病理学/免疫とその異常
- ※ 免疫そのものの生理学的な仕組みについては、本wikiでは生理学の教科書に委ねるとする。
- 本科目では、主にアレルギーや免疫疾患などの病気について説明する。
アレルギーの分類
[編集]アレルギーは基本的に、1型~4型の4種類のいずれかに分類される。
- ※ 実際はローマ数字でI型、II型、III型、IV型と表記されるが、当wikiの当ページでは文字コードなどの都合上、算用数字で表記する事にする。
1型アレルギー
[編集]気管支喘息や花粉症がそれ。アナフィラキシーショックもこれ。蕁麻疹(じんましん)もこれ。
脂肪細胞などから、ヒスタミンなどのアミンが分泌される。
IgE抗体が増える。
2型アレルギー
[編集]血液型不適合の輸血が2型アレルギー。
IgGとIgMが増える。
3型アレルギー
[編集]全身性エリテマトーデス、血清病が3型アレルギー。
4型アレルギー
[編集]1型~3型は主に抗体(液性免疫)によるアレルギーだが、4型はT細胞(細胞性免疫)によるアレルギーである。
1~3型と比べ、4型はアレルギー反応hは比較的に(2日[1]程度)遅延する。そのため、「遅延型アレルギー」[2]とも言う、
結核およびツベルクリン反応が代表的な4型アレルギーである[3][4]。
その他
[編集]5型アレルギー
[編集]抗体が受容体に対するアゴニストとして働いて、有害な症状を呈する場合、「5型アレルギー」と分類する場合もある。 5型アレルギーは2型アレルギーの亜型である[5]。
甲状腺刺激ホルモンレセプターに対する抗体によるバセドウ病が5型アレルギーに分類される[6][7]。
移植と拒絶反応
[編集]概要
[編集]移植される臓器・組織のことを移植片 graft という。
移植片を提供する側のことをドナーまたは「提供者」という。
移植手術において、移植片を受け取る側の患者のことをレシピエントという。
他人からの臓器・組織の移植では、拒絶反応を起こさないようにするために、MHC(ヒトではHLA)の一致が必要である。
拒絶反応の種類
[編集]- 超急性拒絶反応
※ 未記述
- 急性拒絶反応
急性とは言うものの、移植後の数日から3ヵ月後までの拒絶反応である。急性拒絶反応には、免疫抑制剤が効く。
- 慢性拒絶反応
3ヵ月後以降あたりから発生する拒絶反応を慢性拒絶反応といい、免疫抑制剤が無効である。慢性拒絶反応の原因は、液性免疫(※ 抗体、免疫グロブリン)によるものと考えられるが、詳しい原因や病態は不明である[8]。
自己免疫疾患
[編集]自己免疫疾患には、 全身あるいは複数の臓器に症状のある全身性自己免疫疾患と、
一部の臓器にだけ疾患のある臓器特異的自己免疫疾患がある。
全身性自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス、などがある。
臓器特異的自己免疫疾患には、、バセドウ病、橋本病などがその例である。
全身性
[編集]全身性エリテマトーデス
[編集]SLEとも略される。皮膚の紅斑が起きる。蝶型紅斑といい、顔面に蝶が羽を広げたような形の紅斑がある。
腎炎を併発している場合が多く、腎臓の糸球体にループス腎炎と呼ばれる炎症を発症している。
関節痛が多発的に見られるが、しかしリウマチのような関節破壊は一般に無い[9]。
20歳台の若い女性に多い。男女比は男:女=1:9で女性に多い。
全身性強皮症
[編集]強皮症には、全身性のもの(全身性強皮症)と、皮膚のみが犯される限局性のもの[10][11]がある。
- ※ 以下、全身性のものについて記す。
全身性のものは、 レイノー現象といわれる四肢末端(指先など)の変色(白や紫)などを起こす。詳しい原因は不明だが、 全身性強皮症(汎発型強皮症)は、自己免疫疾患である[12]として考えられており[13]、医学教科書でも免疫の単元に分類されている。
全身性強皮症は皮膚症状のほかにも、肺炎や、肺線維症、消化管の線維症などを起こす。
かつて「進行性全身強皮症」と言ったが、進行性でない場合もあるので、現代では単に「全身強皮症」あるいは「強皮症」というようになった。
30~50歳台の中年の女性に多い。男女比は男:女=1:10で女性に多い。
全身性強皮症と同じ病気を皮膚分野では「汎発性強皮症」[14]とも言うが、病理学の免疫分野では「全身性強皮症」[15]という場合が多い[16]。
全身性のものでは、消化管、肺、心臓、腎[17][18]などの臓器の硬化する汎発型[19][20]がある。(※シンプル病理学では「汎発型」ではなく「全身性」という表現。)
- ※ 『標準病理学』でも、P123で「全身性強皮症」という表現。著者どうしの連携が取れてない。
全身性のものの初期症状はおよびレイノー症状[21](レイノー現象[22][23])である。
- ※ 「レイノー現象」とは、手足の指が白くなる現象。
全身性強皮症では、自己抗体のほか、本症に特異な抗体として、DNAトポイソメラーゼIに対する抗体が認められる[24][25]。
進行すると、指の症状のほか、顔にも仮面様顔貌。
リウマチ
[編集]※ 未記述.
臓器特異的自己免疫疾患
[編集]重症筋無力症
[編集]重症筋無力症では、骨格筋のアセチルコリン受容体に対する自己抗体が作られてしまい、そのせいで正常なアセチルコリンが結合できなくなるので[26]、神経から筋肉への信号の伝達が阻害されている。
重症筋無力症の初期症状としては、筋力低下、易疲労性などの症状がある。症状が酷くなると、嚥下も障害され[27][28]、呼吸にも障害が出る[29]。
血液検査では、抗アセチルコリン受容体抗体が陽性を示す[30]場合もある[31]。
合併症として、胸腺腫をともなう場合もある[32][33][34]。
顕微鏡性多発性血管炎
[編集]全身の血管に炎症の起こる病気であり、原因は不明だが、好中球細胞質抗体 ANCA が血液中に[35]増加している。
ベーチェット病
[編集]口腔内のアフタ性潰瘍、ぶどう膜炎(※ 眼の中に「ぶどう膜」と言うのがある)、外陰部潰瘍などを症状とし、 慢性で、炎症と寛解を繰り返す。
原因不明。
先天性免疫不全
[編集]ディジョ-ジ症候群
[編集]先天的に胸腺が欠損する病気である。
T細胞は胸腺で育つため、胸腺が欠損する事によりT細胞の成熟も起きない。 T細胞の機能不全のため、容易に感染症になるので、注意が必要[36]。
心臓の大血管の奇形も見られる場合が多い。
重症複合免疫不全
[編集]T細胞およびB細胞がともに先天的に欠損する症状である。
原因は何種類かあるが、一例としてはアデノシン・ジアミナーゼという酵素の先天的な欠損の場合、それが関わるT細胞およびB細胞がともに欠損する。
X連鎖性無ガンマグロブリン血症
[編集]X染色体の異常によって起きる、B細胞の異常により、免疫グロブリン<ref>『標準病理学』</refが産生されなくなる症状。
脚注
[編集]- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『図解ワンポイントシリーズ3 病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『シンプル病理学』、P325
- ^ 『標準病理学』、P123
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『標準病理学』、P758
- ^ 『標準病理学』、P124
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『標準病理学』、P124
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』、P758
- ^ 『標準病理学』、P758
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』、P123
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『標準病理学』、P123
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』、P436
- ^ 『標準病理学』、P129、2行目の「アセチルコリン受容体抗体陽性例」
- ^ 『スタンダード病理学』、P436
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『図解ワンポイントシリーズ3 病理学』
- ^ 『図解ワンポイントシリーズ3 病理学』
- ^ 『シンプル病理学』