独学ガイド/理工学一般/大学レベルの勉強法

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『理解の深さ』を目指そう[編集]

本来、大学などで教わるべき高度な学問の勉強法で重要なことは『理解の深さ』を目指すことである、とかつてはよく言われていた(最近はどうか知らないが)。知識の多さは関係ない。また、知識の修得の速さも関係ない。

なぜなら、どんなに知識を増やしても、学習対象の知識が間違った内容だったなら無駄に終わってしまう。たとえば、捏造された古代史を暗記しても役立たない(たとえば日本古代史のゴッドハンド藤村の事件が発覚するまでは、大学入試にも、捏造された古代史の遺跡の暗記が出た)。なお、ここではいくら理工学の本とはいえ「古代史を学ぶことが間違っている」「古代史は学ぶな」などと偏見は述べない。

また、くだらない雑多な知識を増やしても(たとえば芸能人についてのゴシップ知識など)一時の流行に過ぎず、学問では不要である。

また、知識同士で相互に検証されてない浅薄な知識も、例外として語学の単語暗記や一部の学問の用語暗記などを除けば高等学問では無駄である。(知識を暗記するだけなら小学生でも可能。)


大学教科書などにある多くの練習問題などは理解を確認するための手段にすぎない場合が多い。そのため、理解できてしまえば本来は不必要であると言えなくもない。実務で使うような計算例はすでに高校で習っているか、職業高校(工業高校など)の教科書に書いてある。


本来なら大学教育では学問(普遍的な知識の体系)への理解の深さを優先すべきなのである。すなわち、大学の教育では本来、理解を深めるための方法や、学習対象が真実かを確認する方法などの教育が、本来は必要なのである(例外は語学や、医学部の解剖学の骨名暗記とか暗記とか)、とする人もいる。

そういった考え方の例として数学教育で例えるなら、数学の公式を教えるのではなく(そういうのは、せいぜい大学2年くらいまで)、その公式をどうやって導いたとか、なぜ、その公式をわざわざ導くべきと考えたのか(その公式が教育カリキュラム上に存在することで、他の何を理解できるようになるとか)、そういうことの方が重要なのである。

なぜなら、公式というのはむりやり作ろうとすれば無限につくれる。もちろん、価値のない公式となるが。なので学生は、普遍的にさまざまな分野に活用のできる公式を学ばなければならない。


既存の専門知識を覚えるだけなら、本来、専門学校でも出来る。なので大学は本来、専門学校とは教育の質が違ってなけれならず、大学は本来なら普遍性のある知識分野(つまり学問)の、真理の確立法(それがつまり研究)を学ぶ場所でなければならず、そのために研究室が必要なのである。困ったことに、日本の大学は、理解を深めるための教育ができてないが。

単に多くのことを知るだけなら、百科事典でも読んでればいい、と割り切って考える人が先程の大学での理解の深さにこだわる人の意見である。

大学レベルの勉強法[編集]

勉強したい人には分かりづらいかもしれないが、世の中の高校で数学をサボってきた大学生のなかには、微分積分よりも線形代数を好む人も多くいる。

最近では、離散数学とかを好む大学生もいる。どうやら、線形代数や離散数学のほうが微分積分よりも公式を暗記しやすいようだ。

しかし、この章を読んでいるのはおそらくこれらの人たちとは違って大学に学問をするためにきた人のはずだ。けっして「計算できなくても理解すればいい」というのではなく(この言い訳と捉えられかねないことばも高校で数学をさぼっていた学生が良く使うらしい)、とりあえず「工学部むけの物理数学の初歩で使う微分積分(偏微分や重積分)までは計算できる」レベルにまではもっていこう。


大学の理系科目では、多くの科目で数式を説明する際に微分積分を使う。

実際に製造業などの実務で微分積分をつかう事は少ないが、微分積分を使わなくても説明できる公式は工業高校の教科書や専門学校むけの教科書などでも説明できるためだと言えるかもしれない。 大学の理系科目の教科書では、微分積分を用います。


また、このような数学教育の事情があるために、大学理工系の専門科目の単元でも微分積分や線形代数という科目で説明しやすい式をあつかう単元が教員に好まれ、そのような応用「微分積分学」的な手法の解説された専門科目が教育されていて、ほぼ必修科目になっている。


逆に言うと、微分積分で説明できない、微分積分理論の限界的な事などは無視される。たとえば、『バタフライ効果』などは、数学科以外では、工学部などでは無視される。

また、微分という手法はグラフで考えれば関数の傾きを取るという直線近似的な手法であり、よって線形代数と相性がいいのだが、このような事情があるため非線形の話題は無視されることが多い。

流体の三次元計算のナビエ=ストークス式のように、原理的には計算可能でも実際には計算量がスーパーコンピューターが必要になるほど膨大になる学問もあり、そのような分野の研究では実験が必要で、企業などでも実験によって研究する。しかし、大学では設備や人員などの問題もあり、そういう計算の限界はほぼ無視して計算がほぼ万能だとするかのようなカリキュラムが組まれていますし、研究室などもそういう研究室が多いです。


「工学をあとまわしにしても大丈夫?」という疑問へ[編集]

工業高校とかで習う工学をあとまわしにして微分積分とか物理とかを先に勉強しても大丈夫か、という不安をお持ちの人もいるだろう。

大丈夫だろう。なぜなら、昔の昭和の半ばころの大学の教養課程の理科の物理の教科書には、実は機械工学とか電気工学とかの話題が書いてあった(今の教科書には書いてないが)。

発電機の仕組み、簡単な機械の仕組みや材料力学の初歩などが昔の教養物理の教科書に書いてあった。

微分積分はそういうのに繋がる内容になっている。(昔の物理学者が偉いのかもしれない。今の物理学者ではなく。)

微分積分とかを先に勉強する方法でも、戦後の昭和の日本は高度経済成長期を迎えられたので問題ないと言えるだろう。


微分積分が大学レベル理工学の共通語である[編集]

上述のようにして、微分積分を中心とする学問が、大学レベルの理工学の共通語になっている。

実際に「微分積分」や「量子力学」などの理論が自然の真実を表しているかどうかはともかく、あたかも英語などの語学で文法を学んだのと同様に、理工学の勉強では微分積分によって記述された数理や物理学の文法を学ぶ必要がある。

例えるなら、経済学を学ぶ際に、微分積分によって記述されたミクロ経済学を学ぶことによって日本語や英語といった特定の言語の用法に起因する多義性やあいまいさを排除する意義と、同様のことだ。

また、数学教育の内部でも微分積分以外の大学レベルの高度な代数学や幾何学や確率論などの多くも微分積分を中心的な言語として用いて記述されている。


大学の数学科でも、入学当初のころは微積分の科目では計算練習の授業を行う。

ネットにおいてはよく「数学科の授業は他の学科とは違う。証明問題を重視する」と言われるが、そういうのは大学の微積分の入門よりも、もう少し後のことだ。

とりあえず、微積分と線形代数などは数学科ですら計算練習がある。

高校の数学3Cあたりと同じようなノリで大学の微積分と線形代数の計算練習をしておくべきだろう。

「大学では、生物は化学になり、化学は物理になる」[編集]

高校では、「物理」科目と「化学」科目と「生物」科目はあまりお互いの内容を使わなかった。

しかし、大学ではそのような制限は取っ払われる。

一般に、大学の教養課程あたりの理科教育・数学教育を評して「大学では、生物は化学になり、化学は物理になり、物理は数学になる」などと言われる。

ということは、まずは数学(大学レベルの微分積分)を勉強しないと、大学レベルの理工学を始められないのです。


果たして本当に生物学が化学かどうかはともかく、少なくとも教養課程レベルでは、高校で習うレベルの理科4科目を垣根なく使いますし、また、その程度の理科3科目(生物・物理・化学)はできないと、さきざき、困ります。

まずは微分積分[編集]

理系の大学の場合、どんな学部でも、普通は大学レベルの微分積分を1年生で勉強します。

微分積分が、はたして本当に理科の大部分の理解に必要かは別として、比較的ラクに学生が習得できるので、大学では1年に教えています。


高校の物理学は、ほぼすべての分野で、微分積分の理解を大学1~2年レベルに深めることにより、公式などの暗記の負担が大幅に減ります。

また、高校の生物学で、生態系の個体数の変動のモデルなどを習いましたが、これを微分方程式を使ってモデルを記述および解析できます。

また、高校の化学でも、反応速度の計算式など、微分方程式を使ってモデルを記述および解析できます。


もっとも、生物と化学のは、大学2年生くらいで習う「微分方程式」という科目の応用であって、「微分積分」という科目の応用とは微妙に違うのですが。

しかし、微分方程式のための計算練習も兼ねて、大学1年では微分積分を習います。


上記のような事情があり、大学の物理学科でも化学科でも生物学科でも工学部でも、まずは数学の「微分積分」を大学1年で勉強します。大学の微分積分では、多変数関数の微分積分の計算を習います。また、一変数関数の微分積分の計算でも、高校では習わない事も、大学で習います。(「テイラー級数」というのを大学で習う。)

よって、もし読者が高校の数学IIIが全く分からない場合は、まずは高校数学を先に勉強して、少なくとも標準的な高校参考書の練習問題くらいは一通り計算練習をしてください。理系大学の入試問題でも、数学III が入試に課せられているのが普通です。

たとえ数学IIIの計算問題ができずに大学の微積を勉強しても、チンプンカンプンとなるので、無駄です。逆に、数学IIIの計算練習を参考書できちんとしていれば、割とすらすらと大学の微積の計算ができるようになります。

高校の数学IIIのカリキュラムは、それほどまでに重要な内容を精選してあるのです。

だから、前の節では、さんざん、「高校レベルの平均的な参考書・問題集を、復習しておけ」と忠告したのです。

さて、大学レベルの物理学が、多変数関数の微分積分を前提にしてるので、理工系の学習にあたり、まずは大学の微分積分の計算法を勉強する必要があります。

化学は物理を前提としているし、生物学は化学を前提にしてるし、工学などの応用科学は理学を前提にしてるので、まずは物理の前提になってる微分積分を学びます。

  • 理系大学1年の初学者レベルの数学書の出版社

次の出版社が、理系大学1年生レベルの初学者には、おすすめです。

裳華房(しょうかぼう)
サイエンス社
共立出版(きょうりつしゅっぱん)
岩波書店

これらの出版社は、初学者以外への本も扱ってるので、書籍購入の際には、きちんと「大学1〜2年生向け」であることを確認してください。

岩波書店は、『理工系の数学入門』というシリーズを出しています。これの『微分積分』が、初学者向きです。いろんなジャンルの本を出してるので、他ジャンルの本と間違えないように注意しましょう。岩波書店の本を買う場合は、店頭などで実物を確認したほうが良いでしょう。

これら以外の出版社でも、数学書の出版社はありますが、あまり初心者向けでないです。

たとえば、上記の出版社以外にも、つぎの出版社が数学書を出しています。

培風館(ばいふうかん)
朝倉書店(あさくら しょてん)


培風館は、初心者向けの本も出していますが、どっちかというと、問題集じみた本などが多いです。大学によっては、1年生の数学の指定の教科書で培風館や岩波書店などの教科書を使う場合はありますが、独学の際には、これらの出版社は、ちょっと書籍選びが面倒です。実は、培風館はかつて受験産業に関与しており「理系のための数学I」「理系のための基礎解析」などのシリーズで知られていたのですが、不評のためやめてしまいました。


朝倉書店は、難しい専門的な話題の本が多く、初心者には不向きです。

これらの他にも、工学系の出版社が大学1〜2年生ていどのレベルの微分積分の入門書を出していますが、初学者は、わざわざ工学系の出版社の数学書を買う必要がありません。

なお、工学系では、

実教出版(じっきょう しゅっぱん)
森北出版(もりきた しゅっぱん)

が大学1年レベルの微分積分などの本も出しています。

実教出版と森北出版は、工業高校向けや高専(工業高等専門学校)向けの数学書も出してるので、大学1年レベルの本を買う際、けっして間違えて高専向けの本を買わないようにしてください。

独学の際には、大学1〜2年向けの微分積分の本を買うべきです。わざわざ高専向けの微分積分の本を買う必要はありません。

そういう混同を防ぐため、初学者には、実教出版などの数学書を、すすめないでおきます。

これらの本は、高専などに在学中の学生などが、教員のすすめのもと、読むのが良いでしょう。

なお、森北出版の本は一般的に、工業系向けとして、計算問題が多いです。


あと、数学オリンピック対策本みたいな難問ばかり扱ってる書籍とかは(出版社名は挙げないでおく)、大学レベルの微分積分の初学者の学習には、不要です。

本を買う必要がある[編集]

  • 計算練習が必要なので、本を買う必要がある

練習問題も多く必要なので、微分積分の本を買ってください。計算問題をする必要があるため、けっしてインターネット・サイトなどでは代用せず、実際に本を買ってください。なおウィキブックスは現状、練習問題が大幅に不足しており、計算練習に向いておりません。

  • 独学では教科書の購入で書店注文や通信販売に頼ることになる

あまり一般の書店に大学用の教科書が売っておらず、入手が大変なので、書店で注文して買うか、専門書を扱っている書店に出かけてください。おそらく注文のほうが、交通費が掛からず、安上がりでしょう。都心などの一部の書店では、専門書も売ってる場合があります。

  • 数学の概論書ではなく、「微分積分」専用の教科書を買う

「数学概論」「数学入門」などのようなタイトルの本で、大学の数学全般を解説している本もあるかもしれません。しかし、そのような本は、これから大学の微分積分を独学で学ぶ人には不適切です。まず、微分積分の解説に割り当てられたページが少ない可能性があります。仮に十分な解説があったとしても、本の厚さがまるで広辞苑のように厚い可能性があります。また、練習問題などは不足する可能性が高いです。

  • 日本人が書いた本を買う必要がある

微分積分の書籍に限らず、大学レベルの独学で理工系の書籍を買う際、まずは日本人の大学教員が書いた教科書を買う必要があります。欧米人の著者の本は、欧米の教育カリキュラムが日本と異なるので独学には向いていません。

外国人の書いた理工書を買ってもよい人とは、すでにその科目で日本人の書いた教科書を入手したあとからです。

アメリカの数学書は、まず不要

一般にアメリカの大学は、日本よりも数学の進度が遅れています。なので、アメリカ人の書いた大学レベルの微分積分の入門書を読んでも、日本の高校数学みたいな内容から説明が始まり、日本人には既に習っている話題も多く、アメリカ教科書は不便です。洋書のいくつかは、低レベルな内容のわりには分厚くて羅列的だったりするなので、ハッキリ言って、読んでてムカつきます。


そもそもアメリカの大学教育は低レベルである。アメリカの大学は、宿題やレポートや計算問題などの課題の量は多いが、しかし単に量が多いだけで、それの教育効果が高いかどうかは、ろくに検証されていない。

アメリカの大学で課題がやたらと多いのは、単に高校卒業までに、ドリル的な基礎トレーニングが不足しているからであると、よく言われる。 (数学だと、アメリカは、日本の高校教科書レベルの計算すら、てこずる人は多い。それどころか、かけ算の九九とかも、あやしい人は多い。日本と違って、高校入試みたいなのが、アメリカでは満足に機能してない。)

しかし日本では、出羽守が、アメリカ方式のカリキュラムを賛美する。日本では、米国留学組がもてはやされるので、なかなか、日本のカリキュラムが改善していかない。

大学レベルの高度な学問で必要・大切なことは、勉強の仕方、研究の仕方を学ぶことである。課題の表面的な量の多さは必要でない。

たとえるなら、日本の中学受験の算数の難問がどんなに多く解けても、中学校の教科書にある普通の計算問題が解けなければ、意味がないのである。

アメリカの大学教科書の練習問題は、入門レベルのくせに、やたらと多い小難しい練習課題が多く、まるで日本における中学受験算数のドリルのようなものである。

もし実用性の重視の目的なら、日本の中学高校の教育みたいに、日本の中高の平均的な教科書・参考書の計算問題を普通に練習するほうが、応用のチャンスが多いし、題材も日常的で興味も沸きやすいし合理的だ。

いっぽう、もし研究に必要な基礎力を付けるのが目的なら、大学初年次レベルの初歩の問題だけが多く解けても無駄であり、もっと高度な科目の学力が必要である。

アメリカの問題集は、課題の題材こそ、大学の話題だが、しかし手法は、低レベルな問題をひたすら組み換えて出題し、それを学生に解かせるだけである。

多くの計算例というのは、理解をするために必要なだけであって、計算自体を高速で計算できても無価値である。

微分積分の書籍の選び方[編集]

※ もし読者が既に大学レベルの微分積分を知っていても、ほかの分野の書籍選びにも応用できるように書籍の選び方を説明していますので、本節を読んでください。
  • 理工系学生全般を対象にした教科書が必要

とりあえず買う本は、(数学科以外も含む)理工系の大学生一般 を対象にした本を買えば、初学者には安全でしょう。通信販売で微分積分の本を買うなら、出版社のサイトなどで、対象とする読者が「理工系」の学生などであるかを確認しましょう。物理学科や工学部などにも合わせた微分積分の本を買えば、計算問題も入っています。

  • 難易度は標準レベルが良い

買う本の難易度は、理工系大学の標準レベルでよいです。「やさしめ」とかのフレーズが入ってる本は、少なくとも最初の数学書には買う必要がありません。その本は、どうしても入学後から中間テストまでの2ヶ月間だけでは大学の授業内容が理解しきれない大学生が、とりあえず定期テストなどを乗り切るために、理解の深さを犠牲にしてでも買って勉強する必要のある本です。もし独学だったら時間に余裕があるので、わざわざ買う必要がありません。

標準レベルの本でも、高校を卒業したばかりの平均的な理系大学1年生が読んでも、そこそこ理解できるようには噛み砕いて書いてあります。

どうしても補助的な副読本がほしいなら、「物理数学」とか「工業数学」とかのタイトルの本が、物理学科や工学部の大学1年生向けに微分積分とその練習問題などを扱ってたりするので、こういったタイトルの本を買うのが良いでしょう。しかし、「工業数学」とかの本は、証明がやや簡略化してあるので、けっして、いきなり読む本ではありません。


  • 啓蒙書は不要

一般向けの啓蒙書などは、わざわざ買う必要がありません。大学1年レベルの微分積分の教科書なら、高校数学を一通り勉強した人が読めばだいたい分かるように書かれています。それが分からないなら、本の選び方を間違えているか、あるいは読者であるアナタが、高校数学を、まだ全く身につけてないかです。

  • 数学科専用の本は不要

大学レベルの微分積分の本を買うとき、具体的な計算をする練習問題も載っている本を、初学者は買う必要があります。数学の本の中には、証明の解説を中心としていて計算問題の少ない本もありますが、そのような証明中心の本は初学者には不向きです。数学科の学生に向けた本には、そのような本が多いので注意が必要です。数学者の間で古典的な名著と言われてる本には、計算問題が少ない本も多いので注意が必要です。もちろん数学科のために書かれた本の中にも、計算問題の充実した本はありますが、初学者には区別が難しいので、いっそ数学科専用の本はしばらく買わないのが初学者には安全です。

  • 問題集は不要

問題集は当面は買う必要はありません。大学1~2年レベルの数学や物理の教科書なら、計算問題も多く掲載されております。問題集には、さらに発展的な問題なども載っていますが、初学者には問題集が難解すぎたりして不要な知識です。大学でも、物理学科や工学部などの、数学科をのぞく学科では、わざわざ数学の問題集を買わない場合もあります。高校の参考書は問題集が中心ですが、大学レベルの教材選びでは高校とは事情が違います。

つまり大学の理工系の数学の教科書での計算問題の量は、まるで高校の問題集なみの量の問題が記載されています。なので、わざわざ教科書とは別個に、さらに難度の高い問題集を購入する必要は少ないのです。

  • 厚さは、150ページ以上を目安に

1年間の授業用にやや厚めの本を買うほうが、解説も充実していて初学者には安全です。少なくとも150ペ-ジ以上の本を買うのが良いでしょう。べつに250ページくらいあっても大丈夫です。参考として高校生用の受験参考書の厚さを挙げると、文英堂シグマベストとか数研出版チャート式とかの厚さでも1科目ぶんで一冊400ページくらいはあります。なので、300ページの大学レベルの本も、1年以上掛けて読むのだから、あまり大したボリュームではありません。もっとも、だからといって、あまり厚すぎる1000ページとかの数学の本を買っても計算練習をしきれないので、初学者にはせいぜい300ページくらいまでの厚さで良いでしょう。

半年用の100ページ程度の薄い教科書もありますが、あとで2学期以降(大学では「後期」という)の分の教科書を買い足すハメになったりして、結局1年合計で200ページ以上くらいにはなります。

  • まぎらわしい別科目

けっして、間違えて「微分方程式」という書名の本を買わないでください。微分方程式は微分積分の先のさらに発展的な分野の科目です。初学者にはまだ微分方程式を理解しきれません。

また、間違えて「解析学の基礎」「基礎解析学」などのタイトルの数学専門書を買わないでください。高校の古い課程では「基礎解析」という科目があったので、高校数学レベルの内容かと誤解しがちですが、まったく別の内容です。具体的に書名をいうと、たとえば『解析概論』という明治時代ごろの古典はかなり難解で、初学者には不向きです。古典ではありませんが、『解析入門』などと言ったタイトルの本もかなり難解であり、初学者には不向きです。

ほかの数学科目[編集]

大学レベルの理工学の独学では、微分積分の他のどんな教科・科目の独学よりも、まずは微分積分を優先してください。理系大学の数学の授業では「線形代数」(せんけい だいすう)という科目も1年生で勉強しますが、独学では線形代数よりも微分積分を優先してください。大学でも、微分積分のほうが重要度が高いです。

理工書の読書法[編集]

数学書にかぎらず理工書の基本的な読書の方法として、まず、練習問題のうち難問はなるべく無視して、なるべく早期にその本を通読することを目指すことです。

なぜなら、人生で使える時間に限りがありますから、難問を解くのに時間を掛けると、そのぶん、他の科目を勉強する時間が減少するわけです。時間のトレードオフがあるわけです。

どうしても難問を解きたいなら、いったん一冊を最後まで通読してから、あとから、気になった難問を解けばいいのです。

それでも数学と物理の場合、証明を手計算で確認するために時間が掛かるので、一冊の本の内容をあらかた理解するのに1年ほど掛かることもあります。

しかし、化学や生物学や機械工学などの他の科目では、さっさと通読してしまったほうが効率的です。

どうしても章末問題も計算練習したいなら、教養課程の教科書の章末問題か、もしくは専門科目なら『機械工学概論』とか『電気電子工学概論』とか概論書の章末問題までに、しときましょう。その教養課程の数学の章末問題ですら、けっこう難しいのです。

その教養課程の教科書の章末問題ですら、教科書の前半の入門的な章の、章末問題くらいまでしか、多くの学生には、解けないでしょう。

高校の生物と化学の復習[編集]

生物や化学のような(高校では)暗記科目(だった科目)の場合、分野が広すぎて、教養課程では、高校生物・高校化学で習った先の発展的な分野を紹介しきれません。

なので、ひととおり大学教養課程レベルの理科の生物・化学の本を読んだら、いったん高校の生物と化学を参考書などで復習してください。

また、大学で深いことや応用分野を習ってから、高校で習ったことの意味が用途が分かる場合もあります。

補記[編集]

チャート式の大学教養シリーズが現時点では一番有力だと思われます。現行の指導要領に合わせて、かなり易しく書き換えられています。もちろんこれだけでは力はつかないので、余裕のある人は藤岡敦の手を動かしてまなぶシリーズでも良いでしょう。