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結果的加重犯

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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ウィキペディア結果的加重犯の記事があります。

概要

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基本となる犯罪行為(以下、「原因行為」)により、行為者が予期しない重大な結果(例えば死傷。以下、「加重結果」)が生じた場合に、その結果に対して加重された刑罰が科される犯罪類型を言う。

法文上における表現の多くは、「〜(原因行為)し、『よって』〜(加重結果)とした者は」と言う規定をしている場合である(例.傷害致死「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は」[1])。

結果的加重犯の一覧

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※(加重結果)の記載がないものは、「致傷又は致死」が加重結果となるもの。

加重犯罪結果に対する行為者の責任

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原因行為における、加重結果に対する「故意」は、「故意」をどうとらえるにせよ、原因行為に加重結果の要因又はその可能性が含まれ、行為の結果生じているものと擬制しているため不要であるというのが、そもそもの制度趣旨である。

しかし、加重結果に対する、行為者の主観(責任)の状況により、行為と結果の間に条件関係はあるが、①結果に関する認識ないし認識できる可能性(いわゆる「予見可能性」)があって、行為者の行動によっては回避し得た場合(すなわち、結果の発生に過失がある場合。「過失の結果的加重犯」)、②予見可能性もなく偶然的事情により結果が生じた場合(「偶然の結果的加重犯」)、③加重結果に故意がある場合(「故意の結果的加重犯」)を想定することができ、各々について結果的加重犯の成否等について議論がされている(「」内の呼称は、そのように区分する論者もいるという例示であり、強く反対する論者もいて確定した区分ではない)。このうち、①については争いなく、判例・学説ともに結果的加重犯の成立を認めている。

予見可能性がなく偶然的事情により結果が生じた場合

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原因行為が、加重結果を引き起こすと予見できなかった場合またはその結果を回避できると認識していた場合。
  1. 結果的加重犯が成立
    1. 判例
      原因行為と加重結果に相当な因果関係があれば、行為者の主観を評価する必要はない。
      • 傷害致死罪の成立には傷害と死亡、との間の因果関係の存在を必要とするにとどまり、致死の結果についての予見は必要としない。(最高裁決定昭和26年9月20日
      • 致死の結果を予見する可能性がなかつたとしても傷害致死罪を構成する。(最高裁判決昭和32年2月26日
    2. 学説
      • 因果関係ついて、条件関係のみではなく相当性も含め評価しているのであれば、責任主義に反するものではない。
      • 結果的加重犯という類型は、原因行為は行為者の主観にかかわらず重大な犯罪結果を引き起こす危険性を内包するものとして立法されているのであるから、原因行為の故意で足りる。
  2. 結果的加重犯は不成立(多数説)
    責任主義の徹底からの結論。
    • 少なくとも予見可能性は必要であり、全く認識できなかった場合や結果を認識し回避する意思を持ちそのように行動したが行為者の責によらず結果が発生した場合などは、加重結果の責任を負わない。
    • 改正刑法草案では第22条において「結果の発生によつて刑を加重する罪について、その結果を予見することが不能であつたときは、加重犯として処断することはできない。」として、予見可能性の存在を前提としている。

共犯との関係

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原因行為においての共犯が、行為途中に「離脱」した場合、加重結果まで責任を負うべきか。
判例は、甲乙と共謀のうえ、代わる代わる丙に暴行を加えたのち、甲が現場から立ち去るに際し、乙において丙に対しなお暴行を加えるおそれが消滅していなかつたのに、格別これを防止する措置を講じず、その後、乙により暴行は継続されその結果丙が死亡したという案件において、暴行行為を止め治療等の手配などの指示もなかった甲について傷害致死の成立を認めている(最高裁決定平成元年6月26日)。

加重結果に故意がある場合の加重結果に対する評価

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いわゆる、「故意の結果的加重犯」の評価である。
結果的加重犯における「加重結果」は、延焼罪における現住建造物等または他人物である非現住建造物等の燃焼(刑法第108条第109条第1項)、往来危険罪における汽車・電車・艦船の損壊(刑法第260条第261条)を除くと、人の致傷または致死であり、原因行為と傷害罪または殺人罪との関係の評価となる。この2例について考察すると、延焼罪に関しては、自己物である非現住建造物や建造物等以外の燃焼(以下、「先行放火」)を利用して現住建造物等または他人物である非現住建造物等を延焼により焼損(以下、「後続放火」)させる故意(合理的因果関係があることを前提)があるとするならば、先行放火は、後続放火の手段に異ならず、後続放火について現住建造物等放火または他人物である非現住建造物等放火を成立させ、その手段である先行放火は、後続放火と一体として処理され、延焼罪を評価する必要はない。また、往来危険罪においては、汽車・電車・艦船の損壊を予見していれば、すなわち刑法第260条が直接適用されるので、刑法第261条の適用の余地もないこととなる。
なお、傷害致死罪について相手方の死亡に故意があればすなわち殺人罪であって原因行為と発生結果を分ける必要はない。
したがって、「故意の結果的加重犯」の評価に関しては原因行為において、致傷または致死の故意がある場合を検討すれば足りる。

脚注

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  1. ^ ただし、このような表現がすなわち結果的加重犯を表していると限られるものではない。

    刑法第118条(ガス漏出等及び同致死傷)
     1. ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
     2. ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

    第1項で「よって」の前は単なる行為類型であり、後は犯罪結果、一方、第2項の「よって」の前は、第1項の犯罪行為であり、後が加重結果となっている。
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