のように、除法によって生じる式である。ここで、除法を行なう式はどのようなものでも差し支えない。分数式では、分子に割られる式を書き、分母に割る式を書く。例えば、

は、分子x+1、分母の分数式である。分数式に対しても約分や通分が存在する。約分は共通因数を持った分子分母をもつ分数式で用いられる。この時には分子分母を共通因数で割り、式を簡単にすることが出来る。通分は、分数式の加法の時によく用いられるが、分子分母に同じ整式をかけても分数式が変化しない性質を用いる。

  • 問題例
    • 問題

を簡単にせよ。また、

を計算せよ。

    • 解答

について分子と分母を因数分解すると、双方ともに

を因数として含んでいることが分かる。このとき、共通の因数は約分することが必要である。計算された値は、

となる。


次の問題では、

を計算する。このとき、両辺の分母をそろえる必要があるが、 今回については、単純にそれぞれの分数式の分子と分母に各々の分母をかけて分母を統一すればよい。計算すると、

となる。


分数式の乗法は、分子分母を別々にかければよい。

  • 問題例
    • 問題

次の計算をせよ。

(I)

(II)


    • 解答

(I)

(II)

式の証明[編集]

恒等式[編集]

等式 は、文字にどのような値を代入しても成り立つ。このような等式を恒等式(こうとうしき)という。 等式は、両辺ともを代入することはできないが、その他の値であれば代入することができ、またどのような値を代入しても等式が成り立っている。これも恒等式と呼ぶ。高校で習う因数分解の公式( など)は、基本的に恒等式である。

いっぽう、 は、x=2 または x=ー1 を代入したときだけ成り立つが、このように文字に特定の値を代入したときにだけ成り立つ式のことを方程式と呼び、恒等式とは区別する。

等式 についての恒等式であるのはどのような場合か、考えてみよう。 ある式が「 についての恒等式である」とは、この式の にどのような値を代入しても、この等式は成り立つという意味である。なので、例えば を代入した式

はすべて成り立つ必要がある。これを解くと

なので、等式 についての恒等式になるならば、でなければならないことがわかる。 ところで、逆に とすると、明らかに等式 についての恒等式であることがわかる。

一般に、等式 が恒等式であることと、 が恒等式であることと同じである。
よって

についての恒等式      かつ かつ

まとめると次のようになる。

恒等式の性質

についての多項式または単項式とする。

が恒等式     の各項の係数はすべてである。
が恒等式     の次数は等しく、両辺の同じ次数の項の係数は、それぞれ等しい。


  • 問題例
    • 問題

次の等式が についての恒等式となるように、 の値を求めよ。

    • 解答

等式の右辺を について整理すると

この等式が についての恒等式となるのは、両辺の同じ次数の項の係数が等しいときである。よって

これを解くと

等式の証明[編集]

さきほど紹介した「恒等式」という言葉を使って「証明」の意味を説明するなら、「等式を証明(しょうめい)する」とは、その式が恒等式であることを示すことである。

一般に、等式 A=B を証明するためには、次のような手順のいずれかを実行すればよい。

(1)  Aを式変形してBを導くか、または Bを変形してAを導く。
(2)  A,Bをそれぞれ変形して、同じ式Cを導く。
(3)  A-B=0 を示す。
  • 例題 1

が成り立つことを証明せよ。

(証明)
左辺を展開すると、

(左辺)=

となり、これは右辺に等しい。よって、等式 は証明された。(終)


  • 例題 2

が成り立つことを証明せよ。

(証明)

左辺を計算すると、

(左辺) =

これは右辺に等しい。よって等式が成り立つことが証明された。(終)



  • 問題例
    • 問題

次の等式が成り立つことを証明せよ。
(I)


    • 解答

(I)
(左辺)
(右辺)
両辺とも同じ式になるから



不等式の証明[編集]

不等式のさまざまな公式については、次の4つの式を基本的な式として導出できる場合がよくある。

高校数学では、次の4つの性質が 不等式の「基本性質」などとして紹介されている。


不等式の基本性質
(1)   かつ ならば
(2)   ならば かつ
(3)   かつ ならば であり、でもある
(4)   かつ ならば であり、でもある


(3)と(4)については、ひとつの性質として まとめている検定教科書もある(※ 啓林館など)。

数学IAで習った「ならば」の意味の記号 を使うと、

不等式の基本性質
(1)   かつ   
(2)    かつ 
(3)   かつ    であり、でもある
(4)   かつ    であり、でもある


とも書ける。

上述の4つの基本性質から、

a>0,  b>0 ならば a+b > 0

を証明してみよう。

(証明) まず a>0 なので、基本性質(2)より

a+b > b

である。

よって、

かつ

なので、基本性質(1)より が成り立つ。(終)

同様にして、

a<0,  b<0 ならば a+b < 0

を証明できる。

(※ 読者は自分で これを証明してみよ。検定教科書にも、この式の証明は省略されている。)

ここまでに示したことから、不等式 を証明したい場合には、

を証明すればよいことがわかった。こちらの方が証明しやすい場合がよくある。

不等式を証明する際に根拠とする基本的な不等式として、次の性質がある。

実数の2乗の性質

実数 a について、かならず

が成り立つ。

この式で等号が成り立つ場合とは、 の場合だけである。

この定理(「実数を2乗すると、かならずゼロ以上である」)を、基本性質(3),(4)を使って証明してみよう。

(証明)

aが正の場合と負の場合と0の場合の3通りに場合わけする。

[aが正の場合]
このとき、基本性質(3)より、

である。すなわち、

である。

[aが負の場合]
このとき、基本性質(4)より である。すなわち、

である。

[aがゼロの場合]
このとき、 である。

よって、すべての場合について (終)

このことと基本性質(1)(2)より、次が成り立つこともわかる。

実数の2乗どうしの和の性質

2つの実数a,b について ,   であるから、かならず

が成り立つ。

上式で等号が成り立つ場合とは、 かつ の場合だけであり、つまり かつ の場合だけである。

    • 問題

次の不等式が成り立つことを証明せよ。

(証明)

を証明すればよい。

左辺を展開して まとめると、

となる。

上式の最後の式の項について、

だから、

である。よって

である。(終)

根号をふくむ不等式[編集]

2つの正の数 a, b が a>b または a≧b ならば、両辺を2乗しても大小関係は同じままである。

つまり、

,  のとき、

である。

これを証明するには、 を調べればよい。

である。

a>bとする。仮定より、a,b は正の数なので、 であり、別の仮定より、 a > b なので、 でもある。よって、

逆に、のとき、であり、なのでである。よって、なので、である。

よって、 である。

a≧bの場合も同様に証明できる。


練習として、次の問題を問いてみよう。


例題

,  のとき、次の不等式を証明せよ。


(証明) 不等式の両辺は正であるので、両辺の平方の差を考えればよい。両辺の平方の差は

である。ここで、a,b はともに正の実数なので、

であることを用いた。

であるので、

となる。よって、

である。(終)

絶対値をふくむ不等式[編集]

実数 a の絶対値 |a| について、

a ≧ 0 のとき |a|=a ,  
a<0 のとき |a|= ーa

であるから、次のことが成り立つ。

         |a|≧a , |a|≧ ーa  , |a|2=a2 

また、2つの実数 a, b の絶対値 |ab| については、

|ab| 2 = (ab)2 = a2 b2 = |a|2 |b|2 = (|a| |b|)2

が成り立つので、これにさらに |ab|≧0 , |a||b|≧0 を組み合わせて、

         |ab| = |a| |b| 

が成り立つ。


(例題)


次の不等式を証明せよ。また、等号が成り立つのは どのような場合かを 調べよ。

|a|+|b| ≧ |a+b|


(証明)

両辺の平方の差を考えると、

(|a|+|b|)2 ー |a+b|2 = |a|2 + 2|a| |b| + |b|2 ー(a2 + 2ab + b2 )
= a2 + 2|a| |b| + b2 ーa2 ー 2ab ー b2
= 2|a| |b| ー 2ab
= 2 ( |a| |b| ー ab )

これがもし正なら、与えられた不等式 |a|+|b| ≧ |a+b| が正しい。


ここで、 |a| |b| ≧ ab であるので、

( |a| |b| ー ab ) ≧ 0

である。

したがって、 |a|+|b| ≧ |a+b| である。


等号が成り立つのは |a| |b| = ab の場合、すなわち ab ≧ 0 の場合である。(証明 おわり)


三角不等式

なお

|a|ー|b| ≦ |a+b| ≦ |a|+|b|

の関係式のことを「三角不等式」という。

相加平均と相乗平均[編集]

2つの数,に対し、相加平均(そうかへいきん)と言い、相乗平均(そうじょうへいきん)という。

相乗平均の例と3つ以上のものの平均

平均は、3つ以上のものにも定義される。3つ以上のn個のものの相加平均は で定義される。


平均を考える際、つい相加平均ばかりを考えがちだが、以下のような状況では相乗平均の方が適切である。
「ある企業では、2015年度の売上を基準にすると、2016年度では前年(2015年)の1.5倍の売上になりました。2017年度では、前年(2016年)の2倍の売上になりました。平均として、一年ごとに何倍の売り上げになっていったでしょうか? 」
(答) より、約 1.73倍。
また、この応用例は、項が3つ以上の場合の相乗平均の定義の仕方も、示唆している。もし読者が指数関数を知っているなら、項が3つ(ここでは a, b, c とする)の場合の相乗平均は、
(3つの項の相乗平均)=
になる。


本ページでは、2個の数の平均について考察する。


相加平均と相乗平均について、次の関係式が成り立つ。

相加平均と相乗平均

のとき、


等号が成り立つのは、のときである。

(証明)

のとき

であるから、
したがって 
等号が成り立つのは、 のとき、すなわち のときである。(証明 おわり)


公式の利用では、上の式 の両辺に2をかけた の形の式を使う場合もある。


  • 問題例
    • 問題

のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
(I)

(II)

    • 解答

(I)であるから、
よって 
したがって

(II)

であるから、
よって 
したがって

  • 発展 微分法を用いた解法

相加平均相乗平均を用いた問題は高等学校数学IIなどで扱う微分法を用いて解くことができる問題が多い。例えば(I)について

の左辺をf(a)と置き、f(a)の1,2階微分を求めると、,が得られるが、このことからf(a)はでは、a=1で極小値を持つことがわかる。ここで、実際に代入を行うことで、f(1)=2が得られるので、元の結果が得られる。

(II)についてはa,bの2つの変数があるため、高等学校の範囲では微分を用いて極小値を求めることはできないが、解析学基礎などの結果を用いることで極小値を得ることができる。

3つ以上の相乗平均と調和平均

もし読者が指数関数などを知っていれば、

n個のものの相乗平均は、

と書ける。


数学的な「平均」には、相加平均と相乗平均のほかにも調和平均がある。

調和平均は、電気回路の並列計算で使われる考え方である。

n個のものの調和平均は、

で定義される。


一般に数学的には、調和平均、相乗平均、相加平均のあいだに次のような大小関係

(調和平均) ≦ (相乗平均) ≦ (相加平均)

という関係が成り立つことが証明されている。

すなわち、数式で書けば

の関係式である。

高次方程式[編集]

複素数[編集]

複素数[編集]

2乗して負になる数、というものを考える。このような数は、中学で習った実数の中にはないことがわかる。なぜならば、正の数でも負の数でも2乗すると符号が打ち消して正の数になってしまうからである。そこで高校では、2乗して負になるという性質を持つ数の概念を新しく導入することにする。

という方程式を考える。この方程式の解は実数にはない。そこで、この方程式の解となる数を新しく作り、その単位を文字 であらわす。

この のことを虚数単位(きょすうたんい)と呼ぶ。(虚数単位の記号 i 、英語のアルファベットのアイの小文字で、 imaginary unit に由来すると考えられている。)

のように、虚数単位と実数を用いて

と表すことができる数を複素数(ふくそすう)という。このとき、aをこの複素数の実部(じつぶ)といい、b虚部(きょぶ)という。

例えば、 は、いずれも複素数である。


複素数 a+bi は(ただし aとbは実数)、bが0の場合に、これを実数と見ることができる。

言い方をかえると、複素数を基準に考えると、実数とは、 a+0i のような、虚部の係数がゼロになる複素数のことであるとも言える。

4iのような、虚部が0以外で実部がゼロの複素数を純虚数(じゅんきょすう)と呼ぶ。純虚数は、2乗すると負になる数である。 実数も虚部が0の複素数と考えられる。

実数でない複素数のことを「虚数」(きょすう)という。


複素数の性質[編集]

2つの複素数 a+bi と c+di とが等しいとは、

a=c かつ b=d

であることである。

つまり、

a+bi = c+di    a=c かつ b=d

とくに、複素数a+bi が 0であるとは、a=0 かつ b=0 であることである。

a+bi = 0    a=0 かつ b=0
複素数の相等
a+bi = c+di    a=c かつ b=d
a+bi = 0    a=0 かつ b=0
共役

複素数に対して、虚部の符号を反転させた複素数のことを「共役(きょうやく)な複素数」または「複素数の共役」(きょうやく)のように呼び、 であらわす。

(※ 「共役」という用語は、物理学などでは別の意味に使うので、自習の際には混同しないように気をつけること。)

実数aと共役な複素数は、その実数 a 自身である。

複素数 z=a+bi について



四則演算

複素数にも四則演算(加減乗除)が定義される。

複素数の演算では、虚数単位を、通常の文字のように扱って計算する。一般に複素数が、で与えられるとき(ただし は実数とする)、

加法  


減法  


乗法  


除法    (ただし とする。)

というふうに複素数の加減乗除の計算法が定められている。


乗法の定義は、一見すると難しそうにみえるが、実数の分配法則と同様に展開していき最後に i2にマイナス1を代入していっただけである。

除法の定義は、分子と分母に、分母と共役な形の式を 掛け算 しただけである。

乗法や除法の定義式を暗記する必要は無く、計算の際には、必要に応じて分配法則や共役などの、必要な式変形を行えばいい。


例題

2つの複素数

について、 を、それぞれ計算せよ。

解答


である。

を、さらに簡単にできないだろうか。実は、ちょっとしたテクニックを用いればより見やすい形にできる。

分数は分母と分子に同じ数をかけてよかったので、分母と分子に分母の共役をかけてみる。すると、

が得られる。この形のほうが元の式よりもずっと見やすい形である。

このような操作を分母の実数化ということもある。数学Iで学習した展開・因数分解公式 の簡単な応用である。



コラム:複素数では大小関係が無い

複素数どうしについて、その大小関係は定義しない。その理由は、どのように大小関係を定義しても、便利な性質を満たすことができないからである。具体的に言えば、既に述べた実数の大小関係についての「不等式の基本性質(1)(2)(3)(4)」にあたる式を成り立たせることができないのだ。

たとえば、であることを、であることとして定義してみよう。このように定義すると、たとえば1+2i<2-3iであり、また2+3i<3+4iである。ところが、(1+2i)+(2+3i)=3+5i,(2-3i)+(3+4i)=5+iであり、3+5i>5+iとなってしまう。これは基本性質(2)が成り立たないことを意味する。

もちろんこれは適当に考えた定義がたまたま不適切だったというだけのことだが、実は、他にどのように定義してもこのような困難からは逃れられないことが知られている。それゆえに、複素数には大小関係を定義しないのである。

負の数の平方根[編集]

数の範囲を複素数にまで拡張すると、負の数の平方根も考えることができる。

例として、 -5 の平方根について考えてみよう。


であるから、 -5 の平方根は である。

負の数の平方根

とするとき、負の数の平方根は、である。

とは、 のこととする。とは、 のことである。 とくに である。


さて、-5 の平方根は、方程式 の解でもある。

この方程式を移項することにより、-5 の平方根は、

の解であるともいえる。

さらに因数分解をすることにより、-5 の平方根は方程式

の解でもあるともいえる。


  • 例題

(I)    を計算せよ。

  • 解答

(I)

このように、まず、マイナスの数の平方根が出てきたら、まず虚数単位 i を用いた式に書き換える。

そのあと、かけ算をしていく。


  • 問題

(II)    を計算せよ。

(III)   2次方程式  を解け。


    • 解答

(II)

(III)


2次方程式の判別式[編集]

2次方程式の解と複素数[編集]

複素数の応用として、ここでは2次方程式の性質について述べる。任意の2次方程式は、解の公式によって解かれることを高等学校数学Iで述べた。しかし、解の公式に含まれる根号の中身が負の数の場合には実数解が存在しないことに注意する必要がある。2次方程式

の解の公式は、

である。

判別式

によって定義される。 判別式は、解の公式の根号(ルート記号のこと)の中身に等しく、判別式の正負によって2次方程式が実数解を持つかどうかが決まる。

が負のときにはこの2次方程式は実数の範囲には解を持たない。

判別式が負の数であったとき、xの解は異なる2つの虚数になり、その2つの解は 共役 の関係になっている。


  • 問題例
    • 問題

複素数を用いて、2次方程式
(1)

(2)

(3)

を解け。

    • 解答

解の公式を用いて解けばよい。(1)だけを計算すると、

となる。 他も同じように扱うことが出来る。

以降の解答は、
(2)

(3)

となる。


2次方程式の判別式[編集]

方程式の解で、実数であるものを 実数解 という。

方程式の解で、虚数であるものを 虚数解 という。

2次方程式 の解は である。

2次方程式の解の種類は、解の公式の中の根号の中の式 の符号を見れば判別することができる。

この式 を、2次方程式 判別式(はんべつしき)といい、記号 で表す。

判別式と解の判別

2次方程式 の判別式 について

異なる2つの実数解をもつ
重解をもつ
異なる2つの虚数解をもつ


また、重解も実数解であるので、

実数解をもつ

といえる。


  • 問題例
    • 問題

次の2次方程式の解を判別せよ。

(I)

(II)

(III)


    • 解答

(I)

だから、異なる2つの実数解をもつ。

(II)

だから、異なる2つの虚数解をもつ。

(III)

だから、重解をもつ。



また、2次方程式 のとき、となるので、 2次方程式 の判別式には

をもちいてもよい。

これを用いて、前の問題

(III)  

の解を判別しよう。

 であるから

だから、重解をもつ。

2次方程式の解と係数の関係[編集]

2次方程式の解と係数の関係[編集]

2次方程式 の2つの解を として、 とおくと、


となる。

解と係数の関係

2次方程式 の2つの解を とすれば



  • 問題例
    • 問題

2次方程式 の2つの解を とするとき、 の値を求めよ。

    • 解答

解と係数の関係より、

2数を解とする2次方程式[編集]

2つの数 を解とする2次方程式は

と表される。左辺を展開して整理すると次のようになる。

与えられた2つの数を解とする2次方程式

2数 を解とする2次方程式は



  • 問題例
    • 問題

次の2数を解とする2次方程式を作れ。

(I)

(II)


    • 解答

(I)
和 
積  であるから

(II)
和 
積  であるから


2次式の因数分解[編集]

2次方程式 の2つの解 がわかると、2次式

を因数分解することができる。
解と係数の関係 から、

解と因数分解

2次方程式 の2つの解を とすると



2次方程式は、複素数の範囲で考えるとつねに解をもつから、複素数まで使ってよいとすると、2次式は必ず1次式の積に因数分解することができる。


  • 問題例
    • 問題

複素数の範囲で考えて、次の2次式を因数分解せよ。

(I)

(II)


    • 解答

(I)
2次方程式  の解は

よって

(II)
2次方程式  の解は

よって

高次方程式[編集]

3次以上の整式による方程式を考える。 一般に方程式を ととる。 ただし、は、任意の次数の整式とする。

剰余の定理[編集]

を1次式で割ったときの商を、余りをとすると、

この両辺のを代入すると、

つまり、で割ったときの余りはである。

剰余の定理

整式で割ったときの余りは、に等しい。

  • 問題例
    • 問題

整式 を次の式で割った余りを求めよ。
(I)

(II)

(III)

    • 解答

(I) 
(II) 
(III) 


因数定理[編集]

ある実数に対して、

が成り立ったとする。 このとき、整式 は、 を因数に持つことが分る。 このことを因数定理(いんすうていり)と呼ぶ。

  • 導出

整式に対して、商、割る式とする 整式の除法を用いる。このとき、商、 (は、よりも1だけ次数が低い整式である。) 余り(は、実数。)とすると、 整式 は、

と書ける。 ここで、 でないと、 は満たされないが、 このとき、は、によって割り切れる。 よって、因数定理は成立する。

因数定理

整式について

で割りきれる。

因数定理を用いることで、より次数の高い整式を因数分解することが 出来るようになる。例えば、3次の整式

について、を代入すると、

は0となる。よって、因数定理よりこの式は

を因数として持つ。

ここで、実際整式の除法を使って計算すると、

が得られる。


  • 問題例
    • 問題

因数定理を用いて
(I)

(II)

を因数分解せよ。

    • 解答

(I) 因数分解の結果が(x+整数)の積の形なら、整数は6の因数でなければならない。そのため、が候補となる。これらについては実際に代入して確かめるしかない。x=1を代入すると、

となるので、(x-1)が因数となる。実際に整式の除法を行なうと、商としてが得られるが、これはに因数分解できる。よって答えは、

となる。
(II) ここでも地道に24の因数を当てはめていくしかない。24の因数は数が多いのでかなりの計算が必要となる。ここでは、-2を代入すると、

となり、(x+2)が因数だとわかる。除法を行なうと、が得られるが、(x-4)(x+3)に因数分解できる。答えは、

となる。

高次方程式[編集]

因数分解や因数定理を利用して高次方程式を解いてみよう。


  • 問題例
    • 問題

高次方程式
(I)

(II)

(III)

を解け。

    • 解答

(I) 左辺をを用いて因数分解すると

したがって または
よって

(II)  とおくと、

左辺を因数分解すると

よって 
ゆえに 
したがって

(III)  とおく。

したがって、の因数である。

よって 
 または
したがって


(発展)3次方程式の解と係数の関係[編集]

3次方程式 の3つの解を 、 とすると

が成り立つ。
右辺を展開すると

よって

ゆえに

したがって、次のことが成り立つ。

3次方程式の解と係数の関係

3次方程式 の3つの解を 、 とすると

注意  はギリシャ文字の小文字(こもじ)のひとつで、ガンマと読む。

コラム 複素数の平方根 (※発展)[編集]

複素数の平方根 (※発展)

今度は、複素数の平方根について考えてみよう。 正の数を考えたとき、

の平方根は
の平方根は

では、

の平方根はどのように表せるだろうか。

虚数単位の平方根を考えると、これはzについての方程式 の解 z の値であるから、これを解けばよい。どのような複素数zならこの式を満たすことができるだろうか。

zを複素数とすると、(x,yは実数)と表される。

は実数であるから、実部と虚部が共に0にならねばならないから、

のとき、 (複号同順。x,yは共に実数であるから、条件を満たす。)

のとき、 ここで、これを満たす実数yは存在しないから不適。

よって、

  • 問題例
    • 問題
を虚数単位とするとき、次の問いに答えよ。
(I) の平方根を求めよ。
(II) 2次方程式 を解け。
(III) 3次方程式 を解け。


    • 解答
(I)
(II)
(III)
今回挙げた問題は、全て(x,yは実数)と置くことで求められる。(III)は、より、

実部がゼロを考慮してだが、虚部もゼロなので、xの値が前者のとき、後者のときとなることがすぐにわかる。



コラム: 5次方程式の「解の公式」は無い[編集]

2次方程式には解の公式があり、日本の中学や高校でも習う。2次方程式の解の公式を用いれば、どんな係数の2次方程式であっても解を求められる。3次方程式と4次方程式にも、じつは解の公式があり、係数がどんな係数であっても解を求められる。

しかし、5次方程式では、そのような一般的な解の公式は無い。

もちろん、 のような特別な場合の方程式には、簡単に解が求められる。たとえば、 は解のひとつとして をもつ。しかし、特別な係数の組み合わせの場合に解を求めることができることと、一般的な解の公式の存在とは、意味が違う。5次方程式に、一般的な解の公式が存在しないとは、どんな係数の組み合わせであっても適用できる、普遍的な解の公式が無いという事である。

なお、その証明を理解するには、19世紀に生まれた「ガロア理論」という高度な数学を理解する必要があり、ここでその解説をすることはとても困難なので割愛する。