生成文法/統率・束縛理論

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

1980 年代に集中的に研究された「統率・束縛理論 Government and Binding Theory」について説明します。Aspects モデル以降、深層構造が意味解釈に関与する唯一のレベルである、という主張は否定された、とされています。統率・束縛理論は次の構成を持ちます。

(1) 統率・束縛理論の構成
                      変換⤵︎       変換⤵︎
     辞書  →  D 構造  →  S 構造  → LF
              |               |               |
       X’ スキーム     条件          条件

統率と束縛はこの理論的枠組みの隅々に関わる一方、SS モデル、Aspects モデルの変換規則は因子分解され、単一の変換規則として一般化され適用に条件が課せられます。

(2) α移動:α を任意の位置に移動せよ

例を見ながら考えていきましょう。

(3)             S
             //  \
         Δ  Infl    VP  
                     / \
                 V’         PP
               /\       /\
            V      NP P      NP

これは受動文

(4) A story of my life was written by the singer.

に対応する D 構造です。S 構造は

(3)             S
             //  \
        NPi Infl     VP  
         ↑  /\    / \
          | V      I V’     PP
          |            \    /\
      a story ----- ti P      NP
                          by  the singer

です。

      /\         |