独学ガイド/理工学一般/応用科学を学び始める頃合い

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応用科学を学び始める頃合い[編集]

総論[編集]

いつから始める?[編集]

たとえば機械工学やら電気工学やら情報工学などの応用科学の学習は、もし適切な教科書が手元にあれば、早くから勉強してもよいですが、その「適切な」参考書とやらを見つけるのに、たぶんかなり苦労すると思います。

なぜなら一般の書店でも、まったく大学レベルの工学書が売っておらず、普通科高校でも工学などは習わないので、初学者には、工学などの応用科学をどう勉強すれば良いのか、さっぱり分からないでしょう。

適切な応用科学の教科書が見つかるまでのあいだ、とりあえず数学や物理・化学などの学習で、時間をつぶしてください。また、数学などを学んでいるうちに、理工系の学力も高まってきて、応用科学の勉強も始めやすくなります。

少なくとも、数学で多変数関数の微分積分ができないうちは、独学では応用科学は後回しで良いです。

とりあえず概論書を[編集]

工学は内容が膨大なので(対象が具体的なため、記述が膨大になってゆく)、もし概論でなく『機械要素』などの専門科目をいきなり勉強すると、ともすると「木を見て森を見ず」のような状況になりかねません。

なので、まず「大学 機械工学 入門」とか「大学 電気工学 入門」みたいなタイトルの概論書の大学教科書を買って読みましょう。

特に、電気系でない、機械工学や土木工学などの学問は、普通科高校でロクにならわないので(普通科の物理であつかう工学が電気電子工学や材料系を中心にしてるので)、大学の機械工学科で急にいろいろと知識を勉強するので、独学だと内容が細かくなりがちなので、「木を見て森を見ず」のように片寄りがちです。なので、概論書を(ほぼ必ず)買いましょう。


もし専門にしたい分野が決まってるなら、とりあえず、その分野の概論書で、大学レベルのを買って読んでおくのも良いかもしれません。たとえば機械工学なら、「大学 機械工学 概論」とか「大学 機械工学 入門」みたいなタイトルの本を読んでおくのも良いかもしれません。電気工学などでも同様に「大学 電気工学 入門」みたいなタイトルの書籍を買えば、興味が湧くでしょう。

概論書を買う時は、高校レベや啓蒙書レベルではなく、大学レベルの教科書を買いましょう。世の中には、ろくに中学高校で勉強してこなかった人もいて、そういう人に向けて書かれている本もあるからです。なので、概論書では大学レベルの本を買ってください。

工学の場合、高校レベルの本のなかには、資格試験対策なのか、やたらと羅列的だったり、仕組みや構造を説明せずに結果だけ説明して暗記させようとする、レベルの低い書籍もあります。

各論の書籍では、機械工学や電気工学では、高校レベルの本でも、そこそこ細かい仕組みが書いてある本もあるので使いみちもあります。しかし概論書では、大学レベルの本を買ってください。

啓蒙書レベルの本には、使える本もありますが、ろくに使えない低レベルな本もあり、見分けるのが大変なので、後回しにしましょう。

各論[編集]

まずは機械工学と電気工学を[編集]

初学者は、「機械工学」「電気工学」などを学ぶのが良いでしょう。物理学の知識も活用しやすく、どう応用すればよいかが分かります。

いっぽう、「建築学」や「土木工学」は、あまり分野外の人が学ぶようには作られていません。じっさいに理系大学でも、土木工学科をのぞく学科では、土木工学を勉強しません。同様に建築学をのぞく学科では、理系大学では建築学を勉強しません。

もし読者が仕事などで土木工学が必要ならともかく、そうでないなら、理工系の独学では当面は土木工学を学ぶ必要が無いでしょう。それに、もし仕事で土木工学の知識が必要なら、工業高校の土木科や建築科にでも入学するか、あるいは職業訓練校にでも入学したほうが良いと思います。

大学レベルの情報工学は、初学者には非効率[編集]

コンピューターなどの仕組みに興味ある人も多いでしょうが、初学者には、大学レベルの情報工学は、現在の出版状況では、非効率です。

なぜなら、初学者向けに適した情報工学の教科書が、なかなか無いのが実情です。

高校の普通科「情報」の検定教科書が、初学者向けに良く書かれていますので、まだ読んでなければ、それを読むのがオススメです。

もし、あなたが、すでに高校「情報」検定教科書を読んでいれば、当面は、大学レベルの数学や物理学や、工業高校レベルの電気工学・機械工学を勉強するのが、良いでしょう。もし、コンピューター関連の数学を重点的に勉強したいなら、「離散数学」(りさんすうがく)という科目の入門書を読むと、コンピューター関連工学で使われることの多い数学が書かれています。

工学と電工学のちがい[編集]

もし電気系の工学を概論書を買って学ぶ場合、「電工学」ではなく、まずは「電工学」あるいは「電気電子工学」と銘打ってる本を買ってください。「電子工学」といった場合は半導体とかを意味しますが、それらは高度すぎて、初学者には大して理解できません。電気工学といった場合、送電や発電機などを含みます。まずは、電気工学および電気電子工学から学んだほうが、初学者には理解しやすいのです。


あと、1990年代ごろまでに言われていた「電子工学」とは、(発電機などの理論のような従来の電気工学に加えて、)今で言う情報工学と制御工学・システム工学が混ざった内容ですので、混同しないようにしましょう。

1980年代には、まだ大学に「情報工学科」があまり無かった。また、その1990年代の大学の電子工学科で習う「情報工学」の内容のレベルが、いまでいう高校の『情報』教科に毛の生えた程度ですので、初学者は当面のあいだは情報工学の勉強には深入りは不要です。

※ なお、東大などの「計数工学科」は、今で言う「情報工学科」のこと。東大の計数工学科のできた1945年の当時、「情報」には軍事的なイメージがあったので(諜報(ちょうほう)に発音も似ているからか?)、計算機などのイメージからか東大は「計数」という言葉を用いた。

どんな教科書で勉強するべきか?[編集]

これら工学の概論書の知識だけでは、大学の専門的な工学にはまったく歯が立ちませんが、それでも予備知識を全く知らないよりは、せめて概論書の知識でも知ってるほうがはるかにマシです。

かわりに工業高校用の教科書や参考書などを購入するなどの手法もありますが、むしろそっちの購入作業のほうが大変な作業です。たまたま「地元の書店で、工業高校用の参考書が売ってた」とか「自分は工業高校卒であるので、そのような本の購入には詳しい」とかならば別ですが、そうでないなら、おとなしく大学レベルの概論書を、書店の注文で買うとか、あるいはネット通販などで買ったほうが良いでしょう。

あと、ボイラー技師とか電気工事士とか電験3種とかの資格本は、まったく初学者の工学の学習に使えません。 あれらの資格本は、すでに工業高校などで工学を教わった経験のある人を前提に書いてあります。初学者が読んでも、材料力学とか電気電子回路などの基本的な解説があまり書いておらずまったく役立ちません。

本屋に行くと、よく資格対策の解説本があるので手をとりがちですが、工学の初学者にとっては、買うだけ時間とカネの無駄です。

あれらの資格対策本を買うくらいなら、地元の教科書取り扱い店で工業高校の教科書を注文するほうがまだマシです。

もっとも、最終的には、高校レベルの本ではなく、大学レベルの教科書を読みこなせることを目標にしましょう。

いくつか前の節でも説明しましたが、工学の書籍の場合、高校レベルの本のなかには、仕組みや構造を説明せずに、結果だけ説明して暗記させようとする、レベルの低い書籍もあります。

工業高校の教科書に関して[編集]

工業高校の教科書は、計算問題が簡単なので、計算練習をしたいときに、効果的です。また、機械工学や電気工学の全体像をてっとり早く知れるので、『機械設計』『電気基礎』などの概論的な科目がオススメです。

ただし、『機械設計』『電気基礎』は検定教科書の後半のほうの節で、公式の暗記を要求するような低レベルな説明も多くなってくるので、大学の教科書も併用してください。機械工学は大学レベルの教科書を併用します。電気工学は、高専レベルまたは大学レベル以上の教科書を併用してください。大学レベルの教科書は、とりあえず読むだけでいいのです。大学レベルの教科書にある計算は、分かりそうなら、計算してみてください。


さて、工業高校の教科書を買う場合、とりあえず検定教科書の取扱いをしている書店で注文すべき科目は、

機械工学系なら『機械設計』『原動機』という科目の工業高校の教科書(もし時間やカネが限られてるときは、特に『機械設計』を優先すること)。
電気工学系なら『電気基礎』『電気機器』『電子回路』という科目の工業高校の教科書。(もし時間やカネに限りがあれば、『電気基礎』と『電気機器』を優先のこと)。

これらの科目は、大学でも、同内容の科目が、低学年の共通科目として必修科目などで教えられる科目です。

独学時の工業高校の教科書の優先順序
優先して買うべき 機械設計、電気基礎、
なるべく買うべき 電気機器、原動機、
余裕があったらオススメ 工業材料、電子回路、機械工作

上記以外の科目(表にない科目)は、工業高校の教科書で勉強するよりも、大学生用の教科書で勉強したほうが手っ取り早いです。

いくつか前の節でも説明しましたが、工学の書籍の場合、高校レベルの本のなかには、仕組みや構造をあまり説明せずに、結果だけ説明して暗記させようとする、レベルの低い書籍もあります。特に情報工学系の科目には、現状では、あまり価値がありません。

また、上記の表の科目を勉強する際も、大学レベルの教科書を併用してください。検定教科書は、よく後半のほうの節で、公式の暗記を要求したり、結果丸暗記で根拠の説明を省略するような低レベルな説明も多くなってくるので、大学の教科書も併用する必要があるのです。大学レベルの教科書は、当面は読むだけでもいいのです。

さて、『電気基礎』は、高校〜大学前半の電磁気学や電気回路と内容がいくつか共通していますが、復習も兼ねて買ってしまいましょう。

また、できれば材料系の『工業材料』という科目の工業高校の教科書も注文すること。材料工学の全体像を知ることができます。


あるいは、実教出版が工業高校の自社の教科書をもとに一般向けに販売してる『基礎シリーズ』『First Stageシリーズ』などのシリーズ名称の工業高校レベルの機械工学と電気工学の本が出版されてるので(たぶん『First Stageシリーズ』のほうが新しい)、それを買う方がいいです。

なお、実教出版の基礎シリーズには、材料工学がないので(実教出版による工業高校用の材料工学の教科書『工業材料』は、文部科学省の著作による教科書であり、おそらく権利関係の事情により、一般販売が出来無いのだろう)、材料工学の書籍入手法については、後回しにするか、工業高校の教科書を教科書取り扱い店で注文するか、オーム社かコロナ社か電気大出版あたりの工学の初心者向けの本で材料工学を扱ってるのを探すか、どうか工夫してください。

なお、例題などを計算練習しながら、読んでください。『機械設計』、『電気基礎』では、例題などで計算問題が多くあり、その計算内容も物理学的な内容が(他の科目と比べて)多いので、とくにこの2科目(『機械設計』、『電気基礎』)の計算練習を優先してください。

章末問題は独学が困難なので後回しでいいです。

あと、高校の電気工学系の教科書では「フレミングの法則」が紹介されますが、そこは理科の物理IIで紹介される「ローレンツ力」に脳内で置き換えて読んでください。

なお、もし電気工学の教科書を買うときは、もしオーム社やコロナ社がその科目の検定教科書を出してれば、なるべくオーム社やコロナ社などの検定教科書を買ったほうが説明が細かいので、大人の独学者にとっては、あとからより詳細な本を買い足す手間が少しだけ省けて得です。

どういうことかと言うと、実教出版の工業高校の電気系の教科書は、中学校を卒業したばかりの子どもへの配慮なのだろうか、他社の教科書よりも、専門的な説明を、ちょっとだけですが、控え目にしてあり、また、少しだけですが中学校の復習みたいな話題にも及んでます。

初学者には分からない違いですが、実教出版やオーム社、コロナ社を読みくらべてみると、たいていはオーム社・コロナ社の教科書のほうが説明が細かいです。

おそらく、中学校を卒業したばかりの高校1年生の子どもでも、電気工学などに、とっつきやすいようにして、高校の早い段階から専門科目の勉強を始められるようにしたり、あるいは、機械科や建築科などの他学科の生徒でも読み易いように工夫したりといった配慮なのでしょう。

しかし、今ここで、この記事を読んでるアナタは、中学校を卒業したばかりのお子さんではないはずです(※ 読者として、少なくとも20歳過ぎの大人を想定しています)。

それに、オーム社やコロナ社は、大学生用の電気工学や機械工学の工学書も出してるので、早いうちにオーム社やコロナ社に馴れておくと、のちのちの勉強でも得です。

検定教科書は値段が安いので、両社(実教、オーム、コロナ)の教科書とも買ってしまうのがラクでしょう。

なお、工業高校のそれぞれの科目は、大学工学部のそれぞれ科目よりも、あつかう科目が広いです。

工学系の科目の高校・大学の対応表
工業高校の
科目
大学の科目
機械系 機械設計 材料力学、機械要素、機械材料
 原動機 流れ学、流体機械、工業熱力学、自動車の構造
電気系  電気基礎 電気磁気学、電気回路、
 電気機器 電気機器、電気材料、発電・送電工学の初歩
 電子回路 アナログ電子回路、
 ハードウェア デジタル電子回路、コンピュータ・アーキテクチャ
材料系  工業材料 機械材料、電気材料、ガラス材料など光学材料、ハイテク系の材料など、
(コンクリートとかアスファルトとかは無い)

たとえば、工業高校の『電気機器』なら、電気材料の話題や、発電や送電の初歩にも、言及しています。大学の『電気機器』の教科書だと、よほど厚い教科書でないかぎり、それらの話題には、あまり言及しません。

「機械要素」科目を扱った書籍を探す場合、書籍名が『機械要素』とは限らず、『機械設計』『機械設計学』などの書籍名の場合もあります。

表中で原動機の説明にある「流れ学」とは、流体力学を高校生〜大学1年生あたりに分かるように、初等的にかみくだいた科目です。その流れ学ですら、初学者には、かなり難しいです。

さて、流れ学の本を買って工業熱力学の本を買って熱機械の本を買って自動車工学の本を買って・・・とするよりも、工業高校の『原動機』の教科書を買ったほうが、手っ取り早いですし、初心者にはバランスよく勉強できるでしょう。

なお、電子回路学には、「アナログ電子回路」と「デジタル電子回路」という2つの分野があります。独学者がさきに学ぶべきは、アナログ電子回路です。電子工学の独学のさいは、デジタル電子回路は後回しにしてください。

なぜなら、「デジタル電子回路」とは、コンピューター科学であつかう論理回路の考え方の学問だからです。あくまで「論理回路」という抽象化された論理スイッチ回路がデジタル回路の対象であって、現実のコンピューター内部の回路デバイスのアナログ的な特性は、あまり対象になっていないのです。

デジタル電子回路学には、離散数学(りさん すうがく)とかソフトウェア工学とかと近い部分があります。昔はソフトウェア工学や離散数学の価値が高かったですが、昨今の日本は、IT技術者が低賃金で買い叩かれてる状況です。

デジタル電子回路を学ぶにしても、もしも、まったくアナログ電子回路の予備知識がないと、デジタル電子回路の学習でも非効率です。

なので、電子工学の独学の際は、デジタル電子回路を後回しにしてください。

工業高校で習う電気科などでの「電子回路」は、アナログ電子回路学です。デジタル電子回路は、工業高校ではほかの科目(工業高校科目『ハードウェア』など)の一部になります。

アナログ電子回路を初学者が学ぶとき、まず高校〜高専レベルのアナログ電子回路の教科書・専門書を読んでください。つまり、大学レベルの電子回路の教科書は、後回しにするか、いっそ大学レベルの教科書は読まずに省略してください。

大学レベルの数あるアナログ電子回路の教科書のなかには、読者に既に電子回路の予備知識を必要とする書籍が、混ざっています。あるいは、実務ではメッタに使わない計算法を紹介してる教科書も、大学の電子回路の教科書に、いくつかあります。そのような、不適切な教科書を初学者に見分けるのは困難なので、なので、大学レベルの電子回路の書籍は、後回しにするか、いっそ省略してください。そのため、初学者には、大学レベルのアナログ電子回路の教科書は、不適切です。

回路設計の知識をステップアップしたいなら、メッタに使わない回路計算の知識に習熟するよりも、機械工学や情報工学などを勉強するべきです。

なお、情報工学の勉強をする際は、大学レベルの本を読んでください。工業高校の情報系の本は、結果だけ覚えさせようとするものが多く、あまり高度な仕事には役立ちません。

工業高校レベル〜高専レベルの工学系の話題を扱った出版社には、

実教出版
オーム社
コロナ社
東京電機大学出版
森北出版

などがあります。

これらの出版社は、大学レベルの書籍も扱っていますので、通信販売や書店注文などの際には、間違えて大学院レベルの本とかを買わないように注意してください。

なお、コロナ社は、工業高校の電気科の教科書も出しています。


人生で初めて工学の勉強をする時点では、てっきり、工業高校の教科書も高度に見えてしまいます。ですが、けっこう証明・説明を省略してる事項も多く、欠点もあります。

なので、大学の教科書を併用する事を、忘れないでください。

工業高校の教科書は、高校生に合わせており、しかも、「数学も物理も苦手だけど、いちおう、学校の授業には出席してる、そこそおマジメな生徒」に合わせています。

ここを読んでる大人のあなたたちは、そういうところで、止まらずに、もっと高みを目指してください。

何度も言いますが、大学レベルの教科書は、当面は、とりあえず読むだけでいいのです。

高校・大学カリキュラムに対応してない工学書[編集]

さて、(電子工学にかぎらず、)大学カリキュラムに対応してない工学書を出してる出版社もあります。たとえば

日刊工業新聞社
工業調査会

などです。

これらの本(日刊工業、工業調査会など)は、初学者には、不向きです。これらの本は、実務家に向けた本です。計算問題なども、不足しがちです。

それでも、どうしても、これらの本を読んでみたい場合は、初学者なら、工業高校の教科書や高専の教科書などで、計算練習を補うのが良いでしょう。その後、大学レベルの教科書を読み始めてみて、知識をさらに補ってください。


このほか、ホビー工作などとして電子工作などを紹介した書籍を出してる出版社もありますが、工業高校〜大学1年レベルの独学をしたい人がせっかくホビー工作の本を買っても、物理学などの原理が説明不足なせいで、あとで他の専門書を買い足すはめになり、二度手間になりますので、工業高校〜大学1年レベル工学の内容の独学志望者は、あまりホビー工作本は買わないほうがイイでしょう。

初学者に不要・非効率な科目など[編集]

資格試験本は当面は不要[編集]

本屋に行くと、ボイラー技師の資格対策のための技術解説本とか、電気工事士の解説本とか、電験3種の解説本とか、危険物取り扱いの資格試験の解説本とかいろいろありますが、初学者には不要です。

それらの工業系の資格解説本を工学の初学者が読んでも、まったく分かるように書いてません。それらの本は、すでに工業高校などで、ある程度工学知識を習ってることを前提に書いてあります。

たとえば、それらの資格本を読んでも、工業高校で習う材料力学や電気電子回路の解説が、まったくロクに書いてありません。


分野横断的な分野は、初学者は深入りしなくてイイ[編集]

「メカトロニクス」とか「機械制御工学」とか「半導体デバイス工学」みたいな分野横断的な分野は、初学者は深入りしなくててイイです。

たとえば、メカトロニクスの本を直接読むよりも、むしろ、材料力学の専門書を読んで、並行して電気磁気学、電気機器、アナログ電子回路の専門書も読んでいき、そして機械工学や機械工作の勉強もして、・・・というふうに進めたほうが、初学者にとってはてっとり早いです。


  • 理由

高校の理科が4科目に別れてるように(物理/化学/生物/地学)、ある程度、他の科目と独立したほうが、深い説明をしやすい場合もあります。

それに、いちおう中学校卒業までに、中学校の「技術」科で、ある程度は、分野横断的に工学を習っています。また、『機械工学概論』『電気工学概論』などの概論書を読めば、ごく初歩ですが、その学科内では分野横断的に書いています。

せっかく、初学者が分かるレベルで、メカトロニクスの本を探してきて読んでも、すでに概論書に書いてある内容と重複していたりして、二度手間です。

初学者が学ばなくてもよい工学分野[編集]

「ロボット工学」とか「自動車工学」とか「半導体デバイス工学」とか「原子力工学」とか「航空工学」とか「制御工学」とか「バイオテキノロジー」「遺伝子工学」とか「ナノテク」とか、そういう、より具体的な分野は興味もある人も多いでしょう。しかし、初学者の学習用には、これらの学問は作られていません。

機械工学や電気工学の適切な概論書を読めば、「ロボット工学」「半導体工学」「原子力工学」「航空工学」「制御工学」にも応用できる理論も書いてありますから、機械工学や電気工学の概論書を読むのが良いでしょう。

「バイオテクノロジー」「遺伝子工学」については、最近の大学理工系の生物学の概論書を本を読めば、すでにバイオテクノロジーなども解説されています。

「工業力学」よりも、さっさと機械設計の本を読んでしまいましょう。

工業力学の本を読んでも、油圧や空圧などの流体機器の力学は書かれていないし(それらは「機械設計」科目などの別科目になる)、材料力学も書かれていません。「機械工学のための物理学 力学編」みたいな題名の教科書は必要かもしれませんが、しかし「工業力学」は、それとは内容の違う独自の科目ですので、混同しないようにしましょう。そして困ったことに、現状の工学教育では「機械工学のための物理学 力学編」みたいな中身の教科書は、存在していません。

わざわざ「工業力学」を読まなくても、物理学の力学の教科書で、充分に力学を勉強できます。そもそも、工業高校の卒業生は、物理については、普通科高校の物理と同じように、物理Iと物理IIを学ぶわけです。

機械工学科で習う「自動車工学」にも、注意が必要です。「自動車」という書籍名とは違って、単に、熱力学の「カルノーサイクル」の理論を変形したような、特定の熱サイクルの計算問題を解くだけのような科目だったりする場合があります。タイヤの材料の仕組みとか、自動車の電装系の細かいノウハウとか、なんにも教えていない書籍の場合があります。


なお、情報工学科などで習う、半導体の製法や初歩的な動作原理やアナログ電子回路などの理論をまとめた科目は、「集積回路工学」という別科目ですので、混同しないようにしましょう。

大学レベルの物理学や化学の教科書を読むのがオススメです。


C言語の知識やVisual C++ などの知識すらも怪しい状況で(電気工学科とかのカリキュラムでは、プログラミングの学習時間も足りない)、静止画や動画の圧縮アルゴリズムだけを勉強しても、実験(パソコンを用いた実験)すら出来ず、無駄になります。

必要に応じて「ウェーブレット変換」とか「離散フーリエ変換」とか学習できるくらいの学力は必要かもしれませんが、しかし、必要もないのに「ウェーブレット変換」とか「離散フーリエ変換」とかの公式だけを暗記しても無駄になるでしょう。

そして、必要に応じて○○変換を理解するだけなら、一般フーリエ変換を理解してれば充分です。